あるサイヤ人の少女の物語   作:黒木氏

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6.彼女が彼と戦う話(前編)

 ナッツはついに現れたカカロットを興味深く観察する。

 

 悟飯の父親。戦闘力5000.尻尾は無し。ラディッツの弟というが、跳ねた髪以外はあまり

似ていない気がする。ああ、背の高いところはそっくりかもしれない。

 

(父様よりも高いわね。下級戦士の癖に生意気だわ。……悟飯も将来は、

 あんな感じになるのかしら)

 

 自分の両親は、そこまで体格に恵まれていない。

 どうやら将来、背丈では負ける事になりそうだと思う。

 

 

(まあ、私か悟飯か、どちらかは今日で死ぬだろうから、意味の無い仮定だけど)

 

 小さくため息をつく。たとえ彼女が戦わずとも、彼女の父親はカカロットを殺した後、

その息子を見逃しはしないだろう。

 

 それとも頼み込めば何とかなるだろうか。今までナッツが父親にお願いをして、

叶えられなかった事はほとんどない。

 

(けどその場合、1人だけ生き残った悟飯は、私達をますます恨むでしょうね。

 ……ああもう面倒くさい。何であんなに強いのに地球なんかに生まれたのよ)

 

 

 いっそ頭でも打ったら、もっとサイヤ人らしくならないだろうか。

 

 悪に染まった冷酷な悟飯を想像し、ナッツは思わず心臓が高鳴るのを感じた。

 

 一緒に惑星を攻略して、どちらがより多く殺せるか競い合うとか、きっと凄く

楽しいに違いない。

 

 

 手ごろな石を探しながら悟飯の方をちらちらと見てくるナッツの姿に、少年は

身の危険を感じていた。

 

「お、お父さん、実はちょっと変な子に絡まれてて……」

 父親を頼るのはちょっと情けない気がするけど、怖いんだから仕方ない。

 

 悟空は黒い戦闘服の少女を見て、おお、と驚嘆する。

 

「あの子もサイヤ人か。あんな小せえのに、凄え気だなあ」

「うん。それでボクと戦いたいって言うんだけど、あの子強いし何か怖くて……」

 

 悟空は、1年見ない間に見違えるほど成長した息子を見る。

 

 界王の元で修業し、気の扱いに熟達した悟空には、悟飯の表面上の強さだけでなく、

その裡に眠る気の大きさまで、何となく感じる事ができていた。

 

 底知れぬ強さと将来性。 

 自分の息子ながら、正直、戦ってみたいという気持ちは、物凄く理解できた。

 

 それに……ちらちらと悟飯を見る少女の態度は、子供時代のチチに近い気がする。微笑ましい。

 戦って負けたとしても、悟飯が彼女に殺されることは無いだろうと、悟空は直感していた。

 

「まあ、頑張れ。悪い奴みてえだけど、危なくはねえと思うぞ」

「ええっ!?」

 

笑顔で背中を叩く父親に、悟飯は逃げ道が一つ塞がれたのを感じた。

 

 

 

それから始まった、悟空とナッパの戦闘は一方的なものだった。

ナッパの繰り出す全ての攻撃が避けられ防がれ、逆に手痛い一撃を何度も食らっている。

 

スカウターで戦闘力を確認しながら、ナッツはその光景を冷めた目で見ていた。

 

(戦闘力8000なら、まあこれくらいはやるでしょうね。

 勝ち目なんてないんだから、ナッパも早く父様に替わればいいのに)

 

 

 一方、悟飯の方は父親の活躍に目を輝かせていた。

 

 皆で戦ってもまるで歯が立たなかった、あの怖くて強いサイヤ人が、まるで赤子の手を

捻るように翻弄されている姿は、見ていてとても胸のすくものだった。

 

(お父さんなら、きっとあのサイヤ人達をやっつけてくれる!)

