二話に分けてもいいかなとは思ったんですが、いいや、詰めちゃえとなった次第です。わりと長くなるかもしれませんが、ゆっくり読んでください
ガイさんとクー・フーリンがシャドウアーチャーと...咆哮が聞こえたのは、多分シャドウバーサーカーなんだろう。引き受けてくれたからオレ達はここにいる
「これが大聖杯...」
「これほどの魔術炉心...極東の島国にこんなものがあったなんて...」
「そのアインツベルン家って、それほどの勢力なんだね...」
『アインツベルン家については戻ってから時間があったら教えるから、今は目の前のことに集中してほしい。サーヴァント反応がある。クー・フーリンの言う通りなら、セイバーのサーヴァント...アーサー王がそこにいる』
「アーサー王...でしたら宝具は間違いなくエクスカリバーです。私に防げるのでしょうか...」
「大丈夫だよ。クー・フーリンの宝具を防げたんだから、きっと大丈夫」
立花がマシュを励ますけど、マシュの顔色が優れない。アーサー王のエクスカリバーとなると、一般人の俺でも知ってる程の有名なもの。サーヴァントは有名なほど強力になるっていうし、そうなるのも無理もないことなんだけど...
「...クー・フーリンとガイさんが送り出してくれたんだ。負けるわけにはいかないよ」
「ほう、面白いサーヴァントがいるな」
「なんて威圧感...あれが本当にアーサー王なの...?」
『間違いないよ。変質してるようだけど、彼女はブリテンの王、聖剣の担い手アーサー王だ。伝説上とは性別が違うのは、きっと何か事情があってキャメロットでは男装してたからだろう』
「はい...男性だと思ってましたが、あの声は女性のものです」
「でも甘く見ない方がいいわ。見た目は華奢でも、恐らく魔力放出で強化してくるから。一撃一撃が重いだろうし、何よりエクスカリバー。あれの存在は厄介よ」
「何を語っても見られている。故に案山子に徹していたが...面白い。その宝具は面白い。構えろ、名も知らぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」
「来るぞマシュ!さっきまでの敵とは格が違う!気を付けて!」
「はい...!」
マシュが盾を構えると同時に、セイバーが斬りかかる。さっきクー・フーリンと戦ったのはあくまで特訓、本気でかかってきてはいただろうけど、今は実戦...シャドウサーヴァントとは違う初めてのサーヴァント戦。しかもその相手がアーサー王になるなんて...
「リツにい!危ない!!」
「えっ...!?」
セイバーの斬撃で地面が砕け、その岩がこっちに...
「ああもう!ボーッとしてるんじゃないわよ!」
所長が地面に石を投げ、目の前に魔術で作られた盾が展開。オレを守ってくれた
「しょ、所長...」
「マシュを心配する気持ちも分かるけど、いま貴方が出てってもマシュの負担になるだけよ。いまは耐えなさい」
「......でも、相手はあのアーサー王で...」
「マシュは貴方達のサーヴァントなのよ!そして貴方達はマシュのマスター!マスターが自分のサーヴァントを信じられないって言うの!?」
「ち、違う!信じてないワケじゃない!でも...それでも...」
彼女1人だけを戦わせるなんて...
「はああああああああ!!」
「ぐっ!あああああああ!!!」
「っ!?マシュ!!」
セイバーの斬撃がマシュを吹っ飛ばし、マシュは地面を転がっていた
「あ...くっ...」
「マシュ!立って!その盾は私たちだけを守るものじゃないよ!」
「立花...先輩...」
「目の前のセイバーの攻撃を防ぐことに集中してくれ!自分の身を守らなきゃ、誰かを守ることなんて出来ない!」
「立香...先輩...」
「貴女は今や数少ないカルデアの職員でもあります。それをこんなとこで失うわけにはいきません!そのためにもここを凌ぐのよ!マシュ!!」
「所長...」
俺たちの言葉で、マシュはもう一度立ち上がる。少しフラつきながらも、その足は崩れない
「ボロボロになりながらも立ち上がるか。主を守らんとするその意思...ならば!」
セイバーを纏っていた魔力のほとんどが剣に集束される。あれってまさか...!?
