例の如く穴に落とされた俺が次に意識を覚醒させた時、そこは病院の中だった。
「おお、目を開けたぞ」
「まぁ、可愛い」
可愛いだって?誰が?
「そういえば、まだ名前をつけていなかったな」
「ねぇ、あなた。この子、男の子なのよね?」
「そうだが?」
「私にはこの子は将来凄く可愛い女の子のような子に育つと思うの。だから――」
誰が女の子だって?俺はれっきとした男だぞ!
「……いや、それはどうなんだ?」
「イヤ。これだけは譲れないわ」
「……わかった。それならこの子の名前は
「ええ、そうね♪」
ん?どうして俺は持ち上げられて.....って、何ぃっ!?
「おぎゃあああああ!!(何じゃこりゃあああああ!?)」
病院の窓に映った俺は、何故か赤ん坊の姿をしていた。
「(アー、アー。テステス。聞こえているか?)」
突如、頭の中に直接声が響いてきた。この声は――ゼウスか!?
「(おお、正解だ。どうだ、新たな人生を踏み出した今の気分は?)」
「(ゼウス!お前こうなることがわかってて黙ってただろう!)」
「(はて?何の事だか?)」
アイツ.....散々イジり倒したのを根に持ってやがったな!
「(それより現状を確認するぞ?今は原作開始9年前。なのは達が生まれた年だ)」
「(……そうか)」
「(で、お前は今両親から新たに名を贈られた。
「(氷護龍姫……わかった)」
「(おお、そうだ。ずっと見てるのも面倒だから、これから時間の加速を行う。何年後まで行きたい?)」
「(面倒だから時間を跳ばす、っていい加減な……とりあえず5年後にしてくれ)」
「(了解!それじゃ、またな)」
「(あっ)」
そして、本当に5年の月日が『あっ』という間に過ぎた。断じて『あっという間』ではない。
「たっちゃん。今日はコレを着てね」
「うん!わかったよ、母さん」
はぁ.....。表面上は愛想良く、しかし隠れて溜め息を吐く俺。
最近になって、母さんがやたらと俺に女装をさせるようになった。
似合わなければこんな事にはならなかったんだろうが、今の俺には何故かメチャクチャ似合う。
「(おい、ゼウス!なんでこんな容姿にしたんだ!)」
「(プッ……クククッ……ハハッ……)」
「(……キサマ、いつか必ずコロス……!)」
「(いや、最高だよ龍姫。実に素晴らしい)」
「(人の不幸で楽しむなんて最悪だな。それでも神かよ)」
「(そうだが?)」
そこで全く悪びれないあたりは流石だ。
「(ところで、この時期の原作関係の事は覚えてるか?)」
「(覚えてるよ。なのはがちょうど家で孤立してる時期だろ?)」
「(正解だ。で、お前はどうする?)」
「(もちろん、助けに行くさ。この頃の出来事は、なのはの心に大きな傷を残してたからな)」
そう。なのはが5歳の時、父である士郎さんの入院をきっかけに、なのはは家で孤立していた。これがもとで、彼女は周りに見捨てられないようにと必要以上の無茶をするようになった。そうした無茶の積み重ねが後の事故に繋がるのだから、止めないわけにはいかない。
「そうと決まれば行動開始、だな」
確か、なのはは公園にいるんだったよな.....
「うっうぅぅ……」
公園に着いた俺は、早速聞こえてきた子供の泣き声の方へと足を向ける。
「あれか……」
しばらく歩くと、しゃがみこんで泣いているなのはの姿を見つけた。
ずっとこうして1人で泣いてたのか.....その背中は見ていられないくらい弱弱しかった。
「こんにちは」
「ふぇ?」
なのはがこっちを見る。俺は笑顔で話しかける。
「どうして泣いてるの?」
そのまま隣に座ると、なのははこっちをチラチラと見ながら口を開いた。
「あのね、おとうさんがけがをしちゃって、おかあさんもおねえちゃんもいそがしいの。だから、なのはひとりなの」
「そっか……だったら、僕と遊ぼうよ!あ、僕は氷護龍姫って言うんだけど」
「いいの?」
「もちろんだよ!ところで、君の名前も教えてくれない?」
「あ、うん!なのはは高町なのはなの!」
「なのはちゃん、だね。よし、なら今から僕達は友達だ!」
「友達?」
「そうだよ。お互いの名前を交換したら、その時から友達なんだ」
「わかったなの!なのはとたつきちゃんはお友達なの!」
.....ん?何か致命的な相違が発生したような.....気のせいか?
そのまま2人して走り回ったりブランコに乗ったりして遊んだ。夕方近くになって、なのはがヘトヘトになったところでお開きという事になり、なのはを家まで送ることにした。
「ただいまー!」
「おかえりなさい、なのは。……そっちの可愛い子は誰かしら?」
「なのはのお友達の龍姫ちゃんなの!」
「あら、お友達だったのね。こんばんは、なのはの母の高町桃子です」
うわ~、生桃子さんだよ.....ほんとに若いな。っと、呆けてる場合じゃなかった。
「えっと、今日なのはちゃんと友達になった氷護龍姫です」
「龍姫ちゃん、か。可愛い《女の子》ね」
はっ!?俺が女の子だって!?
「ちょ、ちょっと待ってください!僕は《男》です!」
「「え?」」
あれ?どうしてなのはまで驚いてるんだ?.....まさか!?
「なのはちゃん、もしかして僕の事《女の子》だと思ってた?」
「う、うん。だってこんな可愛いお洋服着てるし……」
洋服?
そこで、俺は初めて自分の服に目を落とした。
.....やってもうたぁぁぁっ!?
そう。今俺が着ているのは、母さんに着せられた女の子用の服。俺はその事を今の今まで忘れていたのだ。
「あらあら。ごめんなさいね。私もてっきり《女の子》だと……」
あの~、桃子さん?何故か俺を見る目が獲物を狙うソレなんですが.....
「あ、えっと、それでは今日はこれで失礼します!なのはちゃん、明日も公園で遊ぼうね!」
三十六計逃げるに如かず。このままここにいては何かが危ない!咄嗟にそう判断した俺は、明日もなのはと遊ぶ約束をして脱兎の如く高町家を後にした。
「あ、う、うん。バイバイ龍姫ちゃん」
「あらあら、元気のいい子ね。……残念、せっかくいいモデルが見つかったのに……」
聞こえない、聞こえないぞ!扉を閉める間際に聞こえた桃子さんの呟きは聞こえなかったぞ!
あとがき
作者 「というわけで、高町なのはとの邂逅でした」
龍姫 「……まさかのミスだ……」
作者 「いや、流石だったな」
龍姫 「マズいだろ!まさか初対面で《女》と間違われるなんて……」
作者 「大丈夫だ!ちゃんとリカバリーしてやるって」
龍姫 「本当か!?」
作者 「まぁ任せておけって!」
龍姫 「頼む、本当に頼む……」
作者 「……必死だな」
龍姫 「……これはコンプレックスになりそうだ……」
作者 「(い、言えない!これからもネタにし続けるなんて言えない!)」
龍姫 「急に黙り込んでどうした?」
作者 「い、いや何でもない」
龍姫 「そうか?」
作者 「ああ。さて、それじゃ次回予告いくぞ!
次回、第3話『新たな仲間登場!(仮)』
を、」
作&龍 「「お楽しみに~(楽しみに待っててくれ)!」」