あれから2日。
俺は再び時空管理局本局へと来ていた。
今日はいよいよ実技試験だ。
「それにしてもすごいところね。流石、管理局の名前は伊達じゃないって事ね」
「まぁそうだな」
今日は俺の他にアテナもいる。
別に使い魔というわけではないが、彼女は俺のパートナーだ。
当然、一緒に試験を受けることになった。
「そういえば面接の方はどうだったんだ?」
「特に問題もなく済んだわ」
「そりゃよかった」
ちなみについさっきまでアテナは面接の為、別の場所に行っていた。
面接というのは、アテナの人柄を知る為だとか。
「龍姫、いよいよね……」
「ああ」
『お2人さーん。そろそろいいかな?』
そこに突然通信が入り、目の前にモニターが表示された。そこに映っていたのは――
「エイミィか。こっちは準備オッケーだよ」
「久しぶりね」
『うんうん、久しぶり。……っと、それじゃ行くよ?』
「「了解」」
返事をすると同時に、俺達は試験会場へと飛ばされた。
何でも受験者の持っているあらゆる技能を試験する為には、本局の訓練室ではダメらしい。
あっという間に転移して、ここはどこかの無人世界の森の上空。
『それでは受験番号1番の方、名前と出身世界をどうぞ』
「名前は氷護龍姫。出身は第97管理外世界『地球』の海鳴市だ」
『確認しました。それじゃ、まずは儀式魔法の実践から!』
「了解」
そうして、いよいよ試験が始まった。
まずは儀式魔法という事で、俺は超長距離次元跳躍転送と結界魔法を見せた。
『儀式魔法2種、無事確認しました。次は……召喚魔法だね』
「了解」
さて.....誰を呼ぼうか?
「う~ん……そうだ!アイツにしよう!」
「龍姫、誰を呼ぶつもり?」
「星屑の龍だ」
「なるほどね」
アテナにそう答えて、俺は精神を集中させる。
「我、氷護龍姫の名にて求む。集いし願いよ、新たに輝く星となり光指す道となれ!飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
「クワァァアアアッ!」
魔法陣より姿を現したのは、大きな白銀の翼を広げた1匹の龍。
「(……龍姫か。私に何か用か?)」
「あ~、別にそれほど大したようじゃないんだ(今、管理局の試験中でな)」
「(……なるほど、承知した。それで、何をすればいいんだ?)」
「そういえば聞いてなかった。エイミィ、この後はどうすればいいんだ?」
『うわぁ、綺麗……って、龍姫君?何か言った?』
「喚んだのはいいんだけど、これからどうすればいいのか聞いたんだが……」
『あ、ごめんごめん。えっとね、とりあえずその龍に何かやらせてくれる?』
「了解。……というわけだから、1発派手にいくぞ?」
「(……わかった)」
「それじゃ……響け!『シューティング――」
――シュォォォッ!
スターダストが開いた口に魔力が集中する。
「――ソニック』!」
――ズドォ――ン!
解き放たれた魔力が一直線に伸び、射線上にあった木々を薙ぎ払った。
「(……これでよかったか?)」
「ああ。ありがとう」
そうしてスターダストは魔法陣へと還った。
『召喚魔法確認……いやぁ、それにしてもビックリだね』
「そうか?」
『うん。あんな高位の龍を暴走の問題なく使役するなんてすごい事だよ?』
「う~ん……俺にはわからん。それにアイツらは友達だし」
『その感覚が私にはわからないよ……』
「で、この後はすぐ次の試験か?」
『ううん。1時間休憩だから、お昼を食べて一休みしてね』
「はいよ」
そのまま俺とアテナは持参した弁当を食べて、しっかり休憩を取った。
『さーて!お昼と休憩は済んだかな?最後は実戦訓練だよ!』
「おう!気合充分だ!」
「私も万全よ」
『それじゃ、これからそっちに試験官が行くから頑張ってね』
「「了解」」
そうして通信が切れた。
「試験官、一体誰が来るんだろうな」
「さぁ……誰かしらね」
正直、これが今回の最大の不安要素だ。そんな話をしていると、俺達の数メートル先に転移ゲートが開いた。
そしてそこから姿を現したのは――
「んなっ!?(まさかあなたが試験官だったのか!?)」
俺は今の台詞を咄嗟に飲み込んだ自分を褒めてやりたいと思った。
そう。俺の目の前に現れた人物。それは――
「今回、君の試験官をさせてもらうゼスト・グランガイツだ」
StrikerSにおいてヴォルケンリッターを圧倒する戦技を見せ、作中で壮絶な最期を迎えた古代ベルカの騎士、ゼストさんだった。
ヤベぇ、まさかこんなところでこの人に会えるとは思わなかったぜ.....
