6月もそろそろ終わろうとしている今日この頃。
俺は相変わらず図書館に来て、はやてと話をしている。
「……そういえばはやて。明日なんだけど、家にお邪魔してもいいかな?」
「ん?龍姫君、突然どないしたんや?」
「実は、はやてに大事な話があるんだ」
「だ、大事な話!?」
「うん。できればシグナム達も一緒だと嬉しいんだけど、どうかな?」
「し、シグナム達にも関係あるんか!?」
「そうなんだ」
「え、ええよ。うん。……こ、これは色々と準備せんとアカンかなぁ……?(ボソッ)」
「ん?はやて、何か言った?」
「あ、な、何でもないよ?」
「そう?じゃあ、明日の午前中でいいかな」
「う、うん。午前中なら皆も家におるから、大丈夫や」
「それじゃ、決まりだね」
というわけで、『闇の書』の真実を伝える為の約束を取り付けた俺。
さぁ
そして翌日。
約束通り、はやての家へとやって来た俺。
「いらっしゃい龍姫君」
「お邪魔します」
シャマルに出迎えられて、家の中に入る。
ちなみにヴォルケンズには今朝方念話で話を通してある。
「いらっしゃい。待っとったで」
「うん。それじゃ、早速話を始めていいかな?」
「え!?そ、そんな、もう?さ、流石に心の準備がまだ……」
「そう?でも、話すなら早い方がいいと思ったんだけど……」
「う、ううん……わかった。わたしも覚悟決めるわ!」
.....ん?
はやての態度に引っ掛かるものを感じたけど、気のせいだと思いなおして話を始めた。
「えっと、今日の話は前にはやてが見せてくれた『闇の書』についてなんだけど……」
「へ!?」
そこで何故か突然素っ頓狂な声を上げたはやて。
「あれ?はやて、どうかした?」
「へ?あ、ご、ゴメン。何でもないんよ。あはは……」
そう言って笑うはやて。.....本当にどうしたんだろう?
「そう?じゃあ話を戻すけど、今日はその『闇の書』についてはやてに伝えたいことがあるんだ」
「この子に何かあるんか?」
「うん。実はね……」
そうして、俺は『闇の書』に関する真実を伝えた。
初めは至極健全な魔導書だったが、長い時間の中で持ち主達によって改悪され、今では呪われた魔導書になってしまっている事。
今まで『闇の書』が引き起こした事件と、それによって多くの人が犠牲になった事。
もし『闇の書』が完成してしまうと、この世界に滅亡の危機が訪れる事。
話が進むうちに、はやての顔が徐々に暗く沈んでいく。
彼女にとって辛い話なのはわかっているけど、どうしても伝えなくてはならない。
「そんな……まさかこの子がそんな危険なものやったなんて……」
「ごめん。でも、どうしてもはやてには話しておかなきゃダメなんだ」
「どうして?どうして龍姫君はこんな事をわたしに話したりしたん?こんな事、わかってたら聞きたなかった!」
イヤイヤと頭を振って、はやては俺に激しい感情をぶつける。
俺はそんなはやてに近づくと、その両肩を掴んで大きな声で彼女の名を呼んだ。
「はやて!」
突然の俺の大声にビクッと身体を震わせるはやて。
「はやて、落ち着いて。まだ僕の話には続きがあるんだ。聞いてくれないかな?」
「続き……?」
「うん」
「嫌や……あんな悲しいお話なんてもう聞きたない」
「大丈夫。ここから先はその悲しみを終わらせる為の、未来の話だよ」
「未来の、話……?」
「うん」
「……わかった。聞かせて?」
「ありがとう、はやて」
俺はそう言って、一度ギュッとはやてを抱きしめてから離れる。
「……////」
はやては顔を真っ赤にして俯いていた。
「それじゃ、話すね。実は『闇の書』って名前は改悪が繰り返された後でつけられた名前で、本来は違う名前だったんだ」
「違う名前?」
「うん。この本の本当の名前は『夜天の書』」
「『夜天の書』……」
「それで、僕はこの『闇の書』をもう一度『夜天の書』に戻そうと思ってるんだ」
「……えっ!?龍姫君、そんな事できるん?」
「うん。できるよ。実は今その為の準備を進めてるんだけど……アテナ」
そうして俺がその名前を呼ぶと、空中にモニターが開いた。
『やっとお呼びが掛かったわね。待ちくたびれたわよ?』
「ごめんごめん。……っと、紹介するね。前に話した、家に居候してるアテナだよ」
『はやてちゃん、はじめまして。アテナ・グラウクスよ。よろしくね♪』
「あ、はい。よろしくお願いします……って、え?ええ!?」
最初は普通に応対したはやてだったけど、すぐに驚きの声を上げた。
「た、龍姫君!こ、コレ何!?どうなってるん!?」
「えっとね、詳しく説明するとちょっとややこしいんだけど……」
という事で、次元通信について簡単に説明した。
「……はぁ~、すごい技術やね……」
俺の説明を聞いてしきりに感心しているはやて。
「そろそろ話を戻していいかな?」
「あ、ゴメンな。うん、ええよ」
「『闇の書』を『夜天の書』に戻す方法。それは『夜天の書』だった頃のデータを今のデータに上書きする事なんだ」
「……へ?そんだけ?」
まさにキョトン、といった様子のはやて。まさかそんな簡単な方法だとは思ってなかったらしい。
「うん。それだけだよ。で、今アテナには上書きデータのパッチを作ってもらってるんだ」
『そうなの。ちなみに進行状況は、だいたい4割くらいってところね』
「多分、あと2ヶ月もあれば完成すると思う」
「そ、そうなんや……それが完成すれば、この子は助かるん?」
「うん」
『ええ』
「……ほんなら、龍姫君、アテナさん。どうかよろしくお願いします」
「大切な友達の為だからね、もちろん全力を尽くすよ」
『任せておいて!』
「2人とも、ありがとうございます……」
はやてはそう言って頭を下げた。.....はやての気持ちに応える為にも、頑張らないとな!
