普通の高校生活を送るはずの僕がハーレム計画の一環で女子校に通うことになった!   作:南雲悠介

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81.「スクールライフイズパイオリティ」

「…………」

 

 アラームが鳴る前に目が覚める。僕はゆっくりと瞼を開けると自分の部屋の天井が見える。寮での初日の朝はそこまで清々しいものではない、僕は枕元に置いているスマホで時刻を確認──

 

「──七時か、もう少し遅く起きても平気だな。それにしても今朝は眠気が増してるな」

 昨日は眠るのが遅くなってしまい、今はまだ意識がふらふらとしている状態だ。男子寮から運び込まれた荷物整理が終わって段ボールを学園に指示された場所に破棄する。

 

 ちょっとだけ配置を変えてみたけれど、部屋の中はそれほど大きな変化はない。机の上に置かれたノートパソコンは理事長に提出するレポートを作る為のものだ。一応ネットには繋がっているから調べ物をする事はできるんだけどね。

 

 プロジェクトの進捗状況に関するレポートは提出期限があってタイトなスケジュールで管理されている。まあ、僕の場合は何かと決められていた方が動きやすいからいいんだけど。

 

 聖蘭寮で暮らし始めて訪れる変化には敏感になろう。僕はLIMEを開いてグループ名“小鳥遊班”のトークルームでみんなに「おはよう」とメッセージを送る。

 

 それから一旦スマホをスリープモードにしてから顔を洗う為に男湯に向かう。洗面所まで少し歩かないといけないのが面倒だけど歩いているうちに目が覚めるだろう。

 さっと制服に着替えていつでも登校できる支度を済ませてから部屋を出る。

 

「おっと、これを忘れちゃダメだよな」

 ベッドに置いてたスマホをポケットに入れて忘れ物が無いか再確認。バッグを持って今度こそ準備完了! 僕は部屋のドアを閉めて振り返り廊下を歩き始めた。

 

 **

 

「おはようございます。小阪さん」

「おはようございます」

 Aクラスは今日も何も変わりありませんわ。教室に入りクラスメイトの皆様に朝のご挨拶、お嬢様ですから普段から振る舞いには気をつけておかないといけませんの、ですが、何だかわたくしの周りが少々騒がしくなってきましたわ。

 

「小阪さん、授業でどうしても分からない箇所があるのだけれど良いかしら?」

「わたくしでお力になれれば」

 クラスの子に勉強を教えます──もう慣れたとは言え頼りにされるのは悪くない気分です。わたくしはつい小鳥遊君の席に視線を向けてしまいます、彼はまだ登校して来ていません。

 わたくしよります遅く学園へいらっしゃる彼の日頃のスケジュールを把握している訳がありません。

 ですが、教室でゆっくりとお話しする時間さえままならない。

 

 皆さんで一緒に遊んだ事、わたくしには初めての体験でした。彼はどんなひとなんでしょう? 同じクラスにいるのにわたくしは小鳥遊君の事をちっとも知りません。

 

 最近では隣の席の御崎さんと楽しげにおしゃべりなさっているのを見ます。いつの間にあんなに彼女と仲良くなったのでしょう? 

 一応彼のLIMEの連絡先は教えてもらいましたわ、“小鳥遊班”というトークグループにわたくしの名前もあります。あまり自分から会話にさんかするだけではありませんが……。

 

「そういえば聞いた? 『聖蘭寮』の話」

「ああ、女子寮の横にある棟のことでしょう? なんか学園側は入居希望者を募集してるみたいだけどー」

「今の女子寮でも十分に生活に困ることはありませんし、わざわざ新しい寮へ転居するメリットを感じませんわ」

「そうだよね。希望した人は学園から転居の申請書をもらうんだって、それに書いてからお引越しの準備をするみたい」

「うーん。学園の女子寮って結構有名じゃん? 私は気に入ってるからここを選んだわけだし、今更転居するっていうのもねー」

「同感。向こうの寮がどの程度の規模なのかもわからないしね」

 

 教室の中では女子寮の横にある棟「聖蘭寮」の話題をチラホラと聞きます。わたくし達もあの場所が学園側に寮と教えられるまではどんな建物なのかも存じ上げませんでしたわ。

 女子寮よりは新しめの建物であるのは確かですが……。

 一度は話題に上がりましたがすぐに別の話に変わりました。クラスメイト達はあまり興味がない様子でしたが、この後、担任の香月先生のホームルームでの説明で空気が一変します。

 

 ホームルームが始まる五分前に小鳥遊君が教室に入ってきます。一瞬だけ視線が合い彼は「おはよう」とわたしくに挨拶すると自分の席に座ります。ちょうど同じタイミングに登校して来た御崎さんと何かお話をしていましたが、内容まではわかりませんでした。

 

