普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった! 作:南雲悠介
「姫様、長旅でお疲れでしょう。大丈夫ですか?」
「ええ、問題ないわ、飛行機での長時間の移動というのは慣れないものね。ずっとシートに座っていると肩も凝るし……。だけど、ようやく外に出れて嬉しい気持ちよ」
自家用のジェット機はゆっくりと滑走路を滑り着陸する──こういうふうに飛行機になるのは随分と久しぶりね。国にいた時は王宮から出る機会は少なくて来客はいつも宮殿でお出迎えしていたし。
長旅で疲れもしたけどこれからこの日本での生活が始まるかと思うと自然と心も踊る気がするの。
「それでは姫様ここからは車での移動になります。ずっと移動ばかりで大変でしょうけど、もう少しの辛抱ですから」
すぐさまお迎えの車に乗って移動……。空港から恋麗学園のある場所までは一時間もかからないとは聞いているけれど。わたしの留学の為に色々と動いてくれたお父様達の苦労を感じ取れる。
わたしが日本へ来た表向きの理由は海外への留学って事になっているのだけれど、実際は違う。
わたしがこれから恋麗学園へ通う間、とあるプロジェクトを成功させる為の目的があるの。最初にその事を聞かされた時はとても納得できるようなものじゃなかったわ。
だって将来の結婚相手をそんな簡単な事で決めるのに大きな疑問があったから……。
だけど、我が国の情勢の事をお父様に聞かされると人ごとでは思えなった。
わたしは一人っ子で他に姉妹はいない、ゆくゆくは王位継承する身で子どもの頃から大事に育てられてきた。
それでもお世継ぎの問題はずっと王家に代々から続く深刻な大きな障害となっていたの。
わたしが生まれた事で一旦は一段落したのだけれど……。お父様達は王族の血を途絶えさせるわけにはいかないとわたしに縁談の話を準備したり、嫡子を産むに相応しい優秀な遺伝子を持つ男性を探していました。
この国日本では男女の人口比率が逆転し女性中心の社会が作られていると聞きました。
政府は改善策を見出せずに減少する男性の数に頭を抱えている様です。数十年前はこんな状況に陥るなんてかんがえもしなかったみたい。
急激な変化に対応が遅れたのかしらね。だけど、それは我が国も似た様な状勢にあります。
まず国を治める王家が常に後継者の問題に直面しているということ──そして、この先どうなるか分からないほど明るいとは言えないのが現実。
わたしがこの日本に来た目的──それだけは忘れないようにしておかないと。
【小鳥遊勇人】さんは特別に優れた遺伝子を持っているらしくてそれが理由でプロジェクトの中心人物に選ばれた。
自分の将来の結婚相手になるかもしれない男性──彼がどういう人なのかもらった情報だけで判断するのは難しい。
車の車内から外の風景へ視線を移す、見たことがないビルの看板や文字がどんどん通り過ぎていく、本当に異国に来たんだなって改めて実感できる。
幸い今日は学園はお休みで校舎内に他の生徒はいない。先ずは理事長に会ってから女子寮のわたしの部屋に向かう。
情報で小鳥遊君は女子寮と違った場所に住んでいるらしい、彼は女子生徒ばかりの学園で特別な待遇をされている。
わたしは少しでも彼の近くにいられるようにとお願いして学園に通う間は彼の住む寮でお世話になる事に決めた。
もちろんこの事を知っているのはごく一部の人、いずれ結婚すれば一緒に住むことになるのだから早めに慣れておく必要がある。
「着きましたよ。どうやら門にはセキュリティカードを通す必要性があるようですね。あらかじめ理事長から二人分のカードキーを預かっているのでそれを使いましょう」
カードリーダーにカードキーをかざすと門のロックが解除される。生徒達は学園へ入学する際に専用のIDカードを支給されるらしいわ。
わたしも日本に来る前に自分の国のIDカードに情報を追加した。
わたしの国では国民にそれぞれ個人のIDが割り当てられている。それを使えばさまざまな行政のサービスなどが受けられるの。
この番号は偽造するできないようにICチップが搭載されたカードで管理され、持ち主に関する細かなデータがインプットされているの。
こういった面では他の国に比べると技術が進んでいると感じるわ。IDカードに関する犯罪件数も少ないと聞いているし。
「まずは理事長への挨拶があります。それからは自分の部屋に向かいますがその前に荷物が届けられているかは確認が必要でしょうね。姫様と私、二人で住む事になるのですから」
