普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった!   作:南雲悠介

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102.「遠くない未来」

 学園に入学して新しい寮での生活はあたしにいつも新鮮な出来事を運んでくれる相倉さんや牧野さんはとっても良いこ──あたしは彼女たちに影響されてどんどん前向きな性格に変わっていく、分担しながら作るご飯、美味しそうに食べてくれる小鳥遊くんの顔を見るのは嬉しいの。

 彼と出逢ってからたくさんの大切な縁と巡り合う。

 あたしはそんな日々の細やかなイベントにちょっぴりだけ幸せを感じている。

 

 一旦勉強を小休止しているとスマホに見覚えのある名前が表示された。

 すぐにアイコンをタップして相手からの着信に応じる。

 

「……もしもし」

「もしもし、智佳? お母さんだけど今平気かしら?」

「お母さん? うん、大丈夫。勉強がひと段落して休憩してたところだから」

「そう……」

 お母さんとの電話はいつもこう、事務的なやり取りをしてそれで向こうは満足して切っちゃう。お母さんから電話がかかってくることなんて一年で数えるほどしかない。

 基本的にあたしの事には無関心……。いい意味で言うと放任主義ってやつ? かな。

 お母さんは仕事が忙しくて滅多に家に帰って来ることも少なかった。あたしが高校生になる時だって、大事な会議があるからってまともに取り合ってくれずに後で毎月の生活費だけを渡された。

 寮ぐらしだから生活に必要なものを変え揃える必要は無いの。

 大体のものは揃っているし、最先端の設備としっかりとした教育を受けられる学園はあたしにとっては三年間通うには十分すぎた。

 

「元気にしてる? 学校で困ったことはない」

「……別に無いよ。学校での生活は全然苦労して無いかな」

「そう」

「貰った生活費はあまり使ってないけどね。寮には最低限なものは揃っているし、不自由な想いはしなくて済むし」

「何かあればすぐに連絡ちょうだいね。それじゃあお母さんは仕事があるから」

 それだけ言うと電話を切ってしまう──やっぱりあの人は何も変わらない。通話を終えてからふぅと深呼吸してからタブレットで勉強の続きを始める。親子らしい会話なんて期待しているわけじゃない、お母さんは今はあたしよりも仕事が大事なだけ……。

 ちゃんとわかっている。

 

 あたしの実家は今、新しいビジネスが成功するかの瀬戸際──高級ブランドで売りにしていた名声はたった一つの失敗で地に落ちた。

 庶民派のブランドへ方向転換せざる終えなくなったのは白鳳堂の海外展開の失敗が原因。

 

 お母さんは自信を持って白鳳堂のブランド力は海外でも通用すると説明していた。ずっと日本人に寄り添って有名な化粧品メーカーとしての歴史を紡いできた誇りがあったからこその海外展開、それはブランドの将来的な顧客の獲得と維持売上をトップにするための施作。

 何度も外国の市場を分析して現地にも足を運んだ、まだ小さかったあたしは仕事を頑張っているお母さんを尊敬していた。

 ──そして念願の海外店舗の出店、これでブランドの名前が広がると喜んでいたのは覚えている。

 ……だけど、現実は残酷なまでにお母さんの努力を踏み躙った。

 

 現地では日本よりも高い価格で高級化粧品ブランドとして勝負をしたのだけど、逆にそれが仇になった。現地の商品は全て日本からの輸送、現地で原材料を調達するのは難しい状況でコスト面に配慮するとそうせざるえなかったのだけど、最初こそは物珍しさにお客さんは来ていたのだけど、現地に根付いているメーカーと価格競争に負けて撤退することに──その負債は日本の本社に重くのしかかる。今では経営も余念ならないくらいにね、白鳳堂の海外展開の失敗はメディアに報道されて一般の人も知る事にこれまでのような高級路線で続けていくのが難しくなってしまって、大きな方向転換に舵を切る。

 

 だけど、それは悪い事じゃなかった。庶民派のブランドに切り替えた事でこれまで白鳳堂の化粧品に触れなかった層の新規お客の獲得に成功した。元々品質は高くて女性からの支持も高かったけど、ブランドのイメージが先行しすぎてとっつきにくいメーカーだった。

 今では若い女性層からのリピート率が高くて、SNSやインターネット通販サイト、直営店でのは売り上げは増えているの。

 

 街中で街頭ビジョンでの広告を見かけるようにもなった。あたしと同い年くらいの女の子がお店に来て化粧品を買っているところは何度も見かけた。

 

 お母さんはブランドのイメージ変更定着の為に今まで以上に仕事を頑張っている。

 白鳳堂の未来は少しずつだけど明るいものに変化していってる。あたしはどうしたいの? 子どもの頃はお母さんの後を継いで白鳳堂を成長させたいという夢があったけど……。

 今はそれだけが自分の人生の選択肢じゃないと思える──だってあたし にはもっと大切な夢が見つかったのだから。

 

 三年間という遠くない未来、あたし自身の将来について真剣に考えなくちゃいけない。

 

「あたしは、小鳥遊くんと──」

 

 ふと浮かぶ彼の笑顔は勉強に集中していたあたしの頭の中をいっぱいにするのでした。

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