金色の大猿とフリーザの拳が衝突し、生じた衝撃波が轟音と共に周囲の地面を吹き飛ばしながら星を揺るがせる。
『ガアアアアアアッ!!!』
「ぬううううううっ!!!」
咆哮し、絶叫しながら、二人は互いに相手を殴り抜かんと激突した拳に力を込める。周囲の大気が雷を纏わせながら発光し、掻き乱された大気が激しく吹き荒れ天候までをも変えていく。
さらに十数秒が経過した後、拮抗して逃げ場を失った二つの力がとうとう臨界を超え、一瞬の閃光と共に大爆発を巻き起こした。
飛び離れたナッツは素早く口を開き、フリーザに向けて真紅の巨大なエネルギー弾を凄まじい速度で連発する。1つ1つが直径10メートルにも及び、小惑星程度なら消し飛ばせる威力を秘めた無数の破壊の光が、瞬く間に逃げ場となる空間を埋め尽くしてフリーザに迫る。
「この程度で!」
直撃必至のその状況で、フリーザは加速し、あえて前へと身を躍らせる。高速で飛ぶ無数のエネルギー弾の、あるかなしかの僅かな隙間を何度も潜り抜けてジグザグに飛び、今も新たなエネルギー弾を撃ち続ける大猿の顔面付近にまで肉薄する。
『!?』
ナッツが驚愕に目を見開いた次の瞬間、フリーザの拳が、その顔面を殴り飛ばしていた。あまりの衝撃で一瞬意識が飛び、さらに至近距離から放たれたエネルギー波が、ナッツの頭部に直撃し、爆発する。
爆炎と轟音で感覚を奪われた大猿が、それでも気配でフリーザの動きを察知し、戦慄する。彼女の肩を超え、背中側に回り、尻尾を狙う動き。半ば反射的に、身体が動いていた。
『触るなああああ!!!!』
瞬時に身体を回して尻尾を遠ざけ、同時に気配で察知した位置に向けて、巨大な拳を振り下ろす。視界を塞いだにも関わらず、予想外の反応の速さにフリーザが驚き、とっさにその攻撃をガードするも、大きく弾き飛ばされる。
尻尾を切られかけた恐怖で、ナッツの額に汗が浮かび、荒々しく呼吸を繰り返す。未だ父様やカカロットや悟飯にも及ばない今の自分が戦えているのは、超サイヤ人の力に目覚めた上で、大猿に変身しているからだ。もし尻尾を切られたら、変身が解けて人間の姿に戻った私は、成すすべなく殺されてしまうだろう。
死ぬのはもちろん怖かったけど、それ以上に、父様と母様の仇を討てなくなる事の方が、ずっと怖かった。自分までフリーザに殺されてしまっては、地獄で待ってくれている二人に、顔向けができなくなってしまう。
一方フリーザは、そんな彼女の様子を見て、にやりと笑った。弱者の見せる恐怖には、人一倍彼は敏感だった。フルパワーを出していないとはいえ、確かにこの超サイヤ人は、自分に迫る程に戦闘力を高めているが、所詮中身は10年も生きておらず、少し前まで自分の無力さに震えていた小娘に過ぎない。
「超サイヤ人、さっきまでの威勢はどうしたんです? 尻尾を狙われるのが、そんなに恐ろしいですか? ベジータさんがそんな姿を見たら、きっとがっかりしてしまいますよ」
『お前、お前がっ!! 父様を語るなああっ!!!』
びりびりと大気が震えるほどの大音声で叫び、足元の大地を蹴り砕きながら、大猿の巨体がフリーザへ突撃する。
挑発に成功したフリーザは薄く笑って、後ろへ飛んで距離を稼ぎながら、さっきのお返しと言わんばかりに、巨大なエネルギー弾をいくつも生成して撃ち放つ。威力が大きい分、やや速度が犠牲になっており、人間サイズの相手であれば容易く回避されてしまうだろうが、あの馬鹿でかい図体なら、話は別だ。
ナッツは迫りくるエネルギー弾を、ステップで辛くも回避するも、その動きを予測して放たれていた2発目が左上腕部に直撃して爆発し、金色の毛皮を焼き焦がす。衝撃でたたらを踏んだところへ、さらに放たれたエネルギー弾が何発も高速で迫り、ナッツは避けられず、両腕を上げてガードを固める。
連続する熱と衝撃と痛みに襲われながら、少女は焦りを感じ始めていた。大猿化した今の自分にとって、消耗もダメージもまだ大した事は無いが、戦いの主導権を握られてしまっている。
人間サイズでありながら、変身した自分と互角の相手と戦うのは、生まれて初めての経験だった。高いレベルの連携を見せながらも、一人ひとりは彼女よりも格下だったギニュー特戦隊ともまた勝手が違う。
戦闘力が拮抗している今、巨体の分、素早さや小回りではどうしても負けてしまう上に、死角も多く、被弾面積も大きいというデメリットが、浮き彫りになってしまっている。星を破壊せず、軍隊や住民を短時間でどれだけ殺せるかという勝負なら、圧倒的に分があるのだが。
少女の喉から、獣の唸り声が漏れ始める。痛みと苛立ちによって、抑え込んでいたはずの破壊衝動が再び増大し、少女の理性を奪わんとしていた。
(駄目よ!? こんな時にまた理性を失ったら、あっという間に殺されてしまう!)
