あるサイヤ人の少女の物語   作:黒木氏

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20.彼女が羞恥に怒る話

 フリーザの宇宙船の倉庫にて。

 

 床に置かれた7つのドラゴンボールを前に、ベジータが悟空の身体のギニューの胸倉を掴み、激しく壁に押し付けて叫ぶ。

 

「そもそも結婚とかまだ早いだろう!! オレは許さんぞカカロット!!」

 

(誤解だが、正体がバレるよりはまだマシか……?)

 

 ギニューは考える。フリーザ様の為にドラゴンボールを奪い返さねばならないが、この扱いづらい身体で、今のベジータと戦っては勝ち目はない。先程の娘の時と同じように、上手く会話してこの場を切り抜けるしかない。

 

「落ち着け、ベジータ」

 

 ギニューは怒りに歯を食いしばるベジータの身体を引きはがし、冷静な声で言った。

 

「ナッツとはさっき会って話したが、あいつは悟飯の事を嫌がってるのか?」

「そ、それは……!!」

 

 そうでないから問題なのだが、痛い所を突かれ、父親はたじろいでしまう。娘と同年代で戦闘力が高く、サイヤ人の血を引く少年。生まれてからずっと大人達に囲まれ、友人などいなかった娘が夢中になってしまうのも、考えてみれば当然の話で。

 

 母親を亡くして以来、自分以外に心を閉ざしていた娘が明るく笑うようになったのは、間違いなくあのガキがもたらした良い影響なのだが。それはそれとして、カカロットの息子である事を抜きにしても、娘が自分と母親以外の誰かに惹かれていく事を認めたくはなかった。そういうのはまだ十数年は早いだろう。ナッツは宇宙一可愛いのだから、焦る必要はないはずだ。

 

 そして娘が去り際に見せた儚げな表情が、父親の心を苛んでいた。娘のあんな顔は、見た事がなかった。

 

「だが! ナッツがおかしくなったのは奴のせいだ!」

 

 得体の知れない不安を声に滲ませて叫ぶ父親の顔を、ギニューは正面から見返した。確かにあの娘は、自分と少年との関係に悩んでいたが、それが間違った事とは思えなかった。

 

「ベジータ。子供だってあれこれ悩んで考えて、成長していくんだ。それを見守ってやるのも、父親としての務めじゃねえのか?」

「ぐっ……!?」

 

 打ちのめされたように、父親が一歩後ずさる。目の前のカカロットが、まるで10も20も年上のように見える。こいつはもっと惚けた感じの人間だったはずなのに、揺るぎ無い大人の男としての芯を持っているように見えてしまうのは何故なのか。

 

(カカロット、まさかこの短期間で戦闘力だけでなく、父親としてもオレを上回ったとでもいうのか……!?)

 

 ちなみに彼が最後に悟空と会話してから、まだ1時間と経っていない。冷静に考えれば有り得ない、そんな考えが浮かんでしまうほど、今のベジータは動揺していた。父親の身体が震える。カカロットの言う事は間違っていないと、頭では理解しているが。

 

「オレは、娘が心配なんだ。ただ見ているのは、耐えきれない……!」

 

 彼の脳裏に、彼女の母親の顔が浮かぶ。自分が任務に出ている間、また時には戦場で、共にナッツを見守り育てた、儚げで、だが強い女。

 

「こんな時、あいつがいてくれれば……!!」

 

 そうすれば、もっと上手くやれたのかもしれない。少なくとも異性の前で無闇に服を脱がないくらいの事は教えられたはずだ。今はまだいいが、あの調子で成長したら大変な事になる。

 

 苦悩するベジータの姿は、ギニューが初めて見るもので。そんな一面があったのかと、彼は内心驚きながら、かつてのベジータ達の事を思い出していた。サイヤ人を嫌うフリーザ様の手前、彼らと距離を置いていたギニューの耳にも入るほどの、仲睦まじい幸せそうな家族だったという。

 

 こんな時、この身体の持ち主なら、何と言うだろうか。

 

「……それはどうしてやる事もできねえが、オラで良ければ、いつでも相談に乗るぞ」

 

 気遣うような言葉に、ベジータは、はっと表情を変え、そして小さく鼻で笑った。

 

「フン、調子に乗るんじゃない。このオレが貴様になど頼るものか」

 

