女子力の話をしていた母親が、ふと娘に言った。
「そういえばナッツ、あなたが地球の料理を食べる所を見ていたのだけど……凄い食欲だったわね。そんなにおいしかったの?」
満面の笑みで、娘は応える。
「はい、母様! どの料理も信じられないくらいおいしくて、食後のデザートも凄かったです!」
「そう……良かったわね」
微笑んで娘の頭を撫でる母親の顔に、自分も食べてみたかったと、わずかな未練を見て取って、しまった、とナッツは思ってしまう。
(ドラゴンボールでも生き返れなかった母様に、地球の料理を食べれられる機会なんて、もう無いのに……!)
そんな二人の様子を見て、父親が言った。
「リーファ、いつか、オレが作って食わせてやる」
「えっ……?」
「父様も女子力を……?」
「違う。だがオレもこの後、ナッツと地球に住む予定だからな。そこで料理の作り方を学んで、オレがまたここに来る時、お前に好きなだけ食わせてやる。……いつになるか、わからんがな」
ぶっきらぼうなその言葉に、母親は泣きそうな顔で笑った。
「嬉しいです。ベジータ様……!」
自分が母親に、してあげられる事を見つけた娘も、縋り付いて叫ぶ。
「母様! その時は私もお手伝いします! いつか私が食べたのよりもおいしい料理を、作れるようになりますから!」
「ええ、ナッツもありがとう。優しい娘を持って、私は本当に幸せだわ」
母親に強く抱き締められながら、娘は猫がするように、柔らかなその胸に、嬉しそうに頭を擦り付けた。
「……けど、焦らないでいいですからね? 刑期は当分ありますし、私はずっと待ってますから」
「はい、母様!」
「大丈夫だ。もうお前やナッツを悲しませないよう、オレはもっと強くなってやる」
その言葉に、リーファは思わずぱたぱたと、微笑みながら尻尾を振っていた。
「ええ、それでこそ、私の大好きな、ベジータ様です」
「……っ!?」
真っ赤になった顔を逸らしながら、父親は続ける。
「……ほ、他に何か、お前にしてやれる事はないか? ここにいられるのは1日だけだが、オレにできる事なら、何でもしてやる」
「何でも、聞いて下さるんですか?」
「ああ、何でも言ってくれ」
そこで彼女は、にっこりと、花が咲くような笑みを浮かべた。
「では、ベジータ様と、また戦ってみたいです。出会った時と同じように。それがずっと、私の夢でしたから」
父様と母様の馴れ初めは、聞いた事がある。惑星ベジータで生まれた母様は、生まれつき高い戦闘力を持ったエリート戦士候補だったけど、保育ポッドから出てすぐに、病気で長時間は戦えない事が判明して、整備員見習いの仕事に回されていた。それはご両親が、母様を思っての事だったけど、母様はずっと、戦士として戦いたいと思っていたのだ。
そしてある日、遠征から帰って来た父様が、偶然スカウターのスイッチを切り忘れて、母様の戦闘力に気付いて興味を持ち、その場で半ば強引に戦いを挑んだのだ。二人とも子供離れした戦闘力を持っていて、互いの全てをぶつけ合うような激しい戦いは、とても楽しかったそうなのだけど。
父様が、懐かしいものを見るような、遠い目をして口を開く。
「……あの時は、途中でお前が倒れてしまったんだったな」
夜のような、黒い瞳の少女。血を吐いて、もがき苦しみながら、それでも、もっと戦わせて欲しいと、泣きながらこちらに手を伸ばしていた。その手に心を、掴まれてしまっていた。駆けつけた大人達に彼女が運ばれていくのを、ただ茫然と眺めていた。
そして今、すっかり成長した彼女が、同じ瞳で嬉しそうにこちらを見つめている。
「ええ。それでベジータ様はすぐ見舞いに来て下さって。その次の日に、王様から直々の命令で、王子の部隊に入れと言われた時は、本当にびっくりしました」
「お前の身体を心配していた両親には、済まない事をした」
「いえ、こちらで会った時、喜んでいましたよ。惑星ベジータの崩壊を生き延びたばかりか、可愛い孫の顔まで見る事ができたって」
「ならいいが……本当に今のオレと戦う気か?」
難しい顔をしている父親と、同じ事をナッツも考えていた。父様の戦闘力は、今や300万はあるのだ。昔の母様は、調子の良い時なら、父様にも匹敵する強さで、死んでから病気が治ったとは聞いているけれど、それでも今感じられる戦闘力は3万程度に過ぎない。
たとえ母様が大猿になっても、まだ10倍もの差がある計算だ。もちろん父様は手加減するだろうけど、力加減を間違ったら、きっと大変な事になってしまう。それに、そんな力を抑えた父様と戦って、母様は満足できるのだろうか。
