あるサイヤ人の少女の物語   作:黒木氏

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※2019.1.9 微修正しました。


3.彼女が地球で戦う話

「まずは、さっきの攻撃のお返しよ!」

 ナッツはバレーボール大の気弾を作成し、投げ放つ。

 

「散れっ!」

 

 ピッコロの号令で全員が動き、直後、気弾が大爆発を起こす。

 巻き込まれた者はいなかったが、全員が分断されてしまう。

 

「これが狙いか……っ!」

 

 空中に飛んだピッコロが、間一髪繰り出された拳を回避する。

 目の前に突如現れたサイヤ人の少女が、獰猛に笑う。

 

「緑色の奴! やっぱりあなたが一番強いわね!」

 

 ナッツは続けて打撃を繰り出す。ピッコロも応じ、打撃の応酬となる。

 小さな体からは想像もできない速度と威力にピッコロが押されていく。

 

「こいつ、子供のくせになんてパワーだ……!」

「ピッコロ! 合わせろ!」

「! 額に目の男!」

 

 背後からの天津飯の強襲を、ナッツは片手で防ぐ。

 そのまま2対1の戦闘となる。

 

 

「いいわね! 地球まで来た甲斐があったわ!」

 

 戦闘力はナッツの方が上だが、攻防のための手数が足りない。

 

 攻撃を受け、血を流しながら少女が笑い、反撃する。

 2人掛かりでなお押し切れぬ事に、戦慄するピッコロ。

 

「悟飯! 援護しろ!」

「え、えっと……」

 

 高速で入り乱れる3人の戦闘に介入できず、立ち尽くす悟飯。

 

(何やってるのよ。割って入る素振りを見せるだけでも、私の気が逸れて援護になるってのに。あいつ本当にサイヤ人なの?)

 

 ナッツはその様子を一瞬横目で眺めて、すぐに興味を失った。

 

 

「オレがやる! はあああっ!」

 

 新たな腕を生やし、4本腕となる天津飯。驚愕するナッツ。

 

「嘘っ!? 地球人は腕を増やせるの!?」

「見てのとおりだ! 死ね!」

 

 さらに開いた手数の差に、被弾が多くなり、少女は追い込まれていく。

 

 

 地上で攻撃の機を窺うチャオズ達が、その様子に明るい表情となっていた。

 

「さすが天さん!」

(凄いけど、あいつ、本当に地球人なんだろうか……)

 

 クリリンは訝しみながらも、ナッツが隙を見せた時に備えて、気の集中を続けていた。

 

 

「もう! 鬱陶しい!」

 

 ナッツは手の甲で口元の血を拭い、荒い息をつく。

 ピッコロと天津飯の2人を相手に、少しずつ疲労とダメージが蓄積していた。

 

(このままだと勝てない……四本腕の攻撃はその分軽い……なら!)

 

「はあっ!」

 

 ナッツは気を爆発させ、2人を別々の方向に弾き飛ばした。

 そしてそのままピッコロへ肉薄し、全力でラッシュをかける。

 

「オレから先に潰すつもりか……だが、そう簡単には倒れんぞ!」

 

 ピッコロはガードを固めて耐える。

 すぐに復帰した天津飯が、無防備なナッツの背中に迫る。

 

「焦ったな! 四妖拳を食らえっ!」

 

 四本の腕が振り下ろされる。

 だが、その攻撃を何かに弾かれ、中断されてしまう。ナッツの口元に笑みが浮かぶ。

 

「……尻尾だと!?」

 

(たとえ握られても、私は止まらない!)

 

「はああああっ!!」

 

 ナッツの渾身の一撃が、ついにピッコロのガードを砕いた。

 

「うおおっ!?」

 

 吹き飛ばされ、遠くに消えていくピッコロ。

 ナッツは手ごたえの無さに舌打ちする。

 

(浅い! とっさに自分から逃げた!)

