久しぶりの登校で地獄を見た?日から6日が経過して、今日は日曜日。
――ピピピ
「うーん……」
――ピピピピピ
「……すぅ……」
――ピピピピピピピピピ
「…………」
――ピピピピピピピピピピピピピ
「……ええい、うるさいわ!」
俺の睡眠を妨害せんとばかりに鳴り響く電子音に向かってキレた。すると、
『『『へぇ、何がうるさいって?』』』
俺の目の前にウィンドウが開き、モニター越しにご機嫌斜めっぽい3人娘が現れた。
「うぉ!?さ、3人お揃いでどうかしましたか!?」
ただならぬ空気を感じた俺は何故か敬語で返答していた。
「どうかした、じゃないの!たっくん、約束の事、忘れたの?」
「や、約束?」
するともの凄い剣幕でなのはが怒った。
はて?コイツらと何か約束なんてしてたっけ?
「月曜日、昼休み、屋上」
続いてフェイトが3つの単語を提示してくる。
うーん.....月曜日ってことは俺が久しぶりに学校に行った日だよな?で、昼休みの屋上っていうと――
「あ、ああー!思い出したぞ、うん。思い出した」
やっべー。今の今まですっかり忘れてたぜ。
「むしろ、わたしらとしては忘れられてた事の方が信じられんのやけど」
はやてが射抜くような視線で俺を咎める。
「それは本当に申し訳なかった。謝る。ごめん」
「……まぁええわ。それじゃあ、わたしらは公園で待ってるから早う来てな」
「わかった。ダッシュで着替えて行くよ」
さて、久々のアイツらとの模擬戦だ。気合入れていこうか!
「……状況の説明を求める」
あの後、通信が切れてからおよそ10分。海鳴海浜公園に到着した俺は、開口一番そう口にしていた。
「あれ?言ってなかったっけ?」
「ああ」
可愛く首を傾げるなのはに対して短く答える。そして――
「どうしてユーノやアルフ、ヴォルケンズまでいるんだよ!」
3人に向かってあらん限りの大声で叫んだ。
公園を散歩中の一般人の方々が揃ってこちらに注目していたが、そんな事は今はどうでもよかった。
そうなのだ。俺はてっきりなのは達3人との模擬戦だと思っていたのだが、待っていたのは総勢10名の魔導師・騎士の皆だった。
「だって、私達3人だけじゃすぐに終わっちゃいそうだし」
「うちの子らは一度龍姫君と手合わせしたいって前から言ってたから、丁度いい機会やと思ってな」
「いや、でも、なぁ?」
流石にここにいる全員を相手にするのは俺もちょっと面倒だったので、何とか抵抗しようとしたが、
「待ったはなしやで。約束した時には『わたしら3人と』とは言ってなかったやろ?」
「たっくん、一度決まった事に文句を言うのは格好悪いの」
「そうだよ。こっちの世界では、男に二言なしって言うんでしょ?」
「うぐっ」
なのはにフェイトも痛いところをついてくる。
「……わかったよ。細かく確認しなかった僕にも責任はあるし」
「「「やったー!」」」
何か上手いこと誘導された気はしなくもないが、こうなったら素直に楽しませてもらおう。
それから俺が結界を張り、全員で沖へ移動した。
「それじゃあ5分間のチームミーティングを終えたら始めよか」
「了解」
まぁチームミーティングって言っても、俺は1人なんだけどな。.....一応シミュレーションはしておくか。
なのはとはやてに関しては大威力砲撃に注意する必要があるが、牽制を入れてチャージタイムを取らせなければ何とかなるだろう。
フェイト、アルフ、シグナム、ヴィータ、ザフィーラの近接組には挟み撃ちされないよう注意しつつ、各個撃破していくのがベストだな。
後方支援組は.....バインド系のトラップを仕掛けられないようにしないと。最優先で撃墜すべきだな。
ついでにちょっと仕込みもしておこう。.....これを出せる状況になってくれると嬉しいんだが。
「それじゃ今日もよろしくな、相棒、イリス」
『Yes, my master.』
『はいです!タツキパパの為に頑張ります!』
セットアップと同時にユニゾンもしてあるので、準備は万端だ。
「お待たせ、龍姫君」
「お、終わったか?」
「ふっふっふ……今日は簡単にはやられへんで」
「へぇ、それは楽しみだな。ところで、開始の合図はどうする?」
「位置についてから3カウントでどうや?」
「オッケー。それでいいよ」
というわけで、双方それぞれの開始位置につく。俺の初期配置は自陣の後方だ。
『『『おかしい……』』』
向こうのチームから明らかに警戒している空気が漂ってくる。よし、まずは狙い通り。
『……ほんならカウントを始めるで』
「いつでも」
『カウント3、2、1……0!』
さぁ、戦闘開始だ!