「もちろん、お前がそれを望むのなら、オレは戦ってやる。だが、お前のためにも、なるべく手加減はしたくない。……本当に、良いんだな?」
「相変わらず、お優しいですね。ベジータ様は……」
母親の表情の変化に、ナッツは戸惑ってしまう。それは確かに笑顔だったけど、今までと全く違う、好戦的で獰猛な、戦闘民族の笑みだった。
「か、母様……?」
「離れてなさい、ナッツ」
纏う雰囲気も、剣呑なものへと変化していた。娘がおずおずとその膝から離れ、ゆっくりと母親が立ち上がる。父親は半ば反射的に、その場を飛び離れて身構える。
「はああああああっ!!!」
次の瞬間、気合いの声と共に、彼女の戦闘力が爆発的に増大した。
叫ぶ母親を中心に渦巻く凄まじい大気の奔流に、ナッツは吹き飛ばされそうになりながらも、目の前で起こっている現象を、驚愕の顔で見つめていた。
「か、母様の戦闘力が!? 200万……240万……まだ上がってる!?」
ベジータは驚きつつも、その口元に思わず笑みを浮かべていた。
「病気は治ったと聞いていたが、ここまでとはな……!」
そして10秒ほどが経過したところで、全身を包むオーラが安定し、彼女は小さく息をつく。限界まで上昇させたその戦闘力は、およそ300万にまで達していた。
既に臨戦態勢といった様子で、全身から戦意を発散しながら、リーファは彼に向けて微笑んだ。
「戦闘力のコントロールは、ちょっと難しいですね。ベジータ様とナッツがやっているのを見て、真似してみたんですけど」
面白そうに、彼も不敵な笑みを返した。
「何、見様見真似にしては上出来だ。もう少し訓練すれば、一瞬でそこまで上げられるようになる。……こんな風にな」
言葉と共に、ベジータは戦闘力を限界まで跳ね上げる。その自然な気の操作は、既に地球の戦士達と、遜色無い域に達していた。
「流石です、ベジータ様」
「お前もな。どうやってそこまで戦闘力を上げた?」
「3年前に死んでから、身体が軽くなった事に気付きまして。最初の頃は、寂しさを紛らわせるために訓練をしていたんですけど、いくらでも身体が動いて、だんだん楽しくなってきたんです。先程もお伝えしたように、ここには過去に死んだ達人も大勢いましたし、彼らにも付き合ってもらって、思う存分鍛える事ができました」
生き生きとした様子の母親を見て、ナッツも嬉しくなってしまう。母様は、全力で動くとすぐに苦しくなってしまうからって、昔はろくに訓練もできていなかったはずだ。
一方、父親の方は渋面になってしまう。地道な訓練で鍛えたという事は、つまり彼が数日前にナメック星に到着した時点で、既にここまで戦闘力を上げていたという事だ。確かに今は互角ではあるが。
「……オレの方は、少し前まで戦闘力2万にもなっていなかった。がっかりさせてしまったんじゃないか?」
その言葉に、リーファはきょとんとした顔になった。
「いいえ。ベジータ様なら、すぐにこのくらい強くなるって、信じてましたから。実際、あっという間に追い付いて来て下さって、本当に嬉しかったです」
嬉しそうに笑う彼女の、腰に巻かれた尻尾を見る。変身しなくてもドドリアに勝てたとは、確かに言っていたが。
彼自身もドドリアには思う所があったし、実際怒りのままに殺しもしたが、流石に戦闘力3000万に襲われたと聞いては、同情を禁じ得なかった。
「……ドドリアの奴、とんだ災難だったな」
「あのくらい当然ですよ。あんな事さえなければ、死ぬ前にベジータ様やナッツに、せめてお別れが言えたのに。あんなに悲しませる事は無かったかもしれないのに。楽しみすぎて邪魔されて、結局殺せなかったのは、少し心残りですけど」
その時リーファが見せた表情は、サイヤ人本来の凶暴性と冷酷さと、家族へ対する深い愛情が入り混じった、凄絶なものだった。滅多に見られない母親の一面に、感極まった娘が叫ぶ。
「母様、格好良いです……!!」
その頃、離れた場所で、包帯で全身を覆われて入院中のドドリアが、大きなくしゃみをしていた。
枕元にはフリーザ軍一同よりとカードが添えられた果物カゴが置かれており、見舞いに来たザーボンが、器用な手つきでリンゴをウサギの形に剥いていた。
母親の見せた戦闘力と、サイヤ人らしい言動に、尊敬の眼差しを向けていた娘が、ふとある事に気付いて青ざめる。父親の尻尾は、まだ生えてきていない。
(これって、父様の方が危険じゃないの……!?)
