久々過ぎてこのワンシーン書くので精一杯でした。
話がなかなか進みません。
町を抜け、森林に通る一本の野道を俺達を乗せた車両が走り抜ける。
すでに町も見えておらず、視界に入ってくるのは前方の道路と左右からそれを囲うようにして並んでいる木々ばかりである。
野道を走るその車両、通常の物よりも遥かに大きいこのトレーラーの運転席部分。
そのサイズに合わせたようにそれ相応の広さを持つこの静かな空間、今この場にいるのは運転席でハンドルを握っているボルトと後ろの列の窓際から外を見ている俺の二人のみである。
この場にいないバルクのやつはというと、発進して早々に車両のコンテナ部分に移動していった。
今頃楽しく自分の機体でも眺めている事だろう。
窓際の席から暫くの間、後方に流れていく風景をぼーっと眺めていた俺は横目で現在運転中のボルトを見ながら話しかけた。
「しかしあれだな」
「ん?」
「いや、多少見た目が変わっているとはいえ、普段自転車に乗ってるような同い年の奴の運転している姿を見ると、少し怖くてな」
「はは、気持ちはわかるけど大丈夫だって。これだってちゃんとシステムでサポートされてるからそこまで大変じゃないよ。まだ慣れてないから少し緊張するけど」
ボルトは視線を此方に向ける事なく、正面を向いたま ま返事を返してくる。軽い調子の声だが本人の言う通り、初めての運転にどことなく緊張しているような感じを受ける。
このゲームでは車などの運転に関してはプレイヤーに不自由が無いように最低限の技能として、スキルなどが無くてもアシストが入るようになっている為、車の運転などした事の無いプレイヤーでも問題無くこなせるようになっている。
今の様子を見る限り、緊張はあるもののそこまで大変ではなさそうだ。
ボルトもすぐにでも慣れてくるだろう。
「だけど驚いたぞ。まさかトレーラーを開始した直後のこの時に買うとか、しかもその為に自分のMSを売り払うなんてな」
「自分で売って置いて何だけど、出来るって言われた時は僕もびっくりしたよ」
俺の言葉を聞いたボルトは苦笑しながらそう答えた。
乗車前に言われた通り、発進して直ぐに俺とバルクはボルトからこの車両についての説明を受けていた。
ボルト曰く、この車両は格納庫にてその場で購入した物でMSと支給されたトレーラーは売ってその代金した、との事だ。
本当はこんな開始直後から高い買い物をする積もりは本人には欠片も無かったらしいのだが、支給された車両を受け取ったボルトは、そのスペックを説明されて買い換えを決断したという。
説明によれば支給されたトレーラーは運搬専門の車両であり、簡単な修理さえ行う設備も無かったのだとか。
どこの勢力にも与しないノーラインに所属しているプレイヤーは勢力からのバックアップが無い為に殆どの場合、補給などは自分達で都合しながらミッション等をこなしていかねばならない。
そんなプレイヤーの一員である俺達にとっても、単独行動中に自分達のみで修理行為一切が出来ないというのは当然ながら看過できるものでは無かった。
ボルトはそのことをゲームの開始前から理解していた為、買い換えの決断に特に抵抗は無かったらしい。機体を売った事で資金にも余裕が有ったのもその一助になったのだろう。
「しかし、受け取った直後に売り払うなんてよくできたよな。俺としてはそっちの方が驚いたよ」
「これは機体を売却した時に聞いた話何だけど、他の勢力だと機体は各々の軍隊の所有でこんな事出来ないらしいよ。だけどノーライン所属の場合はプレイヤーが傭兵やジャンク屋扱いだから、MSは個人やチームでの所有物になっているだって。こういう自由な売買が出来るのも、そういう理由からなんだよ」
「へー、ってことはあれか?ボルトも前もって知ってた訳じゃないのか」
「僕の場合、公式サイトのノーラインの説明文を見た時にもしかしてって思ったから試してみただけ。もしそうなら色々楽になるし」
……確かにボルトの言う通りだ。
元々ノーラインの魅力は使用機体や行動地域縛りが無い等の『自由さ』にあり、その中には物資の売買も含まれる。
そして今の話では装備のみならず、機体そのものもその『物資』の範疇に入っているらしい。
つまり、取引によって機体にも手が出せるという事だ。
このゲームでは機体を手に入れる方法として、機体の更新が上げられている。
これはミッションをこなす等して得られたポイントを消費する事でその機体から派生する、もしくは所属勢力に於ける別系統の同ランクの機体を入手する。
これが今現在公式サイトで出ている唯一の機体入手の方法だ。
しかしノーラインの場合、他勢力とは違って機体が縛られない分、少々消費するポイントが多い等の不利な事情があった。
恐らく、金銭での取引が可能なのはこれをカバーする為なのだろう。
………こういうのって、初めから公式サイトとかに載せておくべき情報じゃね?よくわからんけどさ。
さらに、俺にはそれとは別にもう一点気になる事が。
「……だけどお前はよかったのか、自分の機体売っちまって」
そう、俺が気にしているのは売却してしまったボルトの機体に関してである。
チームを組んでいるとは言え、売却されたのがボルトの機体である以上この事に関して責める積もりは俺には無い。
むしろ気にしているのはその逆で、自分からとは言えチームの為にボルトの機体が無くなってしまった事について申し訳ないとすら考えていた。
言うまでもなくMSは高価であり、新しく入手するとなると相当の時間が必要になってしまう。
つまりその間、ボルトは機体には乗れないということだ。
だがそんな俺の不安を余所に、ボルトは気にした様子は全く感じさせずにこう返してきた。
「ああうん、できるなら元から僕の機体は売るつもりだったからそれは別にいいんだ。選択できる機体に僕の目当ての物は無かったから。それにどうせ、支給されるトレーラーじゃ3機は載らなかっただろう?」
「まあ、確かに……」
ボルトのもっともな指摘に思わず言葉が詰まる。
確かに初期支給のトレーラーではスペース的にも重さ的にもMSを3機も搭載するなど、とてもじゃないが無理がある。
戦力としてMS1機分はかなり大きいが、それが行動の足かせになるならばそれは本末転倒というヤツだ。
それこそ俺達みたいな特定の勢力に所属しないプレイをしようとするならば特に。
「そりゃMSに乗りたいって気持ちは無いとは言わないけど、元々僕は整備士がやりたいからこのゲーム始めたんだ。暫くはそっちに専念する事になるだろうから気にする必要はないよ」
「………ボルトがそれでいいんなら、俺は何も言わないけどさ。トレーラーを変えるってのも悪い選択じゃないと思うし」
「だろう? 実際売って正解だったよ。おかげで余ったお金で予備パーツと弾薬も十分な量が買えたしね」
そういって笑いながら話す姿を見て少しばかり安心する。
今回、気を遣わせてしまったようだが本当に気にはしていないらしいな。
本人も楽しそうだし、これ以上ウダウダ言うのもアレだ。今はその親切に甘えさせてもらう事にしよう。
そうこう話してるうちにボルトがトレーラーのスピードを落とし始める。
窓の外を見れば、何時の間にか周囲を囲んでいた木々があまり無い平原のような場所に到着していた。
気が付かない内にかなり進んでいたようだ。
「……そろそろ街から十分に離れたし、ここらで停めとこうか。リードもバルクと一緒にコンテナで機体を下ろす準備をしといてくれ」
「いよいよだな……、いよっし行くか!!」
ボルトからの台詞を受けた俺は、声に出して自分自身に軽く気合いを入れる。
そしてそのまま、機体があるコンテナへと移動を開始した。
次回、ようやく主人公をMSに乗せてあげられます。