普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった!   作:南雲悠介

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51.「父帰国!」

(仕事もひと段落がつきそうだ、帰国の準備を進めなくてはな)

 

 デスクに飾っている妻の写真を眺めながら故郷の事を考えていた。こっちで仕事をするようになって十年以上は経っている。息子の勇人は今丁度高校生になるだろうか? 

 僕は小さな頃に別れた息子の事を思い出す──しっかりと育っているといいんだけど。

 美鈴に任せておけば心配はいらないだろうとは思うけれどもやはり勇人の事は気がかりでもある。

 何故ならばあの子は父親の存在を知らないのだから、幼い頃の記憶なんていうものはすぐに忘れ去ってしまう、勇人が産まれた時はそりゃあ嬉しかったさ、それと同時に自分が父親になることへの決意や将来に向けての夢を抱くようにもなった。

 あいつが幸せでいてくれるなら、僕も海外で仕事を頑張ってきた甲斐がある。

 十年もこっちにいれば日本での生活なんて随分と懐かしさを覚えてしまうんだ。ようやく帰国できる、帰ったら先ずは美鈴にあってそれから勇人とも話がしたい。

 

 父親として言いたい事、伝えたかった事は山程ある、これからはもっと家族との時間を優先するべきだろう。

 何かあっても僕を呼び戻すことが無いように言っておいたし今後はずっと妻と息子の元にいられる。

 

 美鈴に近いうち帰国する為の連絡を済ませてから身の回りの整理を始めた。

 

「これも新しいのに変えなくちゃいけないな」

 

 十年前に買ったフューチャーフォンは今の時代には沿わない古めかしいデザインをしていた、スマホに変えるきっかけがなくてずっとそのままにしておいたけどそろそろあたらしくしてもいい。

 

 けれど、日本に帰ってもやることは増えそうだ。

 

 ハーレム・プロジェクト(正式名称自然繁殖推奨プロジェクト)

 

 美鈴はその責任者としてプロジェクトを遂行している。帰国したら僕にも何か要請があるかもしれない、彼女から届いたプロジェクトに関する書類ぶ目を通しつつ考える、女性人口が増えてきて、政府も抜本的な対策に乗り出したようだ、男性は数少ない中で遺伝子による優劣を決められる。

 

 もちろん劣勢な遺伝子を持つ男性が全て排除されるわけではない──彼らにはそれに相応しい待遇などが用意されている。国内でも不満は聞こえることもあるだろうが今はなんとか均衡を保っている状態だ。

 いつこときれてもおかしくはない。

 

 僕が子どもの頃には考えられなかった問題に今現在直面している、これから先の未来を考慮してプロジェクトをなんとしても成功させる必要がある。

 

「美鈴ひとりで大丈夫だろうか? あいつは昔から何でも背負い込むからな、体調を崩してないといいんだが……」

 

 しかし、プロジェクトの内容に関して引っかかる部分もある──それは中心となる優秀な遺伝子を持つ男性の情報が載せられていないことだ。

 機密があるんだろうが一体誰が美鈴の要請でプロジェクトに関わっているのかもわからない。

 それに女性をたくさん集めるというのもなかなかに骨が折れることだろう、手元にある情報だけでは根幹までは窺い知れぬ。

 

 日本に戻って手伝う事になったとしたら多少は情報を共有してくれるんだろうか? 

 

 母親がそんな仕事をしているというのは息子は知っているんだろうか? 十年も戻っていない我が家が急に懐かしくなる。まだ小さかった勇人の成長した姿と対面できるのは楽しみだ。

 

 帰国へ向けて時間が過ぎていく──僕はもうこの国に思い残すことが無いようにしておこう。二度と戻る機会はないのだから。

 

 

 *

 

 

 日本へ帰る日にちが決まり飛行機のチケットが届いた。

 

「美鈴だな、全く本当に手が早いよ。連絡してからこんなに早く届くとはね」

 

 必要な荷物を僕の家に送り手持つだけを機内に持ち込む──外の景色を見ると雲が広がっている、そういえば向こうに行く時もこんな感じだったか。

 