「そうね。けれどよくこんなわがままが通ったと思うわ。だって他の子は女子寮に住んでいるわけでしょう? わたしたちだけ特別扱いな気もするけれど」
「致し方ない事だと思います。何せ姫様が日本に来た理由は普通の生徒とは違いますから」
学園の門を潜るとわたしを出迎える影が見える。それが大人の女性だというのはすぐにわかったわ。
「ようこそおいで下さいました。あなたの事は聞いています。私はこの恋麗学園の理事長の神崎です。さ、ここで長話もなんですからお嬢様には理事長室へ来てもらいます」
いよいよね。わたしの日本での生活が始まる──生徒のいない学舎を眺めながらこれから先に起こるであろう出来事にワクワクとした気持ちを持って歩き始めました。
「長旅でお疲れでしょう。さあ、遠慮なく座ってください、今お茶の準備をしますから」
理事長は慌ただしくわたしをもてなすと机から何枚かの書類を持って前に座りました。
「転入の件なら問題ないと思います。あなたが望んだ通りの対応をさせてもらったから、もちろん住む場所に関してもね」
「それはありがとうございます」
「けれど、まだ肝心の本人には伝えてません。小鳥遊君がどういう反応をするかだけどね、いきなり自分の部屋に二人も女の子が住む事になれば当然驚くでしょうし」
「……無理を言ってすみません」
「いえ、謝らなくても大丈夫よ。これが私の仕事だから、あなたの事を美鈴さんに任されているわけだしね。学園に通うからには不自由な思いはさせないわ」
「ありがとうございます。そういえば私達の荷物はどうなっているのでしょうか? もう部屋には届いているのかしら」
「それなら今日にも届く予定になっているわ。あなた達が学園を訪れる時間帯に届くように手配してあるわ。部屋に行けば揃っているんじゃないかしら」
「それなら良かったです。私も姫様も異国での暮らしには苦労するでしょうから少しでも気が晴れるように本国で使っていたものはいくつか持ち込ませてもらいました。もちろん生活の為にこちらでも揃える必要があるのでしょうが」
「お金は無駄遣いできないし必要最低限なものだけ揃えましょう。寮で生活するのなら住む場所は心配さなそうだし、食事とかも学園のものを使えばいいから」
「何か不満なことがあればすぐに言ってください、あなた達が有意義な学園生活を過ごせるように最大限にバックアップするつもりよ」
「感謝します。それではもう少しだけお話を聞かせてもらえますか」
私たちは理事長から学園の説明を受ける──全校生徒は彼を除いてみんな女の子、有名な家柄の子が多く通っているという、表向きは留学が目的ということになっているからわたしは極力自分の身分を公にしないように言われている。
海外からの留学生は珍しくて注目の的になるだろうけれど、日本でお友達ができると良いなぁとは思っているの。
大方の説明を受けたわたしたちはこれから自分たちが住む事になる場所に向かう。
もしかしたら彼がいるかもしれない、早く会えるのが本当に楽しみ! 青く晴れ渡った空が綺麗で空もわたしたちを歓迎しているように感じるわ。
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外の騒がしさが気になった僕はベッドから起きて外に出た。
「これは一体どういうことなんだ?」
業者っぽい人たちがこっちに向かって歩いて来ているのがわかった。真っ直ぐと僕の部屋に向かっている。もしかして母さんが何か荷物を送って来たのか? いいやあの人に限ってそんなことはしないだろう。
息子の生活になんて無関心だろうし。梱包された箱がドアの前に置かれてドンドン荷物で埋め尽くされていく。
「これで最後です。毎度ありがとうございましたー」
一言そう言うと業者の人はすたこらと歩いて行ってしまう──外にはこの状況が飲み込めない僕が一人ドアの前に立っているだけだった。
「こんなたくさんの荷物どうするんだよ……」
事態がわからずに呆然として部屋に戻ろうとすると──
「どうやら荷物は届いているみたいね」
声がした方へ振り返ると、見慣れない女の子が二人いた、綺麗な金髪がおそらく地毛だろう、日本人じゃないと言うのは何となく分かる。
「あの、君たちは一体?」
「初めましてわたしはー」
この奇妙な出会いが僕の学園での生活に変化をもたらすなんて言う事はこの時は予想すらしていなかった。