「と、父様! 早く超サイヤ人になってください! 激しい怒りです!」
「そう言われてもな……!」
父親の方も、そうでもしなければ不利だと気付いてはいたが。目の前に、ずっと会いたかった妻がいて、宇宙一可愛い娘もいて、フリーザも死んだのだ。
「こんな状況で、怒れるはずがないだろう……!!」
顔が綻ぶのを、抑えきれないといった様子の彼を見て、リーファはくすりと笑う。
「尻尾なんて、使いませんとも。私はただ、あの日の続きをしたいだけ」
あれから何度か戦ったけど、結果はいつも同じだった。全力を出そうとしても、身体の方がついてこなかった。諦めきれず、ずっともどかしい思いをしていたけれど、手が届かないと思っていたけれど、今ならば。
「あなたとまた戦いたくて、私も強くなりました。どうかまた、私と戦って下さいませんか、ベジータ様」
まるで舞踏会で、ダンスでも申し込むかのように、差し伸べられた手を、彼は強く握り締める。
「望む所だ。オレの方もずっと、お前とこうしたいと思っていた……!」
そして二人同時に、空いた手を互いに向ける。その手に収束させたエネルギーの光に照らされながら、二人の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。
「では、始めましょうか? 私、もう、我慢ができそうにないです……!」
「ああ、好きなだけ相手してやる。お前の方こそ、途中で音を上げるんじゃないぞ……!」
次の瞬間から、そこは戦場と化した。それは同時に、愛し合う二人が、互いの全てをぶつけ合う場所だった。
上空で、地上で、目まぐるしく動きながら、相手を倒すべく、本気で肉体とエネルギーをぶつけ合い、傷つき消耗しながらも、それでも幸せそうに笑う両親の姿を、ナッツはきらきらした瞳で見つめていた。戦闘民族にしか理解できない、絆と愛情が、そこにあった。
(私も、またいつかは悟飯と、あんな風に……)
左肩の傷に、自然と手が伸びる。それを付けられた時の、激しい痛み。向けられた殺意が、どうしようもなく嬉しかった。あの優しい少年と、日々を過ごしたいという想いと、殺し合いをしたいという衝動は、少女の中で全く矛盾しない。
激しく戦う両親の姿に、自分と悟飯を重ね合わせる。心臓が高鳴って、身体が熱くなって、自然と呼吸が、速くなっていた。知らず腰から解けた尻尾が、何かを求めて、ゆらゆらと動き始める。
そんな彼女の姿を、変な子を見る目で見ながら、話し掛ける男が一人。
「その、少し、いいだろうか」
急に声を掛けられ、びくっと身体を震わせた少女が振り向き叫ぶ。
「だ、誰よ!?」
そして男の顔を見たナッツは驚愕する。口元や顎に髭を生やしているが、その顔は、彼女の父親とそっくりで、母親の持っていた、歴史書の表紙で見た事があった。また彼の着ている、紋章が描かれた戦闘服と赤いマントは、サイヤ人の中でも王族にしか着用の許されないものだ。
それに何よりも、男が持つただならぬ威厳と、どこか人を引き付けるような雰囲気が、その素性を雄弁に物語っていた。
「も、もしかしてあなたは……父様のお父様で、私のお爺様ですか?」
「……ああ、オレはお前の祖父、ベジータ3世だ」
そこでナッツは背筋を伸ばし、母親に教わった優雅な所作で一礼した。
「失礼致しました。お初にお目に掛かります、お爺様。ベジータ王子の娘、ナッツと申します」
「そう固くならず、普段どおりでいい。今やお前達の方が、オレよりもよほど優れた戦士なのだからな。お前達がフリーザを討ち果たした戦いも、見せてもらった。見事なものだったぞ」
彼は以前から、息子であるベジータの様子を確認するため、事あるごとに現世の光景を眺めていたが、彼女が生まれた時からは、その頻度がますます多くなり、ほぼ日課となっていた。日々可愛らしく、また強く成長する孫娘の姿は、彼の心の癒しであり、初めて会うという気は全くしなかった。
「……っ! ありがとうございます! お爺様!」
