Fate//welcome escatlogy wild clown   作:まろ茶量産型

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雑多なfateの2次創作であります。
作成予定の同人作品の外伝ですので、わかりにくい箇所がありますれば解説致します。
どうぞお試しにお読みください。
楽しんで頂ければ幸いです。

途中読み苦しい箇所や、つまらない箇所がございましたら、忌憚なくコメント頂けると幸いでございます。

この作品に登場する組織、団体などは架空のものであり、またfate、ならびにfgoの設定に矛盾する展開や内容がある可能性がありますので、あらかじめご了承ください。


経済の寄る辺に従い

菩薩の掌とでも言えば良いのだろうか、

その女は大いなる相貌を持って、己を

深海の如く慈愛の瞳を持って、心を、

罪の総量を測る両手を持って、魂を

 

この存在の前では嘘偽り、伊達酔狂は塵芥、

神か仏か物の怪か、はたまたそれすら及ばぬ類いか、

言葉を紡ぐ事も、身体の自由も利かない。

 

巨大な白妙の細腕、両の掌の上に転がされ、

ただ自身の何十倍、何百倍もあろう女の美しさに両目を奪われるのみだった。

 

女は唇を動かす、その声を聞き取れぬまま、視界はホワイトアウトし、目覚める。

 

 

 

夢だった。

 

 

ここ数日頻繁に現れる。

小説や漫画の影響か、それにしてはどこか懐かしい印象を覚える。

何となく昔のロボットアニメの劇場版にこんなのが居たなと思いつつ二度寝し、適正な時間に目覚めると言うのがローテーションになりつつある。

 

そして夢の内容が曖昧になり、私の日常が目を覚ますのだ。

 

 

 

朝食を囲む父母と姉、

父は朝のテレビを見て政治に文句を言って、

母はそれに反論し、姉は黙って朝食を済ませた。

 

私は学校指定のややダサめの鞄を背負って出かける。

現在の高校生は進学の為なら通勤に1時間など当たり前で、冬などはまだ明るみかけただけの空を見ると憂鬱になる。

 

微かに凍える吐息、最寄りの駅に着き、学校に隠れて持っている携帯で巨大掲示板の集積された真偽の曖昧な情報を得て、自分はまた一つ何か知識を得たような錯覚に陥る。

 

30分に1本しか訪れぬ、ど田舎の駅から一気に都心部へと向かって人が加速度的に流入してくる。

 

ある者は己の姿勢を崩さず、ある者は鎮座する権利を得、そして私は壁画に描かれた絵のように押し固められていた。

 

時々思うのだが、この乗り合わせた乗客と言う存在を家族や友人と同じ、人間と捉えている人はいるのだろうか、

私は物として捉えている。

 

さて、本日の遅刻は無いようで、後はトイレが近くならなければ華麗に一日を始められる。

とにかく欠席と遅刻をしない事、それだけが学生の内で社会人で役立つ唯一の事だ、と姉は言う。

 

下車し、巨大なターミナル駅から乗り継ぎ、バスに揺られ、家から出て1時間きっかりで辿り着く。

 

都内有数の進学率を誇る名門校、

しかしここ数年偏差値が劇的に下がり続ける問題校、

 

ガシャン、と大きな音とガラスが割れる音。

窓枠が外され2階か3階の校舎から投げ落とされたのだ。

誰も居なかったから幸い、ではなく、居ない所に確実に狙って落とすのだ。

 

主犯格の生徒は誰も明かそうとせず、また教師も探そうとしない。

その生徒の親類の力が働いていると言う専らの噂が出回っているし、多分それは本当なんだろう。

誰も表立って言えないから、噂になるのがここの校風だ。

 

こんな陰湿な社会悪を10代の内から見せられて私達はどんな大人になっていくのだろう。

 

瑣末な日常を無視し、教室に辿り着く。

無味無臭、無感想な友人との雑多な会話と教師の授業。

何が私に蓄積されると言うのだろう。

 

そして放課後に至り、特に部活に顔を出す事もなく帰る。

友人の誘いもあったがそんな気分ではなく、誘いには丁重に乗っからない。

 

鬱病か? いや違う、いやそうかもしれない。

 

ずっとだ、ずっとあの夢を見続けるようになってからだ。

 

どこか胸騒ぎが止まない、起床から就寝に至るまでずっとだ。

 

まるでプールで溺れる子供を見続けるような焦燥感と、多動性、

 

駄目だ、人生に集中出来ない。

 

 

