普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった!   作:南雲悠介

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58.「Golden Transfer student」

「……もう朝か」

 時刻は六時三十分。どうやらいつもよりも随分と早く起きてしまったようだ、セットしてある目覚ましを止めて伸びをする。

 部屋の半分がカーテンで閉じられている、昨日訪れた金色の出会いはまるで夢の後継のような雰囲気を出していた。けれども。夢なんかじゃなくて現実の話だ。

 日本から離れた異国から一人のお姫様がやってきた──そして今は僕の部屋に住んでいる、御伽噺みたいだなと感じる、僕は彼女を起こさないように冷蔵庫に入れてあるペットボトルのお茶を飲み干した。

 昨晩はメルの荷解きを手伝っていた。部屋の半分にカーテンを取り付けてお互いのスペースを確保、僕にとってこの部屋は結構広いと感じていたから別の問題はない。

 メルは従者の人と一緒にこの部屋に住む事が決まっているらしい、事の詳細は神崎さんに聞けば分かるのだろうか? 

 

 平凡だった僕の日常は変わっていく──そんな変化を肌で感じながら制服に着替える。

 

(まだ寝ているんだろうか?)

 

 自分の部屋なのに着替えるのに気を遣う、女の子がいるなんて緊張する。メルとは同じクラスになれたら良いなあ。

 

(綺麗な髪色だったなあ)

 

 彼女の笑顔と生まれながらに持った金髪に魅力を感じていた、外国人の女の子って皆あんなに綺麗なんだろうか? 

 

 ついでに冷蔵庫から取り出したバランス食品を食べながら考える、朝食はいつも簡単に済ませられるようにカロリーバーや飲むプロテインにゼリー。

 業者に頼んでおいたからまだまだたくさんある。自分専用の冷蔵庫の中に入れてある。

 軽めの朝食を済ませて登校時間までネットサーフィンをすることに。

 

 

「おはよう。勇人、あ、名前で呼んでも良いかしら?」

「おはようメル。別に構わないよ」

 

 カーテンをさっと開けて起きてきた。元気なメルと挨拶を交わす、昨日初めて顔を合わせたはずなのに彼女は持ち前の明るさにこっちまで明るい気分になれる。

 

「おはようございます。小鳥遊殿」

「おはようございます」

 

 従者のアイリスさんとも挨拶をする──彼女は騎士らしく凛々しい表情をしている、異国の地でゆっくりと眠ることができたのだろうか? 

 そんな事を思いつつ、メルが制服に着替えるらしいからカーテンを閉める。隣で女の子が着替えているなんてドキドキする。

 やましい気持ちがないはずだけど気にならないと言えば嘘になる、カーテンへじっと視線を向けた。

 

 胸の高鳴りを抑えつつ、僕は時間が過ぎていくのを待った。

 

 

「見て勇人! 似合うでしょう」

 ふふんと自信満々に学園の制服を着たメルが登場する。

 

「良く似合っていると思うよ」

 混じり気ない正直な気持ちを伝えると彼女の表情は明るくなる。

 

「良かった。実際に着てみるまで分からないものよね。準備してもらった甲斐があったわ」

 

「姫様、良くお似合いですよ」

「ありがとうアイリス」

 

 メルと一緒に制服に着替えたアイリスさんも出てきた。

 

 

「アイリスさんも良く似合ってますよ」

「恐縮です」

 

 制服でも凛々しい雰囲気は感じ取れる──アイリスさんは表情を変える事なくメルの制服姿を褒めていた。

 僕が気になったのは制服越しでも分かるくらいアイリスさんの胸が大きいということだ。

 

 近くで見るとボリュームのある胸に引き締まっている体は鍛えられているのだなとすぐに分かる。

 

 あまり女の子をジロジロと見ちゃいけないけど、どうしても気になる。彼女の前ではそれを悟られないようにしよう。

 

 

「わたし達、後から登校することになっているから勇人は先に学園に行っても良いわよ」

「私とメルア様は理事長へ挨拶を済ませた後、教室に向かうことになっているのです。小鳥遊殿はお気になさらずに」

「そうなんだ、じゃあ僕は先に行ってるよ」

 

 荷物に手をかける僕はメルとアイリスさんにどうしても言いたいことががあって一旦振り返る。

 

「二人とも、学園で楽しい生活を送れると良いね。こうやって会えたのも縁だと思うから、充実した学生生活を送れることを願っているよ。今僕はとても幸せな気分。それじゃあいってきます」

 

 

 部屋を出ると気持ちの良い風が吹いている──今日から新しく始まる生活に幸福感を覚えながら教室に向かった。

 

 

 **

 

「おはよう」

 

 教室では女子達が集まっておしゃべりしている、彼女達は僕に気づくとそれぞれ挨拶をしてくれた。最初女だけのクラスに一人きりという状況に不安を感じたけれど、今はそうじゃない。彼女達はプロジェクトに関わっている、たとえ本心じゃなくても僕の事を意識してくれているんだ。

 

