「わ、私、そんなに大きくなってたの!?」
悟飯の言葉に、成長したナッツは驚きの声を上げる。
そういえば確かにここ最近、胸が少し膨らんできたり、パジャマが小さくなって父様達のシャツを借りたりしたけれど。あと何故か父様達が一緒に寝てくれなくなって、ちょっぴり寂しかったりもしたけれど。
それでも父様もトランクスも私より背が高いから、あんまり気付かなかったけど。私よりほんの少し小さかったくらいの悟飯が、今は私の胸くらいまでしかなくて、否が応でも成長を感じてしまう。
「けどそんな事関係ないわ。小っちゃくても悟飯は悟飯だもの。会いたかったわ……」
愛おしそうに彼の顔を見つめて、抱き上げて頬ずりするナッツ。身体に当たる戦闘服ごしの確かな胸の感触に、真っ赤になった少年が叫ぶ。
「ちょ、ちょっと!? 離れてよナッツ!」
その言葉を誤解したのか、少女は悲しげな顔になってしまう。
「……どうして? 私の事が嫌なの?」
「違うよ! え、ええと……」
助けを求めるように悟飯が辺りを見渡すと、謎の四角くて薄い機械を彼らに向けてシャッターを連打していたトランクスが、とても爽やかな笑顔で言った。
「悟飯さん、どうぞそのまま姉さんとお幸せに。オレの事は気にしないで下さい」
「助けてよ!?」
(こ、こうなったら、ベジータさんでもいいや……)
悟飯は彼女の父親の姿を目で探す。ナッツとこんな密着していたら、きっと怒って来るはずだ。この際後でボコボコにされようと構わないから、早く助けて欲しい。
そうして彼が見つけたナッツの父親は、頭を抱えて呻いていた。
「くっ、殺す! ……だ、だが、ナッツはもう年頃で……オレが邪魔をしていいのか……?」
「何か悩んでる!? じゃ、じゃあピッコロさんとお父さんは……」
「れ、恋愛というやつなのか……わからない……」
「いつ結婚するんだ、お前達?」
いつもの反応を見せる2人に、思わず死んだ目になる悟飯。
だが救いの手は、思わぬ所からやってきた。
「あなた達、もう出て来たのね。皆の分の新しい戦闘服を持ってきたわよ」
「あ、ブルマも久しぶり!」
十分堪能したのか、ナッツは少年を放して彼女の元へと駆け寄った。20センチ以上も背が伸びた娘の姿を見て、ブルマは目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待って!? すっごく可愛くなっちゃって!」
駆け寄ってきたナッツを抱き留めて、感動の目で成長した姿を確認するブルマ。撫でて撫でて、と甘えん坊の猫のように擦り寄るナッツの頭を撫でながら、彼女は夫に呼びかける。
「ベジータ! ちゃんと写真撮ってるんでしょうね? もうちょっと前くらいの姿とか!」
「当然だろう。1000枚以上ある」
「オレも同じくらい撮ってますから、後で見せますよ」
「あんた達、本当に親子ね……」
呆れつつも嬉しそうな顔で、娘を抱き締めていたブルマは、その腰にまだ尻尾が生えていない事に気付いて、慰めるように言った。
「尻尾なら大丈夫よ。きっとそのうち生えてくるわ」
「うん……」
しゅんとなって、彼女の胸に顔を埋めるナッツ。結局あれから1年経っても、尻尾は生えてこなかったのだ。前は2ヶ月くらいで生えてきたというのに。大人らしいけど、戦いの役に立たない胸よりも、尻尾が欲しかった。
落ち込んでいる娘の背中に手を当てながら、父親が声を掛ける。
「ナッツ、新しい戦闘服に着替えてこい。それからお前の尻尾を切ってくれやがったセルと人造人間の奴らに、お礼参りをしに行くぞ」
「わかりました、父様」
少女はブルマの持ってきたケースから自分の戦闘服を取り出して、にっこりと笑う。
「ありがとう、ブルマ。持って行った戦闘服は全部壊れちゃって、今着てるのしか残ってなかったの」
彼女が着ているその一着も、サイズが小さい上に、壊れたり破れたりで、あちこち肌が出ている状態で。目のやり場に困る姿に、あと10着くらい替えを持たせておけば良かったと、ブルマは内心頭を抱えた。