帰りの電車に乗るのに疲れて途中下車しそうになるがなんとか堪えて家路につく。

 

家に帰った後も謎の衝動は治らない。

 

何がしなければならないのだが、何をすればこれが治るのかは見当もつかない。

勉強もスマホゲームも、何もかもが手につかない。

 

衝動が治るのは寝て、あの夢を見ている間だけなのだ。

 

早めに就寝しよう、今日は特に酷い、

と自室で横になる。

 

その内に治る、皆ままある瑣末な出来事なのだ

 

良くある事だ、問題ない事だ、大丈夫な事だ、

と反芻しながら1時間きっかりかけて眠りに落ちる。

これが最近のローテーションだ。

 

 

またあの夢を見たが、変化は無かったので省略する。

 

 

ふと目覚める。

時刻は午前1時30分、

10時30分には事切れて眠りに落ちたと思うので、3時間ほどしか眠れていない。

 

しかしこういう時に限って目が冴えるものだ。

 

再びあの焦燥感が襲ってくる前に眠ろう、と目を閉じた時。

 

携帯のアプリからメッセージが届いた。

正確にはその音がした。

 

妙だ、マナーモードにして振動も切ってあると言うのに。

 

 

無視して目を閉じるが、どうも気になって眠れない。

薄っすら目を開いて、手探りでロックを外す。

 

それは普段使うアプリではなく、非通知の電話回線のメールだった。

 

メッセージの内容はこうだ。

 

 

名前を入力してください

 

 

まるで新しくゲームを始めるかのような見飽きた台詞。

匿名のメッセージでこれが来ると言うのは詐欺目的か悪戯か。

 

切り替え忘れたサイレントマナーを再び機能させ、目を閉じた。

 

間髪なくメッセージ音が飛んでくる。

完全にオカルトな領域の体験に突入していた。

 

恐怖と疑問符が飛び交い、ある一つの回答を頑なに否定する。

心霊現象だけは勘弁してほしい。

 

ホラー映画やドラマでは、何故か登場人物が恐怖の元を確認したがり、それ故に不幸に見舞われるものだ。

 

ならば私は確認しない、絶対に眠って夜を明かしてやる。

 

不可解な電子音は幾度となく続き、私は異物となった愛用のスマートフォンを遠く離れた部屋に置き、夜を明かした。

 

 

そこから記憶が途切れている。

 

 

男は自己催眠を解き、荒んだワンルームの貧相な寝台で目覚める。

組んだ足が痺れ、随分と長く座り寝をしていたことを物語る。

 

夢の中で夢を見た後に訪れる虚脱感は、現実を酷く曖昧に混濁する映画、インセプション宛らであった。

 

幾度と無く行われた記憶の追跡も依然として断片的で、整合性がない。

ある時は王であった、ある時は娼婦であった、ある時はサラリーマンであった。

時代は愚か性別すらも齟齬が発生する事がままあり、この行為の価値は未だに認められない。

 

それでもその男はそれを辞めなかった。

再び虚を潜行し、様々な誰とも知らぬ過去を探る。

 

無い、明確な真偽を決定付ける確証が何一つとして、

 

男は疲れて眠り、例の夢を見る。

神とも悪魔とも取れるその巨大な女と対峙するあの夢を、

 

そう、数ある記憶に迫ろうともその夢だけは共通していた、

まるで自らの現実すらも数ある中の一つの夢に過ぎず、どの夢よりも非現実的なこの悪夢こそが真実だと言うように。

 

 

その女の唇は数度開く。

声は、まだ聞こえない。

 

 

 

風の切られた便箋が届けられたのはそれから3日後だった。

 

男の生活は検閲されてる。

 

現在の記憶の連続性を遡っても、理由も、それがいつ始まったのかも定かではない。

 

差出人の名は英字であったが意図的に滲まされ読むことは叶わない。

 

手紙の内容は二つのある儀式を行え、との事だった。

何のことは無い、またあの時期がやってきて、また自分の番が回ってきただけの事だった。

 

男は塩と骨粉、それから少量の血液の混合物を指で絡めとり、フローリングの床で歪な文様を描く。

 

一つの儀は降魔である、

人類史、多岐に渡る伝承、御伽草子の人物を形取られた使い魔を呼び出し、それを使役する。

 

これは次の儀式に不可欠なものであって、それ自体はさほど重要では無い。

 

もう一つの儀は、戦争である、

自らも加え7人、たった一つの報酬を賭けて殺し合い、生き残った物がそれを手にする。

 