 その姿は、彼が知るいつものベジータで。ギニューも笑って、そして何かに気付いて言った。

 

「少し疲れてるんじゃねえか? ここはオラが見といてやるから、今のうちに休んでおけ」

 

 父親が眉を顰める。ナメック星に来て以来、寝込みを襲われないよう、眠りを浅くして気を張り詰めていた。娘が気にしないよう、顔には出していないつもりだったが。カカロットの目は誤魔化せんか。

 

「……そうさせてもらうか」

 

 不老不死を叶えた後は、ナメック星を離れて訓練したいところだったが、逃げ切れずフリーザと戦闘になる可能性を考えると、体調を万全にしておきたかった。倉庫を出る直前、ベジータが振り向いて言った。

 

「甘い貴様の事だ、どうせギニューの奴を殺してないんだろう? いつ奴らがボールを取り戻しに来るかわからん。油断するんじゃないぞ」

「ああ、オラに任せとけ」

 

 そしてベジータが休憩室へと向かった後、床に置かれたドラゴンボールを見て、ギニューはにやりと笑った。手をかざし、念動力でボールを宙に浮かべる。

 

「まさか、こんなに上手くいくとはな……!」

 

 後は戦闘力を消して、上手く隠れながら逃げるだけだ。一番厄介なベジータに見つかった時はどうなる事かと思ったが、結果、自然な形で足止めできたのは大きい。

 

 ギニューは内心高笑いしながら、7つのボールと共に、その場を後にした。

 

 

 

 時間は少し遡り、明るく晴れたナメック星の上空にて。

 

 最長老の家に向かう途中で、デンデと合流したクリリンが、宇宙船へと戻ろうとしていた。

 

「いやあ、助かったぜ。最長老様がお前を向かわせてくれるなんてな」

「はい。願いは全てナメック語で話す必要がありますから、ボクが通訳しますよ」

 

(色々あったけど、これで皆が生き返るんだな……)

 

 感慨に浸っていたクリリンは、ふと地上に覚えのある気がある事に気付く。ギニュー特戦隊とかいう奴ら。このまま進んでは、スカウターで見つかってしまうかもしれない。

 

 ナッツや悟空との戦いで全員かなり弱っているようだが、流石に1人では勝ち目が無い上に、ここで下手をしては、デンデが敵の手に落ちてしまう恐れもあった。

 

「デンデ、いったん降りるぞ。隠れながら行こう」

「は、はい……」

 

 地上に降りた二人は、そろそろと岩陰に隠れながら進む。そのうちに、彼らの騒ぐ声が聞こえてきた。

 

(あいつら……何やってるんだ?)

 

 気になったクリリンがこっそり様子を窺うと、彼らは何かを手に、円状に座り込んでいるようだった。 

 

 

 ギニューの身体の悟空は、真剣な顔でジースの表情を見ながら、ゆっくりと手を伸ばす。ジースは一言も発さず、無表情を保っている。

 

 悟空の手が、ジースの持つカードに触れた。彼の表情は動かない。隣のカードに触れた。表情は動かない。が、額にかすかに浮かんだ汗を、悟空は見逃さなかった。すかさずカードを引き、にっと笑う。

 

「よっしゃあ!! オラの勝ち!!」

「ちくしょおおお!!!!」

 

 残ったジョーカーを忌々しげに捨てるジース。グルドが指を動かすと、地面に落ちかけたカードが宙に浮き、他のカードも巻き込んで、空中でシャッフルが始まった。念動力のトレーニングも兼ねた余興に、おお、と感心した悟空が拍手し、グルドが照れた顔を見せる。

 

 当然彼らはただ遊んでいるわけではなく、この瞬間もスカウターでギニュー隊長の様子を確認しているが、それはそれとして、休める時に休んでおくのも、優れた戦士に求められる資質の一つだ。そして退屈した悟空は、彼らに混ぜてもらっていた。

 

「オラこういうの初めてだけど、面白えもんだなあ」

「表情読むのが上手いんだよこいつ……」

 

 渋面のジースの言葉を受けて、バータが提案する。

 

「じゃあババ抜きは止めるか。表情が読めても関係無いゲーム、何かあったか?」

「人生ゲームしようぜ!」

 

