妖怪の日常   作:テディア

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冬の気まぐれ

降るは大雪、眼前に氷原。

マフラーを付けて飛び回る妖精達と飛び交う弾幕。

そんな風景を切り株の上で頬杖を付きながら眺めている。

漏れる白い吐息と震える体。

凍えるような風に吹かれてマフラーを巻き直す。

そうして見慣れた弾幕よりも一層薄いその弾幕に視線を戻した。

 

…こうして子供のように遊ぶ妖怪や妖精を見ていると、

何処か懐かしく、それでいて微笑ましく感じられる。

それは人里を走り回る子供や幼き妖怪を見る時も同じ。

遥か昔に他の子に紛れて遊んだ記憶を思い出す。

 

まぁ今でも人里で時々人間を怖がらせてあげたりするのだが。

老若男女問わずに戸惑い怯えて逃げ出す姿は少しだけ愉快だったりする。

 

_時間が経つほどに妖精達の遊戯も激しくなってきた。

こちらに気付かないが故に飛んでくる流れ弾を妖力弾で

雑に消し飛ばしながら太股の裏の湯たんぽをひっくり返す。

色々な所を回っているうちに多少の暑さ寒さは慣れたとはいえ、

着る物がワンピースとコート、防寒にマフラーだけは流石に寒いからね。

 

「も、もう無理ー。私の負け…」

「全勝無敗!やっぱりあたいったら最強ね!」

 

ふっと消える弾幕の中から、出ていく妖精と青色の氷精が一人。

外側で見物する多数の仲間達の所へと戻っていった妖精を見送った後、

彼女は一人、堂々と声高らかにこう叫ぶ。

 

「ほらほら!他にあたいに挑む者はいないのかー!?」

 

これで何勝目だろう。

妖怪に片足突っ込んでそうな彼女に勝てた妖精は今のところなし。

最初にこれが始まった時と比べると、名乗りを上げる娘も嘘のように減った。

 

……目には目を、妖怪には妖怪を、か。

少しだけ好奇心が沸いてきた。最早妖怪の域とまで言われるその実力は如何程か。

どうせ暇なのだし、私に関する記憶は能力で消える。何も困る事はない。

能力を彼女とその周りの妖精達に限定して緩めてあげる。

空を浮かぶ彼女に近づきながら、彼女の気を引くように声を上げた。

 

「__そこの氷精!私が相手になってあげるよ!」

「おぉ!?誰だか知らないけどいい覚悟じゃん!掛かってこい!」

「そうだね。…じゃあ何時でも初めてもらって構わないよ?」

 

周りの妖精達が突然の挑戦者にざわつくが、そんなことは無視。

調子づいて乗り気になっている彼女に平等になるよう先手を譲る。

…まぁ相手から見たら挑発のように見えるだろうけど。

 

「お!?言ったなー!?後悔しても知らないよ!?」

「言いました言いました。ほらほら、早く見せてみて?」

 

少しだけ距離を離して攻撃に備える。

2度も軽く流されたのに気を立てたのか、その先手は突然飛んできた。

 

「氷符『アイシクルフォール』!」

「うぉっ…と。」

 

雪のようにばらまかれる綺麗な弾幕。

降り積もる雪よりも青く降り注ぐその弾幕を針で縫うように避けていく。

体を捻りながら辺りを見回し、常に周囲の弾幕を警戒する。

傍から見ている分には綺麗だったのに、いざ身を投じると地味に面倒。

時間は三十秒。儚く、長い攻撃を凌ぎ続ける。攻撃はしない。

最小の動きで布のように躱し、最大まで時間を稼ぐ事だけを考えよう。

絶え間なく襲い来るのは綺麗で寒々しい弾幕と凍える雪景色。

…あぁ、でもこうして避け続けるのなら湯たんぽは要らないかな。うん。

 

「__さて、三十秒だよ。」

「…へぇ、結構やるじゃん。でもまだ勝負は決まってないからね!」

「さぁ?それはどうかな?…ふふっ。」

 

やっぱりこういうのは楽しいよね。

周りの妖精達も体を寄せ合って寒さを忘れるように歓声を上げている。

でもごめんね。私のスペルカードはあまり綺麗じゃないんだよ。

 

「…次は私から。 _幻覚『狂ったオーディトリィ』」

 

全方位に灰色一色で形も大きさも様々な妖力弾を大量にばら撒きつつ、

種類が不規則な灰色レーザーを適当に撃っていく。

もちろん加減は抑えて密度もある程度下げてあげる。勝負にならないし。

無機質な弾幕のうちのいくつかは凍っていくが、彼女の動きは鈍い。

凍らせる速度も遅くなっていくように見える。

そして__ふらり、とついに動きが止まった。それは余りにも致命的で。

…まだ時間もそう経っていないのに被弾する彼女の姿が見えた。

 

その目はどこか苦し気で、先程の威勢は欠片も見当たらない。

そして息を大きく吸い込み_

 

「__あぁもう!うるさい!黙ってて!!」

 

勢い良く上がる怒号に周りの妖精集団が静まり返る。

正直結構な迫力だったが、彼女たちは別に悪くない。

 

…原因は私のスペルカードにあるのだから。

これの本性、本質、本当の凶悪さは別にある。

それは能力を応用して本来悟られるはずのない音、

つまり幻聴を聞かせる。それも強い幻聴が常に聞こえるというもの。

手加減してはいるけれど、鮮明に聞こえる様々な声や音は

本人の意思に関わらず聞こえてくるのでどうしようもない。

結果として相手から自由を奪っていく素敵性能。

 

「…はい、これで三十秒。それと被弾3回で私の勝ち。」

「_もう聞こえない…?よかった…!よかったぁ…!」

 

スペルカードが終わるとほぼ半泣きで仲間の所へ飛んで行ってしまった。

まさか手加減したスペル一枚で勝ってしまうとは思ってもみなかったよ。

…なんか複雑な気分だなぁ。ま、いっか。暇潰しにはなったし。

 

十分に遊んだ所で、彼女と妖精達から私に関する全てを知覚不能にする。

もうこれできっと私の事は分からない。その事に微かな寂しさを覚えながら、

冷え切った湯たんぽとタオルを片手に家へと向かった。

 

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