普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった! 作:南雲悠介
学園内の空気はいつもながら変わらない。僕は歩くたびに周りからの視線を感じてしまう。
女子校に通う唯一の男子生徒に興味津々、横を通り過ぎた女の子のふわりとしたいい匂いを感じるとやっぱり自分がいる場所は場違いなんじゃないか? と思ってしまう。
女の子ってみんなこんないい匂いがするんだろうか?
そういえば御崎さんと相倉さんはあれから仲良くなったみたいだ。この前三人だけであの秘密の場所でお昼ごはんを食べたのがきっかけらしい。
相倉さんは僕と御崎さんをLIMEのグループに入れて僕らはすぐに連絡が取れるようになった。
彼女達が仲良くなったのは嬉しいことなんだけど僕は初めて家族の以外の人と関わりを持った。僕のスマホには母さん以外の電話番号が登録されてちょっとだけど華やかになる。
でも、きっとあの子たちはプロジェクトの為に僕と仲良くしてるだけなんだろうな。
僕が学園にいられる三年間に彼女達は自分の意志表示をしなくちゃいけないのだから。
恋人を作るなんてすぐにイメージは湧かないけど彼女達が僕を本当に好きだと思ってくれるように自分のできることをしよう。別に一人じゃないとダメな訳じゃない、みんな幸せになれるような結末だって十分にあり得るんだから。
プロジェクトはまだ始まったばかりだけど僕はゆっくりとしている暇はない、ここで結果を出さないと!
気持ちを新たにして教室の中に入ってクラスメイトの子たちと挨拶をする、今日は相倉さんからお昼の誘いはなかった。
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「さてと、私のクラスはどこだったかな?」
久しぶりに学び舎に顔を出した私は自分のクラスを探してフラフラと
それにしてもやっぱり学園内は広すぎる……。無駄にお金をかけているだけじゃないだな。
すれ違う子達は珍しそうに私を見ているがそんな事は気に留めず長い廊下を歩く。
私の部屋から学園まではそんなに遠い距離にある訳じゃない、恋麗女子学園では独立した施設があって普段生活している生徒たちには全く縁のない場所でもある。
制服を着れば私も少しは学生らしく見えるだろうか? 制服を着たのは入学式の日だけだったからなぁ。
理事長に私は普段着でもいいと言われているから制服を着る機会がほとんどない、生徒手帳で自分のクラスを確認してから教室に向かう。
恋麗女子学園の生徒手帳はそこいらの学校とは比べ物にならないくらいハイテクな代物。
まず生徒手帳にはそれぞれICチップが組み込まれていてこれが生徒個人の情報を記録する為に必要不可欠。
外部の人は学園が貸し出すカードキー無しではゲートのセキュリティは突破できない。
訪問が終わったらもちろんカードキーは返さないといけない、持ち出し厳禁だからね。
カードキーを借りる時には面倒な手続きをしなくちゃいけないから誰でも借りられるって訳じゃないんだ。
ICチップに組み込まれた情報からその生徒の所属クラスや学年、部活動などの様々なデータを知る事が出来る。
まあ、私がその管理プログラムを作成したんだけどね、女子校——しかもほとんど外部とのやり取りがない箱庭は生徒達が安心して学園生活を送るれるように最善の策が尽くされている。
けれどそんな中唯一のイレギュラーな存在——それが彼【小鳥遊勇人】
私も彼に関する情報はあまり持っていないしトップシークレット扱いされてるから閲覧できるのはほんの少しのデータだけ。
学園が遂行する一大プロジェクトの根幹に関わっているのは知っている。
「Cクラス……ここか私の教室は」
自分の所属するクラスの教室に着いた私は周りからの視線なんて気にせずに中へ入る。
私が教室に入るとクラスメイトの目が一斉に集まる——そんな目に全く動じず自分の席に向かう。
私の席は誰も座っていないせいか椅子に埃が溜まっていた、私は軽くそれを払うと初めてその席に座った。
一応担任が説明はしてたみたいで私の存在はクラスメイトには認識されてはいるようだ。
しかし、実際に教室にいるのが珍しいのかちょくちょく視線を感じる。
まあいいさ、たまにはこういう体験をするのも悪くない。
授業の内容は退屈で眠くなりそうだったけれどもなんとか耐え抜いて昼休みを迎えた。私は教室を出て今日の目的を果たす為に彼を探した。
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お昼休みはいつものようにやってくる、僕は隣の席に座ってる御崎さんに声をかけみた。
「御崎さんこれからお昼一緒にどうかな?」
