あるサイヤ人の少女の物語   作:黒木氏

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8.彼女が再び、彼らと戦う話(前編)

 ヤードラット星。

 

 瞬間移動などの不思議な技を使う人間達の住むこの星は、かつてフリーザ軍の侵略から、辛くも逃れた過去を持つ。

 

 そして半年ほどが経過した今、この星に再び彼らの魔の手が迫りつつあった。

 

 5つのポッドが大気圏を抜け、隕石のように赤熱しながら大地に激突する。衝撃で形成されたクレーターの中、ポッドが開き、邪悪かつ強大な気を持つ男達が現れる。

 

「半年ぶりのヤードラット星だな!」

「今度こそ全滅させてやるぜ!」

「終わったら次の休暇はどこ行くよ? 海?」

「たまにはスキーとか良いんじゃね? 隊長はどうですか?」

 

 彼らが陽気に気炎を上げる中、その中でも一際大きな力を持つ、リーダー格らしき2本の角の生えた男が、どうにも浮かない顔で呟いた。

 

「……フリーザ様は大丈夫だろうか……」

 

 彼のその様子に、部下達は顔を見合わせ、小さく息をつく。

 

 この半年ほど、ギニュー隊長は、時折こんな感じになってしまう。任務の最中に大怪我を負って撤退せざるを得なくなり、その結果、主君の身を守れなかった事を悔やんでいるのだった。

 

 

 忘れもしない、ナメック星での敗北の後。最寄りの基地のメディカルマシーンで傷を癒した彼らは、全速力でポッドを飛ばし、およそ3日後にナメック星へと戻った。

 

 おそらくドラゴンボールは、既にベジータ達に使われてしまっただろう。不老不死の夢を台無しにされて、怒り狂ったフリーザ様の手によって、当然奴らは全滅しているだろうが。これからそのフリーザ様に、事態の説明と謝罪を行わねばならない。

 

 不甲斐ない自分はともかく、部下達の助命だけは頼まねばならないと、悲壮な決意を抱いていたギニューは、ナメック星を眼前にして驚愕する。スカウターに、フリーザ様の反応が無い。

 

「どういう事だ!? 宇宙船はベジータに壊されていたはずだぞ!」

 

『まさか、お怒りのあまり、自力で飛んで帰ったとか……?』

『た、隊長、それに未知の反応が100個以上……これはまさか、ナメック星人共では……?』

 

 バータとジースからの、困惑しきった通信が、かえって彼に、冷静さを取り戻させた。ご自身で帰られたのなら良い。だが状況がおかしい。億が一の可能性を考慮する必要がある。

 

「オレが戦闘力を消して、1人で降りて確認する! ジース、本部に通信で確認しろ! 残りの者は引き続き、フリーザ様の反応を探せ! いいな!」

『『『『了解しました!』』』』

 

 そしてギニューは戦闘力を限界まで落とした上で、人気の無い場所を選んで着陸し、まずは壊れた宇宙船を目指した。フリーザも、一度はそこへ戻ったであろうからだ。

 

 辿り着いたギニューは、周囲の光景に呆然とする。地形が大きく変化しており、陸地までもが大きく抉られ、一面の海と化している。この一帯で、とてつもないレベルの戦闘が行われたのは明白だった。

 

 そしてフリーザの反応は無く、ベジータやその娘や、孫悟空とかいう、あのサイヤ人達の反応も無い。

 

「い、一体この場所で、何があったというのだ……」

 

 理解不能の状況に、わなわなと、ギニューは身を震わせる。戦いがあったというのなら、当然フリーザ様が勝つはずだ。だがご自身で帰られるにせよ、ドラゴンボールで生き返ったのであろうナメック星人共を、生かしたままにしておくだろうか?

 

『た、隊長! 大変です! フリーザ様の反応が、すぐその近くに!』

 

 通信越しのリクームの叫びに、ギニューはすぐさまスカウターを確認するも、怪訝な顔になってしまう。

 

「……どこにも無いぞ。オレのスカウターの故障か?」

『そ、それが、小さすぎて、虫や動物に紛れて……! 急いでください! 座標は……』

 

 戦闘力を隠すのも忘れて、ギニューは全速力で飛翔した。そして辿り着いた先で主君の姿を見つけた彼は、その惨状に愕然と立ち尽くす。

 

 肉体の半分以上が失われており、残された部分のほとんども超高熱で炙られたかのように、黒く焦げて煤けている。これでまだ息があるとは、信じられない状態だった。

 

