『PT事件』の終結からおよそ2週間が過ぎようという今日この頃。
「確かここだよな」
先日無事管理局入りを果たした俺は、現在海鳴図書館の前に立っている。
今日俺がここへ来た理由。それは次に起きる『闇の書事件』の中心人物、最後の夜天の主こと八神はやてに接触する事。
5月が終わり6月になれば、すぐに闇の書が覚醒する。
それに早くから動いていれば、必ず『ヤツら』が慌てて動き出すはず。
『ヤツら』の計画を潰す為にも、これはやらなければならない。
「これで今日は来てなかった、なんてオチは勘弁してくれよ……」
などと独り言を呟きながら図書館内を歩き回る俺。
しばらくして、物語のコーナーで目当ての人物を発見した。
「んしょ……う~ん……」
その人物、はやては車椅子から懸命に手を伸ばして高いところにある本を取ろうとしていた。
これは話しかけるチャンスだな。
「取ろうとしてたのはこれかな?」
「あ、ありがとう」
棚から本を取って、はやてに渡しながら話しかける。
「他に欲しい本はある?取ってあげるよ」
「あ……気にせんといてください。自分で何とかしますから」
「そんな事言わずに。困ってる君を助けたいと思っただけなんだけど、ダメかな?」
我ながら卑怯な聞き方だとは思うが、この際気にしないでおこう。
「あ、えっと……////」
何故か顔を赤くして俯くはやて。.....あれ?まさかフラグ立った?
「遠慮なく言ってね?」
はやての反応はとりあえず脇に置いて(※考えたくないだけ)、また話しかける。
「そ、それじゃあ、あそこのあれと、あれを……」
「任せて♪」
それからまた数冊の本を取って、俺達は館内の談話スペースに移動した。
「さっきは助けてくれてありがとうな。わたし、八神はやて言います。君はなんて名前なん?」
「僕は氷護龍姫。聖祥大附属小の3年生だよ」
「へ~。ほんなら、わたしと同い年やね。……ふ~ん、龍姫君かぁ……////」
そう言って、頬を染めるはやて。こりゃ確定、だよなぁ.....はぁ.....
『(タツキは本当に自覚せずに異性を惹きつけますね)』
「(何なんだろうな、これ……)」
まさかこれもゼウスの仕業なんだろうか.....だとしたら、いつかコロス.....!
「龍姫君?」
「え?あ、ごめん八神さん。ちょっとボーっとしちゃったよ」
「ううん、気にせんでええよ。それから、わたしの事ははやてって呼んで?わたしも龍姫君って呼ぶし」
「う~ん……じゃあ、はやてちゃん?」
「あ、ちゃん付けもやめてや。なんや恥ずかしいわ……」
「わかった。じゃあ、はやて」
「うん!」
嬉しそうに笑って返事をするはやて。やっぱり可愛いな.....
「そういえば、はやてってよくここに来るの?」
「そやね。わたしはこの通り車椅子やから学校も休学中でな。平日でもよく来るんよ」
「そっか……だったらしばらく僕も通おうかな」
「え?でも、そんな……」
「はやてともっと話をしてもっと仲良くなりたいな、と思ってさ」
「うぅ……////龍姫君、その笑顔は卑怯やよ……(ボソッ)」
「ん?はやて?」
はやてが顔を俯けてしまった。俺、何か変な事言ったか?
「せ、せや!龍姫君、お昼は食べた?」
「え?まだだけど……」
そういえば何も考えてなかった。今日は父さん達は出かけてるし、アテナは『計画』の件で夕方まで本局だ。
今から家に帰って、っていうのも面倒だな.....今日は休日だし、いっそ抜きでもいいか。
「ほんなら、うちで食べて行かへん?」
「いや、流石にそれは……」
「そんな事気にせんで、本取ってくれたお礼させてや」
「う~ん……。まぁそれなら……いいかな?」
「もちろんや!」
そういうわけで、俺は出会って早々八神家にお邪魔する事になった。
図書館を後にした俺とはやては途中スーパーで買い物をして、現在八神家の前。
「へ~、大きな家だね。はやて、家族は?」
答えは既に知っているが、これは聞かなきゃいけないと思った。
「あ……わたし、1人暮らしなんよ。お父さんとお母さんは小さい頃に死んでもうてな」
寂しそうな笑みを浮かべてそう口にするはやて。
「ごめん……辛い事聞いちゃって」
「ええんよ。……もう慣れたしな」
そうは言うものの、はやての表情は晴れない。
「……はやて。正直今更な気もするけど、僕と友達になってくれない?」
「え?……本当に気にせんでええんよ。わたしは――」
「僕ははやてのそんな顔は見たくないよ。……はやての笑顔を護る為に、僕を傍にいさせて?」
はやてが全てを言い終えるより早く、俺は割り込む。
「ふぇ?……え、えぇっ!?」
――ボンッ!
