普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった!   作:南雲悠介

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50.「美鈴からの依頼〜勇人に興味を持った女の子〜」

「それでは我が学園への転入の手続きを済ませますので、今後のことは日を改めてご連絡致します。それでは失礼します」

 

 理事長室の電話の受話器を置き、一息つく神崎の元へ部下がコーヒーと少しばかりのお菓子を持って来る。ここのところ仕事続きでろくに休んでいない彼女はアイマスクをしてゆっくりと目を閉じた。

 プロジェクトの経過に関する報告書を作成しながら時期にやって来るであろう来客を待ち遠しく感じた。

 と言うのも近いうちにとある国の王族の娘が恋麗女子学園に留学を兼ねて転入することとなったのだ。突然の転入騒動は神崎自身に直接な繋がりはなく彼女の上司である勇人の母である美鈴からの依頼でもあった。

 

 名門の家柄出身が多く通う恋麗女子学園に留学も兼ねて通う事が正式決まった。

 王女様とその付き人の人、二人が入学する──付き人の女子生徒は王女様の護を兼任しながら学園の様子を直接彼女の実家へ報告する役目もある。

 もしも彼女が通う事になっても特別な扱いはせずに一般生徒と同じように学生生活を送らせて欲しいと両親からの要請があった。

 学園内の機密事項としてこの事実を知っているのは理事長の神崎と彼女に依頼した美鈴と王女の両親のみ、もちろん生徒や教師はこの事を知らされていない、そしてプロジェクトの中心人物の勇人本人にも。

 全寮制のお嬢様学校ということで美鈴を信頼した向こうの両親が娘を通わせる学校として指名してきた。

 美鈴は王女が勇人の婚約者となれば両国の関係性が寄り密接になると言い、他の生徒と比べると格が違う王族の娘を息子の恋人候補として送り込むつもりだ。

 それほどにプロジェクトの遂行は重要な意味を成している。

 書類に目を通し転入の手続きと制服の発注に彼女が住む寮の手配を進める。

 

「今度は誰かしら?」

 

 理事長室の電話でなく自分の携帯に直接着信がある。神崎にかけて来る人物いうのは限られている為彼女は電話の相手を容易に予測することができた。

 

「もしもし」

 

「歩美かしら。今電話しても大丈夫かしら?」

 

「ええ、ちょうど休憩を取っていたところですが、問題ないですよ一体何の御用ですか?」

 

 電話の相手は予想した通り美鈴で、ソファーに座りながら淹れてもらったコーヒーカップに手を伸ばす。

 

「例の件なんだけどちゃんと進んでいる? 向こうの親御さんからあなたに連絡があったと思うのだけれど……」

 

「ええ、ありましたよ。ついさっきね。その電話が終わった後休んでいたら美鈴さんからの着信があったんです」

 

「あらそうだったの。忙しいところごめんなさいね。それでね、実は相談したいことがあるのだけど」

 

「相談? ですか。言っておきますが美鈴さんに言われた仕事ならきちんとこなしているので問題ないです。学園の理事長としてできる範囲のことでなら相談を受けましょう」

 

「悪いわね。そんなに難しいことじゃないの……。実はあの子、勇人のことなんだけどね」

 

「息子さんのことですか? 一体どんな相談が?」

 

「そっちの学園に通う前に王女様があの子の事を知りたいって言い出したらしいのよ。将来結婚するかもしれない相手でしょ? だからそう言うふうに思うのは自然な事だと思うのよ。これは彼女が直接に私に頼んできたの。まあ、私があの子の母親だと言うのは教えてないんだけどね、プロジェクトの責任者だから連絡を取ってきたみたいなのよ」

 

「息子さんの事を教えるのは構いませんが、どうして私に相談するんですか? 美鈴さんは彼のお母さんでしょう? それなら自分でやった方が早くないですか」

 

「確かにその通りね。だけど、あの子は私の事を信頼していないから……。無理矢理に進路を変えさせて、恋麗女子学園に通わせるのを決めたのは私だから、勇人が母親にどんな感情を抱いているのか知らないのよ」

 

 歩美には美鈴の言っている事は多少は理解できた。彼女は家庭よりも仕事を選んだ。それで自分の子どもと今に至るまで真剣に接した事がなかったのだから。勇人の父親が健在で海外で働いていることすら伝えていないのだろう。

 小鳥遊家の親子関係はすっかり冷めきってしまっている。それは外部の人間がどうにかできるほど簡単なものじゃない。

 

 勇人は母親の元から離れて自立するのを望んでいる。今まで自分で将来を決めた事がない彼にとって学園で過ごす三年間は人生の岐路でもある。

 

 

「お節介かもしれませんがもっと息子さんにきちんと向き合うべきじゃないですか? いつまでも逃げているなんて美鈴さんらしくないですよ」

 

「そうね、歩美の言う通りかもしれない。このプロジェクトが成功したらあの子と一度ちゃんと話してみるわ。その為には今は仕事第一でいなくちゃいけないのよ」

 

「母親って大変なんですね。私にはまだまだわからない事ばかりですよ」

 

「あなたも結婚すれば分かるようになるわよ。ただ、最近は男性が少なくなってきたし世の中の女性はなかなかパートナーを見つけるのだって難しい、そういった状況を変える為に私たちは働いているのよ。それを勇人が理解してくれてると良いんだけどね」

 

「ご主人はまだ日本には戻られないんですか?」

 

「ええ、あの人も向こうでの仕事が忙しいみたいい。きちんと終わらせてから帰って来るつもりみたい。勇人は父親の存在を知らないから」

 

「息子さんなりにプロジェクトに真剣に向き合っているみたいですよ。学園で親しくしている女子生徒も何人かいるようですし」

 

「最終的にあの子自身が恋人を選ぶけれどちゃんと決断できるのか心配だわ」

 

「それは今の段階では何とも言いようがないですね。彼が自分の将来と真面目に向き合う日が来れば答えははっきりと分かると思います」

 

 歩美は部下に依頼して勇人の学園に入学するまでのデータを美鈴に送った。

 小中学時代にまでこれと言って親しい友人もできず、常に一人でいた事、周りの人間と距離を置いていた事、勇人に関する情報を知っていく度に気の毒に思う。

 両親からの愛情をしっかりと受けて育っていればもっと個性を持った男の子に育っていたかもしれない。

 どこか消極的な彼がプロジェクトに真剣に向き合ったのに驚いた。

 勇人自身も今の現状を変えていこうと考えたのだろう。

 

 それが小さな変化だとしても少しずつ彼自身を変えていく──

 ──今日も小鳥遊班のみんなと過ごす時間に心地良さを感じながら学園に通う女子生徒たちと交友を深めていくのだった。

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