発端こそ秘中の秘であったこの儀も、今では効率的かつ普遍的に統合され、一種のルーチンワークとしてこの時代に偏在していた。

 

男はこの儀によって生計立てる、言わば

聖杯戦争経済者(バイオレットカラー)』であった。

 

今やアンダーグラウンドでその名を知らぬ者はなく、年々脱落者に比して新規参入する企業や各国政府、テログループすらも増加の一途を辿る。

 

 

男はある機関によって、その稼業をあてがわられていた。

その機関の実態を何一つとして男は知らなかったが、その命に従う以外の世界がある事すら検閲されている。

 

 

数度となく行われた動作は簡潔にして明快に終わり、今宵、数多の幻想からまた一つ、新たな偽の人格が再臨する。

 

 

 

 

それは騎士であった。

と言っても馬など何処にも見当たらず、風貌だけがそうだと告げる。

 

真紅の西洋甲冑、血の滴る白い長槍、

均整の取れた体格と白い肌。

男にはその者の正体を早くも見抜いたし、これまで呼び出した使い魔の中で最も猛々しく勇敢な人物でもあったが、何の歓喜も湧かずに黙ってその男が口を開くのを待った。

 

当然だ、いかに強かろうが、いかに徳があろうが、これは聖杯という魔性の装置が織りなす幻想であり、偽物だからだ。

 

故に出逢えた感動も喜びも微塵すらないのである。

 

 

ランサー「我が名はランサー、聖杯の寄る辺に従い推参した。 貴公がマスターと見受けられるが、如何か」

 

 

快活な言葉に、好青年らしい態度はまさに騎士然としていた。

 

 

男「如何にも、私がお前のマスターだ」

 

 

男は右手に刻まれた赤い紋章をかざす。

 

 

ランサー「正しく証と見受けます。 このランサー、不詳ながらこれより先の必勝を貴方にお約束しよう」

 

男「図に乗るなランサー、パラディン、サー・パーシヴァル」

 

 

双眸に曇りなければ間違いない。

かの英国の伝説、アーサー王伝説に記される円卓の騎士が一人、聖杯に至った数少ない聖騎士パーシヴァル卿、その人物の偽である。

 

確かに、この儀によって真の英霊、すなわち偽りなき過去の魂を呼び出すことは可能である。

それらの英霊達はマスターと呼ばれる使役者と同じくして聖杯なる装置を手に入れ自らの願いを叶えんがため現界に応じるものである。

 

しかしパーシヴァル卿は自身自体が聖杯に至った身である以上、現世の薄汚れた機械になど頼る必要は無い。

 

よって多くの例に漏れず、男が呼び出したこの使い魔もまた、数多くの余人の雑多な類推、伝説の羨望により生まれたパーシヴァル足る人格の縁取りを呼び出したに過ぎない。

 

要するに本人ではなく聖杯が作った幻を呼び出したのである。

 

 

男「今はその名で呼んでやる、たがお前はただの『槍兵(ランサー)』だ、それ以上は無い」

 

ランサー「その慧眼見事、風貌はちと好きませぬが、さぞ実力のある魔術師に相違ない、無礼を承知で申し上げますが、どうか名をお聞かせ願う」

 

男「存在しない。 残念ながらお前と同じだよ」

 

 

ただのエネルギーの塊を前に独り言をぼやくのと違わぬと、無為な行為であったが、

男は目を細め一枚の札、カードを取り出してランサーに見せる。

トランプカードであり絵柄は道化、ジョーカーであった。

 

ワイルド「ワイルド、それが付けられた蔑称の中でたぶん一番マシなやつだ」

 

 

 

 

 

ランサー「マスター、マスターワイルド! 」

 

 

記憶の深海より無理に起こされる。

男にとって大事な日課であったが、偽とは言え仮にも人格であり同居人である、こういった方針、目的の違いに出くわすことはある。

 

 

ランサー「何故戦に参らぬか、あれから既に三日と半日、他勢力は既に動いておる頃合い、こちらも早急に手を打たねば敗北は必定ですぞ! 」

 

ワイルド「黙れ、集中が途切れる」

 

ランサー「しかし! 」

 

ワイルド「くどいぞランサー、それでもかの円卓の騎士か、いや見事、田舎の猪武者だな」

 

ランサー「その詰りは慣れております、私はマスターの身を案じて再三進言しているのです」

 

ワイルド「ならばお前に問う、策も弄さず敵に挑んで敗れる、これは稀なるか」

 

ランサー「策も何も、マスターはここで三日三晩寝ては覚めても夢現、まるで病人です。 もし何かお考えがお有りなら、御教え下さらねば・・・」

 