 十年前のことなのによく覚えているものだ。リラックスして座席の背もたれに背中を預けて機内で流れているラジオに耳を傾ける。到着するまで少し眠ろう。

 

 直人が日本行きの飛行機に乗り込んだ丁度今、ある王国のお姫様は訪れる異国の地に関する勉強をしていた。

 

 王国はチャーター機を準備して機内には王宮関係者が多く乗り込んでいた。一国のお姫様が見知らぬ地への留学はリスクが伴うもの。彼女が苦労する事がないように最大限にバックアップするようだ。

 

 

「懐かしいなあ。すっかり周りの様子は変わっているけどこの空気感は日本に到着したとすぐにわかる」

 

 直人は荷物を受け取り彼を迎えに来るだろう車を待った。春の穏やかな風がふわりと花びらを運んでくる、この国は四季が本当に美しい。

 向こうにいた頃には感じたことのない感覚だ、改めて帰ってきたんだな。

 

 

「旦那様お帰りなさいませ」

 

「それは僕の事かい? 君は一体誰なんだ」

 

「ご挨拶遅れました。私は小鳥遊家で働いているメイドの一人でございます。奥様である美鈴様から本日旦那様が帰国なさるという情報を伺いお迎えにあがりました」

 

「そうなのかい? そりゃあどうも。わざわざすまないね。そういえば君はさっきメイドだと自己紹介したね? 美鈴は家にはいないのかい?」

 

「詳しいことは車の中でお話しします。それではどうぞ」

 

 直人は言われるがままでに車に乗り込んだ。

 

「僕一人の為にこんな豪華な車を用意してもらってすまないね」

 

「いいえ、それが私の仕事ですから」

 

 広々とした車内のシートにゆったりと腰を落とす。メイドだという彼女僕の横になると運転手へ指示を出した。

 目的地へ向かい車は走り出す──僕はシートに座り寛ぎながらさっき彼女が言いかけた事の続きを尋ねた。

 

「うちは君のようなメイドを雇っているのかい?」

 

「はい、奥様はお仕事がお忙しくほとんどうちへ帰ってこない為家事全般は私たちメイドが担当しています。交代勤務で時給も高いので私は満足しています」

 

「そうか……。僕はてっきり美鈴が火事やらをやっていると思っていたよ。じゃあ勇人はどうしてる? 美鈴が家に帰る時間が少ないならあの子は寂しい思いをしてただろうに」

 

「勇人様の教育も私たちの仕事の一つです。しっかりと社会に出ても苦労する事のないように作法から教養まで教え込みました」

 

「それも美鈴が頼んだことなのかい? 家事ばかりじゃなく息子の教育まで任せるとは……」

 

「ご心配ならさらずに、勇人様は教養のある人物へ成長なさいましたよ」

 

「そんな事になってたなんて知らなかったな。それで勇人は今どうしてる? 今日は平日だが父親が戻ってくるというのは知らされていないのか」

 

「旦那様にも仰っていないのですね……」

 

 僕は彼女からこれまでの事を全て聞かされた。まず美鈴と勇人の親子関係は完全に冷め切ってしまっているということだ。

 小さい頃から親の愛情をまともに受ける事がなかった息子は内向的な性格になってしまったらしい、自分から周りに関わらずひとりでいることを選ぶ極端な生活は勇人を孤独にした。

 小中学校時代には仲の良い友達すらできずにいつも家で遊ぶことが多かった。

 自分に興味すら無い母親を軽蔑して進学する高校は親に相談せずに決めた。

 

 これじゃああの子があまりにも不憫だ……。十年も家を空けていた僕がいう事じゃ無いけれども美鈴と約束した夢、子どもが産まれたらきちんと育てようと、だけど、その約束は守られていない。現に美鈴は僕が海外で働いている事を勇人に推しれてなかったのだ。

 

 壊れている親子の関係──これを修復するのは長い年月がかかるかもしれない。けれど、僕が帰ってきたからには勇人にこれ以上辛い思いをさせるわけにはいかない。

 

 久しぶりに帰って来た我が家、僕の部屋はあの日のままで何も変わらない。

 

 