「それから、最後にもう1つ。実は『夜天の書』には管制人格、っていうのがいるんだ。シグナム達みたいな人なんだよ」
「シグナム、ほんまなんか?」
「はい」
「へぇ~」
「で、その人には名前がないんだ。だから、はやてがつけてあげてよ」
「……そっか。そういう事なら素敵な名前を考えてあげなアカンね。責任重大や」
「うん。よろしく」
と、これで話も纏まってめでたしめでたし……と思っていたところで――
「そういえば龍姫君、何でそんなに色々詳しいん?」
はやてがそこに触れてしまった。
こりゃ話さないとダメ、だよなぁ.....あ、いや、別に秘密にしておく気はなかったぞ?聞かれたらちゃんと答えようと思ってたし。
「……えっと、はやては魔法の事は知ってるんだよね?」
「せや。シグナム達から一応説明されたからな」
「実はね……僕も魔導師なんだ」
「……え?ええぇぇぇっ!?」
八神家に響き渡る
「う、嘘……龍姫君、それほんま?」
「うん。本当だよ。その証拠に……ほら」
そう言って、俺は空中に魔力スフィアを作り出した。
「は~……ほんまや……」
それを見て、はやては納得してくれたようだ。
「それから、時空管理局ってところに勤めてる」
さらに俺はそう言って局員証を見せた。
「え!?龍姫君、もうお仕事もしとるんか!?」
「うん。あ、ちなみにさっきアテナがいたのが僕の執務室だよ」
「ふ~ん」
それから管理局についても説明する事になった。
もちろん裏の黒い部分については一切触れず、極めて表層的なところしか話さなかった。
その後も結局はやての家で夕飯をご馳走になり、終始和やかムードで時間を過ごした。
以前に比べてシグナム達の態度がだいぶ軟化していたので、気になってこっそり聞いてみたところ、
「主はやてがいつもお前の事を楽しそうに話すのでな。主がそこまで信を置く人物なら、我らも信用するに足ると思ったのだ」
との答えが返ってきた。
そっか。はやてが俺とシグナム達の架け橋になってくれたんだ.....
それがわかって、ちょっと嬉しくなった俺だった。
あとがき
作者 「はやてに全部説明しちゃったな」
龍姫 「全部?……違うな。まだ話してない事があるだろう?」
作者 「あれ?あったか?」
龍姫 「お前が忘れてどうするんだよ!ほら、アレだって!」
作者 「アレ?はて、何だったかな……」
龍姫 「もういい。耳を貸せ。いいか?…………」
作者 「ああ!ソレか!」
龍姫 「ったく……何で作者のお前が忘れるかなぁ……」
作者 「いやぁ、めんごめんご」
龍姫 「……本当に反省してるか?」
作者 「してる!もう心の底から反省してます!」
龍姫 「……ならいい」
作者 「それで次回なんだけど」
龍姫 「どうするんだ?」
作者 「最近放って置かれ気味のあの人達が帰ってきます!」
龍姫 「誰だ?」
作者 「ふっふっふ……それはお楽しみという事で。それでは次回予告!
次回、第22話『俺と魔王と夜叉の嘱託試験(仮)』
を」
龍姫 「よろしくな!……って、何だその不吉なタイトルは!」
作者 「それでは皆さん、さようなら~!」
龍姫 「あ、こら、テメェ逃げるな!」