普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった! 作:南雲悠介
今日は学園が休みで一日フリーな時間、新しい棟への引っ越しは今日中に終わる予定らしくて業者さんが慌ただしく働いている。
恋麗女子学園は世間からの認知度も高いからいい加減に仕事をする事はできない。
引っ越しを希望する生徒の荷物を部屋に運んでから理事長に報告、漏れが無いかは事前に学園側が準備したデータシートでチェックして仕事を終える、業者さんは荷物運搬後、作業員を集めて貸与されたタブレット端末を操作する。
生徒の個人情報は伏せられていて端末はあくまでもデータ管理に使われるだけ、搬入漏れが無いかを確認した業者さんはタブレット端末を管理者に返却して作業終了。
僕たちは理事長から連絡を受けて棟へ向かう──男子寮を出る際にメルとアイリスさんに声をかけて、三人でこれから暮らす場所がどんな所なのか胸を弾ませた。
「
この間、棟を訪れた時はまだ名前すら無くてただの棟って言う呼び方をしていたのだけれど、どうやら『聖蘭寮』って言う名前が付いたらしい。
入口に設置されているおしゃれな表札はついさっき取り付けられたものだろうと分かるくらいに綺麗でこれからここで暮らす生徒をまず初めに迎えてくれた。
真新しい寮の建物を見上げて僕らは自動ドアを開いてからエントランスへ、聖蘭寮全体は「オートロックシステム」壁に取り付けてあるパネルはどうやら部屋のロックを解除したり、生徒の顔を認証して本人確認をする為のものらしい。
「もうすぐ理事長が来るみたいだからそれまで待っていよう」
LIMEに神崎さんからメッセージが届いていた──僕らはそれぞれの部屋のキーを受け取る事になっている、エントラスで待つ事十五分、神崎さんがやってくる。
「こんにちは、小鳥遊君とルークランシェさんはもう来ていたのね。すぐに部屋のキーを渡すわね」
僕とメルは部屋の鍵を貰い神崎さんにオートロックの解除の仕方を教えてもらう。
「まずはパネルの前に立って、顔認証をするの。その後にここにキー刺して回せば自動ドアのロックが解除されるわ」
僕とメルは神崎さんに言われた通りにパネルの前に立つ──
──ピ!
無機質な電子音が聞こえてパネルに表示されていたLOCKと言うデジタル表記のモニターの文字がOPENに変わる。
「顔認証で一致した時はモニターのLOCKと表示されている文字がOPENに変わるわ。寮に住む生徒は顔認証を行わないと自分の部屋には入る事ができないわ。そうしないと扉のロックは解除されないの。ここに住む女子生徒の顔のデータはもうインプットしてあるから他の人がパネルの前に立っても顔認証で弾かれるって事ね」
自動ドアが開いて僕たちは寮の中に足を踏み入れた。
「あとは自分の部屋に入る方法ね、それも教えておくわ」
神崎さんは僕たちの前を進んでいく。後をついて行きながら寮の中をキョロキョロと見ながら歩く。
「さて、小鳥遊君のお部屋で説明させてもらうわね。まずはこのパネルに指を置いて」
僕は言われて通りにして部屋のドアの横に設置されているパネルに指を置いた。無機質な電子音が聞こえて認証完了の文字がパネルに表示される。
「指紋認証が完了したみたいね。部屋のドアを開ける時はエントランスと似たような感じで、まずは個人の指紋を登録しなくちゃいけないの。その後にキーを差し込んで鍵を開けたら中に入れるわ」
試しに僕が持っていたキーを鍵口に差し込むと指紋認証のパネルのデジタル表記がOPENに変わる。ゆっくりとドアノブに手をかけて扉を開く。
「セキュリティは頑丈にしておくことに越したことはないわ。個人情報を学園側がきちんと管理するから漏洩する心配はないわ」