「今、勇人は家から学校に通っているんだろう? 帰ってくる前に一度話をするつもりだ。勇人の通っている学校の事を教えてくれるかい?」

 

「奥様に一度伺ってからになりますがそれでもよろしいでしょうか?」

 

「どうして美鈴に聞く必要があるんだい? 普通の学校に通っているなら何も関係ない事だと思うがね」

 

「勇人様のこと、やはり奥様から聞いていらっしゃらないのですね」

 

 僕は彼女の口から勇人の現状を教えてもらった。

 

 

「もしもし? あなた、帰って来てたんですね」

 

「メイドの子が言ってた話は本当か?」

 

「あら、いったい何を聞いたのかしら?」

 

「勇人が普通の高校に通っていないってことだけだ」

 

「そう、まあ、あなたも帰ってきたし一度家で話しましょうか? 仕事を終わらせたら家に帰ります」

 

 僕は荷解きをしながら美鈴が帰ってくる時間まで待つことにした、夕飯などはメイドの人たちが作ってくれて交代勤務している彼女たちを見届けると夜の九時前になっていた。

 

 

「ただいま」

 

 ドアが空いて美鈴が帰ってきた──十年ぶりの再会だと言うのに彼女は顔色一つ変えずに自分の部屋で着替えだけを済ませてリビングへ降りてくる。

 

「聞かせてもらおうじゃないか、僕がいない間にどうしてこんな状況になっているのか」

 

「まぁまぁ、ちょっと落ち着きましょう。でないと真面目な話もできないわよ、十年ぶりに会うんだから」

 

 そう言うと彼女はグラスを二つ準備して高そうな酒を注ぎ始めた、僕はソファーに腰を下ろして妻の姿を見る。

 

「どこから話せばいいかしら……。真実を聞いてあなたがどう言う反応をするのか少し気になるけれどね」

 

 そして僕は美鈴の口から今の状況を聞く──ハーレム・プロジェクトに僕らの息子である勇人が関わっていること。

 勇人が有性生殖に適したDNAを持っていてこの国の未来の為に多くの女性と関係を持ちその遺伝子を残していくという目的。

 普通の高校に通わず女子校へ進学したこと、全て美鈴がプロジェクトを完遂させる為に用意してきたという事実を聞かされた。

 

 

「じゃあ勇人は望んで自分の運命を受け入れたのか?」

 

「……いいえ。最後に選ぶのはあの子自身だけどきっかけづくりは私が準備してきたことよ。だからこそ、このプロジェクトに失敗は許されない、だからあなたにも協力してもらうことあるの」

 

「親なら子どもの将来を考えるべきだろ! プロジェクトを達成する為だけに自分が存在しているなんて勇人が可哀想だ、僕はそんな事の為に今まで海外で仕事をしてたわけじゃないんだ! 親子三人で暮らせるようにー」

 

「分かっているわそんなこと! だけど、プロジェクトが成功しないとこれから近い未来に私たちは滅びることになる、そうならないためにあの子には何としてもやり遂げて貰わないといけないのよ! 私たち親子の事情で今更白紙に戻すことなんてできないわ」

 

「勇人が通っている学校の名前を教えてくれ、僕はあいつの父親なんだ会うことくらいは許されるだろう」

 

「いいわ。教えてあげる学園はセキュリティが厳しいけどパスできるようにしておくわ」

 

「美鈴、僕たちの約束は忘れてないよな? 全部勇人の為なんだよな?」

 

「……忘れるわけがないじゃない。ただ、あの子は私達の気持ちなんて何も知らないけどね。いつかはきちんと向き合うべきだと自分でもわかっているのよ。けれど、それは今じゃないもっと時間が経ってから」

 

「昔みたいに笑い合っていける家族に戻れるといいな。あ、せっかく戻ってきてなんだが、僕はしばらく好きなようにさせてもらうよこっちでの生活にも慣れなくちゃいけないからな」

 

「わかったわ。これからはずっと日本にいるんでしょう?」

 

「ああ、僕は美鈴や勇人の元にいる。もう離れたりはしないさ」

 

 直人は気持ちを新たにして美鈴から恋麗女子学園の場所と勇人に会う日時を決めて新しい生活をスタートさせる。

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