 

 そうして1年ぶりに家に帰って、久しぶりに親子3人でお母さんの作ったご飯を食べることを

考えると、少年は今から笑みが抑えられなくなっていた。

 

 

 

(呑気なものね。この程度の強さじゃあ、どうせ父様に殺されるっていうのに)

 

 ナッツはぬか喜びしている悟飯を、哀れに思った。

 自分と戦って欲しいが、絶望に泣き叫ぶ姿を見たいわけではなかった。

 

(父親の死を見せるくらいなら、その前に殺してあげるべきかしら)

 

 

 

「ナッパ! さっさと降りて替われ! オレが片付けてやる!」

「そ、そうだな……」

 

 ベジータに促され、一度は撤退しかけるナッパ。

 が、途中でその目がクリリンへと向き、不敵に笑う。

 

「だが、このままじゃあオレの気が済まねえ。

 腹いせにあの髪の不自由な野郎だけは殺してやる!」

 

「し、しまった!」

 

 

 クリリンへ向けて急降下するナッパ。悟空は焦って後を追うも、間に合う距離ではない。

 余計な事しなくていいのに、と、つまらなさそうに呟くナッツ。

 

(まあ、一方的にやられて悔しい気持ちはわかるけど、父様の命令は聞きなさいよ)

 

 後で罰として、戦闘力2とかのゴミみたいな地球人の掃除を押し付けられないだろうか。

ぼんやりとそんな事を考えていたナッツの目が、次の瞬間、驚きに見開かれる。

 

 突如赤いオーラに包まれたカカロットが急加速し、瞬く間にナッパに追いつき、

頑強なその身体を、拳の一撃で貫いていた。

 

「す、すまねえ。ベジータ、お嬢……」

 ナッパは貫かれた腹部から血を流し、震える声で言葉を残し、そのまま息絶えた。

 

 

 

「えっ……」

 

 悟飯は一瞬、目の前で何が起こったか判らなかった。

 その光景が目で見えてはいたが、頭が理解しようとしなかった。

 

 死んでいる。あの怖いサイヤ人が。殺した。お父さんが。

 

 ピッコロさんを殺した奴、殺したいほど憎んでいた相手が死んだ。

 

 お父さんが仇を取ってくれた。そう言えるはずなのに。喜ばしいことのはずなのに。

 

 少年の心は一向に晴れず、大切な人が死んだという喪失感は消えない。

 

 それどころか、何か取り返しのつかないことをしてしまったという思いが、少年の心に

重くしこりを残した。

 

 その手でサイヤ人を殺したお父さんも、仲間の仇を取れたというのに、喜んでいるようには、

全く見えなかった。

 

 

 

 悟空は死んだナッパの身体を横たえ、血に塗れた手を握り締め、顔を歪めて叫ぶ。

 

「ちくしょう、とっさの事で、手加減ができなかった……!」

 

「悟空! お前が気にしなくていい! こいつはピッコロ達や、罪の無い地球の人達を

 大勢殺したんだ!」

 

「それでもよ、クリリン……!」

 

 とっさにクリリンが励ますも、悟空の気持ちは晴れない。

 

 実力の差は圧倒的で、殺さずとも止められたはずだったのに、それができなかった事を、

彼は悔やんでいた。

 

 だが心配そうに父親を見上げる悟飯を見て、気持ちを切り替え、ベジータ達を睨み、

力強く言い放つ。

 

「おめえ達もこうなりたくなかったら、さっさと自分達の星に帰れ!」

 

 

 

 

 

「……い、今のは何なの? 一瞬だけど、スピードもパワーも倍以上になってた……」

「ナッパ、早まりやがって……!」

 

 悟空が一瞬見せた底知れぬ力が、少女の心に大きな衝撃をもたらしていた。

 ナッパが死んだが、今はそれどころではなかった。

 

(カカロット……本当にラディッツと同じ下級戦士なの? 戦闘力8000でそこから倍以上って、

 父様と同等って事じゃない! いや、それ以上の可能性すら……!)

 

「ラディッツと相打ちで死ぬ程度の奴が、たった1年でどうしてこんなに

 強くなれるっていうのよ……!」

 

 叫ぶナッツは、自分の身体が恐怖に震えるのを抑えきれなかった。

 こいつも悟飯と同じ、恐ろしいほどの才能に恵まれた化け物だと、判ってしまった。

 

 怖いのは、カカロットに自分が殺される事ではなかった。

 

 今まで想像すらしていなかった、父親まで失ってしまうかもしれないという不安が、

ナッツの心を強く苛んでいた。

 

震えるナッツの頭に、ベジータは優しく手を置いた。

 

「父様……」

「ナッツ。心配するな。オレもヤツと戦いたくなってきたところだ」

 

 

 娘の推察と同等以上のことを、ベジータもまた理解していた。

 