 

ワイルドはランサーをジッと見て、しばらく黙った。

別に怒ったわけでも悲しいわけでもない。

 

ただふとこの仕事に充てがわれたばかりの頃、ひいては覚える限りの一番過去の自分の事を思い出していたのだ。

 

若い頃、と言っても数年前だが、この英霊の模造はワイルドの若き日と重なるようだった。

 

 

ランサー「マスターの願いはわかります。 しかし戦わねば己の存在すら勝ち取れぬのです」

 

ワイルド「そうさな。 ところでランサー、聞いていなかったがお前の願いはなんだ、なぜこの戦いに参加した」

 

ランサー「話せませぬ、マスターが戦わぬと仰るならば、私一人で聖杯を勝ち取れば済む話であります故」

 

ワイルド「無いわけじゃないんだね、安心したよ」

 

 

ワイルドは安堵した様に再び足を組み、うつらうつらと夢の中に入ってゆこうとする、が、ランサーの怒声が上がる前に、まるで雷に打たれた様に立ち上がり、テーブルの上の雑多な品々を蹴散らした。

 

 

ランサー「な、何をなさりますか! ご無礼を働き、お怒りなのは重々承知で御座いますが・・・ぶぅっ! 」

 

 

喚くランサーの口に一枚のカードを投げつけ、咥えさせる。

カードの絵柄は砂袋を背負う奴隷、愚者。

 

 

ワイルド「戦備えだ、お前にわかるようやる、だからおしゃべりは後にしよう」

 

 

ランサーはカードが口から離れずモゾモゾしている。

 

 

ワイルドは古い本にくり抜いて開けられた中から、真っ黒に淀んだ山札を取り出し、その中でひとりでに蠢く物の怪様なカードを殺風景になった木製の机の上へと投げ入れる。

 

激しく回転し、ワイルドに対して正しく絵柄の見える位置に止まる。

そこに記されているのは裸体の美女の上に燦然と輝く、星の絵柄。

 

 

ワイルド「星が動いた、これは我々の過去、まずは吉兆受けたってとこか・・・お前が現界した事かも知れん、そしてその結果は」

 

 

ワイルドは山札の上の一枚を、再び投げ入れる。

ワイルドから見て、間を置いて星の真上に収まるよう回転しながら進み、やがて正位置へと止まる絵柄は、魑魅魍魎が車輪に群がり回る、運命の輪。

 

 

ワイルド「これが、現在。どうやらツキが廻っているらしい、さて最後にその変化後、所謂未来を予見する」

 

 

ワイルド山札をシャッフルし順を入れ替えた後、一番上のカード投げ入れる。

 

カードは回転し、星の、運命の輪との二等辺三角形になりかけたところ、それを外して真下に動いていく。

二本の角と黒い翼の化け物が、二度と三度跳ね周り、不自然かつ急に静止した。

ワイルドから見て逆の位置に止まる絵柄の名は、悪魔。

 

運命、星、そして逆位置の悪魔の一直線を目にして固まるワイルド、

 

やっとの思いで愚者を吐き出し、ランサーは口を再び開く。

 

 

ランサー「やっとの戦備えで占いとは! マスターは乙女か古代人か! 」

 

ワイルド「シッ、初心者は黙ってなさい」

 

 

ワイルドは一人ぶつぶつと嘯く。

このタロット占いはワイルドの独自の占術ではあるものの、規則は必ずあり、詳細な説明は省くとしても通常、悪魔はこの位置には止まらないし、カードの配置も一直線にはなり得ない。

 

そして何より悪魔のカードが回転したあの歪な挙動は、数多持つ経験を持ってしても初めてのものであった。

 

 

ワイルド「珍しいな、失敗か・・・もう一度・・・ぐっ」

 

 

稲妻のような頭痛が走る。

それに鳴動するように激しく意識は揺さぶられる。

 

 

ランサー「マスター、如何された。 しっかりしてくだされ! 」

 

 

ランサーに抱えられ、無駄に品性のある相貌を狭くなりつつある視野で見上げる。

少なくとも現実のワイルドの視神経と細胞はそのように働いていた。

 

しかし、ワイルドの精神の現実には、夢朧に見たあの女が居たのだ。

 




ここまでお読み頂き、本当に感謝致します。

連載に関しては、読んで頂ける方がいらっしゃれば続けようかなと思っております。
未熟で拙い文章力ですので、アドバイス等頂ければ幸いです。

貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました。
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