「そんな大きくなるなんて思ってなかったから。小さいわよそれ。できれば作り直したいんだけど……」
「大丈夫よ。戦闘服は大猿になっても破れないんだから、無理やり着れば入るわ」
「丈短くなって脚がかなり見えちゃってるし、ジャケットも胸の辺りにもう少し余裕持たせないと……ナッツ! ここで脱ぐのはよしなさい!」
「何で!?」
無造作に戦闘ジャケットを脱ぎ捨てたところで、怒ったブルマにずるずると宮殿の中へ引き摺られていくナッツ。
とっさに目を逸らしていた男衆だったが、肌に密着したアンダースーツのみの姿が一瞬見えてしまっていて。すらりと伸びた成長中の少女の身体の曲線に、気まずい空気と沈黙が流れる。
「女の子はちょっと大変だな……」
「そうだぞカカロット。その分宇宙一可愛いがな」
ナッツが戻ってこないうちにと、ブルマが残していった戦闘服に着替え始める一同。こちらは全員男同士で気楽なもので。
「ピッコロさんは着ないんですか?」
「オレはサイヤ人やフリーザ共が着ていた服など着る気になれん」
「けど結構軽くて良いぞこれ」
「おいカカロット、ナッツの奴、成長が早いと思わないか? まだ12歳なのにあれは……」
「うーん、確かにオラも、15歳まで悟飯と同じくらいだったからなあ」
「い、いえ。あんなものじゃありません。もっと、大きくなっていきます……あいたっ!?」
儚げな雰囲気ながらも、身体の方はしっかり成長していた未来の姉の姿を思い出し、戦慄した顔で呟くトランクスの頭を、少し顔を赤くした父親が無言で軽くはたき倒す。
(もっと大きく……!?)
顔に出さないようにしながらも、将来そんな風に成長した少女が、今と同じく積極的にスキンシップをして来る光景を想像し、内心慄く悟飯だった。
ピッコロを除く全員が戦闘服に着替え終わった頃、同じく着替えたナッツも宮殿から出てくる。
「ナッツ、後でお洋服買いに行くわよ。下着とかもちゃんと揃えないと」
「うん。セルや人造人間を倒してからね」
そして彼女は悟飯の方へぱたぱたと寄ってきて、嬉しそうに言った。
「悟飯、やっぱり戦闘服が似合ってるわね。格好良いわよ」
「あ、ありがとう……」
照れた様子の少年に、ナッツは少し真剣な顔で問いかける。
「ところで、セルの戦闘力がずいぶん高くなってるけど、もしかしてもう完全体になったの?」
「それはね……」
悟飯の説明に、ふむふむと頷くナッツ。
「なるほど、人造人間が1人吸収されて、今のセルは第二形態ってわけね」
「うん。物凄く強くなってるけど……大丈夫?」
心配そうな少年の言葉に、ナッツは念入りにセルの戦闘力を測りながら答える。
「うーん、戦ってみるまで判らないけど、多分私でも何とかなるわね」
「えっ!?」
「……サイヤ人、相手の実力を舐めると痛い目に遭うぞ」
「何よもう。確かに今のセルは強いけど、身体が大きくなってから、私の戦闘力も凄く伸びたのよ。ちょっとだけ見せてあげるわ」
信じていないという様子のピッコロの忠告に、少女は頬を膨らませて、その戦闘力を解放する。
「はあっ!」
気合の声と共に、一瞬で超サイヤ人と化したナッツを中心に凄まじい気の奔流が吹き上がり、宮殿全体が激しく震えだす。
「おおー! 結構やるじゃねえか!」
悟空が嬉しそうな反応を見せる中、倒れそうになる樹木やひび割れていく床のタイルを見ながらピッコロが叫ぶ。
「やめろ! 宮殿が壊れるだろ!」
「……ごめんなさい、外の世界って、脆かったのね。気をつけないと」
周囲の被害に、軽く冷や汗を流しながら、少女は変身を解いて黒髪に戻る。
「だいたい今ので半分くらい。戦闘力150億ってところかしら」
「す、凄い……!」
「父様やトランクスはもっと凄いのよ。セルも思ったより、大した事はないわね」
褒められた嬉しさに、えへんと胸を張るナッツだったが、ふと気付く。セルが楽勝という事は。
(あ、あれ? じゃあ悟飯達、あの部屋に入る必要がないんじゃ……?)
