「お礼がしたい?」
「そう。無頼を修理したお礼をしたいの」
あれからカレンの無頼が無事修理を終えた。アキラは左腕以外だけではなく他の箇所をすべて見て悪いところがあれば直してくれたのだ。カレンはそのお礼をしてそのついでに彼のことを知りたいと思ったのだ。
「俺が勝手にやったことだ。気にするな。」
「だとしても私がしたいの。一緒に街にでも行きましょ」
「そんなに行きたければお前1人で行け。」
「1人で行ってもしょうがないでしょ。で何その銃?」
アキラは古びた銃の手入れをしていた。ゲットーで拾った水平二連の銃身を切り詰め銃床も短くしたショットガン。これに対KMF用徹甲弾を装填できるように改造をすることで白兵戦でKMFと遭遇した場合この銃で戦うことができる。しかしこの銃は基本的に単発か2連発になってしまい、持続的な射撃には向いていない。
「そんな銃使えるの?」
「KMF相手なら十分だ。」
「ふ~ん。って!それより行きましょう」
しかしアキラはカレンに背を向け銃の手入れを続けた。
「もう、たまには息抜きも必要でしょ。」
カレンはアキラの正面を向いた。アキラはほっといてくれと睨んだがカレンも負けじと睨み返した。アキラは深い溜息を吐いた。
「少しだけだぞ。」
「そうこなくちゃ」
「じゃあ、行くぞ」
「え?行くぞって、あんたその格好」
「?」
今、アキラの格好は黒いパーカーに汚れたジーンズ
「すまない、服がないんだ。」
そういえばこれ以外の服を着た姿は見たことがないとカレンは思った。
「じゃあ、まず服を買いにいこう。」
カレンはアキラの腕を引っ張りアジトを出た。
アキラとカレンは租界の街の洋服店にいた。
アキラはカレンから勧められた黒いジャケットに白のワイシャツ黒のスラックスの格好をした。アキラは今まで着たことのない服に若干違和感を感じた。
「ふふっ」カレンはアキラの格好に少し笑ってしまった。
アキラは笑われたことに少しムッとしてしまった。
「ごめんごめん。大丈夫似合ってるよ。じゃあ行こうか」
2人は店を出た。
「・・・・」
「・・・・」
(何だろうこの沈黙)
2人はある喫茶店にいるのだが20分2人はまともに喋っていない。
アキラはコーヒーを飲みながら相変わらずの状態だ。
(えっ・・となにか喋らないと)
「ねぇ、りゅ・・」
「帰る。」
アキラは席を立とうとした。
「え?ちょっと」
「まだ何かあるのか?」
「えっ・・とね。(あれ?いざ何を喋ればいいか)」
カレンはあたふたした。
「はぁ 何もないなら帰るぞ」
「待って!」
カレンは席を立とうとしたアキラの腕を握った。
「あんたのことで聞きたいことがあるの!」
「・・・何だ?」
「あんたの小さい頃の話を聞きたいなって思って」
「・・・っ!」
アキラの顔が強ばった表情になった。
「何故そんなことを」
「い、いやあんた日本開放戦線に5年もいたっていうからどんな生活してたかなって」
(あれ?どうしたんだろ。顔が急に強張って)
ーうわあぁぁ! なんで日本軍が? 助けて!ー
アキラが思い出したのは目の前男、女、子供の死体があちらこちらに転がっている風景であった。
「ハァ ハァ ハァ」
「日本開放戦線にいる前はどこに住んでたの?何してたの?両親は?」
-ここにいたぞ! 子供だからといって油断するな! 撃て!-
兵士が自分の目の前に立ち自分に目掛けて銃を撃った。
「ハァ ハァ ハァ」
アキラは頭を押さえ呼吸も荒くなった。
「ちょ、ちょっと どうしたの?」
カレンはアキラの姿を見てそばに寄った。
「水を飲んで落ち着いて」
カレンはアキラにグラスを渡した。
「ハァ ハァ ング!」
アキラは渡せれたグラスの水を一気に飲み干した。
「ハァ ハァ ハァ」
「落ち着いた?」