 呼び寄せておいたポッドから、リクームが嬉々としてボードゲームを取り出し掲げた。興味津々に食らいつく悟空。

 

「おお、どう遊ぶんだこれ?」

「まずは乗る車を選んでだな……」

「いや、どう考えても時間足りないだろ。途中で隊長戻って来るぞ」

 

 グルドの突っ込みに、短時間で終わりそうなゲームを探し始める一同を見て、悟空が笑顔で手を振った。

 

「ちょっとオラ、トイレに行ってくる。すぐ戻るから」

 

 そしてその場を離れようとする悟空を、慣れた様子で連れ戻す隊員達。都合4回目の判り易い脱走未遂に、ため息をつくジース。

 

「まったく……もう少しで隊長帰るから、大人しくしてろよ」

「うーん、悟飯もクリリンもいるし、すぐ気付かれると思ったんだけどなあ……」

「ギニュー隊長の事だ。そんなすぐバレそうな奴とは、そもそも会話なんてしないだろうさ」

「けどベジータは、オラの姿でも油断はしねえと思うぞ」

「確かにベジータは危ないが……いざとなれば、また身体を奪うんじゃないか?」

「ええっ!? そうなったら、オラ元の身体に戻れるのかな……」

 

 

 がっかりした様子で情けない声を出す、ギニュー隊長の姿をした男を、物陰から見たクリリンは愕然としていた。

 

(悟空だあれ!? どうしたんだ!? 何があったんだよ!?)

 

 物凄く気になるが、流石に出ていくわけにはいかない。そして何より、身体を奪うという言葉が気になった。悟空がギニュー隊長の身体でここにいるという事は。

 

「デンデ、悪いけど後から付いて来てくれ。オレは急いで戻らなきゃならない」

「は、はい、お気をつけて……!」

 

 急がなければ、ドラゴンボールが奪われてしまうかもしれない。クリリンは内心焦りながら、見つからないようその場を離れ、最高速で飛び立った。

 

 

 

 

 その頃、明るいナメック星の空の下で。

 

 宇宙船の下から出てきたナッツと悟飯は、眩しい陽の光を浴びながら、話をしていた。

 

「平和的に遊ぶっていうのは、例えば、遊園地に行くとか……」

「遊園地なら、母様と行った事があるわ。飾りのついた大きな輪っかを投げ合って遊んだの。すぐ壊れちゃったけど、それでも凄く楽しかったわ」

 

 尻尾を振りながら微笑むナッツ。彼女の言うそれがおそらく観覧車だろうと思い至って、二匹の大猿が遊園地を破壊しながら遊んでいる光景を想像し、悟飯は遠い目になった。

 

「……それは、その飾りに乗って遊ぶんだよ。高い場所から景色を楽しむんだ」

「そうなんだ。私も少し、聞いてたのと違うなって思ってたのよ」

 

 母様も初めてって言ってたもの、と少女が呟くのを聞いた悟飯は、戦闘民族であるというサイヤ人の、殺伐とした生き方を改めて実感していた。それが悪いとはいう話ではないけれど、ナッツはまだ子供なのだ。一度くらい普通に遊園地で遊ばせてあげたいと、使命感にも似た気持ちを少年は抱いていた。

 

「遊園地、今度はお父さん達と皆で、ベジータさんも誘って行こうよ。きっと楽しいから」

 

 少年の真剣な面持ちに、ナッツはどきりとして目を逸らす。月を見たわけでもないのに、なぜだか心臓が跳ねていた。

 

「……そこまで言うなら、行ってあげてもいいわ。その時は、案内してね」

「うん、喜んで!」

 

 にこにこ笑う悟飯の表情がおかしくて、心が温かくなって、自然と少女の方も、同じ表情になっていた。

 

 会話に夢中の二人の背後で、7つのドラゴンボールが音も立てずに宇宙船から飛び出し、遠くの岩陰に落ちた。そして宇宙船の中から、悟空の姿をしたギニューが出てきた。気付いた少女が声を掛ける。

 

「あ、カカロット。どうしたの?」

「ベジータに言われてな。ギニュー達がボールを取り返しに来るかもしれねえから、様子を見てくる。悟飯もその子と仲良くな」

「お、お父さん!?」

 

