あれからまたしばらくの時間が流れ、今は小学4年生の冬。
俺は管理局本局のとある部屋の前にいた。
――コンコン
「どうぞ」
目の前の扉をノックすると、部屋の中から声が返ってくる。
「失礼します」
入室し、一礼してから挨拶。すると、
「ブフッ」
「真面目ぶって『失礼します』、だとよククク」
「全く、2人して何を笑っているのですか。いらっしゃい、龍姫」
この部屋の主たる3人からそれぞれ反応が。
「おいジジイ共、いつまでも人の顔見て笑ってんな。ミゼット提督、ご無沙汰してます」
「何じゃ龍姫、ワシらには挨拶はなしか?」
「開口一番に人を笑った相手に挨拶がいるとは思えないんだが。久しぶりだ、フィルス相談役にキール元帥」
「何時まで経っても生意気なヤツだな、お前は」
これでもうお分かりとは思うが、ここにいる3人とは、かの『伝説の三提督』である。
「それで、貴方が私達をこうして集めたということは、何か重要な話があるということですね?」
「とりあえず言うだけ言ってみろ。聞いてやるぞ」
ちなみに、この3人には過去に管理局で隠蔽されてきた不祥事の数々に関する詳細な調査書を見せた上で9年後に起きるであろう『事件』の事を話して、(水面下での)全面的な協力を取り付けていたりする。
俺はミゼット提督の問いに頷いて答えると、用件を切り出した。
「単刀直入に言います。部隊が作りたいのです」
「具体的にどのような?」
「今の管理局は部署毎に縄張り意識のようなものが働いていて、なかなか横の連携を取るのが難しい状況にあります。
「自分がトップとなってそのような部隊を作りたい、と?」
「はい。モデルケースを作る事はこれからの管理局にとっても得るところが大きいと思いますが?」
「ふむ、一理あるな。2人はどうか?」
「確かに、悪い話ではないな」
「ええ。異論はありません」
3人が視線を交わして頷きあった。
「よかろう。部隊新設を許可しよう」
「ご協力に感謝します」
了承をもらったところで一礼する。
「それで、肝心の人員はどうやって集めるつもりだ?」
「スカウトしたい人物には既に目を付けているので、今後交渉に出向こうと思っている」
「そうですか。……この後は何か用事はあるのですか?」
「いや、特にないが」
「ならば久しぶりにワシらに付き合え」
「そうだな。そうしろ、龍姫」
「はいはい」
どうせ拒否権もないだろうしな、と心の中で付け足したのは秘密だ。
その日は結局残りの就業時間を3人との茶会で潰す事になった。
.....こんなので給料もらっていいのか、管理局?
その翌日、俺は地上本部へと足を運んでいた。
俺が
施設内の“とある部署”まで赴き、受付に用件を告げて待つ事しばし。
「久しいな、少年。随分と大きくなったようだ」
「ご無沙汰してます。……その『少年』っていうのは止めてもらえませんか?聞いてるとむず痒くなるので」
「そうか。ならば龍姫君、でいいか?」
「はい、ゼストさん」
本日やって来たのは地上の首都防衛隊、目当ての人物は俺の局入りの時の試験官だったゼストさん。そして――
「あのー、隊長。その子は一体?」
「……あれ?この子、どこかで見た事あるような……?」
彼の後ろにいた2人の女性が疑問符を浮かべながらこちらを見てきた。
「2人とも直接会うのは初めてだったな。クイント、メガーヌ、彼が氷護龍姫君だ」
「えっ!?この子があの『龍帝』ですか!?」
あ、その二つ名って地上にも伝わってたんだ。まぁ他にも幾つかあるらしいんだけど、俺の二つ名って。
「思い出した!昨年、局の会報で表紙に出てた!」
そういえばそんな事もあったなぁ。
「初めまして、氷護龍姫です。よろしくお願いします」
初対面の2人に対して頭を下げる。
「こちらの2人も紹介しよう。私の部下をやっているクイント・ナカジマとメガーヌ・アルピーノだ」
「クイント・ナカジマよ。会えて嬉しいわ」
「メガーヌ・アルピーノです。よろしくね」
挨拶と共に2人が手を差し出してきたので、それに応える様に握手を交わした。
「それで、今日はどのような用件で我々を呼び出したのかな?」
2人との挨拶が済んだタイミングを見計らって、ゼストさんが話を切り出してきた。
「実は今度部隊が新設されることになりまして、その部隊のメンバーを集めているんですよ」
「新しい部隊?そのような話は聞いた覚えがないのだが……」
「そうでしょうね。まだ公式には発表されていませんから」
「へぇ。それで、その部隊の
「メンバーを集めてるってことは、龍姫君はその部隊の一員ってことよね?」
「ええ、まあ。と言いますか、僕が部隊長です」
「「……は?」」
俺の言葉を聞いて、クイントさんとメガーヌさんの目が点になる。
「……それは本当なのか?君が冗談を言うとも思えないが……」
「証拠ならここに。相棒、データを出してくれ」
『わかりました』
――シュン!
