異世界の異世界デート譚   作:Kuro Maru

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11.「お土産」

「すごいですよね、三宅さん」

 

「え? あ、そ、そうですね……」

 

 その言葉が自分にかけられていると気づいて、スバルは慌てて答えた。

 

「なつき君、でしたよね? じゃ、早速ですけど、三宅さんの代わりに私がなつき君のコーディネートさせてもらいますね!」

 

——そういえば、俺もそう言う話になってた!

 

「あ、あの、俺……その、このままじゃダメっすかね?」

 

「ダメですよ! だってれむちゃんだって、あんなに可愛いんだし、そもそも私が三宅さんに直接頼まれたんですから!」

 

 もごもご言うスバルをよそに、彼女はスバルの腕をとって店の奥に連れて行こうとした。

 

「あ、あの……スバルくん」

 

「な、なんだ?」

 

 そんなスバルにレムが、ちょっと言いづらそうにこう口にした。

 

「あの、スバルくんがヨウフクを選んでいる時間、レムはちょっとだけお散歩して来てもいいでしょうか?」

 

「え? あ、だ、大丈夫か? その、一人で」

 

「レムは大丈夫ですよ、スバルくん。いざとなったら……」

 

 レムの小さな手のひらに、何やら力が宿り始めるのが、スバルにも感じられて、

 

「あ! あ! まった! まった! それ、まずいから! 絶対に使っちゃダメなやつだから!」

 

 焦って止めさせた。

 

「わ、わかりました。スバルくんがそこまで言うなら、素手で……」

 

——いや、その素手もかなり危ないんだけど!

 

「いや、そんなことにはならないと思うから……」

 

 その会話をちょっとだけ不思議そうに聞いていた翔子が、そうそう、と言った感じで、

 

「れむちゃん、この二軒隣にカフェがあるから、そこでお茶でも飲んできたらどうかしら? カフェじゃなくても、この辺、いろいろあるし。そんなに長くかかんないと思うけど、そう……三十分くらいかな?」

 

 そう言ってニッコリと笑った。

 

「じゃあ、ショウコ様のおすすめ通り、ちょっとレムは行ってこようと思います」

 

 レムも嬉しそうにそう言うと、くるりと体を回して、ドアに向かう。

 

「れ、レム! ちょ、ちょっと待った、待った! 金! お金! 俺ら、手持ちがないよ!」

 

「あ……そ、そうでした……」

 

 一瞬で、その表情がしゅんとなった。その二人のやりとりを見た翔子は、慌てたように、

 

「あ、あの……三宅さんからお金、預かってますよ」

 

 そう言ってカウンターから戻ると、封筒をスバルに手渡した。

 

「忘れてた……そういえば、そうだった」

 

 スバルが封筒から一番金額の大きいお札を一枚取りだす。

 

「レム、これで何の問題もないはずだ。お釣りは数えなくていいけど、ちゃんともらってな。あ……あと、これも忘れてた……」

 

 さらに胸ポケットから、ベアトリスの魔法のカードを取り出した。

 

「ま、こっちが使えるなら、こっち使ってくれ。ダメならさっきの紙の方で」

 

 スバルが、ほら、と言って紙幣とカードをピンクのポーチに入れる。レムは満面の笑みで、

 

「わ、わかりました! なるべくベアトリス様のカードを使いますね!」

 

 そう答えて、嬉しそうに出て行った。

 

「だ、大丈夫かな……」

 

「なつき君、心配性ですね。まあ、れむちゃん、可愛いから、どっちかって言うとナンパの方が心配なんじゃ……?」

 

 翔子も、さっきまでの真由美と同じようにニコニコしている。

 

「さ、れむちゃんに負けないように、なつき君の服、選んじゃいましょうか!」

 

「は、ハイ……」

 

 彼女が、あーだこーだ言いながら、スバルの服を見繕う。だが、

 

——レム、大丈夫かな……。

 

 スバルの頭の中は、レムのことでいっぱいだった。

 

 

 三十分後——。

 

 

 ちょうどスバルが試着室から出てきたタイミングで、レムもまた戻ってきた。

 

「れむちゃん、お帰りなさい!」

 

「はい! ただいま戻りました!」

 

