Fate//welcome escatlogy wild clown   作:まろ茶量産型

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第2期聖杯戦争と呼ばれる新世代の戦争形態の歴史は意外に古い、
その祖たる便宜上第1期に分類されるものと枝分かれした起源は、第二次世界大戦末期から間もなくのことであった。

大戦に費やした戦費は大日本帝国だけ見ても約7600億、
これは当時の同国国家予算の約220倍という桁外れの損失である。
戦場となった欧州は壊滅し、次々に植民地を手放していく。

結果、比較的被害の少なかったソ連とアメリカの両国が覇権を握ることになった。

ここまでが表の歴史である。

欧州、アジアにおいて壊滅的被害を被った国々が、如何にして今日の国勢を維持しているのか
その補填がいかにして行われたのか
あれだけの資源を食いつぶして、なぜ今だに人類は豊かなのか

そして何より、なぜ未だ戦争を繰り返せるのか


その歪な歴史は、血の川より生まれた。



英霊不要論 前編

 

 

 

失明するような眩い閃光、

少女だった細胞たちは散り散りになり、光へと溶け込んでいく。

灰塵が立ち込め、その土気色の濃霧が晴れる頃、荒涼とした廃墟は溶解した基礎と、残光の影の群れが刻まれていた。

爆心地(ヒロシマ・ナガサキ)のようであった。

 

 

ランサーの鎧は所々ひしゃげていた。

未だ熱の篭る鎧は、その真紅を血の色のように暗く貶めていく。

 

主人の言いつけ通り、敵に突き立てる刃こそ禁じられていたが、我が身を盾にすることには何の咎めも無い。

マスターを庇う、その

尋常の聖杯戦争において英霊として自然な働きを、ワイルドは批判した。

 

 

ワイルド「何やってんだ、薄鈍」

 

ランサー「くっ、マスター、ご無事でなによりです」

 

ワイルド「んなことはどうでもいい、質問に答えろ」

 

 

優しげで寂し気な戦争被害者の面影はなく、初見の頃の、あの冷徹なワイルドの姿がそこにはあった。

いつの間にかその男は黒の装いを身に纏い、ぼうっと光る細い走査線がその上を流れる。

 

 

ランサー「マスターをお守りした次第でありますれば・・・」

 

ワイルド「誰がそんな事頼んだよ」

 

 

怪訝なランサーに、なおも冷たい言葉を投げ捨てる。

 

 

ランサー「しかし、御身に何かありますれば・・・」

 

ワイルド「誰も頼んでないよな」

 

ランサー「・・・」

 

 

ランサーは閉口したがその実、自らの所業も、ワイルドの変貌についても怪訝さが募るばかりである。

いったいこの男に、自分の務めの何が気に食わないのか、尋常ならざる尋常の騎士は糸口すら掴めない。

 

 

ワイルド「駄目だな、お前も・・・『令呪を以って』命ずる」

 

 

その傍若無人に、流石の忠犬も、

いや忠犬であるからこそ反論し、抵抗する。

 

 

ランサー「お待ちください! 令呪など用いずとも、不詳ランサー。 次こそは必ずや主人のお望み通り振舞います。 ですが、先程から話が見えませぬ」

 

 

ランサーは義に厚い戦士であり、忠を重んじる一廉の将でもあったが、まるで暴君に仕えているかの様な心持ちであった。

 

 

ランサー「いえ、此度だけではありませぬ。 マスターを攫った男たちも、自害した幼子も・・・。 今回の聖杯戦争は尋常というにはあまりにも・・・」

 

ワイルド「では、尋常の聖杯戦争とは。 騎士道に基づく由緒ある決闘か」

 

ランサー「それは・・・」

 

ワイルド「違うよなぁ」

 

 

冷たく尖った棘に、返す言葉もない。

 

 

ワイルド「英霊(サーヴァント)の仕事は誰かを守る事でも、相手を力で上回る事でもない」

 

 

ワイルドはカードの束を切り、混ぜる。

 

 

ワイルド「勝つことだ、相手を負かし、蹴落とし、殺すこと。 寝首を掻き、傷口には毒を塗り込み、倒れていれば踏みつける」

 

ランサー「それは・・・わかっております・・・」

 

 

ワイルド再び一枚のカードを取り出し、ランサーに投げつけた。

鎧に弾かれ、力なく床に汚れる砂袋を運ぶ奴隷、愚者。

 

 

ワイルド「わかってねんだよ」

 

 

突如として、地響きが襲う。

ビル全体が激しく揺さぶられる。

先程の爆発で元から脆かったこのフロア一帯の基礎は完全に破壊されている。

当然、このビルは当階を起点として折れるように倒壊するのである。

 

その破壊の足音が今か今かと2人を狙っていた。

 

 

ワイルド「お前は今倒れたんだ・・・次は踏み殺しにやってくるぞ」

 

 




読んでくださる方の為に借りに書き上げました。
後日多少変更があるかもしれませんが、だいたい続きはこのようにまとめようと思います。
貴重なお時間を頂き、本日もここまで読んでくださり誠にありがとうございました。

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