神崎さんは他の生徒にも寮の説明をしなくてはいけないらしくて部屋のキー解除の方法を教えてくれてからエントランスへ戻っていった。
僕は寮の中に他にどんな設備があるのか気になっていたから少しだけぶらつく事にした。メルとアイリスさんは自分たちの部屋に入って荷物の整理をするようだ。
僕は部屋の扉を閉めて振り返り新し目の廊下を一歩一歩ゆっくりと歩き始めた。
「あ! 小鳥遊君だ。おーい」
元気な声が聞こえて僕は声がした方へ視線を向けた──
「──相倉さん! それに皆も、来てたんだね」
声の主はやっぱり相倉さんだった、元気がいい彼女に僕は口角を上げてから近づく、側にいた御崎さんと玲さんにも声をかける。
「やあ、先に来ていたんだね。私たちはちょうど今着いたところだよ。理事長に寮についての説明を受けていたところなんだ。中にいるって言うことは小鳥遊君はもう終わったのかい?」
「うん、僕はメルとアイリスさんと一緒に来たんだ。ついさっき説明を受けたところだよ」
玲さんは僕と会話をしつつもしっかりと神崎さんの説明を聞いていた。
「実はね、聖蘭寮のセキュリティ諸々のシステムは学園側からの要請で全部彼女が導入したものなのよ」
神崎さんは玲さんを指してそう言う風に伝えると一斉に彼女に視線が集まる。
「なーに、大したことではないさ。実装は理事長が手続きを進めてくれていたし、私はシステムを作成しただけさ。今後は女子寮も
「学園のセキュリティは彼女以外にも担当している人がいるのだけれど、藤森さんは仕事も性格でスピードがあるのよ。だから今回お願いしたの」
「そうだったんですねー。玲さんは本当にすごいんですねー」
「辞めたまえ、褒めても何も上げたりしないよ? けれどまあ、君に褒められるのはとても心地がいい」
玲さんはいつにもなくにっこりとした笑顔を見せてくれた。相倉さんと御崎さんは彼女のスペックの高さに驚いていた。
理事長から同じような説明を受けて丁度お昼になる。僕らは中速を取るために食堂へ向かう。
「すごーい! かなり広いよ! 女子寮のもすごかったけど、ここも負けてないくらい」
「……そうね、あたしはあまり女子寮の食堂は使ったことがないけど」
「御崎さんはいつも部屋で食べてたんだっけ? 私は友達と時間があった時くらいかなあ。お嬢様が多くてちょっと使いづらかったけど」
「ほう、私も基本的に食事は部屋で取っているからこう言う場所で食べるのは経験したことがないよ。小鳥遊君はどうだい?」
「男子寮には食堂なんていう洒落たものは無いかなあ。朝と夜は自分の部屋で食べてるよ。基本的にはバランス栄養食品とエネルギーゼリーに野菜ジュース、後はプロテインを飲んでる。お昼は例の場所で皆お弁当を食べるようになってからランチが毎日楽しくて仕方ない」
「食堂で皆一緒に食べるのも悪く無いけど、時間が合えば“小鳥遊班”の皆でまたあの場所でお弁当食べたいね。私、ランチタイムを大切にしたいと思っているの」
希望を出せばバイキング方式を採用している寮の食堂──通常は食券を購入する形式らしい。入り口のすぐ横に券売機が置かれていて、料理の種類は五〇を超えている。
さすがはお嬢様達が利用することを考えているなあ。こだわるポイントが的確だ。飲み物も紅茶にコーヒー、ジュース、炭酸飲料、緑茶、ココアと他にも色々とある、紅茶に至ってはミルクティーにアイスティー、ストレートティー等様々な種類が豊富に揃っている、コーヒーも似たようなものだ。
流石にプロテインはないみたいだ。何を飲もうか悩んでいると女の子たちはランチのメニューを決めていく。
僕は一旦保留にしてから部屋に戻ってプロテインシェーカーを取りに行く。
「小鳥遊君は何を食べるのか決めた? 私たちはもう先に食べちゃってるけど」
僕は相倉さんの隣の席に座ってシェーカーをテーブルに置いてから券売機の方に引き返す。
「これ何が入っているの?」
