「どうですか?」
試着室の前を横切りながら、若い——同い年くらいだろうか? それとも、もう少し年上だろうか?——店員が、ドアに向かって声をかけた。
こんな風に女の子と一緒に服を選びに来ること自体が初めてだった彼は、用意されている椅子に座ることもなく、試着室のすぐ脇で下を向きながら手持ち無沙汰全開で佇んでいた。
他の服を選びに行くのは、店内の女性の目が気になってとてもできなかったし、そもそも、そんなファッションセンスも持ち合わせていなかった。
カチャリ。
試着室のドアが開くと、先ほどの店員が、
「うぁぁ、かっわいい! すっごい似合ってますよ! ほら、ほら! どうですか? 可愛いですよねぇ~」
と、大きい声で彼に向かって声をかけた。
——そんなでかい声出すなよ!
「ほんとにかわいい! ものすっごくかわいい!」
営業トークではなく、心からそう思っているのだろう。店員が店にいる全員に、まるで見せびらかすようにそう言った。
——だから、そんなでっかい声出すなってば!
慌てて辺りを見回すと、その声に呼応した人たちの視線がこちらに集まっている。ただでさえこんなブティックに来たのが初めての上に、一斉に視線が集まるこの事態。恥ずかしすぎて、脱兎のごとく逃げ出したいこの気分。思わず顔を伏せて、両手の握りこぶしに力を入れる。
——限界だ! もう無理! 無理無理無理無理!
その場からUターンしかけたその時、
「どうですか? 似合ってますか?」
声がした。
その声の持ち主の方へ、恐る恐る顔を向ける。
体のラインに沿った黒いワンピース。ノースリーブの肩にふわりと羽織っている白い薄手のカーディガン。ワンピースにあしらわれた細いボーダーラインとカーディガンのラインがアクセントになって、形の良い胸の膨らみをより強調している。
ちょっと短めの裾からスッと伸びた綺麗な白い足。その足元には黒いモカシンのショートブーツ。足首から、白いソックスがかわいらしくのぞいている。
髪の色といつものリボンの見栄えを考えたのだろうか、普段はブリムで飾られているショートボブの頭に、黒いベレー帽がちょこんと乗っている。斜めがけのピンクのポーチが、その雰囲気にマッチしている。
そもそも。顔のつくりは言うまでもなく、細すぎず太すぎず、出るところは程よく出て、引っ込むところはきゅっと締まっている、抜群のスタイル。
身長はそれほど高くはないが、手足がすらりと長いので、きっとどんな格好をしても、十人中十人が振り返るだろう。実際、先ほどまで道ゆく人、ほぼ全員に返り見をされていた。
普段着ているものと同じ黒と白の組み合わせだが、年齢相応のおしゃれをするとこんなにも違うのか、という感じだ。というより、普段に問題がありすぎるのだ。
「お? あー、か、かわいい。可愛いと、思う。いや、その……本当に可愛い」
その言葉に少しだけ頬を染めながら、青い髪の少女はにっこりと微笑んだ。
こんにちは。黒丸<Kuro Maru>です。初めましての方は初めまして!
「異世界の異世界デート譚」連載開始します。これはとある物語を書いている最中に並行して書き始めたものです。色々拙い部分もあると思いますが、どうぞ最後までよろしくお願いします。
あと、一話ごとの文字数に多い少ないのバラつきもありますが、その辺りも大目に見ていただければ嬉しいです。
基本的に週一でアップしていこうと思っています。そんなに長くならない予定です。