ナッツは必死に獣めいた衝動を抑え込もうとするが、フリーザの放った攻撃がさらに胴体に直撃し、戦闘服の一部を砕いた瞬間、少女は制御しきれない怒りで、自分の視界が、赤く染まり始めるのを感じた。
そうだ。フリーザは母様だけでなく、父様まで殺したのだ。この感情を、我慢などする必要があるものか。全てぶつけて、滅茶苦茶にしてやらねばならない。
ナッツは自分の理性を保とうとする試みを放棄する。かろうじて身体の制御に介入できる部分を残し、それ以外の大部分を、自分自身の感情と衝動に委ねる。
殺してもなお飽き足らぬ仇に向けて、怒りに支配された大猿が一際大きく咆哮する。前傾姿勢となった巨体が、弾丸のように飛び出していく。自分でも怖くなるほどの力が、全身に漲っている。そしてフリーザの驚愕した表情を見て、これが正解なのだと、少女はおぼろげながら理解した。
それからのナッツの戦いは、捨て身とも言えるほどの、凄まじいものだった。
「くっ、さっさとくたばれ! 醜いサルが!」
フリーザは後ろに下がりながら、矢継ぎ早に何十発ものエネルギー波を繰り出しているが、ナッツはそれらを避けるどころか、ガードする素振りすら見せない。当然、攻撃のことごとくが直撃して爆発し、その身体を傷付けるも、大猿の突撃は止まらない。多少のダメージは物ともせず、受けた痛みを更なる怒りと変えて咆哮する。
スピードはフリーザの方が上だが、攻撃しながら後退するフリーザよりは、ただ全力で迫るナッツの方が速い。そしてついに、爆炎を突っ切ったナッツが、全身から煙を上げながらフリーザに肉薄し、加速した巨体の運動エネルギーを全て乗せた拳を叩き込む。
フリーザは当然避けようとするが、その逃げ場を塞ぐように、大猿の口から高出力のエネルギー波が放たれる。飛び込むわけにもいかず、フリーザはやむなくガードを固め、迫る拳を受け止める。そして拳が命中した瞬間、轟音と衝撃波が大気を震わせた。
「があああっ!?」
ガードによってもなお防げぬ大威力で、フリーザの身体が吹き飛ばされる。ナッツはそれを追いながら、真紅のエネルギー弾を連発する。先程と違い、近距離から放たれた巨大なそれらを、避ける手段は無い。連続する爆発が、フリーザに少なからぬダメージを与えていく。
「舐めるなああ!!」
だが近距離で避けられないという条件は、ナッツの方も同じだ。フリーザは大猿の懐に飛び込み、全力でエネルギー波を撃ち出した。広範囲を薙ぎ払える分、無駄の大きいナッツの攻撃と違い、現時点でのフリーザが出せる最大火力が余す事無くその巨体に叩き込まれる。
『グアアアアアッ!?』
ナッツは耐えきれず数百メートルを吹き飛ばされ、その巨体が何度も地面をバウンドするも、即座に膝をついて立ち上がる。口元から血を流しながら、それでも仇の姿を赤い瞳で睨み付け、再び咆哮しながら突撃を開始する。
全身の負傷から血を流す大猿を、フリーザは憎々しげに睨み返す。攻撃をガードし続けた両腕が鈍く痛んでいる。この数分間の戦闘で、与えているダメージは、彼の方が確実に大きいが、何度退けても立ち向かってくるナッツの猛攻の前に、彼の身体に蓄積されたダメージも、無視できないほどになりつつあった。
突っ込んでくるだけで理性が無いのならと、尻尾を狙ってみた事もあったが、その巨体と比べれば遥かに細く、また激しく動く尻尾に遠くから攻撃を当てるのは至難の業で、かと言って近付いて死角に潜り込もうと、あの大猿は気配か何かでこちらの位置を完全に把握しているらしく、危うく踏み潰されそうになった事もあった。