ぱあっと、顔を輝かせる孫娘の姿に、ベジータ王は目を細める。自らの血を引く宇宙一可愛い孫娘が超サイヤ人となり、あの憎きフリーザを倒した事は、とても誇らしく、胸のすくような出来事だった。
それだけに、彼は偉業を成し遂げた孫娘に対して、後ろめたい思いを抱いていた。圧倒的な戦闘力とサイヤ人としての気質を併せ持つこの娘は、惑星ベジータさえ健在ならば、間違いなく将来は女王として、全てのサイヤ人から讃えられる立場になれたはずだ。彼女が得られるはずだったものは、自分の失策で、台無しになってしまったのだ。
やや項垂れながら、ベジータ王は頭を下げる。その姿に、少女は狼狽する。
「お、お爺様……!?」
「ナッツよ。惑星ベジータと民を、お前達に遺してやる事ができず、済まなかった。オレのせいで、苦労を掛けてしまったな」
自分があの時、しくじらなければ、息子にも、孫娘にも、もっと恵まれた生き方をさせてやれたのだ。任務に出ていた戦闘員も含めて、サイヤ人は全員、惑星ベジータに集合しろというフリーザからの命令を、どこかおかしいと思いつつ、逆らう事ができなかった。
フリーザ軍の戦力のおよそ半分を占め、命令にも忠実に従ってきたサイヤ人を、まさか切り捨てる事はあるまいと、油断があったのかもしれない。奴の目論見に気付いてさえいれば、正面からは勝てなくとも、宇宙のあちこちに民を逃がす事くらいはできたはずだ。
そうすれば、たとえ惑星ベジータは破壊されても、いずれどこかの惑星を乗っ取って、再興できる目はあったというのに。今やサイヤ人は数人しか残っておらず、その血が薄まり絶えてしまう事は、時間の問題だった。
「オレは、駄目な王だ……戦闘民族の王だというのに、フリーザにも、破壊神ビルスにも、戦わず頭を下げてばかりで、そして結局、何一つ守れなかった……!!!」
戸惑う孫娘を前に、ベジータ王は自らの不甲斐なさを嘆いていた。サイヤ人の王は、誰よりも強くあらねばならない。だから彼は生前も死後も、決してこのような心弱い真似をした事はなかったが、孫娘と息子と、そして民への申し訳なさから、気付けば言葉が溢れていた。
そんな王としての苦しみを、ナッツは心から理解できたわけではなかったけど、目の前で嘆き苦しんでいる祖父の事を、何とかしてあげたいと思った。自分が苦しい時に、父親がいつもしてくれるように、寄り添って、その身体に縋り付く。
目を見開いて孫娘を見る彼に、少女は優しく微笑んで言った。
「お爺様、惑星ベジータが無くても、私は十分に幸せです。父様と母様が愛してくれましたし、立派なサイヤ人の戦士として育ててくれましたから」
「……だがそれでも、フリーザや破壊神ビルスを前に、オレは何もできなかった……」
ツフル人の支配を打ち破った後、皆に楽をさせる為、手を組んだコルド大王との関係は、上手くいっていたように思う。
戦士達を戦闘員として派遣する代わりに、最新型の宇宙船や戦闘服、スカウトスコープにメディカルマシーンの提供を受け、奪った星の売却も任せる事ができた。サイヤ人のみで仕事をしていた頃と比べ、負傷者や戦死者の数は大幅に減り、生活の質も大きく向上したのだ。
だが突然フリーザが軍を継いでからは、対等だった関係は、彼らを力で支配するような、奴隷めいた扱いに急変した。フリーザ軍にとっても、大事な戦力だったはずのサイヤ人を、奴が何故ああまで嫌っていたのか、今でもわからない。
エリート戦士達を集め、反乱を企てた事もあったが、王である彼自身の戦闘力すら、フリーザには遠く及ばないとわかっていたから、とうとうできずに、理不尽な扱いを耐えるしかなかった。
「大丈夫です。悪いのはお爺様でなく、フリーザですし、奴は私達サイヤ人の手で倒しました。それに、破壊神ビルスの事は……」
その名前は、父様から聞いた事があった。サイヤ人が宇宙のバランスを崩すからと、惑星ベジータを破壊しようとした、フリーザの何百倍、何千倍、それ以上かもしれない力を持つ恐ろしい神。
そんな存在に目を付けられた惑星ベジータが、その時滅んでしまわなかったのは、目の前にいるお爺様が、そいつを精一杯饗応し、地に伏せて必死に許しを請うたからだと、父様は言っていた。