「な、何という事だ……フリーザ様が、こんな……」

 

 ふらふらとギニューが近づいたその時、半分しかない頭部の目が、確かに動いて、ぎろりと彼を睨み付けた。激しい怒りが込められた視線は、罪悪感で彼の胸を抉ったが、その痛みよりも、主君の生存を確認できた喜びの方が勝っていた。

 

「今お助けいたします! フリーザ様!」

 

 ギニューはその場に残った身体のパーツを可能な限りかき集め、殺到してきたナメック星人達の反応から逃げるように、急ぎポッドで飛び立って、最寄りの基地を目指した。

 

 救出されたフリーザの状態は、メディカルマシーンで治療可能な範囲を超えており、生命維持処置を施された後、最新鋭の医療設備の整った、惑星フリーザ本星に搬送される事となった。

 

 

 そしてそれから半年が経過し。フリーザは一命を取り留めたものの、今現在も集中治療は続いており、会話すらできる状態ではないという事だった。

 

 ギニューは何度か面会を申し込んだものの、絶対安静という理由で、医師から断られている。謝罪もできず、処罰さえも受けられない事が、彼の心にしこりを残していた。

 

 幸いにも、仕事に没頭することはできた。フリーザの容体について、厳しい箝口令は敷かれたものの、その不在をいつまでも誤魔化す事はできず、彼が死んだ、または倒されたという噂は、瞬く間に、銀河中に広がった。

 

 

「知ってるか? あのフリーザが死んだって話。誰にやられたんだろうな?」

「そりゃ破壊神ビルスだろうよ」

「兄のクウラと喧嘩して負けたって聞いたぞ」

「いや、フリーザ軍を裏切った、ベジータとその娘にやられたらしい。最近あちこちの星で、大物の賞金首や、犯罪組織を潰して回ってるっていう」

「スカウターでこっそり計ったら、娘の方は戦闘力16万はあったって話だ。父親の方は測定不能だとよ」

「ベジータってサイヤ人だから、大猿になったらそこから更に戦闘力10倍か……? おっかねえ」

「フリーザがいくら強いったって、戦闘力53万じゃあなあ」

 

 あっはっは、と明るく笑っていた彼らが最後に見たものは、視界一杯に広がった、エネルギー波の光だった。

 

 燃え盛る炎の中から現れたギニュー隊長は、吹き飛ばされた酒場の跡地を踏みしめ、ぎりりと唇を噛む。襲撃に気付いたのか、銃を手にした住民達が、あたふたと集まり始め、彼に向かって発砲するも、全く効果は無い。

 

 彼らを全滅させたギニューの耳に、さらなる爆発音が届く。反乱軍の他の拠点を任せていた部下達だろう。スカウターの通信で首尾を確認した彼は、自身も再び別の戦場へと向かった。

 

 

 

 力と恐怖で銀河の大部分を支配していたフリーザの敗北は、支配下にあった、多くの惑星の反乱を誘発していた。

 

 フリーザ軍は総出で鎮圧に追われる事となり、一時は崩壊の危機とまで言われていたが、先頭に立ったギニュー特戦隊が縦横無尽の活躍を見せ、その精強ぶりを見せつけた事で、次第に反乱は下火となっていく。

 

 

 そんな経緯で、ようやく状況は落ち着いて。彼らのやり残していた仕事である、ヤードラット星の攻略が再開されたのだったのだが、肝心のギニュー隊長は、未だ自責の念に囚われていた。

 

「あの時、オレがフリーザ様を守れていれば……」

 

 この半年間、各地の戦場で鬼気迫る戦いぶりを見せていたとは、とても思えない状態だった。

 

 もちろん、頭では分かっているのだ。フリーザ様を倒すような相手との戦いに、自分や部下達がいたところで、大した役には立てなかっただろうと。

 

 それでも、肝心な時に主君の傍を離れてしまっていたという負い目が、彼の心から消える事は無く。そんな隊長の様子を、流石に見かねた隊員達が、口々に励ましの声を掛ける。

 

「隊長、あんまり気にしてても仕方ないですよ」

「そうですよ。隊長もオレ達も、この半年間、ろくに休まず頑張ったじゃないですか」

「フリーザ様の治療も順調みたいですから、きっとすぐ復活して来ますよ」

「これ終わったら、隊長が言ってた温泉旅行に行きやしょうぜ!」

「……悪いが、今はそんな気分じゃない。お前達だけで……」

 

 ギニューの言葉に、ジースは皆と顔を見合わせた後、大袈裟にため息をついて言った。

 