 戦闘力を倍加する得体のしれない技。戦闘中に突然使われていれば、不覚を

取ったかもしれない。

 

 カカロットは隠していた切り札を見せてしまった形になるが、それを気にした様子も

ない事から、他にもまだ見せていない技があると、彼は察していた。

 

 裏切り者の下級戦士の粛清はドラゴンボール探しのついでだったが、

予想以上に楽しめそうだと、ベジータは不敵に笑う。

 

 

「俺はカカロットと1対1でやる。お前は奴の息子と遊んでいろ」

「嫌です! 父様、私も一緒に戦います!」

 

 震えながらも真剣な顔で父親を見上げる娘を、彼は誇らしく思ったが、それはそれとして、

カカロットとの戦いを邪魔されたくはなかったし、娘を危険にも晒したくはなかった。

 

「駄目だ。お前の力が通じる相手じゃない。お前を守りながら戦う余裕もない。

 いい子にして待っていろ。退屈なら他の地球人共も、お前の好きにして構わん」

 

「そんな……!」

 

 いくらカカロットが強くても、私が大猿に変身すれば、と言おうとして、ナッツは父親の

言わんとしている事に気付く。

 

 たとえパワーボールを使ったとしても、父親はともかく、ナッツでは変身が始まる前に

殺される。

 

 カカロットと彼女の間には、それほどの実力差があった。

 自分が何をしても、父親の負担にになるだけだと、少女は理解した。

 

「……わかりました。父様。どうかご無事で。絶対に、生きて帰って来てください」

「ああ、お前もな」

 

 ベジータは娘の頭をくしゃくしゃと撫で、悟空と共に飛び去って行く。

 

 小さくなっていくその姿が見えなくなるまで、ナッツは目を離さず、その無事を祈っていた。

 

 尻尾を持たないカカロットに父親が負ける事などないと、頭では判っていたが、

不安は一向に消えなかった。

 

 

 

 

 ナッツはその場に残った悟飯に目を向ける。

 隣にいるクリリンは、彼女の視界に入っていない。

 

「さて、待たせたわね悟飯。少し休憩しただけで、そんなに回復するなんて凄いじゃない」

 

 回復は悟空が仙豆を食べさせたおかげだが、彼女は細かい事を気にしない。

 

 

「その様子ならもう大丈夫ね。さっそく遊びましょう? どちらかが動けなくなるまでね」

 

 そう言って、少女は可愛らしく微笑んだ。

 

 

「ち、ちなみに、動けなくなった後は……?」

 口を開いたクリリンに、ナッツは、あ、こいついたんだ、と言いたげな様子で応える。

 

「勝った方の好きにしていいんじゃない? つまらなかったら、私は殺すわ」

 

(まあ、悟飯と戦って私が退屈するなんて、有り得ないんだけどね)

 

 

 

 ナッツの危険な発言に、悟飯は、若干引いた気弱な様子で応じる。

 

「あの、ボク、きっとお母さんが心配してるから、家に帰らないと……」

「そうなの? じゃあ一緒に帰って、そこで戦いましょうか」

 

 他人の家に行くなんて、初めてだわ、と呟く少女。この子は本気だと、2人は思った。

 

「ク、クリリンさん……どうしよう……?」

「悟飯……こうなったら2人掛かりで」

 

 

 

 

「ああ、私の邪魔をする気なのね。あなた」

 

 

 

 クリリンの目には、ナッツの姿が、一瞬で掻き消えたように見えた。

 至近距離に現れた少女と目が合う。ゴミを見るような、感情の失せた目だった。 

 

「がっ……!」

 

 ナッツの放った拳が、クリリンの腹に、背中を貫通せんばかりの勢いでめり込んでいた。

 

 少女がまた消え去り、彼の頭上に出現する。高く真上に伸ばされた右脚が風を切って

振り下ろされ、悶絶するクリリンの頭を直撃する。

 

 悲鳴すらもあげられず地面に落下し、叩き付けられるクリリン。

 倒れた身体はピクリとも動かず、既に意識は無い。

 

 ナッツが地上に向けた掌に、赤い光が収束していく。

「馬鹿な奴ね。逃げていれば、少しだけ長生きできたのに」

 

 

 淡々と呟き、止めの一撃を撃ち放とうとした少女の手が、横合いから掴まれた。

 