「おはようございます皆さん、それでは今日のホームルームを始めます」

 香月先生は学園の行事の事や、授業中に気になったところは担当の先生にすぐに質問するような環境が大事だと仰います。それからはクラスの連絡事項を伝え皆がホームルームが終わるのを感じ取っていると何かを思い出したように『ごめんなさい。最後に一つだけ』と手元にあるタブレット端末を操作します。

 

「ええっと、皆さんは女子寮の横にある『聖蘭寮』を知っているかしら?」

 朝に少しだけ話題に上がった棟の事が香月先生の口から出るとは思いませんでした。

 

「他のクラスの担任も自分達のクラスで説明していると思うのですが、理事長から学園に通う生徒の皆さんにご報告があります」

 香月先生は端末を専用の機材に接続してスクリーンに映像を映し出します。一瞬教室の中がざわつきましたがすぐに治まりました。

 

「『聖蘭寮』に関してのことです。あの棟は今後は特別な寮になります」

 映像をスライドさせて説明する香月先生──クラスメイト達は節々に隣の子と顔を見合わせています。ちらりと視線を送ると小鳥遊君はいつもと同じ表情でスクリーンを見つめていました。

 

 香月先生が「聖蘭寮」の情報を生徒に共有していきます。そしてわたくし達はあの棟が存在してる意義を知ることになりました。

 

 話はこうです。学園側が遂行している例のプロジェクト、その一部として女子達と小鳥遊君の交友をもっと深める目的の為、「聖蘭寮」と言う場所で一緒に暮らすというもの。

 

 先生は寮の設備と規模の紹介に移って行きます。女子寮よりも厳重なセキュリティで管理されていて、お金かけて建築されたという規模感はすぐに感じ取ることができましたわ。

 

 希望した生徒は寮へ転居が可能な事、小鳥遊君と同じ空間を共有して共に過ごす事で更に親交を深めていけるだろうと。

 現在は十人以下の生徒がもうこの寮で暮らしているらしくて、早速新しい場所での生活が始まっているようです。

 

 短い時間で目的を伝えおえた香月先生は最後に転居を希望する生徒がいれば願い出てほしいと言ってホームルームが終わりました。

 

 ホームルーム後、お嬢様達は口々に感想を良い、今朝会話の片隅になったワードが今後中心になるだろうというのを感じ取れました。

 

 わたくしはどうしようかしら? 小鳥遊君と同じ場所で暮らすなんて……。

 殿方と一つ屋根の下、今までそのようなことはもちろん経験がありませんわ、他の方はどうなのでしょう? 皆さんは会話の中でチラチラと彼に視線を送っています。

 

 するとLIMEにメッセージが届きます。わたくしは休み時間になるまでスマホを見ないようにしていましたがついアプリを立ち上げてしまいます。

 

 

『小阪さんも聞いた? 【聖蘭寮】の事』

 

 メッセージの送り主はFクラスの相倉さん。“小鳥遊班”のグループトークにわたくしも入りメッセージの返信をします。既読の文字がつくとすぐに別の方からお返事があります。

 

『私のクラスでも担任が今朝のホームルームで説明したよ。まあ、もうすでに知っている事だからね、大して新しい刺激はなかったけれども』

『そうだよね。私たちはもう理事長に聞いてたし』

『どういうことですの?』

『ああそっか、小阪さんはあの場にいなかったよね。詳しいことを説明するね』

 相倉さんは自分達が何故「聖蘭寮」について知ってたのかを教えてくれました。

 

『このトークグループは私たちしかいないから隠すことはないけど“小鳥遊班”は一足先に聖蘭寮で生活させてもらってるの』

 相倉さんらはもう寮での暮らしを始めているらしいのです。わたくしはどんどん公開される情報に頭がパンクになりそうなりながら整理して行きます。

 

『小阪さんも希望すれば寮で暮らせるから興味があるなら申請してみたら?』

 小鳥遊班のメンバーはわたしくがもうその一員であるかのように接してくれています。もしかしたらこのトークグループに招待された時から決まっていたのかもしれません。

 

 わたくしは寮での生活に関わることをいくつか質問しました。

 女子寮の自分のお部屋もとても気に入ってますが、彼女達のお話を伺いそれを上書きするほどに「聖蘭寮」での暮らしが魅力的に感じました。

 

『小阪さんと一緒に暮らせるなら僕は嬉しいかな。もっと仲良くなりたいと思ってたし』

 小鳥遊君がメッセージを送ると皆さんがそれぞれにスタンプを使って反応します。

 

『一旦しっかりと考えてから決めてみますわ。ちゃんと決まった時は皆さんへご報告しますわ』

 

 メッセージを送信してアプリを閉じます──気持ちが揺らいでいるところを深呼吸して落ち着かせます。

 

 彼は変わらない笑顔をわたくしに向けていました。学校が終わった後、自分のお部屋に戻って今後の事を思慮するのでした。

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