―Side はやて
「……おかしい」
試合開始前、近接戦闘を主としたスタイルの龍姫君が何故か自陣後方に位置取った。一体何を狙っているのか.....
「リインフォース、龍姫君はあそこからどう動いてくると思う?」
わたしはユニゾンしているリインフォースに聞いてみた。
『そうですね……先手を取っての大威力砲撃魔法、という可能性が高いと思われますが』
「せやな。確かに常識的に考えれば、それが定石なんやけど……」
『相手は“彼”だから何をしてくるかわからない、ですか?』
「そうなんよ。アレもただのブラフかもしれないし……」
もしここで読み間違えたら、初手から大損害を受ける可能性が高い。それなら――
「みんな、聞こえてるか?龍姫君があの位置から何をしてくるか、正直予想ができへん。せやから、とりあえず防御魔法をいつでも発動できるようにだけスタンバイしておいてや」
『『『了解!』』』
あとは状況を見ながら臨機応変にいくしかないかな。
「……ほんならカウントを始めるで」
『いつでも』
『カウント3、2、1……0!』
龍姫君はどう動く.....?
――ヒュンッ
「なっ!?」
『主はやて、龍姫の魔力反応をロストしました!』
消えた?そんなアホな!?
みんなも異変に気づき、それぞれに警戒を強める。
「とにかく結界内にはいるはずやから、サーチ急いで!」
『は、はいっ!』
――ビーッ、ビーッ!
「今度は何や!」
『我が陣の最後方に転移反応……彼です!』
「っしもた!龍姫君の狙いは……シャマル、ユーノ君!」
いきなりの敵陣最深部への転移魔法。その意味するところは.....
『ハイドロカノン!』
「きゃあぁぁぁっ!?」
「うわぁぁぁぁっ!?」
気づいて声をあげた時には、既に勝負が決まっていた。
龍姫君によって吹き飛ばされた2人の悲鳴が聞こえた。
『シャマル、ユーノ・スクライア2名の意識レベル低下!今の一撃で気絶したようです!』
2人を一撃で撃墜するなんて、相変わらず規格外な力の持ち主だ。
「やられたっ……龍姫君は最初から2人を狙ってたんや!」
『どういうことでしょうか?』
「2人はわたしらの支援要員や。こっちのブーストや治癒、龍姫君の妨害を任せとったメンバーを真っ先に墜とされたっちゅう事は……」
『……なるほど。こちらは補給線を断たれ、あちらは行動制限が軽減されるわけですね?』
「せや。初手は完全に向こうにしてやられたってわけやな」
『そこまで考えた上での戦略ですか。本当に末恐ろしいですね、彼は』
本当、こういうところはまだまだ敵わない。でも、試合はまだまだこれからだ!
「こうなったらこっちも役割分担を変えなアカン。ザフィーラとアルフさんで龍姫君の牽制、頼みます!」
『『了解!』』
「ヴィータ、シグナム、フェイトちゃんは1対1にならないように気を付けつつ龍姫君に仕掛けて!わたしとなのはちゃんで火砲支援します!」
『『『了解!』』』
今日こそは絶対に負けへんで!
―Side Out
―Side 龍姫
「ハイドロカノン!」
「きゃあぁぁぁっ!?」
「うわぁぁぁぁっ!?」
開始早々の敵陣最深部への転移から繰り出した攻撃で、相手チームのシャマルとユーノを一発KOする。
1対多数の戦闘においては、敵方の
「さて、次は――」
「『チェーンバインド』!」
「縛れ、『鋼の軛』!」
「――うおっ!?」
敵陣を見回していた俺の両横から飛んできたそれらをかわす。
「まぁ、当然そう来るよな」
視線を向けた先には、思った通りの人物‐アルフとザフィーラ‐がいた。更に、
「撃ち抜け、雷神!」
『Jet Zamber.』
「いくよ、レイジングハート!」
『Divine Buster.』
フェイトとなのはによる同時攻撃が来た。さて、どうするか。
「シールドビット起動。『ミラーリフレクション』!」
――パキィィン!
両肩と腰から射出されたビットが2基1セットになって反射鏡を作り、それぞれの魔法を相手を入れ替えて撃ち返す。
「うわわっ!?」
「あ、危なかった……」
反射された相手の魔法に驚きつつも、何とか避ける2人。
「そして追撃の……『ファントムブリザード』!」
そこに間髪入れずに砲撃を加えた。
「レイジングハート!」「バルディッシュ!」
『Protection Powered.』『Defenser Plus.』
――ギィィィン!