「どうぞ。一応これが今回の正式な辞令です」
そうして提示した書面には、要約すると次の2点が記されていた。
1.部隊新設に伴い、俺が部隊長となる事。
2.部隊長就任に併せて、俺の階級を佐官(准佐)へ昇進させる事。
「龍姫君、今何歳だっけ?」
「11歳です」
「11歳の男の子が部隊長で佐官って……」
「……ふむ。確かにこの書類は管理局の公文書だな」
呆然としている2人を他所に、ゼストさんは1人得心がいった様子で頷いていた。
「それで、この部隊の名は何と言うのだ?」
「正式名称は時空管理局広域事件対策室特務一課と言います」
「広域事件対策室、というのは?」
「今回の部隊新設と同時に新たに新設されました。部隊と共に僕が室長を務めます。次元世界のあらゆる場所で起きる事件に対して、迅速且つ柔軟に対処する為の部署です」
「なるほど。ところで今回の話、もし受けるのであれば
「そうなります」
「そうか。……嬉しい誘いではあるが、私は辞退させてもらう。クイント、メガーヌ。お前達は彼と共に行くといい。もっと広い視野で世界を見る事は必ずお前達の糧になる」
「「隊長っ!?」」
.....何となく予想はしていたが、やっぱりゼストさんは首を縦には振ってくれないか。
「ゼストさん、理由をお聞きしても?」
「……私には旧き日に友と交わした約束があってな。それを全うする為にも、私は地上を離れるわけにはいかないのだ」
「……わかりました。残念ではありますが、無理を強いるのは本意ではありません。クイントさんとメガーヌさんはどうしますか?」
それまでじっと話を聞いていた2人に話を振ってみた。
「……少し、考える時間をくれないかしら?」
「私も、いいかな?隊長と話したい事もあるし……」
「わかりました。返事が決まったら連絡を下さい」
そう言って、2人には俺の名刺を渡した。
「今日はこれで失礼します。話を聞いてくださってありがとうございました」
「私も久しぶりに君と話が出来てよかった。次の機会には、『今』の君と手合わせ願いたいな」
「はい。是非」
「またね、龍姫君」
「近いうちに答えを出すわね」
「はい、また。お待ちしています」
別れ際にゼストさんと握手を交わすと、3人に見送られつつ俺はオフィスを後にした。
それから数日後のある日――
――ピピッ
『タツキ、通信が入りました』
着信を告げるコールと、ハイペリオンのコールが同時に響いた。
「誰からだ?」
『発信元は地上本部首都防衛隊オフィスとなっています』
「ということは発信者はあの2人だな」
『はい、恐らく』
「わかった。繋いでくれ」
俺の返事の数瞬後にウインドウが開く。
『こんにちは、龍姫君。今、大丈夫かしら?』
果たして、画面の向こうに出たのはクイントさんとメガーヌさんだった。
「はい、大丈夫ですよ。今日は『例の件』の返事という事でいいですか?」
『ええ。それで、私達が出した結論なんだけど……』
『君の部隊でお世話になる事に決めたわ』
「そうですか。……その選択に悔いはありませんか?」
『ないわ』
『ありません』
「わかりました。転属関係の書類はこちらで作成・提出しておくので、数日後には辞令が下ると思います。次に会う時は新部隊のオフィスですね」
『『よろしくお願いします、部隊長』』
「こちらこそ。では、失礼します」
画面越しに敬礼した2人に敬礼で返して通信を終えた。
『まずは一安心ですね、タツキ』
「ああ。クイントさんとメガーヌさんに関しては、恐らくこれで大丈夫だろう。問題はゼストさんだが……」
『今から対策を練りますか?』
「対策、ねぇ。……まぁ『あの事件』に横槍を入れればいいだけなんだよな、結局は」
『確かにそうですね』
「まぁ、やれる事を1つ1つ確実にこなしていくだけだ。サポートは頼むぜ、相棒」
『お任せを、マイマスター』
さて、また忙しくなるな。
.....今度は忘れないうちに
あとがき
作者 「次回予告です。
次回、第34話『新部隊始動!……と思いきや?(仮)』
を」
龍姫 「お楽しみに」