異世界の異世界デート譚   作:Kuro Maru

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14.「エピローグ」

「じゃ、あとは頼もうかしら」

 

 寝息を立て始めたレムを見つめ、優しく微笑むと、ラムはその視線をスバルに向けた。

 

「な、なんだよ、姉様。そのまなざしの違いは! まったくブレねえな!」

 

 スバルは枕元に椅子を引き寄せて腰を下ろし、そうラムに言いながら、絞ったタオルをレムの額にそっと乗せた。

 

「わかってるよ。絶対変なことはしませんって」

 

「別に何も言っていないわ。それに……」

 

 そう言いかけて、じっとスバルを見る、ラム。そうして不意に、

 

「ふっ」

 

「な、な、なんだよ、その、『ふっ』て、『ふっ』て! いつもと若干違うじゃねえか! なんか怖えよ!」

 

「なんでもないわ。ちょっと思い出しただけ。じゃ、ラムは寝るわ」

 

「はいはい。そうですか! お休みなさいませ、おねえさま!」

 

 ラムはもう一度レムの顔を見てから、ドアを後ろ手に閉めてそっと部屋出て行った。

 

「ったく、なんなんだよ……」

 

 スバルはそう呟くと、すでに寝息をたてているレムに視線を落とした。

 

 レムの可愛い寝顔を眺めていると、今日一日、二人に起こったことが夢だったような気がする。だが、一体どちらが夢で、どちらが現実なのか。

 

——不思議なことだらけだ。あの扉といい、あのカードといい。そしてきわめつけはあのゾーン。あれは一体……。まさか夢オチってことはないだろうな。

 

 「スバル、くん……も、もう食べられません……」

 

 レムの口から、マンガのような寝言が漏れる。

 

——熱まで出して、どんな夢見てんだか。でもまぁ、俺もなんだかんだで、結構楽しかったし、レムとは二回目のデートってことになるのか、な? これは。

 

 嬉しさと、すこしだけ複雑な思いが交差する。スバルはそっとレムの髪に手を伸ばすと、優しくその頭を撫で続けた。

 

 

※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 隣の部屋では『おみやげ』が、ベッドの上に広げられていた。

 

 もう何年も、メイド服にしか袖を通していなかった。二人にとってそれが当たり前のことだったし、何の疑問も持たなかった。

 だが、今日のレムの姿を見て、素直に可愛いと思ってしまった。妹のその姿が。纏っているその装いが。一体、誰が選んだのかは知らないけれど、ほんの少しだけ、羨ましい、と思ってしまった。

 

 そして——。

 

 黒いラインの入った可愛らしい白のワンピース。黒い薄手のカーディガン。同じく黒いソックスはこの明るいベージュのブーツにぴったりだろう。丸い形の白い帽子。このクロスボディーの青いポーチも、とってもおしゃれだ。そして、お揃いの可愛いアクセサリーたち。

 

 しばらく眺めてから、シワにならないよう、丁寧にハンガーにかけてゆく。小箱に小物をしまって、最後に帽子を棚の上にそっと置いて——。

 

「いつか、近いうちに、レムとお揃いのこの服を着て、どこかに出かけることがあるのかしらね」

 

 優しく微笑む。

 

「もしそんなことがあったとして、できるならバルス抜きでお願いしたいところだわ」

 

——きっとそうはならないだろう。

 

 そうも思う。

 

——でも、それはそれで楽しいかもしれない。その日は一体いつになるだろう。

 

 とっておきの宝物を、秘密の宝箱にしまい込む子供のような表情を浮かべて、彼女はクローゼットの扉をパタンと閉めた。

 

《異世界の異世界デート譚・了》

 

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