妖怪の日常   作:テディア

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旧き街並み

暗がりの中で揺れる提灯の数々。

 

遠くには妖怪達の住まう街並みの灯りが見える。

眼下から聞こえる喧騒を眺めながら、少し湿った地底へと降り立った。

 

何度来てもここの雰囲気は変わらない。 

永遠に祭りの続く薄暗い町と言っても過言じゃないかも。

 

「団子はいらんか~!?」

「それでさ~!あの子がさぁ!」

「あぁ…だる…さっさと帰ろ…」

 

数多くの妖怪達が行き交うこの道を一人あてもなく彷徨う。

 

別にこれといってする事も無ければしたい事も無い。

私に気付かない妖怪達が私の横を通り過ぎていく。

 

また一人、また一人。

街の奥に行くにつれて人が多くなってきた。

 

絶え間なく塞がれる視界に苛立ちが生まれる。

 

丁度歩くのも面倒になって飽きが来た私は適当な屋根へと飛び乗り、

何も考えずただ無関心に街並みを眺め続ける事にした。

 

 

行き交う妖怪達を背景に、ぼーっと昔の事を思い出してしまう。

 

 

人型の妖怪として物心ついた日の事。

 

誰にも悟られなくなった日の事。

能力の使い方やコントロールを覚えた日の事。

 

そうして嬉々として誰かに話しかけた時に幽霊と叫ばれた日の事。

 

 

……あぁ。思い返してみれば同族相手ですら友人と呼べるような交流がないような__

_いや。これ以上考えるのはやめよう。

 

そう考えて立ち上がり、振り返って屋根を歩き出す…つもりだったのに。

 

「「いったぁあ!?」」

 

振り返った遠心力そのままに足先を何かに思いっきり打ち付けた。

何もない屋根の上で引っかかる物なんて何があるのかと足元に視線を向けると、

そこには緑の帽子を被った少女が左のふくらはぎを痛そうに抑えていた。

 

「…痛いなぁ。まったく_貴女誰?」

「へっ?」

 

顔を上げた少女と目が合う上に誰かと問われた。

 

…え? 夢? 幻? いやいや、冗談でしょ?

だって私だよ? 普通なら知覚すらできないはずの_

 

「んー。ここら辺じゃ見ない顔だよね。どっから来たの?」

 

いや知覚できてるっぽいですねこれ!?

表情を一切変えずに頬をつねるけど普通に痛い。

つまり夢でもないっぽいですね?!

 

「あー、えっと…地上?」

「おおぉ! いいなー地上! ねぇね、いろいろお話聞かせてくれる!?」

「ま、まぁそのぐらいなら別にいいけ…ど?」

 

何故か右手首を掴まれた。

さらに引っ張られる感覚に抗えずに歩き出す。

 

「こっち! 私の部屋でしゃべろっ!」

「ちょっ! 腕、腕引っ張ってる!」

 

どうしてこうなった。

何が起きている?

 

まるで意味が分からない。

_______________________________________________________________________

 

「ここだよ!」

 

丁寧に整えられた草木。

大理石でできた石畳にだだっ広い敷地。

 

緑の少女に連れられて来た先は真っ白な宮殿とでも言うべき家_

”あの”嫌われ者で有名な悟り妖怪の居場所こと、『地霊殿』だった。

 

「そういえば古明地には妹がいるって聞いたような…」

「んー?そうだよ?私がお姉ちゃんの妹だよー。ちょうど帰ろうと思っててさー」

 

「あら…お帰りなさい、こいし。楽しそうだけど何かあった?」

「おや、こいし様がいるんですかい?さとり様。」

 

噂をすれば影が差す。

 

後ろから本人の声がしたけれど、

私達の心はそもそも読めないのでやりやすくはあるかも。

 

「楽しいよー。 だってこうしてお友達が……あれ?見えないの?」

「そう、お友達ができたのね。 …大事にしなさいよ」

「…おっかしいなー。 ねぇ君、どういう事?」

 

建物の方へ歩いていく悟り妖怪と猫の妖怪の背中を見ながら、

こっちを不思議そうな顔で振り返る緑の少女。

 

彼女に私はひとつ、

人差し指を唇にあてがって秘密のジェスチャーを送った。

 

「私、普通の人には悟れないの」

「へぇ~! じゃあお仲間だ!」

 

腕を掴まれて上下に振り̪回される。

過剰とも思えるスキンシップに、少しだけ慣れてきた気がする。

 

「…も、もういいかな。」

「うん、ごめんね!」

 

「痛った!?」

 

笑顔で放たれる平手打ち。

全力じゃないのは分かるけど、なぜされたの?

 

喧嘩売られてる?

 

「あっ!? ごめん! なんで叩いたんだっけ…!?」

 

こっちが聞きたい。

大方、例の『無意識』というやつだろうけど。

 

流石に予測不可能すぎる。

しかも本人には悪意がないから余計にたちが悪い。

 

「まぁ、いいよ。」

「許してくれるの!? やったー!」

 

喜怒哀楽が激しく不規則に揺れ動く彼女を見ながら、少し考える。

彼女を相手するのが面倒になったというか。

 

地上に戻ろうかなと思う。

…それに、なんか嫌な予感がするし。

 

 

「…そろそろ、地上に帰ろうと思うんだけど」

「うん? いいよ! またね!」

 

思ったよりすんなり受け入れてくれた。

笑顔で飛び跳ねながら手を振る彼女に、振り向きながら軽く手を振り返す。

 

 

…正直、全力で自分を隠蔽すればいいとも思った。

何故か私を知覚できているこいしでも、全力なら多分私を悟れなくなる。

 

でも疲れるし、面倒だし。

今はそれをする必要はないかな。

 

 

あぁ、不思議だなぁ。

 

地底の空を見上げると、まるで水鏡のように大地を映す地底が見える。

 

月白色の髪、浅葱色の目。

地の底を見上げるもう一人の私、誰にも知られぬ私の姿がそこにあった。

 

さぁ、好きなように過ごそうか。

気の赴くままに、地上へと―――

 

 

 

 

 

 

 

「見失っちゃったね」

「だねー。 また探さないと」

 

「「我らが――の為に」」




死んだと思いますした?
申し訳ありません
しかし前のようにポンポン投稿とはいかないかもですが
全作品投稿してから死ぬつもりですので多分死ぬまでには投稿できます

予測変換であとがきがおかしいですがユルシテ
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