「じゃあオレらも休めませんって」

「なっ、お前達……!?」

 

 驚きに、彼は目を大きく見開いた。半年間働きづめで、あれほど次の休暇を、楽しみにしていたこいつらが。

 

「というか、隊長一人で悩まないで下さい。オレらの責任でもあるんですから」

「疲れてるんですよ。久しぶりにパーッと遊んで、気分転換しましょうぜ」

「そうそう。温泉入って酒飲んで美味い物食べて、ぐっすり休んで、それでフリーザ様が戻ってきたら、皆で一緒に怒られましょうよ」

「お、お前達……」

 

 ギニューは不意に、自らの目頭が、じーんと熱くなるのを感じていた。自分には、過ぎた部下達だと思った。これ以上、心配を掛けるわけにはいかない。

 

 彼は自分の両頬を叩き、表情を引き締めて、腹の底から声を出して言った。

 

 

「よし、やるぞお前ら!!」

「「「「おおっ!!!!」」」」

 

 ビシッと気合いを込めたスペシャルファイティングポーズを決めて、彼らはヤードラット人の住む都市部へと、意気揚々と飛び立って行ったのだった。

 

 

 それからおよそ10分後。都市の前までやってきたギニュー達は、人の気配が全く無い事に困惑していた。 

 

「妙だな。いつもなら、とっくにちょっかいを掛けてくる頃だぞ」

「まさか、瞬間移動で全員逃げやがったか……?」

 

 グルドとリクームの呟きを聞いて、渋面になるバータ。

 

「面倒過ぎるだろそれ……」

「この都市を破壊する。帰る場所を消してしまえば、奴らも堪えるだろう」

「了解しました、隊長」

 

 冷静なギニューの指示に従い、彼らが建物の破壊に取りかかろうとしたその瞬間、全員のスカウターが警告音を発した。

 

 即座に全員が戦闘態勢を取る中、表示された情報に、驚愕したジースが叫ぶ。

 

「せ、戦闘力18万だと!? しかもこの反応は!」

 

 

「久しぶりね、おじさん達」

 

 

 そして物陰から現れた、黒い戦闘服姿の少女を見て、ギニューは瞠目する。

 

(ベジータの娘だと!? 何故こいつがヤードラット星に!?)

 

 

 

 話は少し遡る。夕食の後、ナッツが部屋のベッドに寝そべって本を読んでいると、ノックの音と共に、父親が入ってきて言った。

 

「ナッツ、新しい依頼が来たぞ。お前が好きそうな、かなりの大物なんだが……」

「どんなのですか、父様?」

 

 少女は読んでいた本に栞を挟み、ベッドの上に行儀よく腰掛ける。父親もその隣に座って、娘に端末の画面を示して見せる。

 

 ここ最近、ナッツの戦闘欲求を解消するため、銀河パトロールから情報を得て、強そうな賞金首や犯罪組織に攻撃を掛けていたのだが、それで何か勘違いされたのか、関係無い所からも、悪人退治の依頼が入るようになっていた。

 

 大体はつまらない小物相手なので断っているのだが、たまに意外な大物退治の依頼が来る事もあり、そういったナッツが喜びそうなものについては、本人に確認した上で、受ける事にしているのだった。

 

 そして今、端末の画面を見た娘が、難しい顔になっていた。

 

「父様、ヤードラット星からの救援依頼って……」

「場所からして、まず間違いなく、相手はギニュー特戦隊だろうな」

 

 彼らの現状についての情報は、ナッツが知りたそうだったので、ある程度仕入れて伝えてあった。ここ最近は、フリーザ軍の立て直しに駆け回っていたという話だが、それが落ち着いて、また星の侵略に戻る兆しが出てきたという事だろう。

 

「どうする? お前が嫌なら、この話は断るが」

 

 ナメック星でのやり取りから、娘が彼らと仲が良いと知っている父親は、優しい声で言葉を掛ける。

 

「そうですね……」

 

 一方で、娘の方は悩んでいた。フリーザ軍の基地に住んでいた頃、優しくしてくれたおじさん達を、殺す気なんて全く無いけれど、もう一度戦ってみたいという気持ちは、とても強かった。

 

 重力室での訓練もあって、今の私の戦闘力は、18万にまで達している。初めて地球に来た頃の父様が、大猿になったのと同じくらいの強さという事で、正直今でも、あまり実感は無い。

 