 真っ直ぐに自分の席へ向かう。隣の席を覗いてみると御崎さんはまだ来ていないみたいだった。今朝は相倉さんや牧野さんとLIMEのグループトークに花を咲かせていたようだけど……。

 

 ポケットに入れているスマホをマナーモードにしてホームルームが始まるのを静かに待った。

 

 

「皆さん、おはようございます」

 香月先生が教室に到着、さっきまで賑やかだったクラスが静かになる。

 僕は先生の耳で聞き流しながらメル達のことを考えていた。

 彼女と同じクラスになれたら良いんだろうけどこればっかりは僕の力ではどうすることもできない。

 

「それでは、今日は皆さんに重要な報告があります」

 

 真剣な表情で話す香月先生にみんなが視線を向ける。

 

「突然ではありますが、このクラスに転校生を迎える事になりました」

「「転校生? 誰だろう」」

 

 先生の言葉に一瞬女子達が騒がしくなってけどすぐに治る──この時期に転校生がやってくるなんて別に珍しいことでもない。

 

「さあ、入ってきて」

「はい」

「!」

 金色の髪を揺らしながら一人の女の子が教室に入ってくる。

 

(メル!)

 僕は心の中で叫んだ、今朝朝のやりとりをしたお姫様がこのクラスにいる事に驚いた。

 

「ルークランシェさんはこれからこのクラスで一緒に学ぶことになりました。彼女は留学といった形で日本へ来たの。皆はテレビとかで見たことがあるかも」

 クラス中の人間がびっくりしている──もちろん僕もそうだ。うちの学園へ通うことは聞かされていたけれども。クラスまでは知らなかった。

 

「メルア・フィオーナ・ルークランシェ・セレスティア・イーリスよ。今日から恋麗女子学園でみんなと同じように勉強にしていくことになるわ。よろしくね」

 うちのクラスにはお嬢様がたくさんいる、その中でもメルは格段に優れた家柄をしている。何人かは彼女に嫉妬の視線を向けていた。

 そんな様子も気にも留めずこれから始まるだろう学園生活をワクワクした気持ちで待ち望むのだった。

 

「ルークランシェさんの席は小鳥遊君の後ろになります」

 綺麗な髪を靡かせて優雅に歩く姿にクラス中の人が見惚れる──彼女は本当にお姫様なんだ。

 僕の横を通り過ぎる際に一瞬だけウインクしたのを見逃さない。僕とメルが知り合いだというのは現時点では秘密。

 

 自分の席に座った彼女は好奇心の眼差しを僕に向ける。そしてメルの隣の席にはアイリスさんが座るらしい。従者である彼女もメルと同じ教室で学園生活を過ごす事に。

 香月先生から二人の転校生について説明があり、ホームルームは終了した。

 

 ルークランシェ王国のお姫さまが転校してきたというニュースはすぐに学園中を駆け巡った。

 その様子を一目見ようとAクラスに人が集まっていた。そんな様子に戸惑いつつ見守ることに。

 

「すごい人気ね」

「無理もないよ。彼女はお姫様なんだから、正直僕もすごく驚いているよ。友達になりたいけど、身分の差を感じるし……」

「あっ! 御崎さんと小鳥遊君じゃない。聞いたわよあなた達のクラスにとんでもない子が転校してきたんだって」

 御崎さんと一緒に教室を出て歩いていると相倉さんに声をかけられた。

 僕らはいつもの場所で待ち合わせる。相倉さんはLIMEで玲さんと牧野さんへ連絡する。

 すぐにみんな集まってお昼を食べることになった。

 

「じゃーん! 今日はいつもより張り切ってお弁当作ってきました」

「すごーい、これ相倉さんが作ったんですか?」

「ふふーん。そうよ。さあ、皆食べてみて」

「相変わらず元気だね、君は……。けれども、それも悪くないか」

「藤森さんはもっと栄養取らなきゃね! いつも適当に済ませているんでしょう?」

「食事は食べやすい時間に取ると決めているのだが……。あれもこれもというわけにはいかないだろう。足りない栄養分はサプリメントで補っているし問題ないと思うが」

「確かにそうだけど、きちんとバランス良くね、さ、小鳥遊君もどうぞ」

 

 皆で食べるお昼ご飯はすごく美味しい──この学園に通わなければこんな経験をすることはなかっただろう。昔みたいに一人で食べて……。

 どうしてだろうか。前までは当たり前だったのにな。今は一人で食事するのは物足りないとさえ思う。

 

 相倉さんの素直さが僕にも良い影響を与えてくれた。LIMEでグループを作って僕たちはお昼の時間を共有する。周りと仲良くなっていく御崎さんは適切な言葉で分析する玲さん。その輪に加わる牧野さん。

 彼女達の微笑ましい様子を僕は眺めるのが好きなんだ。

 けれど、その中心にいるのは自分。プロジェクトの為だとはいえ、こうやって集まったのに縁を感じる。

 僕だけの特別な時間──この瞬間がずっと続きますように。

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