 少年が顔を赤くする。悟飯に話し掛けられる前に先手を取って黙らせたギニューが、自然な様子でその場を離れようとしたその時、戦闘服を着た髪の無い小柄な男が、彼の行く手を塞ぐように降り立った。

 

「クリリンさん……?」

 

 その剣呑な雰囲気に、悟飯が訝しみ、そして歴戦の戦士であるギニューはこの時点で、嫌な予感を覚えていた。いつでも動ける心構えで、クリリンと呼ばれた男に笑い掛ける。

 

「よう、どうしたんだ? 怖い顔して」

 

 口調のわずかな違和感から、目の前の男が悟空ではないと確信したクリリンは、ギニューを指差して叫んだ。

 

「悟飯! ナッツ! 悟空は身体を乗っ取られてる! 今の悟空の中身は、あのギニュー隊長って奴なんだ!」

「「えっ!?」」

 

(やはりバレていたか!!)

 

 なぜ見抜かれたのかはどうでもいい。ギニューは即座に足元の土を前に蹴り飛ばし、とっさに顔を庇ったクリリンの横を走り抜ける。そして手をかざしてボールを引き寄せ、飛び立とうとした身体がつんのめる。振り返ると、彼の着ている胴着を、少女が固く握り締めていた。彼女の表情を見たギニューは、背筋が凍るような、本能的な恐怖を感じた。

 

「へえ、あなた、カカロットじゃなかったってわけ……」

 

 地獄の底から響くような声。羞恥と怒りに顔を染め、震えながら壮絶に笑うナッツ。発せられる殺気は、人というより猛獣のそれに近い。このままでは殺されると焦ったギニューが叫ぶ。

 

「ま、待て!! 今オレが死ねば、この身体は元に戻せんぞ!!」

「じゃあ、死なない程度に痛めつけてあげる!!」

 

 即答したナッツが跳躍し、全身の勢いを乗せて振り上げられた足がギニューの顎を強打し、吹き飛ばす。

 

「ナ、ナッツ……!」

 

 顔色を変え、父親の身体への攻撃を止めようとする悟飯を、少女が手で制する。

 

「悟飯、ここで攻撃を控えたら、あいつの思う壺よ。ドラゴンボールがまた奪われてしまうわ」

「で、でも、お父さんが……!」

「大丈夫。あの宇宙船にはメディカルマシーンがあるから、大怪我をしても治せるし、それに……」

 

 振り向いたナッツの笑顔を見た少年は、思わず見惚れてしまいながらも、身体が震えるのを止められなかった。

 

「今、私、とてもむしゃくしゃしてるの。邪魔しないでくれないかしら?」

「う、うん……」

 

 猛獣のような少女が、牙のように拳を構えて飛び掛かる。襲われたギニューが必死に応戦するも、身体の動きがどこかぎこちなく、ガードを食い破られ、全身に打撃を浴びてしまう。

 

 その光景を目の当たりにした悟飯は、父親の身体を奪ったギニューに、心底同情していた。

 

 

 

 そして同時刻、スカウターで異変を見て取った隊員達が立ち上がる。

 

 ギニュー隊長がナッツも含めた3人に囲まれており、その戦闘力がみるみる低下していく。

 

「おい! ギニュー隊長が!」

「やばいぞ、これは……!」

 

 狼狽するジースとグルドが叫ぶ。何かあれば撤退しろとは言われているが、この状況でそれをした場合、ギニュー隊長が殺されてしまう事は明白だった。

 

「正直、今のオレ達が行くのは危険だが……」

「気にしている場合じゃないな!」

 

 バータとリクームが笑う。どれほど危険であれ、共にずっと戦ってきたギニュー隊長を見捨てる選択など、彼らには有り得なかった。ジースが音頭を取って叫ぶ。

 

 

「ギニュー隊長を助けに行くぞ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

 

 手を重ねた5人は、心がひとつになるのを感じていた。死にに行くのではない。5人で生きて帰るのだ。

 

「……ん?」

 

 妙な違和感を覚えた4人は、手を重ねた5人目を見る。そこにいたのは、真面目な顔のギニュー隊長だった。

 

「えっ? 隊長?」

「す、すまねえ。なんかオラもやった方がいいかなあって、つい……」

 