 ここ最近は、犯罪組織の悪人達とよく戦っているけれど、奴らは数は多くて、様々な武器や強力な兵器を使ってくるという点で厄介だったけど、個々人の力はそれほど強くなく、戦闘力1万を超える人間すら、滅多にいない有様だった。

 

 そこまで考えて、少女は顔を綻ばせる。ナメック星で戦った、ギニュー特戦隊のおじさん達。大猿になった私を、敗北寸前まで追い詰めた人間は、あの人達が初めてだった。あの時はどうにか勝てたけど、負けて殺されていた可能性の方が、ずっと高かったと思う。

 

 そしてあの時は、肝心のギニュー隊長がいなかったのだ。あれですら、本来の彼らの全力とは言えない。全員が揃ったら、どれほど強いのだろうと思うと、わくわくしてしまう。

 

 おじさん達はお仕事で来るのだろうし、こんな腕試しのような気持ちで挑むのは、あまり褒められた事では無いけれど。私もたまたま対立する仕事で現地にいて、偶然会って戦いになる分には、特に問題はないはずだ。

 

 戦闘民族の少女は、溢れんばかりの期待と、少しばかりの羞恥の混じった顔で、もじもじと尻尾を動かしながら言った。

 

「父様、私、あの人達ともう一度戦ってみたいです」

「分かった。依頼は受けておくから、後はお前の好きなようにしろ」

 

 父親は、そんな娘の複雑な気持ちを正確に理解した上で、優しく頭を撫でるのだった。

 

 

 

 そして現在。ヤードラット星にて、ナッツはギニュー特戦隊と相対していた。

 

 黒い戦闘服を身に纏った少女は、彼らから10メートルほどの距離を置いて、凛とした姿で、都市を守るように立っている。

 

「私は仕事で来たの。この星を襲う侵略者を、追い払って欲しいって依頼を受けてね」

「はっ、ヤードラット星の奴らも、薄情だな。ナッツちゃんみたいな子供を前に出して、自分達はどこかに隠れてるなんてよ」

 

 軽口を叩きながらも、リクームの額には、小さく汗が浮かんでいた。ナメック星で最後に会った時、彼女の戦闘力は、25000も無かったはずだ。

 

 それが今では、ギニュー隊長をも大きく超える、戦闘力18万だ。とても同一人物とは、信じられない成長ぶりだった。自分達も、この半年間の激戦で、ある程度は鍛えられたという実感はあるが、ここまでの変化は流石にない。 

 

(ただの戦闘力18万なら、隊長も含めて全員で掛かれば、五分近い勝算はあるんだけどよ……!)

 

 ジースは苦々しい思いで、少女の腰に巻かれた尻尾を見る。彼女はベジータと同じで、いつでも月を作れるのだ。この上大猿になど変身されては、勝算も何もあったものではない。

 

 そこまで考えて、ふと気付く。それならなぜ今、変身していないのか。彼女にとっても、確実に勝てると思えるほど、楽観できる状況ではないはずだ。

 

 いやそもそも、仕事で来たというのなら、何故堂々と姿を現したのか。戦闘力を消して隠れていたのだから、自分達を倒すつもりなら、いくらでも不意を打てたはずなのに。

 

 そこまで考えて、彼は少女の考えに思い至る。サイヤ人は、戦闘そのものに喜びを覚える種族だ。惑星ベジータが健在だった頃は、何度か共闘した事もある。

 

 強敵と戦うためなら、己の命も惜しまず、時に敵を助けるような、傍から見れば愚かとしか思えない行動を取る事も、よく知っていた。

 

 同じ考えに至ったバータが、おどけたような口調で尋ねる。

 

「ところでナッツちゃん、大猿にはならないのかい?」

 

 指摘を受けた少女が、ぎくっとたじろいだ。隠しているつもりのようだが、額に浮いた汗は隠せない。

 

(変身なんてするくらいなら、最初からこの星には来ないわよ!)

 

 超サイヤ人と大猿化と、両方使えば戦闘力9000万まで行ける事は確認済みだが、片方だけでも彼らとの戦いが台無しになってしまうのは明白だったから、この戦いで変身をする気は無かった。もちろん使わず死ぬ気まではないが、その場合でも、自分が負けて、殺されるその直前までは、使わないつもりでいる。それが彼女なりの、彼らに対する誠意だった。

 

「あ、あれは私達の切り札で、無闇に見せるものじゃないわ。うん、醜い姿を見られるのも嫌だし」

 

 確かナメック星では、物凄く嬉しそうに変身していたはずだ。下手くそな言い訳に、グルドは苦笑しながら応える。

 