「プロテイン。相倉さんには馴染みがないものかもしれないけど……」
「ふーん」
彼女は初めて見るシェーカーを興味深そうに凝視する。御崎さんや玲さんも興味津々な様子、牧野さんに至っては目をまん丸にしていた。
僕は券売機でしばらく悩んだ挙句結局ランチセットの券を買って機械横のトレイに入れた。
買った食券をトレイに入れることでバーコードを読み取って直接厨房に選んだ料理のデータが贈られる。
全員の料理が決まったのを確認してからシェフが料理を始める。頼んでから作り始めるから食堂を使うときは先に席を確保しておくことが先決なんだろうけど、実際どれだけの人数が利用するかわからない。
今日は“小鳥遊班”のメンバーしかいないからそこまで気を回す事はないんだろうけど……。
僕らは新しく住む寮での食事を堪能してそれぞれの部屋に戻る。
「ふぅ、ちょっとしか動いてないのに疲れたなあ」
僕は靴を履いたまま膝を折ってベッドの上に倒れ込んだ──男子寮から運ばれた荷物はまだ荷解きすらされておらず段ボールがカーペットの上に置かれているだけ、一旦休んでから怠さを感じる体に鞭を打って荷物を整理する。
大したものは入っている訳じゃないのになんだかずっしりとした重さを感じた。
他のみんなはもう荷物整理は終わったんだろうか? デスクに伏せているスマホが気になりもしたけれど、今日中に荷解きを終わらせようと意気込んでから作業に取り掛かった。
あいにく荷物が少なかったから一時間もかからないうちに終わる事ができた。スマホで時間を確認する──十四時二七分。
昼食を食べてからそんなに時間は経ってない。汗を流す為に僕は浴場に行く事にした。神崎さんに案内してもらった時はじっくりと見たわけじゃないしな、今の時間帯なら誰もいないだろう。僕は着替えとお風呂セットを準備して大浴場へ向かった。
暖簾を潜って男一人が使うには広すぎる更衣室で着替える。女子の方が圧倒的に人数が多いだろうに僕がこんな広々とした空間を独占できるのに優越感に浸りながら脱いだ衣服を洗濯に放り込む。女湯はちゃんとわかりやすく男湯の暖簾と色違いになっているから流石に間違える人はいないだろう。
腰にタオルを巻いてセンサーで生体反応を確認。ピピピという電子音がが聞こえてスライドドアを開く。
「……この臭いはまさか」
硫黄の独特の臭いが浴場に広がっている──そういえば神崎さんに説明を受けた時にお風呂のお湯については聞いてなかったな。
僕は椅子に腰掛けシャワーのお湯で汗を洗い流す。ボディーソープを泡立ててスポンジで体に馴染ませていく? シャンプーを手の平で泡立ててから髪の毛を洗う、天然成分がしっかりと毛先に染み込んでいく。
洗顔はゴシゴシと擦らず優しくマッサージする様に洗い上げる。
最後に桶にお湯を張って全身を流してから濡れないようにタオルとスポンジを籠に入れて入り口側のラックに置いてから入浴。
「やっぱりそうか!」
硫黄の匂いとお湯のヌメヌメした感じ──これは間違いない!
さっきまでの疑問が確信に変わった。
「これは温泉だ」
まさか学校のお風呂で温泉に入れるなんて思いもしなかったなあ、僕は温泉に肩まで浸かりゆっくりと温まる。疲れが一気に抜けてゆく。至高の瞬間、このままずっと浸かっていたい。
女湯も温泉なんだろうか? 女の子は温泉が好きだと聞くしメルはなら絶対に喜びそうだ、外国人にも温泉は人気だというのはネットのニュースで見たことがある。
まだ夕食前だと言うのに僕は随分と長風呂をしてしまった。
「ふぅ。さっぱりしたー」
ドライヤーで髪を乾かしてからお風呂を出る。温泉の効果か疲れを感じない。僕は「うん」と力強く頷くとゆったりとした足取りで自分の部屋に戻った。
聖蘭寮での新しい生活にワクワクしながら初日の夜はなかなか寝付く事が出来なかった。