 笑って頭をかく悟空。そのへらっとした口調や表情は、ギニュー隊長と全く掛け離れている。だが外見は間違いなくギニュー本人という光景に、隊員達が頭を抱えた。

 

「や、ややこしい……!」

「隊長の中の奴! お前も来るんだ! 急げ!」

 

 ギニュー隊長がたとえ殺されかけていようと、元の身体に戻ってもらえばいい。そう考えた4人は、悟空を連れて全速力で飛び立った。

 

 

 

 フリーザの宇宙船の上空にて。

 

 ナッツとギニューとの戦いは、少女の優位に傾きつつあった。

 

 二人の戦闘力はほぼ互角だが、ギニューの方は悟空の身体に馴染んでいない事に加え、文字通り子供であるナッツ程に小柄な戦士と戦った経験はそう多くなく、俊敏に動き回る少女の動きを捉えきれずにいた。

 

「お、おのれ! これならどうだ!」

 

 全身に傷を負い、息を切らせたギニューが、ナッツに向けて渾身のエネルギー波を撃ち出すも、少女は迷わず両腕を交差し、真正面から突っ込んだ。一瞬後、爆炎を突破して現れた少女は、身体から煙を上げながら、驚愕するギニューの至近距離に顔を近づけ、獰猛に笑う。

 

「ギニュー隊長にしては、可愛らしい攻撃ね。捕まえたわ」

 

 ナッツは彼女を捕えようとするギニューの腕を躱して懐に潜り込む。そして小さく息を吸い、両腕が霞んで見えるほどの連撃を、彼の腹部に叩き込んだ。

 

「ぐわあああああっ!?」

 

 外見からは想像できない程の重い打撃の数々に、ギニューが目を剥き、吐血する。頬に飛んだ血の滴を拭いながら、少女は残酷に笑った。

 

「やっぱり身体を奪っても、カカロットの力を使えるわけではないみたいね」

 

 もし使えるなら、正面から攻めてくるだけでいい。それをせず、正体がバレてもすぐさま戦おうとしなかった時点で、ナッツは相手の戦闘力が、そう高くない事を見抜いていた。

 

 少女の身体がぶれながら消え、体勢の崩れたギニューの頭上に現れる。真上に高く掲げた右脚を、踵落としの要領でそのまま脳天に振り下ろす。

 

 地面に叩き付けられ、声も上げられずに倒れるギニューに向けて、少女が手をかざし、止めの赤いエネルギー波を打ち下ろそうとした時、悟飯が叫ぶ。

 

「もう止めて! お父さんが死んじゃうよ!」

「……安心して。私達サイヤ人は、この程度で死にはしないわ」

 

(とはいえ、これ以上は流石に危険ね)

 

 ナッツが攻撃を止め、小さく息をついた、その時だった。

 

 

「や、やべえぞ! オラが殺されちまう!?」

「お前じゃない、隊長だ!」

 

 その場の全員が声のした方を見た。そこにいたのは、ギニュー特戦隊の5人。まだ距離は遠いが、全員がナッツ達の方へと向かって来ている。

 

 

「「「「ギニュー隊長おおお!!!!!」」」」

 

 

「あの人達、また来たの……!!」

 

 ナッツは瀕死のギニューから意識を逸らし、迫る彼らを見て、唇を噛む。全員手負いで戦闘力が半減しているとはいえ、絡め手が厄介なグルドもいる。悟飯やクリリンがいても、油断できる相手ではない。月を作るべく、力を集中する。

 

(気は進まないけど、全員半殺しにするしかない……!)

 

 

「お、お前達……!!」

 

 倒れたギニューは、部下達が命令に反して救援に来た事を、嬉しく思うと同時に、何故来てしまったのかと、叱りつけたい気持ちを抱えていた。

 

 こうなる事が予想できたから、何かあれば自分を見捨てて逃げろと言ったのに。娘だけでなく、戦いの気配を察知したベジータも直に来るはずだ。このままでは全員殺されてしまう。

 

 上空のナッツを見る。彼女の意識は部下達の方に向いている。身体を奪うなら、今しかない。

 

 

「チェンジ!!」

 

 

 叫んだギニューの身体から、ナッツに向けて光が飛び出した。




 次回の話で、ギニュー特戦隊との決着がつく予定です。
 更新は遅れるかもしれませんが、気長にお待ちくださいませ。
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