星を壊そうとしても、即座にエネルギー波で迎撃された。逃げに徹して距離を稼ごうとしても、たった一歩で3メートル以上を稼ぐ大猿の移動速度は、小回りはともかく前進については予想以上に速く、引き離せず一方的に撃たれる事になってしまった。
「なら、これならどうだ!」
フリーザは掌の上に、高速回転する気の円盤を作り出す。宇宙の帝王である自分が、正面から相手を叩き潰すのではなく、こんな格上殺しの技を使うのはあまりに屈辱だが、相手が避けないのなら、これが一番有効な技だ。
デスソーサーと名付けたそれを、迫る大猿に投げ放つ。あの巨体なら、外す方が難しい。当たればどんな物でも切り刻む上、仮に避けてもこの円盤は彼の意思で操作できる。あわよくば後ろから尻尾を切断できるし、それが無理でもどこまでも追い続ける。
そしてナッツは、自分に向けられたその技の特性を理解した上で、避けなかった。突撃の速度を維持したまま、気を集中させた右腕を、気の円盤に叩き付ける。ただでさえ傷ついた毛皮と筋肉が、高速回転する刃に切り裂かれ、大量の血が噴き出した。
人間がこんな事をすれば、即座に腕を斬り飛ばされてしまっただろうが、筋肉で膨れ上がった大猿の腕は、人間の身長ほどに太く、またナッツは気の円盤を食い込ませる角度を巧みに計算していた。右腕の肉を切り裂き続けるデスソーサーが、集中させたナッツの気に相殺され、見る間に小さくなっていき、やがて消滅した。
そのあまりの力技に、フリーザは歯噛みする。あの金色の大猿はどれだけの生命力を持っているのか。このままダメージの応酬を続けるのは得策ではない。あの超サイヤ人を殺し切る前に、自分の方が力尽きてしまうかもしれない。
そこでフリーザは、自分が敗北の可能性を感じ始めた事に気付き、愕然とする。
(こ、このオレが、たかがサイヤ人を相手に、追い込まれているだと……?)
屈辱と怒りに身を震わせるフリーザ。実のところ、捨て身で攻撃を受け続けたナッツのダメージは現時点でかなり大きく、このまま攻防を続ければ、かなりの確率で彼は勝利していただろう。
だが少女はたとえ自分がここで死んでも、フリーザさえ殺せれば構わないと覚悟していた。一方フリーザの方は、超サイヤ人に殺されてやるつもりなど微塵も無い。
その覚悟の差が、フリーザを、物理的にも、精神的にも追い込んでいた。ナッツの拳を紙一重で避けるも、直後に跳ね上げられた蹴りをまともに食らってしまう。回転しながら上空へ飛ばされるフリーザに、地を蹴り跳躍した大猿が迫る。
フリーザは考える。フルパワーなら、あの超サイヤ人を確実に殺せる。だがおそらく力を引き出す前に、十数秒は無防備になってしまう。時間が必要だ。食い千切ろうというのか、巨大な牙を見せながら迫る大猿の顔に向けて、彼は両手をかざし、気を集中する。
次の瞬間、大猿の全身が、気で形成された巨大な球体の中に取り込まれていた。
『ガッ……!?』
暴れようとするも、身動きが取れないでいるナッツの様子に、フリーザはほくそ笑む。この巨体を拘束できるかは賭けだったが、どうにか上手くいった。彼はそのまま球体ごと、大猿の身体を地上へと射出した。猛烈な勢いで大地に激突した球体は、一瞬の閃光の後にドーム状の大爆発を引き起こす。
激しい爆風に煽られながら、フリーザはさらに上空へと距離を稼ぎ、力を集中し始める。あれで死ぬほど柔ではないだろうが、奴が復帰してくるまでには、フルパワーを発揮できるだろう。その時が、あの超サイヤ人の死ぬ時だ。
だが、もし、フルパワーでも殺せなかったら? 生まれてこの方、ほぼ使った事のないフルパワーを振るえるのは、おそらく3分程度が限度だろう。その間防御に徹するなどして、耐えられてしまったら、疲弊しきった自分に、もはや打つ手はない。