 ぎりぎりと強く握られる。伝わってくる感情が嬉しくて、ナッツは微笑み、

その眼差しを彼に向ける。

 

「なあに、悟飯。私に何か用?」

「お前……! クリリンさんを!」

 

 

 ナッツは困惑する。もしかして、この男も悟飯の大事な人間なんだろうか。

 

 肉親でもないのに、死んだら嫌な相手が、何でそんなに多いのかと思う。

 どうせ死ぬ時は死ぬんだから、そんなに多かったら、大変じゃない。

  

 

「あなたと私の戦いを邪魔しようとしたゴミを、片付けただけよ」

「そんな理由で人を……!」

 

「それが何だっていうの? 殺されるような、弱い奴が悪いのよ」

 

 善良な悟飯にとって、ナッツの発言は、全く理解できないものだった。寒気がした。

 目の前の少女が、人の姿をしていながら、言葉の通じない、怪物か何かのように思えて。

 

 少年はそれでも、勇気を出して言葉を紡ぐ。

 

「何で君たちは、そんなに簡単に人を殺すの? 仲間が死んでも、何も感じなかったの?」

 

 

 その言葉に少女は初めて、ああ、ナッパが死んでたわね、と意識する。

 ああいう強そうな体格に、自分もなりたいとは思っていたが。

 

「そうね。確かにナッパは昔から父様に仕えていたし、私も優しくしてもらっていたわ」

「だったら……!」

 

 その言葉に、人間らしい感情が見当たらないかと、悟飯は期待する。

 だが、死んだ仲間について話すナッツの表情には、何の感慨も浮かんでいない。

 

「けど最後に、必要もないのに欲をかいて死んだのは駄目ね。父様の言う事を聞いていれば、

 死なずに済んだのに。まあカカロットと比べれば、あいつも弱かったってことよ」

 

「父様がどう思ってるかは知らないけど、特に悲しんでいる風でもなかったし、

 そこまで気にしてないんじゃないかしら」

 

 戦士であるナッツにとって、死はありふれたものだった。大抵は彼女が殺す側だったが、

相手が強ければ殺されることもあるとは、当然思っていた。

 

 それは彼女の周りの人間にも当てはまる。

 

(まあ、父様は最強のサイヤ人で、絶対に死なないから例外だけどね)

 

 

 

 

悟飯は、身近な人間の死を何とも思っていない、少女の言葉に落胆する。

 

「君の言ってる事が、わからないよ……」

 

「わかってもらおうとは、思ってないわ。あなたは私と、戦ってくれればそれでいいの」

 

「絶対に嫌だよ! 誰が君なんかと!」

 

きっぱりと、悟飯は拒絶した。

 

 

訳が分からない事ばっかり言う、こんな困った子の言うことになんか、付き合ってやるものか。

けどちょっと強く言い過ぎたかもしれない。怒らせてしまったならどうしよう。

 

ナッツが怒って殴り掛かってくる事を予想して、思わず目をつぶる。

しかし彼女の拳は、いつまで待っても飛んでこなかった。

 

 

 

 

「あなた、そんなに私と戦いたくないの……?」

 

ナッツの声は、聞いた事がないほど乱れていた。

思わず目を開けた悟飯は、信じられないものを見た。

 

 

目の前の少女の黒い瞳に、涙が溢れていた。今にも泣きだしそうになるのを、必死に堪えていた。

信じていたものに、裏切られたような顔をしていた。

 

 

 こんなに何度も伝えているのに、同じサイヤ人なのに、ただあなたと戦いたいだけなのに、

どうしてわかってくれないのか。どうしてそんなに酷い事を言うのか。

 

 ナッツには、少年のことがわからなくなっていた。

 

 

 

 悟飯には、今も少女のことが全くわからなかった。

 ただ、自分のせいで泣かせてしまった事は理解できた。

 

 あんなに恐ろしかった彼女が、今は自分よりも小さな女の子に見えた。

 その姿から、どうしても目が離せなかった。

 

 

 

 見られている事に気付いたナッツが、鼻を鳴らす。

 

「……何見てるのよ」

「ご、ごめん!」

 

 

 乱暴な仕草で涙を拭う。戦おうともしない、こんな弱虫に泣かされた事と、

弱い自分を見られてしまった事が、無性に腹立たしかった。

 

(母様が死んでから、泣いた事なんてなかったのに……)

 