バリアに当たった瞬間、甲高い音が響いた。
「こっちを忘れてもらっちゃ困るぜ!」
『Todlichschlag.』
「行くぞ、『紫電一閃』!」
そこへ、先程の応酬の間に距離を詰めていたヴィータとシグナムが斬りかかって来る。
「なんの!」
――ガキィィン!
2方向から来た攻撃を両手にそれぞれ展開したシールドで受け止める。
「クッ……!」
「か、堅ェ……!」
ぶつかったシールドから先に通そうと眉間にしわを寄せるシグナムとヴィータ。
「2人とも、そのまま龍姫君を抑えといて!」
上空から聞こえた声に顔を上げると、砲撃のチャージをしているはやての姿が目に入った。
「そうはさせるか!シールドビット、『ゲイルブラスター』!」
チャージが完了する前に妨害しようと速射性能の高い砲撃ではやてを狙う。
「主には指1本触れさせん!」
しかし、はやてに届くかと思った寸前でザフィーラがインターセプトした。
「ならば、防御を崩して墜とすまで!」
『Boost Break.』
――ガシュン、ガシュン!
ビットの砲撃にロードしたカートリッジ2発の魔力を加算して威力を底上げする。
「ぐ、ぐおぉぉぉぉっ!」
増した圧力に苦しげな声をあげるザフィーラ。それでも通すまいと必死に砲撃を押し留める。
――ドゴォォン!
拮抗していた力が限界を超えたところで大爆発が起きた。
爆発の煙が晴れた先には、主を守ったまま魔力切れで気絶したザフィーラと無傷のはやてがいた。
「ありがとな、ザフィーラ。おかげで反撃の準備は万端や」
『封縛』
――サッ
――バシュッ
「おおっ!?」
攻撃を止められていたシグナムとヴィータが俺から離れて距離を取った瞬間、闇色の縄のようなものに身体を縛られた。
(さて、どうするか。1発くらいならもらっても大丈夫だと思うし、アレを出すならここで喰らっておいた方が面白くなるだろうし……)
掴まった瞬間から、俺は今後の展開について考えを巡らせる。
(かと言って、真正直に喰らうのもそれはそれで嫌だしなぁ……直撃の寸前で威力を減衰させればいいか。ということで、壊れる寸前までバインドを解除して――)
「いくで、龍姫君!『クラウ・ソラス』!」
バインドの解除作業の途中で、はやてからの砲撃がこちらに近づいてきた。
(よし。後はタイミングを合わせてバインドを解除した上で防御すれば問題な――)
「『レストリクトロック』!」
「『ライトニングバインド』!」
――パシィィン
「――って、何ぃっ!?」
バインド解除の最後の一押しまで行ったところで、なのは&フェイトによるダブルバインドが俺の身体を縛った。
『クラウ・ソラス』は既に俺の目と鼻の先にまで迫ってきていた。
(ヤバい、この状況は予想してなかった!……間に合えっ!)
「『ディフェンスゲイン』!」
『Defence Gain.』
――ズドォォン!
こちらの魔法発動と着弾はほぼ同時だった。その結果――
「げほっ、げほっ……クソッ、肩の装甲は持っていかれたか」
俺のBJは両肩の部分が吹き飛ばされ、そこから肌が露出していた。
「……多少手加減してはいたが、ちょいとセーブしすぎてたみたいだな」
上手いこと俺に砲撃を当てられた事を喜んでか、ハイタッチなんぞをしている3人娘を見ていると、ふつふつと静かに怒りが込み上げてきた。
『タツキパパ、どうするですか?』
「あいつらにはもう少し本気を出しても大丈夫そうだからな。リミッターを外す」
『了解です!何処まで外すですか?』
「今がAAAだから……S+までいくか」
『わかりましたです!魔力リミッター、S+ランクまで解除です!』
その瞬間、身体に先程までよりも多くの魔力が流れているのが感じられた。
『Jacket Recovery.』
――パシュン
ハイペリオンの一言でBJの欠損部分が元通りになる。
「本当の試合はここからだという事をあいつらに教えてやらないとな」
獲物に狙いを定めた
あとがき
作者 「今回はあとがきなしで、次回に続きます!
次回、第31話『これは模擬戦という名のワンサイドゲーム(仮)』
に」
龍姫 「ドライブ・イグニッション!」