私なら、そんな屈辱に耐えるくらいなら、たとえ敵わずとも向かっていただろうし、大概のサイヤ人はそうするはずだ。隠れて見ていた父様も、そう思ったそうなのだけど。
「父様が言ってました。昔は、お爺様の事を臆病者だと思っていたけど、私が生まれてから、お爺様の気持ちが理解できたって。自分のプライドを捨ててでも、家族や他のサイヤ人を守るために、王としての務めを果たした立派な人だと言っていました」
「なっ……!?」
その言葉は、ベジータ王に、頭を殴られるほどの程の衝撃を与えていた。呆然とするあまり、鬱々としていた感情も、どこかへいってしまっていた。
「あいつが、そんな事を……?」
あの破壊神の前にひれ伏す姿を、息子が隠れて見ていた事には、気付いていた。仕方のない事だったとはいえ、サイヤ人の中で最も強い王である自分が、情けない父親だと思われた事が、悔しくて、辛かった。苛立ちと鬱屈で、頭がどうにかなりそうだったが。
あの時の自分の行動の意味を、息子はわかってくれたというのか。
「はい。もし私と母様の前に破壊神ビルスが現れたら、オレも同じ事をすると言っていました。お爺様がそうしてくれたから、私は生まれる事ができたんだって」
「そうか……あいつがそんな事を……」
滲んだ涙に気付かれないよう、ベジータ王は天を仰いだ。心の中で暗く淀んでいた澱が、込み上げる喜びで、少しずつ溶けていくのを感じていた。
自分の血を引く者達がフリーザを倒した事よりも、たった今、孫娘の言葉によって、後悔ばかりだった自分の生涯が、報われたような気さえしていた。
空の上で、立派に成長した息子が、楽しそうに生き生きと、全力で戦っている姿を見る。そして孫娘の頭に、息子がいつもしていたように、そっと手を置いて、優しく撫でる。
気持ち良さそうに、孫娘が自分の手に、頭を擦り付ける。悪くない人生だと思った。
(……パラガスがこちらに来たら、謝らねばならんな)
そんな事を、ふと思う。息子を超える戦闘力を持つからと、星送りにかこつけて、過酷な環境の星に追放した奴の子供の名前は、確かブロリーと言ったか。今思うと、あの時の自分はどうかしていた。
整備員からの報告によると、パラガスは宇宙船を奪って、一人でブロリーのいる小惑星バンパに向かったらしい。その後の消息は不明だが、地獄に来ていないという事は、どこかで隠れて生きているのだろう。
息子や孫娘に、まだ生き残りのサイヤ人がいると伝えるべきか、一瞬迷ったが、止めておく事にした。パラガスは自分の事を恨んでいるだろうし、その恨みが、追放の原因となった息子に向かわないとも限らない。また、あのブロリーも、どこまで成長しているかわからない。
サイヤ人を殺すため、飛ばし子にまで追っ手を出したフリーザ軍ですら、彼らの事は見落としていたのだ。伝えなければ、息子達が彼らと関わる事は、おそらく一生ないだろう。奴に恨まれるのは、自分だけでいい。
両親の戦う姿を、隣で嬉しそうに眺める孫娘がいる。祖父は険の消えた顔で、棒状の携帯食料を差し出した。そういえば、あいつもこれが好きだった。
「食べるか? ナッツ」
「はい! いただきます、お爺様!」
むぐむぐと、美味しそうに携帯食料を食べる孫娘の頭を撫でながら、彼は遠くにいる息子に手を振った。
こちらを認めて、手を振り返すのが見えた。
Q.ブルマさんのハードル上がり過ぎてません? トランクス大丈夫?
A.リーファさんの事はあえて詳しく描写せずハードル下げようとも考えてたんですけど、できませんでした。原作ベジータ、好きでも無い人と子供作るような性格じゃないですので……(震え声)
ブルマさん頑張れ超頑張れとしか言えませんが、先の展開は一応考えてます。トランクスも未来からしっかり来ます。
ベジータ王、原作ではあんまり良い所なかった人なのですけど、この話は親子関係を重視してますので、こういう形になりました。この人も色々、辛かったんだと思います。
次の話は、ナッパやラディッツが出る予定です。
遅くなると思いますが、気長にお待ちくださいませ。