 

「次はそっちよ!」

「くっ……!」

 

 ナッツは返す刀で天津飯を蹴りつけ、地上へと叩き落とす。

 自身もその後を追い、高速で降下しながら必殺の拳を振り上げる。

 

「これで1人!」

 

 ナッツが勝利を確信した、その時だった。

 

 

「天さん! 危ない!」

「……っ! 身体が!?」

 

 少女の身体は、空中で不自然に停止していた。チャオズの超能力だ。

 

(見えない力……あのチビがやってるの?)

 

 突然の未知の事態に、困惑するナッツ。

 そして動きを止めた少女に向けて、

 

「気円斬ーーーっ!!!!」

 

 気を集中していたクリリンが、即座に円盤を作成し、投げ放った。

 

 

 瞬く間に眼前に迫る気の刃を、少女は動かぬ身体で呆然と見つめる。

 

(え、これ、刃……? 私、死……)

 

 眼前の死に、ナッツの目が見開かれる。そして刃が首を跳ねんとした、その瞬間。

 

「まったく、手のかかる娘だ」

 

 硬直した少女の小柄な身体を、ベジータが抱き上げていた。

 目標を失った気の刃が、遠くの岩を空しく切断して飛んでいった。

 

 

 

 

「父様!」

 

「勝手に飛び出しやがって。見ていて冷や冷やしたぞ……。たまには好きにやらせてやろうと思っていたが、今のは本当に危なかった」

 

 娘を抱く手に力を込めながら、クリリンを睨むベジータ。怯えるクリリンを尻目に、そのまま娘を抱えて下がっていく。

 

「ナッパ。適当に遊んでやれ。こいつのために、1人か2人は残せ」

「おう。お嬢は後ろで休んでな」

 

「父様! 私はまだ戦えます!」

 抱えられながらじたばたと暴れるナッツを、ベジータが睨む。

 

「駄目だ」

「う……ごめんなさい」

 

 ナッツは暴れるのを止め、しゅんとなって反省を示した。

 

 

 

「あいつ、1年前のラディッツとは比べ物にならんぞ……」

「ちくしょう、あそこで止めを刺せていれば……」

 

 3人のサイヤ人達の中で、最も弱いと思われていたナッツの予想外の実力に、

 地球の戦士達は、仕留めきれなかったことを悔やんでいた。

 

 一方、ナッツの方は今の戦いにとても満足していた。弱い相手を蹂躙するわけではなく、殺されるかもしれない相手と全力で戦えたのは気持ち良かったし、爽快だった。月を消された事にはまだ少し腹が立っているが、人間の姿で彼らと戦えて良かったと思った。

 

「ねえ、あなた達!」

 

 運ばれながら、ナッツは大きく手を振って彼らに呼びかける。

 

「今の、凄く楽しかったわよ! ありがとう! ナッパ相手に生きていられたら、またやりましょう?」

 

 つい先ほど、殺し合いの末に死ぬ寸前だった少女は、心から笑ってそう言い切ってみせた。

 そして一斉に、化け物を見るような目を向けられ、ナッツは頬を膨らませる。

 

「もう! これだから平和な星の人間は……戦うのが、楽しくないのかしら」

「そういうものだ、ナッツ」

 

 やや落ち込んでいる様子の娘の頭を、ベジータはくしゃくしゃとかき回した。

 彼はあまり愛情表現を知らなかったが、ナッツの心はそれだけで、十二分に満たされていた。




この話はあんまり修正する箇所が無かったです。
やや短いですが、当時は結構頑張って書いたので。


ナッツのキャラは大体こんな感じです。

・戦って強くなる事が好きで、その結果どちらかが死ぬのは当然だと思ってる。
・自分が認めた相手には友好的。そうでない相手は殺す事も厭わない。
・ベジータが必死に行儀良く育てたのでちゃんとお礼も言える。
・あんまり難しい事は考えない。

以前書いてた分だと今の40%増しくらい悪人で作者から見ても
あんまり良いキャラだと思えなかったので、こんな感じに落ち着きました。

ニッチな趣味の作品ですが、気に入っていただければ幸いなのです。
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