「流石にランクEXともなると、戦闘試験をできる魔導師はいないという事でな。一応局内では最高クラスの私に声が掛かったんだ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
試験という事を差し引いても、こんなすごい人と戦えるなんてわくわくしてくる。
『まずは龍姫君の単身戦闘力を見るから、アテナさんは見学しててね』
「はーい」
そう言ってアテナは俺達から距離をとる。
「それでは始めよう。準備はいいかな?」
『Start Up』
そう言って自身の武器である槍を構えるゼストさん。
いくら魔力で上回っている相手とはいえ、まだまだ実戦に慣れていない俺がこの人に届くかどうかはわからない。
.....それでも、ただ全力でぶつかるだけだ!
「ああ、いつでも!」
そうして、俺対ゼストさんの戦闘試験がその幕を上げた。
―Side ゼスト
「うぉぉおおおっ!」
「はぁぁあああっ!」
龍姫という少年と戦闘試験を開始してもうだいぶ時間が経った。
彼と戦うにあたり、私は驚いた。彼は私の槍のような武器を所持しておらず、己が拳足を武器にして戦うのだ。
またその戦闘スタイルも独特なもので、相手の後の先をつくカウンターを主体としている。
シールド出力も非常に高く、守りも堅い。この年齢でこの力、将来がとても楽しみだ。
「だが、やはりまだまだ甘い!」
「うわぁっ!?」
私が横薙ぎに払った槍に、地上まで吹き飛ばされた。
「はぁ……はぁ……」
息を荒げる少年。そろそろ体力も限界に近いのだろう。
しかし、よくここまで立ち向かってきたと思う。彼のような人材が管理局にいれば、この先の未来はきっと明るくなるだろう。
「ここまでだな。少し休憩を挟んでから次に――」
「待てよ」
試験終了を告げようとしたところで彼が私の言葉を遮った。
「勝手に終わらせてもらっちゃ困る」
「ほぅ……まだやれるか」
「当たり前だ!」
そう言って鋭い目で私を見てくる少年。.....本当に面白い子だ。
「いいだろう。ならば受けて立つ!」
彼の意気に応えて、私も槍を構えなおす。
「さぁ、かかってこい!」
―Side Out
「さぁ、かかってこい!」
ゼストさんが槍を構えなおしてこちらに呼びかけてきた。
「(ハイペリオン、魔力チャージはどれくらいできてる?)」
『(現在85%といったところです)』
「(わかった。そのままチャージを続けてくれ)」
『(了解です。……しかし、どうしますか?)』
「(『アレ』を使う)」
『(……本気ですか?)』
「(ああ。あの人に勝つ為には『アレ』しかない)」
『(わかりました)』
「(それじゃ、いくぞ!)『咸卦法』!」
『咸卦法』は魔力と気を融合させて爆発的な力を得る、別名『
習得してからまだ日が浅く出力も若干不安定だが、ここはやるしかない!
「……まだそんな奥の手が残っていたとはな」
俺を見てゼストさんが驚いている。ここからは短期決戦だ!一気に決める!
「はぁぁあああっ!」
超高速移動で一気に距離を詰め、ラッシュをかける。
「ぬ……くぅ……」
攻勢に打って出た俺に対し、ゼストさんは防戦せざるを得ない状態になる。
「まだまだぁーっ!」
さらにスピードを上げて、攻めて攻めて攻め続ける。
『(魔力チャージ、100%に到達しました)』
.....きたっ!これでフィニッシュだ!
「喰らえっ!『コキュートスバレット』!」
触れた相手を凍結・拘束する俺の拳がゼストさんの身体に刺さる。
「ぬぉぉおおおっ!」
当たった場所からバリアジャケットが凍りつき、身動きが取れなくなるゼストさん。
俺はその首に手刀を突きつけ、
「俺の……勝ち、だな……」
「ああ、そして私の負けだ」
勝利宣言をした。
――クラッ
あ.....マズ.....