一抹の不安が、彼の頭をよぎった瞬間、不意に、ナメック星の空が黒く染まった。
地球の神とミスターポポが、まさにこの時、揃えたドラゴンボールで、フリーザ一味に殺された全員を生き返らせたのだ。そして一時的にせよ最長老が生き返った事で、石化していたナメック星のドラゴンボールも、再びその輝きを取り戻した。当然フリーザは、そんな事情など知る由もない。
「な、なんだ!? これは!?」
数日滞在しているが、この星に夜はないはずだ。にもかかわらず、太陽が消えており、ただあの超サイヤ人が作った月もどきのみが、空に輝いている。得体の知れないその現象に、彼は覚えがあった。
「これは、まさか……」
そして暗闇の中で輝く光の柱を遠くに見つけ、フリーザの顔が歓喜に満たされる。
「やはり!! ドラゴンボール!!」
夢にまで見た不老不死を前に、彼は矢も楯もたまらず、最高速度で飛び出した。あの超サイヤ人と、馬鹿正直に命のやり取りをする必要は無い。もちろん勝つ自信はあるが、不老不死になってしまえば、それはなお確実になるのだ。
10秒も掛からず、光の柱に辿り着く。蛇にも似た全長50メートルほどの光り輝く龍は、近くに来た彼を見下ろし、言った。
『どうした。願いはまだか。三つ目の願いを言うがいい』
フリーザは満面の笑みで叫んだ。
「このフリーザを、不老不死にしろーーーーー!!!!」
『…………』
龍は反応しない。まるで彼の言葉が、聞こえていないかのように。
「な、何だと……?」
フリーザは思い出す。ギニュー隊長が揃えてきたドラゴンボールに、不老不死を願っても全く反応が無く、願いの叶え方を聞き出す為に、生き残りのナメック星人を探しに行かざるを得なかった事を。
まさか、願いを叶えられるのは、ナメック星人だけなのか。そして奴らは、彼が悪しき者だからと、ボールの譲渡や協力を頑なに拒んでいた。ならば最初から、どうやっても不老不死は叶わなかったという事になる。
呆然とするフリーザ。その隙を逃さず、復帰してきた金色の大猿が、一瞬のうちに、彼の身体を掴んでいた。
「なっ!? しまっ……!!」
ナッツは両手にぎりぎりと力を込めながら、獣の顔に勝ち誇った笑みを浮かべる。
『残念だったわね! ナメック語で伝えないと、願いは叶えられないのよ!』
自分も同じ失敗をしたナッツが、偉そうに叫ぶ。両腕の筋肉が、さらに一回り膨れ上がる。さしものフリーザの肉体も、軋みだすのが、手ごたえで判った。
『このまま握り潰してやるわ!!! せいぜい苦しんで死になさい!!!』
凶暴性と獰猛さと嗜虐心と、怒りと復讐心と殺意と歓喜と、その全てが混ざり合った、悪鬼のような形相だった。
フリーザは脱出しようとするも、単純な筋力では今の彼女が上だ。これでとうとうこいつを殺せると、確信した少女の手の中で、フリーザが何かを呟いた。
「80パーセント……」
言葉と同時に、フリーザの戦闘力が上昇し、その肉体も膨張を始めていく。内側からの力が強まっていく事に、ナッツは焦り出す。
『な、何なのこれは!? まだ変身を隠していたっていうの!?』
「90パーセント……!」
『さ、させるものですか!!』
金色の大猿は吠えながら、全ての力をその両腕に集めるも、それをなお上回る速度でフリーザの力は増していき、少しずつ、彼女の両腕をこじ開けつつある。死を目前にしたフリーザの生存本能は、彼自身も驚くほどの速度で、その力の全てを引き出しつつあった。
「は、ははっ! 残念だったな、超サイヤ人! 100%のフルパワーで叩き潰してやるぞ!」
『こ、こんな……! ふざけるな……! この程度で……!』