「宝具を放つつもりか...!?」
「マシュ!必殺技が来る!耐えて!!」
「これを防げるか!『卑王鉄槌』、極光は反転する。光を呑め...!」
セイバーが宝具を解放しようと...私も、さっき解放した宝具を...!
「宝具...展開します...!」
「
「
セイバーの聖剣から放たれた闇が、私が展開した盾へ襲いかかる
「ううううううう!!!」
分かってはいましたが、エクスカリバーの威力はスケルトンやシャドウサーヴァントの攻撃とは比べ物にならなくて、盾を持つ手がずっと震えていて、ダメなのに、頑張らなきゃ私は、なんのために...
「ここへ来て迷いが出るか...残念だ。そのまま焼かれるがいい!」
出力を上げたのか、盾に掛かる負荷がさらに重くなって、今にも呑み込まれそうで...
「ここまで...なんでしょうか...」
私だけじゃ...戦いきることなんて...
「...えっ?」
ここまでかと思ったとき、両肩と両手を何かに支えられてて、その前にも何かが頭の中に響いて...
「1人だけで戦うなんて、そりゃあ怖いよね。オレだったらここまで出来ないよ」
「しかもいきなりサーヴァントになって、相手がアーサー王なんだから。スゴイよ、マシュ」
私を支えてくれたのは、先輩達の手でした。ということは、いま先輩達は私の後ろにいて...!?
「だ、ダメです先輩!ここにいては、先輩達も...!」
「嫌だよ。私達はここをどかない。1人でダメなら2人、3人。大丈夫、どうにかなるよ!」
「だってオレ達、マシュの先輩なんだろ?後輩がピンチのときに、先輩が駆け付けないで、誰が駆け付けるってのさ」
...さっきは気づかなかったけど、先輩達がわたしの手を握ってくれてるような感じで、あの時...いえ、それ以上に、あたたかいです
「だから、マシュ...」
「うん。だから...」
わたしの周りに、あたたかいものが溢れてきて、わたしを包んでくれてます。すごく...あたたかい
『諦めるな!』
「うううううううう!!!」
「今のは...そうか。だが今ので力を出しすぎたようだな」
「あっ...」
「マシュ!」
セイバーの宝具を耐えきったけど、マシュは宝具の解放に慣れてなかったからかほとんど力をつかいきってしまい、フラついている
「大丈夫です...勝負はまだ...」
「ここまでだ。エクスカリバー...!」
またセイバーが宝具を放とうと...くそっ
「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める杜」
この声...来てくれたんだ...
「よくここまで持ち堪えたな」
キャスター...クー・フーリンが駆け付けてくれた
「倒壊するは...ウィッカー・マン!」
「結局、どう運命が変わろうと私一人では同じ末路を迎えるという事か」
「どう意味だそりゃあ。テメエ、何を知ってやがる」
「いずれ貴方も知る、アイルランドの光の御子よ。グランドオーダー...聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだということを」
そう言いながら、セイバーの身体はどんどん消滅していく
「おい待て!そりゃどういう...くっ」
「キャスター!?あなたまで...」
「そういうことだ。あとは任せたぜ、立香と立花、マシュにオルガマリーよ。ガイならすぐやってくるだろうぜ」
「...ありがとう、クー・フーリン」
「おうよ。もし次があるなら、そん時はランサーとして喚んでくれ」
そう言って、クー・フーリンも消えていった。すると上の方から何かが...
「セイバー、キャスター。共に消滅を確認。私たちの勝利...なのでしょうか」
『うん!よくやってくれたみんな!ってあれ、マリー所長?』
「...何故あのサーヴァントがその呼称を...」
「所長ー?どうしたの、ぶつぶつ何か言って」
「てんやわんやしてない所長って、なんか珍しいですね」
「えっ...?あっ、いえ。なんでもありません。それと立香、いつも私が慌てふためいてるような言い方はやめなさい!」
『あー、ともかくみんな。いま出現した物体の回収をお願いするよ。放置していいものじゃなさそうだし』
「そ、そうね...冬木の街が特異点になった原因はあれにありそうだし。水晶体...かしら」
「はい。支給回収...な!?」
影から何かが現れてきた。その姿は人間のようで...えっ!?
「まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48,49人目のマスター適正者。しかも訳ありな子供だからと善意で見逃してあげた私の失態だよ」
「レフ教授!?」
「爆発に巻き込まれたはずじゃ...!?」
『レフだって...!?レフ教授がそこにいるのかい!?』
「おや、その声はロマニ君かな。君も生き残ってしまったか。まったく...」
今まで笑みを浮かべていたレフ教授は、カッと目を見開き、さっきまでとは正反対の顔を浮かべた
「どいつもこいつも統率のとれないクズばかりで吐き気が止まらないな!人間というのはどうして定められた運命からズレたがるんだ?」
「レ、レフ...?生きてたのは嬉しいけど...その言葉って...」
「予想外のことばかりで頭にくる。オルガ、二番目の予想外は君だ。死んだはずの君がここにいるなんて」
「えっ...?い、いやね、レフ。私は生きてるじゃない、なんの冗談よ、さっきから...」
「たしかに、君はいまここに存在している。だがね、オルガ。君の肉体はとっくに死んでいるんだ。あの爆発でね。残留思念になった君が、この土地に転移させられたということさ」
「う、嘘よ...そんな...そんなことが...」
「だってそうだろう?君にはレイシフト適正はなかった。なのにここにいる。おかしいと思わなかったのかい?何故自分がレイシフトに成功しているのか。答えは単純さ、君は死んだことでレイシフト適正を手に入れたのさ」
「...待って。ということは、所長は...」
「子供の割に察しがいいな。そう、オルガはカルデアには戻れない。意識だけの存在が保てるのはこの特異点だけだからね。消滅しに行けるわけがなかろう?」
「き、消えるの...?私...い、いやよ...」
「だろうね。君は生涯をカルデアに捧げてきた。ならせめて、今カルデアがどうなってるか教えてあげようじゃないか」
そう言ったレフ教授は、手に持った水晶体を光らせる...嘘だろ
「カルデアの...管制室...!?」
「そう。オルガのために時空をつなげてあげたのさ。聖杯を使えばこんなこともできる。そして見たまえ、カルデアスを。人類の生存を示す青色など存在しない。あるのは燃え盛る赤色だけだ!」
「ふ、ふざけないで!あんなのただの虚像よ!人類は滅んだりしないし、私も死んでなんかない!消えて無くなりなんかしない!」
「まったく...最後まで耳障りな小娘だったな、君は」
レフがそういうと同時に、所長の体が宙に...!?
「なっ...体が、何かに引っ張られて...!?」
「最後の私からの慈悲だ。どうせ死ぬなら、最期は君の宝物に触れたまえ」
「ふ、触れるって...カルデアスに...!?高密度の情報体で、次元が異なる領域なのよ!?」
「そう、ブラックホールと何も変わらない。いや、太陽かな?どちらでもいいか。なんにせよ、人間が触れれば分子レベルで分解される地獄の具現だ。遠慮なく、生きたまま無限の死を味わいたまえ」
「い、いやあああああああ!!!!」
所長の体がどんどん引っ張られて...くそっ!
「所長!!」
「ダメ!りつにぃ...ダメ...!」
「ダメです、いけません先輩...!貴方も近づくと、同じ目に...」
「そんな...所長!!!!!!」
「いや、いや、いや!助けて!誰か助けてよ!わたし、こんなとこで死にたくない!誰もわたしを評価してくれなかった!みんなわたしを嫌ってた!だからわたし...嬉しかったのに!あの時ガンドで助けたことを褒められたこと!ドライフルーツ分けてあげただけなのにそれを感謝されたこと!そんなことでも褒めてくれたから、もっと頑張ろうって思ったところなのよ!だってあの時まで...生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったから!!いやあああああああ!!!」
「もう...間に合わない...!」
所長の体がカルデアスに触れて、そのまま飲み込まれる...