急に暗転した視界になす術もなく、俺は意識を失った。
―Side アテナ
つい先程決着した龍姫と騎士ゼストの戦いを見守っていた私は、突然龍姫の身体が揺らいだのに気が付きました。
「龍姫!?」
そのままフラリと倒れる彼の元に急いで駆けつけ、その身体を支えます。
「龍姫、大丈夫!?龍姫!?」
私が何度呼びかけても返事はありません。どうやら完全に気絶しているようです。
慣れない『咸卦法』の全力使用のせいで魔力・気力とも使いすぎたんですね。
「まったく……あなたも大概無茶をするんだから……」
私はそんな龍姫に思わずそう零してしまいます。
「その子は大丈夫か?」
私のところに騎士ゼストが近づいてきます。彼も突然倒れた龍姫を心配してくれたんですね。
「はい。見たところ、魔力と気の過剰消費で気を失っただけのようです」
「そうか。それを聞いて安心した」
そう言って表情を和らげた騎士ゼスト。
「ご心配をおかけしました。数日休めば回復すると思いますので」
「そうだな。……しかしそれにしても、この子のような管理局にいてくれれば次元世界の未来は明るいだろうな」
「そうですね……ですが、龍姫1人が背負うには重すぎる責任です」
しかしそれでも、龍姫はこの世界の悲しみを救う為に1人でも戦おうとするでしょう。
最初は単なる知的好奇心から龍姫のサポートを申し出た私ですが、最近になってそんな危うい彼を自分が少しでも助けられたら、と思うようになりました。
彼が自分の周囲の世界を護るなら、私が彼自身を護ります。
私は改めて、そう決意を固めました。
―Side Out
あれから目を覚ました時、俺は自宅のベッドで寝ていた。
何故自分がこんな状態なのかわからなかった俺は、ベッド脇に置かれたハイペリオンに事情を聞いてみた。
すると、曰くあのゼストさんとの戦闘終了後に意識を失った俺はあれから3日間眠り続けていたとの事。
「……って、あれから3日!?待ってくれ!俺の試験はどうなったんだ?」
『(それでしたら、先程タツキ宛てにメッセージが――)』
「龍姫ーっ!起きて……っ、よかった!目が覚めたのね?」
ハイペリオンが何かを言いかけたところでアテナが部屋に入ってきて、起きていた俺を見て一瞬驚くと心配そうに駆け寄ってきた。
「アテナ……心配かけたな。もう大丈夫だ」
「よかった……」
若干目が潤んできているアテナ。本当に大変な心配をかけてしまったみたいだ。
「……そういえば、アテナは俺の試験がどうなったか知ってるか?」
「いいえ。知らないわ」
『タツキ。あなた宛てにメールが届いていますよ。差出人はリンディ提督です』
「本当か!?それで内容は!?」
『今表示します』
ハイペリオンがそう言うと目の前にモニターが現れて、そこに1枚の文書が映し出された。
そしてその文書には次のようなことが書かれていた。
【辞令】
下記の者の時空管理局入局を認め、特務捜査官(※1尉相当)の職を与える。
ミッド式空戦SSSランク魔導師 氷護龍姫
「……これはつまり?」
「管理局入局が決まったって事ね」
『そういう事ですね』
「ぃよっしゃぁぁあああっ!」
アテナとハイペリオンの答えを聞いて、俺は喝采を上げた。
『タツキ、まだ続きがありますよ』
「そうか?どれどれ……」
また、下記の者をその補佐官に任命する。
ミッド式空戦S+ランク魔導師 アテナ・グラウクス
「……お前、いつの間にファミリーネームなんて考えたんだ?」
「あら、だいぶ前から決めてたのよ?」
「っていうかグラウクスって、ラテン語のフクロウだったか?」
「流石は龍姫。よくわかったわね」
「女神アテナといえば、フクロウはその象徴として有名だからな」
「……でも、これで龍姫の目指す未来への第一歩は踏み出せたわね」
急にアテナが真剣な顔で俺にそう言ってきた。
「ああ。でも、全てはここからだ」
.....そう。10年後の戦いに向けて、俺は今やっとスタートラインに立ったに過ぎないのだから.....
後日この事をなのはに話したら一応喜んでくれたものの、何故かしばらくヘソを曲げられてしまった。
フェイトの方はリンディさん経由で話を聞いていたらしく、自分の事のように喜んでくれた。
さて、いよいよ次はA's編への介入開始だ!
あとがき
作者 「管理局入局おめでと~!」
龍姫 「おう。サンキュー!」
作者 「これで色々と前準備は整ったな」
龍姫 「まぁそうだな」
作者 「そして次回からはお待ちかねのA's編へ突入だ!」
龍姫 「今度ははやてとヴォルケンリッター、それにリインフォースだな」
作者 「果たして龍姫は如何なる手を打ってくるのか!」
龍姫 「今度も必ず最後は皆笑ってハッピーエンドだ!」
作者 「それでは次回予告!
次回、第17話『良い人間関係を築くには第一印象が肝心(仮)』
を」
龍姫 「お楽しみに!」