元々は、私達の後に悟飯達が入るという話だったけど、父様やトランクスと楽しく過ごせたとはいえ、あの部屋の環境は結構キツかった。まして2年間だ。必要も無いのに、入れと言えるものではない。
(けど私だけ、2年間も多く訓練したなんて……)
それはずるいと、少女は思ってしまう。普通に同じ条件で訓練して差が付くのならともかく、こんなやり方で彼を大きく上回ってしまうのは、どうにも納得できなかった。
「悟飯達はどうする? もう私達だけで十分だと思うんだけど……」
恐る恐る、聞いてみるナッツ。その表情と普段の言動から、悟飯は彼女の考えている事を理解して答える。
「ううん、ボクも入るよ」
「……どうして?」
自分よりも背の高くなったナッツの目を、それでも少年は真っ直ぐに見上げる。目の前のサイヤ人の少女が自分に求めるもの、それは優しさだけじゃなく。
「君よりも、強くなりたいから」
「っ!?」
その言葉に、心臓を撃ち抜かれたような衝撃を受け、思わず後ずさってしまうナッツ。あまりの反応に、言葉を発した悟飯の方も驚いてしまう。
「だ、大丈夫?」
「う、うん! 大丈夫よ! 楽しみにしてるわ……」
答えるも、何故か彼の目を真っ直ぐ見れなくて。顔を真っ赤にしてしばらくもじもじした後、ナッツは突然、凄い勢いでその場を飛び去った。
「わ、私、セルを倒しに行ってくるから!」
「待って下さい姉さん!?」
「くっ、殺す! ……だ、だが、ナッツはもう年頃で……」
「いいから早く行きなさい!」
慌てて後を追う弟と、苦悩しながらもブルマに尻を蹴っ飛ばされて、慌てて続く父親。
「こういう時って、お赤飯炊くんだっけか?」
「……悟飯、責任取れよ」
「ピッコロさんまで!?」
何度も悟飯とナッツのやり取りを見せられているうちに、わからないと言いつつも、何となく恋愛というものを理解し始めていたピッコロが、不本意そうに呟いた。
少し離れた上空にて。長い黒髪を風になびかせて飛ぶナッツは、彼の言葉を思い出して、再び顔を赤らめていた。
「もう、悟飯ったら……」
サイヤ人の女性は、基本的に自分より強い相手しか、つがいになる対象として見なさない。そんな彼女にとって、悟飯の言葉は告白とほぼ同じ意味で。胸がどきどきして、身体が熱くなってしまう。
今はもう消えた肩の傷跡に、そっと手を伸ばす。思い出すのは、初めて地球に来た日のこと。互いに全力を出し合って、殺されるかもしれないとすら思ったあの日の戦いを、いつかもう一度できるのだろうか。
「……本当に、楽しみだわ」
強敵を待ち望むサイヤ人としての気持ちと、彼を好ましく思う少女としての気持ちと、その両方が上乗せされた、獰猛かつ可愛らしい微笑みが、彼女の顔に浮かんでいた。
サブタイトル毎回悩んでるんですが、このくらいはっちゃけても良いんじゃないかなって思いました! 判りやすさ重点な!
あと最近お気に入りとか感想結構いただけて嬉しいです! ありがとうございます! 続きを書く励みになっております! できましたら評価もセットで頂けるとますます嬉しいですのでどうかよろしくお願いします!
・ナッツ達の強さ
原作だとベジータ達が部屋に入ってたのは1年ちょっとなのですが、この話では2年なのでその分強化されてます。具体的にはベジータとトランクスがセルジュニアと互角くらい。第二形態セル涙目です。
・写真1000枚以上
お話が良いゲームだとスクショそのくらい撮りますよね?
(switchの残り容量から目を逸らしながら)
・もっと、大きくなっていきます……
全く関係無いんですが、原作だとこれ悟飯の台詞です。
・責任取れよ
これは原作でもピッコロの台詞です。原作セルが完全体になった経緯、クリリンも割かし戦犯だったんですがベジータのやらかしが大きすぎて……。