「いいわよ、どこで食べる?」
「秘密のあの場所で」
「わかったわ。先に行っててもいいよ、あたしお弁当作ってきたから一緒に食べよ」
「うん、それじゃあ僕は先に行ってるね。お弁当楽しみにしとくから」
ひとまず財布だけを持って教室を出ようと扉の近くまで移動する。この間、僕が見つけたとびきりの場所で相倉さん、御崎さんと一緒にお昼を食べた。
すごく楽しかったなあ、僕は彼女達と過ごす学園生活が充実しているなと思った。
Aクラスの教室を出ると目の前に私服の女の子が立っている。
お客さんだろうか? だけど、彼女の首には来客用のカードキーがぶら下がっていない。
僕がその子の横を通り過ぎようとするとふいに制服の袖を掴まれた。
「待っていたよ、小鳥遊勇人君。これから時間はあるかい?」
彼女は僕の名前を知っていた。急にぐいっと引っ張られて女の子は廊下を歩き始める。
「ちょっと! どこへ連れてくの? 僕はこれからお昼ごはんを食べる約束をしてるんだけど」
「食事か……それなら静かな場所で食べるのが一番じゃないか? 私の部屋へ行こう」
「あ! そんなに強く引っ張らないでよ!」
御崎さんとお昼を食べるはずが予期せぬトラブルに見舞われた僕は何が何だか分からず呆然とするしかなかった。
「一体何なの……?」
知らない子にぐいぐいと引っ張られた僕は学園内で来た事も無い場所まで連れて来られた。
「今開けるよ」
そういうと彼女はポケットから生徒手帳を取り出してドアの側にあるリーダーにかざした。
ピッ! という音が鳴って女の子はドアノブに手をかける。
「さあ入って。これからゆっくり昼ごはんでも食べながら話そうじゃないか」
僕は彼女の言葉通りに部屋の中へと入る。
部屋にはパソコンとモニターがいっぱい並んでいる——横にはベッドがあってまだ綺麗なシーツが引かれたばかり、女の子は冷蔵庫から飲み物とバランスバーを出して椅子に座る。
「あのさ、君は一体誰なの?」
「私、私かー。そういえば自己紹介がまだだったね。私は
「藤森さん……?」
「玲でいいよ、小鳥遊勇人君」
「僕の事知ってるの?」
「ああ、知ってるとも。君はこの学園じゃちょっとした有名人だからね」
「私は理事長に頼まれて学園のセキュリティを管理する仕事をしてるんだ」
「神崎さんに? そうなんだね、ああごめん。藤森さんって僕よりも年上なのかな?」
「玲でいいよ。それよりどうして君はそんな事を聞くんだい?」
「なんか話し方が学者みたいで大人びてるから僕より年上なんじゃないかと思って」
「なるほどー。そんな事を言われたのは初めてだ。ああ、質問には答えないとね、私は一年C組に所属してるから君とは同い年だよ」
「この話し方は子どもの頃からずっとなんだ、母がとある研究所で働いていてね、幼い時によく私もその研究所内の施設で遊んでいたんだ。私は母を尊敬していたからついつい学者の真似事なんて始めてしまった。ほら、形から入るのは大事だろう? だから学者っぽい喋り方とかを自分で研究したのさ」
「それで藤森さんはそんな喋り方になったんだね」
「君は頑なだね。“玲”でいいとさっきから何回か指摘してるんだが」
「ごめん……。女の子を名前で呼ぶことに慣れてなくてさ、でも、君がそういうなら僕も少しは名前で呼べるように努力するよ」
ピコン!
ポップな音が鳴って僕はポケットからスマホを取り出す——御崎さんからLIMEにメッセージが届いてた。
そういえば学園内では原則スマホの使用は厳禁だった。慌ててマナーモードをONにしてLIMEのチャットを開いた。
御崎さんは僕が急にいなくなったらから心配してメッセージを送ってくれたみたいだ、すぐに返信したいけどまずここが何処なのかわからない……。
学園内ではあるんだけれだも。
彼女とお昼ご飯を食べるって言う約束はどうやら果たせそうにない。
とりあえず『僕は大丈夫だよ。お昼は一緒に食べらせそうにないかも……』と返信してスマホをしまった。
「用は済んだかい?」
藤森さんは僕がLIMEのメッセージに返信が終わるまで待っていた、そもそも彼女にいきなりこんなところに連れてこられたから今の状況になってるわけでー。
「私は君に興味があったんだ。だから、少しだけでいい話をしてくれないか?」
「どんなことを話せばいいの?」
僕ができる会話なんてたかが知れてるしそれで彼女が知りたい情報を入手できるとは思えない。
「ほんのささやかな話題でもいいんだ。今は小鳥遊君の話を聞きたいからね」
そういうと藤森さんは食事としてバランスバーと飲みものを差し出して来た。
こういう食事を体験したのは初めてだからなんだか新鮮だなあ。
僕は昼休みの少しだけの時間を彼女と過ごした。教室に戻ったら御崎さんに謝っておこう。