一応、時系列は本編後です。その為先の展開の一部ネタバレがありますが、ご了承くださいな。
追憶〜ルサールカ大爆発〜
「クレナイ・ガイ……ですか」
特異点を修復し、その後のこともどうにかしている人理保障機関、カルデア。
ある経緯でカルデアに召喚されたサーヴァント、コヤンスカヤは、かつてカルデアにいた銀河の風来坊の名を口にする。
「えっ、ガイさんがどうかした?」
「ああ、立香さん。いえ、特別どうしたということをないのですが…」
このカルデアにマスターは2人いるため、ほぼ全員立香、立花と名前で呼ぶことが多い。
その例に漏れず、コヤンスカヤも男性の方のマスターを、その名で呼ぶ。
「彼のことは、私も知っています。別の宇宙から来たのでしょう。現状、私の御同輩ということになりますか」
「まぁ…そうなのかな?コヤンスカヤは、ガイさん達とは逆パターンになると思うけど」
「彼の名前を呼んだのは、そこそこ理由がありまして。私の誕生経緯は、ご存知でしょう」
「あっ、うん。ツングースカの……」
その先を言おうとして、彼は言葉が詰まる。
「別に怒っているというワケではありませんので、そこまで気にしなくて結構です。そもそも、クレナイ・ガイ本人でもないでしょうに」
「そう…なんだけど、さ」
「……マスター達と彼が、かけがえのない関係を築いたというのは、私も知ってます。それに、貴方達のことも、理解はしてるつもりですが」
「あ、あはは……どうなることかと思ったけど…助けられたり、助かったことのが多いから、今は別に気にしてないんだけどさ。オレも立花も、半分は自分の意思だったし」
「…そうですか」
「……じゃあ、コヤンスカヤがいいなら、話を続けるけど。コヤンスカヤが言いたいことって、ガイさんが言ってた、ルサールカのこと?」
「ええ。そうです」
ルサールカ。
クレナイ・ガイのいる宇宙の地球、その北欧の森林地帯のことである。
「立香さんも理解しているでしょうが、そのルサールカ大爆発とは、こちらでいうツングースカ大爆発のことでしょう」
「…………」
「こちらの大爆発の原因は、隕石によるものでした。しかし、あちらの大爆発の原因は、彼によると」
「……そう、みたいだ。オレと立花も、その夢を見たことがあるよ。でも、あれは……」
「怪獣…ましてや魔王獣を相手にしたのですから、ある程度は仕方ないでしょう。しかし、半分以上は彼の暴走、でしたか」
「…………」
「……先も言いましたが、私は怒ってるワケでもなければ、貴方に言っても仕方のないことというのは、理解しています」
「……もしコヤンスカヤは、ガイさんに会ったら、どうするの?」
「そうですねぇ……どうしましょう?」
「オレに聞かれても…」
「別に悪いようにはしませんよ。太公望みたく、別に半分八つ裂きにしたいとか、そのようには思いませんし」
「まだ怒ってるか…」
「だってあの人失礼でしょうに。まぁ、強いて言うなら…」
「言うなら…?」
「……一度こちらに来たのなら、あちらでもってぐらいでしょうか」
「えーと、それってどういう?」
「まぁ、必ずしも全く同じということはないでしょうがね。さて、立香さん。そろそろ立花さんたちがお茶の時間でしょう。どうせ医務室に溜め込んでることでしょうから、強奪にいきましょう」
「あ、あはは…あー、毎度かわいそう」
「止めない貴方も同罪です。さぁ、行きましょう?我がマスター?」
「ここに来るのも何年ぶりか、分からないな」
北欧の森林地帯に、その男の姿はあった。
黒のコートに、黒の帽子。正に風来坊と呼ばれるような、その男の姿が。
「………変わらないな。ここは」
マガゼットン、ゼッパンドンと戦った時に爆発を起こしてからも、森は再生を繰り返し、元の姿に戻っていた。
「マガゼットンはともかく、ゼッパンドンはけっこう最近だと思うんだけどな。自然ってのは、分からないな」
ここに来たのも、近くの星に用があったからで、あまり長居はするつもりはない。
「……久しぶりに、SSPに顔出すか」
かつての戦いで関わりを持った調査チームの元へ行こうと、その場を後にする。
「ん?」
後にしようとしたとこに、帽子が飛んでくる。
それは小さな、白い帽子。
「子供用か…」
「あっ、あの……」
それを追うように、小さな女の子が現れる。
「ん、これ嬢ちゃんのか?」
「う、うん……」
「そうか。次から気を付けな」
彼女の頭に、優しく帽子を置く。
「ヤースカヤ。見つかったか?」
「あっ、お父さん…あの、ありがとうございます」
「気にするな。じゃあな、あばよ」
その子が走り去っていくのを、彼は見届ける。
「……しかし、あの嬢ちゃんの父親。やけに女のように見えたけどな。声も女のようだったが。それに、あの嬢ちゃんも……」
別の宇宙で関わった、狐の巫女のことを思い出す。
「……他人の空似か。言っちゃなんだが、あんな大人しくはなかったからな。さて…そろそろ行くか」
ルサールカを後にし、日本へと向かった。
「次は、立香のとこにでも顔出すか。さて…また何か起こってなきゃいいが。その時はその時か」
コヤンスカヤ本人が言った通り、完全に同一人物というワケでもなく、平行同位体というワケでもないです。