「ザーボンの野郎の真似かよ。ナッツちゃん、また随分と余裕じゃねえか?」

 

 要はこの子は、できるだけ対等な条件で、遊びたいと言っているのだ。それなら付き合ってあげるのが、大人というものだろう。大猿にならないという、ある種のハンデを付けられる事は、腹立たしくないわけでもなかったが、任務の遂行という観点からすれば、願っても無い話だった。

 

 その時、沈黙を守っていたギニュー隊長が、少女を見つめて口を開く。

 

 

「フリーザ様をやったのは、貴様達か?」

 

 

 ナッツもまた、彼の目を真っ直ぐに見据えて応える。

 

「ええ、そうよ。私達サイヤ人がやったわ。……あんな奴には、当然の報いよ」

 

 少女の声に混じった暗い響きに、彼は数年前の、彼女と会った日の事を思い出す。

 

 母親に戦果を報告に行くのだと、その母親が既に死んでいる事も知らずに、笑顔で部屋に戻って行った少女と、その後全く変わり果ててしまった彼女の有様に、心が痛まなかったわけではない。

 

 ただ、それを言うのなら、自分達も、フリーザ様も、そして目の前の少女もまた、日常的に誰かの大切なものを、奪って殺して生きている。

 

 それが許されるのは、強いからだ。だから宇宙のほぼ誰よりも強いフリーザ様がなさる事に、我々がとやかく言うべきではない。そう考えて、彼は生きてきた。

 

 その理屈なら、曲がりなりにもフリーザ様が敗北した以上、倒した相手に言える事はないはずなのだが。ギニューは自らの中で、激情が湧き上がるのを感じていた。

 

「フリーザ様には、オレ達を重く用いて下さった恩がある。そのオレ達の前に出てきた以上、覚悟はできているだろうな?」

「ええ、そうよ! そうでなくっちゃね!」

 

 恨まれている事を、悲しいと思いつつも、待ち望んだ強敵との戦いの期待で、戦闘民族の少女は、獰猛な歓喜の笑みを浮かべて地を蹴り前に出る。

 

 

「さあ、覚悟はいいかしら!! おじさん達!!」

 

 

 ギニューは戦闘力を限界まで高め、凄まじい速度で突撃してくる少女を迎え撃つ。これまで戦ってきた中で、間違いなく最も手強い相手だったが、彼の戦意もまた、かつてない程に燃え盛っていた。この半年間の鬱屈が、嘘であったかのような精悍な声で、彼は全員に号令を掛ける。

 

 

「お前達!! フリーザ様のためにも、絶対に勝つぞ!!」

 

 

 素早く四散し、それぞれの配置に付いた隊員達もまた、凄味のある笑みを浮かべて応える。

 

「了解です! 隊長!」

「手応えの無い相手ばかりで、退屈してたところでさ!」

「ナメック星でやられた借りを返してやるぜ!」

 

 ジース、リクーム、グルドがそれぞれ叫び、最期にバータが、楽しそうに呟いた。

 

「後悔するんじゃねえぜ? ナッツちゃん。おじさん達は、強いんだからよ」

 

 そしてヤードラット星を舞台に、再びナッツと彼らの戦いが始まった。




 というわけでヤードラット星です。悟空の瞬間移動習得フラグを回収するのが主目的で、戦闘は軽く流すだけの予定だったのですが、評価コメントで「もう少し戦闘描写必要じゃね?」って意見を頂きまして、確かに最近日常の描写ばっかりだったなあと思って書いたら筆が乗ったのでこうなりました。

 ……戦闘描写苦手なのにハードルだけ爆上がりしてる気もしますが、何とか頑張ります! 少し遅くなるかもしれませんが、気長にお待ちくださいませ!
(ジムリーダー戦のBGMで気合いを入れながら)


・傍から見れば愚かとしか思えない行動
 あの世から悟空が来るのを3時間待ってあげたりとか、ドクターゲロが人造人間作るのを3年間待ってあげたりとか、セルが完全体になるのを待ってあげたりとか。
 あと瀕死のベジータを見逃したり、セルに仙豆食わせたりとかも追加で。


 それと前回はたくさんの評価と感想とお気に入りを有難うございます。お気に入りとかとうとう1200を超えまして、割と多くの方々が続きを楽しみにして下さっているというのは分かっているのですが、それでも新しく反応を頂けるたびにいちいち嬉しく思えて、続きを書く励みになっております。そういうわけで、もし面白いと思って頂けましたら、一行でも構いませんので感想等頂けると幸いです。
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