 嬉しそうに言いながら、スバルを見つけると

 

「わあっ! スバルくん、素敵です! その、かっこいいです! とっても!」

 

「え、そ、そう?」

 

 執事服と例のジャージ姿しか見たことのないレムにとって、今のスバルは特別に映っているのだろう。

 

「れむちゃんもそう思います? なつき君、良かったですね!」

 

「は、はぁ」

 

 素直に嬉しいと言えないところが、何だか恥ずかしい。スバルは顔を少しだけ赤くして、頭を掻いた。

 

「ところで、レム、どこ行ってたんだ?」

 

 突然の質問に、レムは一瞬固まって、その後すぐにこう答えた。

 

「あ、あの、ショウコ様のおすすめのお店で、お茶をいただいて……、あとはその辺をぶらぶらしてきました。色々なお店がたくさんあって、その、楽しかったですよ!」

 

「そっか。危ないこと、なかったか?」

 

「だ、大丈夫です」

 

——まあ、本当に危ないのは、レムにちょっかい出した方か……。

 

「そうそうスバルくん、お金、使いませんでしたよ! あのカードだけで」

 

「ん? カードだけ? なんか買わなかったの?」

 

「あ、い、いえ。その、お茶を一杯だけで、あとは、その、散歩を……」

 

 微妙な表情を浮かべるレム。

 

「あ、そうなの? んーなるほど……」

 

 スバルはちょっとの間、何かを考えて、ところで話は変わるんだけど、と、レムに向かって口を開いた。

 

「あのさ、レム。ここはひとつ、みんなにお土産を買って行ってあげるべきだ、と思うんだ」

 

「はい! そうですね!」

 

 さっきまで複雑な表情だったレムの顔が、パッと明るくなった。

 

「せっかくここでレムと俺の服を見繕ってくれたんだ。ここでお金を使って行くのは筋、ってもんだろ? ですよね? 翔子さん?」

 

 それを聞いていた翔子も、

 

「あ、それはとっても嬉しいです! ありがとうございます! ちょっと予算オーバーでも、お勉強しちゃいますから、いろいろ選んでくださいね!」

 

 嬉しそうに笑った。

 

「じゃ、さっそく……」

 

 そう言いながら、二人が店の中を歩き回る。

 

「エミリアたんには、この、この……これなに?」

 

「ショールです、スバルくん」

 

「この色、ぴったりだろ?」

 

 そう言って、薄い紫色のショールを手にする。だが、その値札を目にした途端、スバルは驚いた。

 

——うえ! こ、こんなに高いのか……。布切れ一枚で? 服って安くないんだな……。

 

「はい! さすがスバルくんです!」

 

「へ、へへへ……」

 

「ベアトリス様には、どうしましょう?」

 

「ああ、ベア子には、服っていうより、どっかでもう少し違うのを」

 

「違うもの、ですか?」

 

「そ。もう思い浮かんでるんだ! それがなんなのかは後でのお楽しみ、だな」

 

 何を思いついているのか、ニヤニヤしているスバルに、レムがおずおずとこう聞いた。

 

「す、スバルくん、あの」

 

「なんだ?」

 

「姉様にも、その、お土産を買ってもいいでしょうか?」

 

「何言ってんの。そんなの当たり前だろ!」

 

 嬉しそうに微笑むレム。その表情を見て、スバルは心が温かくなった。以前の姉様最優先主義とはちがう、普通の姉妹愛をそこに感じたのだった。

 

「さ、ラムのお土産も選ぼうぜ! どんなのがいいと思う?」

 

「そ、それなんですけど……」

 

 そっとスバルの耳元に口を近づけて、恥ずかしそうに提案する。

 

「ああ! それ! それいいぜ! 大賛成だ、レム!」

 

「そ、そうですか? そうだと嬉しいです!」

 

「あ、でも……こんなのはどうだ?」

 

 今度はスバルがレムに囁く。

 

「それ! 素敵です! とっても素敵です! やっぱりスバルくんは……」

 

「いや、そ、それ以上は照れるから、やめて!」

 

 真っ赤になったスバルに、やっぱり頬を赤く染めたレムが微笑む。翔子は、そんな二人のやりとりを微笑みながら見つめていた。

 

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