「ハァ ハァ あぁもう大丈夫だ。」
「どうしたの?」
「いつも昔の事を思い出そうとすると頭痛が」
「そうだったの。ごめん。・・・ちょっと外にでようか」
2人は店を出て近くの公園のベンチに座った。
「昔の事が思い出せないってどういうこと?」
「俺には10歳より以前のことがよく覚えていないんだ。断片的に何か浮かんでくんだが」
「じゃあ、どこで生まれてのかも?」
「あぁ 分からない。一応俺は日本人らしいがな」
「一応って?」
「俺は両親のことは知らない。覚えているのは日本のどこかで彷徨っていたところを日本開放戦線に拾われたことぐらいだ。」
カレンはアキラの話を聞き彼もブリタニアと日本の戦争に巻き込まれて孤児になってしまったのではないかと思った。
「じゃあ 学校は?」
「学校?行ったことないな。俺が教わったのは人の殺し方だ。」
「そんな・・・」
カレンはアキラの話を聞き絶句した。彼は以前5年も戦っていたと話した。だとすれば彼は12歳の頃から学校にも行かず戦場で戦っていたのだ。
自分もこの歳で銃を持って戦っているが彼は5年も戦って辛くなかったのか、学校に行きたかったのではなかったのか?カレンは聞きたかったがまたあの発作を起こすではないかと思い踏み止まった。
「なんとか言えよイレブンが!」
「謝罪しろよ。」
「イレブンは謝罪するのが得意だろうが」
近くで大きな声がしてので2人は見た。見ると5人の集団が1人の男を袋叩きしていた。聞いていると男はイレブンでホットドッグのお店を出しているようで何かトラブルがあったようだ。
「あいつら!」
カレンは男を助けようとしたがアキラがカレンの肩を掴んだ。
「助けるのか?あの男を」
「ほっとけないよ!」
「相手は5人だ。簡単じゃないぞ」
「だからって!」
「なんだおたくら、俺らに用?」
1人がこちらに気づいてやってきた。
「それとも俺らと一緒に遊ぶか?」
「誰がお前らバカなんかと」
アキラが悪態をつくと男がアキラの胸倉を掴んだ。
その瞬間アキラは自分の胸倉を掴んでいる腕を掴みこちらへ引き込み倒れた相手の首筋に肘を入れた。
「コイツ!」
もう1人がアキラにパンチを放ったがアキラはそれを避けカウンターのパンチを入れた。
「野郎!」
ナイフを持った男がアキラの顔にナイフを突き出した。アキラは寸前のところで避けたが少し掠めて頬の辺りにナイフの傷ができ傷から血が滴り落ちた。
「流崎」
カレンが加勢しようとしたがアキラがカレンに手を出すな手を突き出した。
男はさらにナイフで攻撃しようとしたがアキラはナイフを持った腕を掴み柔道の背負い投げの要領で相手を投げた。アキラは男のナイフを拾い男に刺そうとした。
カレンはこれ以上やればアキラはこの男を殺してしまうと思いアキラの腕を強く握った。
「もうやめて!あんたコイツを殺す気?」
カレンはアキラの顔を見て寒気がした。
(何?コイツの目)
アキラの目の瞳孔が開きまるで獣の目をしていた。
「ひっ、ひぃ に 逃げるぞ!」
男の集団は恐怖を感じ逃げて行った。
カレンはアキラの握ったナイフを取りイレブンの男に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「お、おしまいだ。」
「え?」
「これでもう働けない。」
男は頭を抱えこれからどうしたらいいのかとつぶやいた。
カレンは男に何も言うことができなかった。
「流崎、帰ろう」
「いいのか?あのままで」
「うん・・いいの。流崎ケガ大丈夫?」
「あぁ大丈夫だ。」
「私の家近くだから来て。手当するから」
「構わん。心配するな。」
「いいから、来て」
アキラとカレンはこの場を去っていった。
「服よごれちゃったね。」
「気にするな。」
