普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった! 作:南雲悠介
“同棲”
一つの家に住むこと。それが女の子同士であるならば大した問題じゃないんだろうけど、今の状況ではニュアンスが違ってくる。
通り過ぎた女子生徒から『ご機嫌よう』と挨拶される。最初転校してきた時はヒソヒソと噂話で僕の事を話していた女子の輪も少しずつだけど変化を見せ始めた。僕は彼女達に「ご機嫌よう」と返して西洋のお城みたいな廊下を歩いて教室へ向かう。
ここ最近の女子達のトレンドは専ら神崎さんが話した新しい棟での生活の事だった。
興味津々な眼差しが僕に向けられる──これから同じ空間で暮らすかもしれない相手を多少は気になるのだろう。お嬢様達の優雅な振る舞いと好奇心の視線を浴びる僕は以前よりも緊張していた。
彼女たちに相応しい人にならなくちゃいけない。そう言うふうに思い、子どもの頃から英才教育を受けた教養を“意識”する事なくごく自然に出す。
中には驚いた反応を見せる女の子もいたけれど、生まれながらに育ちが良い彼女たちに僕の所作は綻びがないか心配だ……。礼節なんて使う機会が無いと感じながらも真面目に取り組んできてよかったなと今改めてそう思える。
神崎さんに教えてもらったことなのだけれど、実は例の棟での生活を希望する女子生徒が僕が思っていたよりもたくさんいるみたいだ。
一部の子は真剣にお付き合いをすることを考えている人もいるらしい、そのきっかけづくりとして同じ棟で暮らして僕と言う人間を理解したいのだと。
まだ名前すら知らない女の子たち──彼女達とこれから知りあえっていけると思うと何だかワクワクする。昔、人と関わって来なかった僕が影響を受けて変わっているのが実感できる。
もう殆ど片付いてしまった男子寮の僕の部屋、ここで過ごすのもあと僅か、新居でどんな出会いがあるのか期待に胸を弾ませている。
**
理事長から全校生徒に伝えられた事実、【小鳥遊勇人】君と同じ棟で生活を始めること、その選択肢は学園に通う女生徒達それぞれが選ぶことが可能であるということ。
まだピンと来ていない子も学園内にはいるのだけど、担任の先生に晴れやかな表情で申請書を受け取る子の姿も見かける。
あたしたち“小鳥遊班”のメンバーはすぐに彼と同棲する為の準備を始めたのだけど、うちのクラスの中ではまだ迷っている子だっている。
無理もないわね、今まで男の子と同じ場所で暮らすなんていう経験はあたしにだってないし、みんな様々な問題を抱えているんだなと思う。そんな簡単に決断できるほど行動力がある人ばかりじゃない。
お嬢様達のプライド。これまで何不自由なく生活して来たこと、欲しいものはなんだって手に入れてきた、自分をよく見せるために関わる人間さえも選んでいた、そんな彼女達が学園に通っているうちは庶民と同じ立場になるんだもん、納得がいかない部分だってあるのは当然じゃないかな?
あたしが寮で荷物を整理している時、ピコンとスマホの通知音が鳴る。
(相倉さんからのメッセージ? 新しい棟へお引越しした後、一度彼女の部屋に皆で集まって女子会をするらしい)
もちろん“女子会”だから小鳥遊君は参加できない。メルさんとアイリスさんにも許可をもらっているみたいであたしたちはトークルームのチャットでメッセージのやりとりを続ける。
皆、新しい棟での暮らしが待ち遠しいみたい。相倉さんはまずはあたし達が親交を深めていくのが目的って言っていた。“小鳥遊班”の友情を育んでお互いに普段思っていること、考えていること、女の子同士じゃないとなかなかおしゃべり出来ないようなプライベートに関する話題も話す。あたしは聞かれて困る様なことはないし、何よりも皆をもっと知りたいと思ってたからちょうど良い。
本来なら男性が複数の女性とお付き合いするなんてよく思われない事だし、政府だって認めているわけじゃない、けれど、今の時代背景を考えると例のプロジェクトが進められている理由も納得がいく。
将来的な人口減少を防ぐ目的があるらしいのだけど、未来がどうなるかなんて言うのは今のあたし達には分からない……。それでも少しは良い方向へ進む為に学園側がプロジェクトを成功させるのは最優先の課題。
休憩中にベッドに座って荷物に視線を向けて彼の事を思い浮かべる。
あたしが熱を出した時にお見舞いに来てくれたこと、自分から過去にあった出来事を話してくれたこと、初めて会った時からあたしたちの関係はちょっとだけど進展した。あたしが彼に対して抱いている感情は藤森さんには見抜かれている、彼女はとても観察力があって付き合いは短いのに周りの人の事をよく見てるなぁって思う。
胸が昂る気持ち──これが“好き”って感情にはまだ程遠いかもしれない、だけど、あたしは小鳥遊君をもっと知りたいと思うの。お互いを理解して信頼関係が生まれれば気持ちだって昂るだろうし。
相倉さんみたいに積極的にアプローチをしよっかなって考えちゃうこともあるけど、あたしはあたしらしく行こう!
気持ちを新たに新居での生活に高揚感を覚えたあたしはいつもよりもLIMEでやりとりするメッセージの回数が増えていった。
自分の中に訪れる“変化”に敏感になりながらもぎゅっと胸の前で手を握る──トクンという心臓の鼓動が聞こえてきそうなくらい静かな女子寮で変わっていけることに期待感、胸の奥に彼への想いをそっと抱いてベッドに入る。久しぶりに情熱的な夢を見ちゃったけどその内容は内緒ね!
目を閉じると思い浮かぶ小鳥遊君の優しい笑顔──いつかきっとあたしが抱いている気持ちを伝えることができると思う。
それまで待っていてね、すぐじゃ無いだろうけど、ちゃんと言える日が来るから──。