「あ、あぅ……////」
はじめはうろたえていたはやてが、突然爆発したかのように全身を真っ赤に染めて口をパクパクしている。
「はやて、ダメかな?」
さらにはやての手を取って念押しする俺。すると――
「だ、ダメやない!ダメなわけない!わたしも龍姫君と友達になりたい!」
はやては俺の手を強く握り返して、力一杯そう答えた。
「よかった。それじゃはやて、改めてよろしくね」
「う、うん……よろしくな」
そうしてやっと笑顔になってくれたはやて。うん、やっぱり笑顔が一番だな。
―Side はやて
あれから龍姫君と一緒にわたしが作った昼ご飯|(オムライス)を食べて、今は食後のティータイム。
ちなみに、龍姫君はわたしのオムライスを大絶賛してくれた。今まで誰かに褒められた事なんてなかったから、ちょう恥ずかしかったわ。
「そういえば、龍姫君の家族は?」
「僕?父さんと母さんと、居候の3人だよ」
「居候?」
「うん。もうかれこれ3年一緒に暮らしてる、僕の姉みたいな人なんだ」
「へぇ。そうなんや……」
む、龍姫君にはお姉さんがいたんやね。どんな人なんやろ。
「そうだ、今度はやてにも紹介するよ。今日は偶々用事で出掛けてるけど、普段は大体家にいるから」
「その人、仕事は何してるん?」
「う~ん……それが、僕も実はあまりよくわからないんだ。前に聞いた時ははぐらかされちゃって……」
職業不定?何か危険なお仕事でもしとるんかな?
「あ、それから僕の友達も紹介するね」
「それって学校の?」
「うん」
「もしかして女の子だったり?」
「うっ……」
わたしの質問に口ごもる龍姫君。やっぱりそうなんか.....わたしのカンも捨てたもんやないなぁ。
「当たり、みたいやね」
「はやて、鋭過ぎ……」
「あははっ。女のカンを甘く見たらアカンで?」
「うぅ……たった今身を持って思い知ったよ……」
ありゃ、龍姫君ったら落ち込んでもうた。
「ゴメンな。でも、龍姫君も悪いんよ?」
「僕が?」
「せや。女の子と一緒の時に他の女の子の話なんてしたらアカンよ」
「そういうもの?」
「せやで」
「う~ん……じゃあ、ごめん」
「うん」
やっぱり龍姫君と話してるのは楽しいな。
それに、龍姫君はほんまに優しい人やと思う。まだ会って間もないけど、これだけは確信できる。
わたしの車椅子やその理由の事も何にも聞かんし、最初の時以来わたしの家族についても一言も言わん。
せやけどきっと龍姫君なら、わたしが話しても静かに聞いてくれて全部受け入れて笑ってくれる.....
「何やろなー……そんな気がするんよ……」
「はやて、どうかした?」
「へ?」
目を開けると、わたしの顔の目の前に龍姫君の顔があった。
「あ、あわ……」
途端に頭の中が真っ白になる。顔が熱くなるのがわかる。
「大丈夫?もしかして具合悪くなった?」
そう言うと、龍姫君はわたしのおでこに手を当ててきた。
「う~ん……ちょっと熱いかなぁ……?」
「ふゃあっ!へ、平気や!どこも悪いところなんてあらへんて!」
ちょっとオーバーリアクション気味に、慌ててそう答えた。
うぅ.....龍姫君はズルい。不意打ちでそういう事をしてくれるんやから.....
「……そう?ならいいんだけど……」
それでもちょっと心配そうにわたしを見る龍姫君。.....これ以上心配させちゃアカンな。
「もう、龍姫君は心配症やなぁ。ほんまに大丈夫やって!」
「うん……そうだね。あ、そういえばはやてはケーキとかって好き?」
「もちろんや」
「それはよかった。僕の幼馴染みの家が翠屋っていう喫茶店をやってるんだけど、今度一緒に行かない?」
っ!?こ、これはもしかしてデ、デートのお誘いなんか!?
「い、行く!絶対行きます!」
これは受けなきゃ女やない!恋する乙女はいつでも押せ押せや!
「うん。それじゃ、いつにしようか?」
「せやな……あ!そういえばわたし、実はもうすぐ誕生日なんよ。6月の4日なんやけど……」
「え?本当に?そういう事なら……うん。その日に行って一緒にお祝いしよう!」
「ほんまに?ええの?」
「もちろんだよ」
ぃやっったぁぁあああっ!.....こ、こほん!と、とにかく今年の誕生日はほんまに楽しみや!
それから夕方まで龍姫君とお喋りをして、今日はお開きになった。
帰り際に明日も図書館で会う約束もできて、ほんまに今日はええ日やったなぁ。
―Side Out
はやての家からの帰り道。
「どうすんだよ……」
俺は先程の約束の事で頭を悩ませていた。
.....6月4日のはやての誕生日って闇の書が覚醒する日じゃん!俺このままだと現れたばっかの守護騎士達と顔を合わせるって事だし!
「でも、まさかこんな事になるなんてな……」
はやてと友達になって、誕生日を祝ってあげたい気持ちは当然あるけど、悩みどころだ.....
あとがき
作者 「この天然ジゴロが」
龍姫 「……何故俺はいきなり罵倒されてるんだ?」
作者 「フンッ!これだから天然は……」
龍姫 「言いたい事があるならちゃんと言え」
作者 「イヤだね。お前に話すことなんて何もない」
龍姫 「何なんだ一体……わけがわからん」
作者 「わからなくて結構だよ。ベーっ!」
龍姫 「……それで次回は?」
作者 「守護騎士達の登場と、接触」
龍姫 「やっぱり行かなきゃダメか……」
作者 「当然だろ」
龍姫 「そりゃわかってるけどさ……」
作者 「そういうわけで、次回予告です。
次回、第18話『悲しき運命の連鎖を断ち切る為に(仮)』
を」
龍姫 「乞うご期待!」