 仕返しがしてやりたかった。何かないだろうか。こいつが嫌がるようなこと。

 

 ナッツは悟飯とこれまで話した事を考える。

 一瞬の後、少女の口角が吊り上がり、冷酷なサイヤ人の笑みが浮かんだ。

 

 

 

「悟飯、カカロットは死ぬわよ。父様には、絶対に勝てないわ」

 

「どうしてそんな事が言えるのさ!」

 

 悟飯は声を荒げる。先ほどのナッパとの戦いでの圧倒的な強さを見て、

少年もまた少女と同じく、自分の父親が世界で一番強いと信じていた。

 

 

「理由はね、私達が持っていて、あなた達が持っていないものよ」

 

 少女は腰から尻尾を解き、見せつけるように振って見せた。

 

(大猿に変身した父様は、正面からならあのギニュー特戦隊にだって負けはしない。

 それを恐れて事前に月を消していたんでしょうけど、父様と私にはパワーボールがある)

 

(結局、尻尾の無いサイヤ人が、私達に勝てる道理はないのよ)

 

 残念だったわね、とナッツは哄笑する。

 少女の尻尾が、あざ笑うように揺れていた。

 

 

 

「え? 尻尾……?」

 

 あれで叩いてくるとか、締め付けるとか、そういう事だろうか。悟飯は訝しみ、またあの子が

変な事を言い出したと思った。

 

 その反応に、ナッツの方が毒気を抜かれてしまう。もっとこう、月は消したはずなのに! とか

そういう焦りを期待していたのだけれど。

 

「……とぼけてるの? まあいいわよ。待ってあげても。カカロットの死体を見れば、

 さすがのあなたも本気になってくれるでしょうし」

 

 怒り狂ったあなたと戦うのが、本当に楽しみだわ、とナッツは続けた。

 

 

 

 

 悟飯はしばし沈黙し、考えた。

 

 目の前の少女は変な子だけど、嘘をついてるようには思えなかった。

 このままだと、お父さんが死ぬかもしれない。

 

 そして悟飯は、父親を2度も失う気はなかった。

 

 少年は顔を上げる、その表情は、先ほどまでとは違い、凛として、

ある種の決意に満ちていた。

 

 

「じゃあ、ボクがお父さんを助けに行くよ」

「私がそれを許すと思った? ここは通さないわよ?」

 

 少女は両手を広げ、イタズラが成功した子供のように笑って見せる。

 

「そこをどいてよ。どかないのなら……君を倒す」

 

 向けられた闘志と敵意に、ナッツは嬉しくなって大笑する。

 

「あはははは! いい顔してるじゃない! 最初からこう言えば良かったのね!」

 

 

 ナッツは喜びのままに力を解放した。

 

 周囲の小石が浮かび上がり、気の余波が電流のように少女の周りで弾ける。

 大気が震え出し、少女を中心に、台風のような嵐が巻き起こる。

 

「くっ……」

 

 圧力に押され、両腕で頭を庇いながら、悟飯は一歩も下がらず、正面からナッツを睨み付ける。

 彼女は強くて、訳がわからなくて怖い。けど今は引くわけには行かなかった。

 

 

「あなたへのハンデとして、尻尾は使わないでおいてあげる」

 嵐の中で揺れていた尻尾を、少女は腰に巻き直す。

 

「サイヤ人同士、本当は全力でやりたいんだけど、我慢するわ。

 どうやっても勝てる保証付きの戦いなんて、私も楽しくないし」

 

 待ち望んでいた少年との戦闘を前に、ナッツは己のサイヤ人の血が高揚するのを感じた。

 自分が認めた強敵と向かい合うこのひと時は、彼女の人生の中で、最も心躍る瞬間だった。

 

 全力で解放した気の奔流に包まれながら、少女は少年に、とびっきりの笑顔で笑って見せた。

 

「さあ、遊びましょう、悟飯! くれぐれも、私を退屈させないようにね!」




Q.この子頭おかしくない?
A.5歳で惑星2桁滅ぼしてるサイヤ人の女の子がまともなはずないです。(強弁)


サイヤ人編は全話書き終わってたので毎日投稿しようと思ってたんですが、投稿している間に文章の書き方がわかってきたので書き直してます。今後は投稿が不定期になりますがご了承ください。

あと評価とか感想とか少なくて寂しいので何か思うところがあったら一言ください。(催促)
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