かと思われた
「...えっ?」
青と赤の光が、頭上を横切ったと思えば、その光は人の姿となって、オルガマリー所長を抱き抱えた
「あれ...あれも宙に浮かんでないか...!?」
「なっ...バカな!何故だ!何故貴様がこんなところに!いや、何故この世界にいる!?」
「レフが慌てふためいてるけど...ここからじゃよく見えないよ...」
「くっ...まあいい、これを知ることが出来ただけよかったと思うことにしよう。覚えておけ!カルデア残党たちよ!私はレフ・ライノール!貴様たち人類を監視するために遣わされた2015年担当者!そしてお前たち人類は既に滅んでいると!カルデアスで保たれてはいるだろうが、カルデアの外はこの冬木と同じ末路を迎えている!カルデア内の時間が2016年を過ぎれば、そこもこの宇宙から消滅する!せめて無駄な抵抗を続けるがいい!もはやこの結末は誰にも変えられない!人類史による人類の否定をな!!」
そう叫んだレフは、姿を消した
「あっ...」
「所長!!って、あれ...?」
所長を抱き抱えていた誰かが所長を地上に下ろしてくれたけど、気づけばその姿は見えなかった
「所長、さっきのは...?」
「...分からないわ。顔はよく見えなかったし、胸の辺りしか見えなかったけど...肩になにかプロテクターを付けてるような感じで、胸にはリングが目立って、赤と青が目立つ色をしていたとしか...」
「そうですか...サーヴァントでは無いと思いますし、なによりあの慌てよう...気になりますが...!?」
突然地面が揺れたけど...これって...
『大変だ!その特異点はもう限界だ!崩壊が始まりつつある!』
「待って、ガイさんは...!?」
「そうだ、ガイさんがいない!」
「おーい!!大丈夫かみんな!!!」
「この声...ガイさん!?ガイさん!!オレたちはここだ!!」
「悪い、遅くなった。オルガマリーと立香の叫び声が洞窟に響いて、急いでこっちに向かってたらこの揺れが始まってな...無事そうでなによりだ」
「...あのね、ガイ。わたし...どうやら死んでるみたいなのよ」
「...なんだって?」
「わたし以外はレイシフトしてカルデアに戻れば安全だけど、わたし、どうやら戻ると同時に消滅しちゃうらしくて。せっかくあの人が助けてくれたけど...まあ、カルデアスに飲み込まれるよりはマシかしらね。ロマニ、レイシフトの準備は出来てるでしょうね?」
『...うん。出来てはいるけど、3人しか...』
「って、そうだ!ガイさんってカルデアから来たわけじゃないから、ガイさんも!?」
「...いや、オレは大丈夫だ。カルデアに戻ってな。崩壊に巻き込まれちゃ、おしまいなんだろ?」
「...そうよ。貴方達は生きてるもの。早く行きなさい。所長命令です」
『...さようなら。オルガ』
「待って!ガイさん!所長!」
全てを言い切る前に、オレの目の前は真っ暗になった
「...貴方、本当に大丈夫なの?このままじゃ崩壊に巻き込まれるわよ」
「...そんなことより、オルガマリー。アンタ、本当にこれでいいのか?」
「...だって、もう死んでるんじゃ...どうしようも出来ないじゃない。さっきはあんなこと言ったけど、カルデアに帰れないんじゃ...」
「.........」
「...嘘よ。本当はもっと生きたいわよ。あの子達にしかレイシフト適正がないなら、あの子達が今後戦っていくことになるのよ。そんなことになって、わたしが脱落して...いやよ!せめて戦えないなら...サポートの1つぐらい...!」
「...分かった。賭けになるが、ちょっと眠っててくれ」
「えっ..,?」
「...さ...」
誰かの声が聞こえる...
「ガ......ん!」
...そうか、この声が聞こえるってことは...うまくいったのか
「ガイさん!」
「...よう、銀河の風来坊...改め、今はカルデアの風来坊ってか?ともかく、よろしくな」
これがうまくいったなら、きっとうまくいくだろう
炎上汚染都市 冬木
〜サーヴァントと風来坊〜
定礎復元
〜ここでオーブの祈り(1番)が流れる〜
さて、オルガマリーどうなったの?とか、どうやってガイさんカルデアに来れたの?とかは次回、お話しましょう
ともかく炎上汚染都市ノ章、閉幕です。まだ冬木です。なっが。どんだけ時間かけてんだって話ですが、まあ、はい。ゆっくりやってきますので、またご期待ください