「・・・あの日本人はきっと名誉ブリタニア人であそこで商売してたのよ。」
「だがあの男はもう働けないと言ってたぞ」
「あんたがブリタニア人を倒してしまったから。あいつらが訴えたらあんただけじゃなくてあの人も巻き込まれて市民権剥奪されるかもね。」
「・・・・」
「ここじゃあどんな理不尽なことでもブリタニア人の方が強いから。」
虐げる者、虐げられる者。紅月の言う通りだ。これが勝者と敗者の違いだ。俺が陽炎にいた時もそれを痛感した。
「ここが私の家」
立派な屋敷だ。アキラは玄関の札に目が入った。
「シュタットフェルト?」
確か彼女の姓は紅月のはず。アキラは疑問に思った。
「あっ!あとで説明するから。どうぞ入って。」
「おかえりなさいませお嬢様。こちらの男性は?」
屋敷に入ると1人の使用人の女性がやってきた。
「いいから、彼は友達でケガをしたの、私の部屋で手当するから。」
カレンは鬱陶しそう顔をして答えた。
「あら、まさかあなたが男を連れてくるなんてね。」
今度は別の女性が2階から降りてきた。
「朝帰りに不登校、ゲットーにも出入りしてるようね。今度はその薄汚い男を連れて血は争えないわね。お父様が本国にいることのをいいことに」
「父の留守を楽しんでいるのはあなたの方でしょ!流崎ごめんね。気にしないで」
「では流崎様上着を私に」
アキラはジャケットを使用人に渡した。使用人はアキラのジャケットを持ち歩いたが足を躓き転んでしまった。
「まったく何してるの!」
「すみません奥様。すみません流崎様」
「いや、気にしてない」
「流崎!もういいから!ついて来て」
アキラは使用人を気にしながらもカレンのあとをついた。
「ごめんね。嫌なところ見せて。」
カレンは自分の部屋でアキラのケガの手当をした。
ピアノなど綺麗な部屋ではあるがピアノの下にダンベルを置いていた。おそらくここで体を鍛えているのだろう。
「お袋さんと仲悪いのか?」
「あれは継母。本当の母親はさっきあなたが服を渡したドジな使用人。」
アキラはカレンの言っていることに理解できなかった。
カレンはアキラの顔を見て苦笑いをした。
「私、ハーフなの。ブリタニア人と日本人のね。父はシュタットフェルトの当主。バカな人よね。結局使用人扱い、バカにされてもヘラヘラしてワザワザこんな家いなくてもいいのに。父にすがってるのよあの人は。」
「・・・・・・」
「あっ ごっごめんね。1人でべらべら喋って。」
この時の俺は何も言えなかった。両親の事を何も憶えていない俺には彼女が母親のどこが嫌なのか理解できなかったのだ。しかし同時にどういう形であれ両親がいることに俺には羨ましく思った。
それから2人は無口になりカレンはケガの手当に手を動かすだけであった。
「うん。これでいいよ。」
「すまない。」
「いいって。気にしないで、服は今度私が持って返すから。」
アキラが部屋をでようとした時、カレンの携帯が鳴った。
「扇さん?流崎ちょっと待って!扇さんどうかしましたか?」
どうやら扇からの連絡みたいだ。。この様子だと黒の騎士団に関係あるようだ。
「はい。・・・リフレイン?えぇ・・・治安警察が?分かりました。では夜打ち合わせに」
カレンは携帯を切った。
「流崎、あのね・・・」
「治安警察が絡んでいるのか?」
「え?えぇ」
「分かった。俺も参加する。」
「だったら今日の夜いつものアジトに」
奴らが絡んでいるところを襲えば必ず安永達が仕掛けてくるはずだ。その時安永達を捕まえることができれば真実を知ることができるはずだ。
今回でた銃はボトムズのアーマーマグナムの代わりです。
ある洋画で出た銃が格好良くて今回出してみました。
原作にあったミレイとカレンの会話は学校でこっそり話したと設定です。
少し長くなったので後編は次回で