負傷してなお、1億にも届かんとする戦闘力。絶望的な状況で、それでも少女はなお諦めず、決死の力をフリーザに加え続ける。
それをあざ笑うように、彼の力がフルパワーに到達せんとした、その瞬間、ぼきりと、嫌な音がした。
「……は?」
フリーザは間の抜けた声を上げ、へし折れた両腕を呆然と見つめる。超サイヤ人となり掛けたベジータが、最後に殴った、その箇所だった。
そして両腕が使えなくなった彼の身体を、ナッツは容赦なく全力で圧迫する。もはや抵抗できず、次々に全身の骨が砕けていく激痛の中で、混乱したフリーザが叫ぶ。
「馬鹿な! なぜだ! なぜこのオレが! こんなガキのサイヤ人ごときに!!」
そんな事、判りきっている。私が強かったからではない。戦闘力では負けていた。ただ母様を殺されたから、私と父様は、お前を必ず、殺すと決めたのだ。こいつが母様に、あんな真似さえしなければ。
そこでふと、ナッツは浮かんだ疑問を口にする。これを逃したら、もう聞けなくなる。
『フリーザ、私の母様を、なぜ殺したの?』
母様の命は、残り一ヶ月もなかったと、父様はお医者様から聞かされていたという。具合の良い時にしか、任務に出られなかったとはいえ、上級戦闘員だった母様の健康状態は、当然フリーザにも報告されていたはずだ。
放っておいても、病気で死んでいたはずの母様を、どうしてわざわざ、激戦区の惑星に、たった一人で送り込むような真似をしたのか。
少女の問いに、フリーザは一瞬、虚を突かれたような顔になる。それから、憎たらしい顔で笑った。
「さあな? 単にお前にムカついただけだと言ったら、どうする?」
『死ねっ!!!!!!!』
少女は渾身の力をフリーザに加える。ぐしゃりと、残った骨と内臓が、全て潰れる手ごたえがあった。
手の中で白目を剥いたフリーザは、呼吸もしておらず、心臓も潰れており、完全に死んでいるかのように見えた。
だがナッツは、肩から下が無惨に潰れた状態のフリーザが、まだ1000万ほどの戦闘力を残しているのを感じていた。
(信じられない。これでまだ生きてるっていうの……?)
おそらく隙を見せた瞬間、不意を打って襲い掛かってくるつもりだろう。そうして仮に尻尾を切られたら、この状態からでも逆転されるかもしれなかった。
頭を潰す事も考えたが、それで殺せる保証はない。少女はフリーザを掴んだ手を大きく振りかぶり、ぐしゃぐしゃになったその身体を、天高く放り投げた。死んだ振りをしていたフリーザが驚いて地上を見る。そこで見えたのは、金色の大猿の大きく開いた口の中に、かつてないほどの出力を秘めた、真紅の光が収束されていく光景だった。
「ち、ちくしょおーーーー!!!」
叫ぶフリーザに向けて、ナッツの放った極大のエネルギー波が直撃し、ナメック星の上空に、大爆発を巻き起こした。
眩い閃光に照らされ、暴風にボリュームのある長い髪を煽られながら、金色の大猿はその爆発を見上げ、父親の事を思い出していた。
『……汚い花火ね』
奇しくも、惑星ベジータを破壊した際のフリーザと、似通った台詞を言い放ち。
暗闇に浮かぶ月から降り注ぐブルーツ波を浴びながら、復讐を果たしたサイヤ人の少女は、尻尾を大きく振り回しながら、歓喜のままに咆哮した。
Q.フリーザ様が思わせぶりな事言ってたんですけど……。
A.最終回後のエピローグでその辺やります。
とうとうここまで書けました。
評価、感想、お気に入り、誤字報告などありがとうございます。
次が最終話です。書きたい事がたくさんありますので、おそらくは2話分割になります。
遅くなるかもしれませんが、気長にお待ち下さいませ。