「さぁて、嬉し恥ずかし戦後対談と洒落込もうか?」
「……くっ!」
雄二の言葉に本当に悔しそうな顔をする根元君
「本来なら素敵な卓袱台と畳をプレゼントするところだが特別に免除してやらんこともない」
「なっ、なに!」
「こいつを来てAクラスへ戦争の準備ができていると伝えてこい」
雄二が取り出したのは女子の制服
二度目だからそんなに驚かない
「俺に、これを着ろと言うのか!」
根元君は嫌がっていたが
『それだけで教室を守れるならやらない手はないよな!』
『Bクラス全員でやり遂げて見せるわ!』
Bクラス面々はやる気満々のようだ
「んじゃ、決定だな」
「よ、寄るな!変態ぐふぅ!」
「とりあえず黙らせました」
「お、おう」
Bクラス生徒の一人が根元君の鳩尾に拳を叩き込む
流石の雄二も若干引いている
「明久、やれ」
雄二の合図で明久が根元君の制服を脱がしていく
だが着慣れた男子の制服を脱がすことはできても
恐らく着たことがないだろう女子の制服を上手く着せることができていない
「手伝ってあげて?」
その場にいたBクラスの女の子に声をかける
「いいわよ」
「あとついでに可愛くしてあげて」
「それはムリね。土台が腐ってるもん」
酷い言われようだ
それでも明久を手伝ってくれる女の子
………いい子だなぁ
明久が根元君の制服をもって何処かへ行こうとする
「あ、明久!?」
「違うんだよ燈!これには事情があって!!」
「ま、まぁ愛の形は自由って言うしな………」
「取り敢えず、ゴメン!」
明久が俺の傍を通りぬける
暫らくほっといてやるか……
それよりも今は根元君だ
「根元君?さっさと歩いてね」
「や、やめろ!押すな!」
「この後撮影会だからな、時間がないぞ!」
「聞いてないぞ!そんなこと!」
雄二と二人で根元君をAクラスへ連れて行く
面白いことになりそうだ
☆
あの後色々あったのだが割愛
今はFクラスの教室にいる
もう誰も残っていない
「久しぶりだな、本当に」
ハーモニカを取り出し適当に演奏する
曲でもなんでもなく、音階を装飾しただけのもの
……楽しくなってきたな
もうちょっと欲張ってみるか
とある曲を演奏する、名前はまだない
小さい時にアドリブで作った曲だが中々の出来だと自負している
ちょうど曲の終わりに差し掛かった時
ガラッ
教室のドアが開かれる
そこには………木下優子さんがいた
「えっ!木下さん!」
「し、東雲君!?」
優子さんは走ってきたのか息が上がっている
「どうしたの?こんな時間に?」
「えっと、自習してたら遅くなっちゃって」
「こんな時間まで自習してたの!?」
「それより東雲君、さっきの曲なんだけど…」
どうしたのだろう?様子が変だ
「どうしたの?どこか悪いの?」
「そ、そうじゃなくて………」
ひょっとして曲の事が聞きたいのかな?
「あぁ、さっきの曲は小さい時に作った曲なんだ」
「そ、そうなんだぁ。因みに小さい時って何歳ぐらいのことかな?」
「えぇっと小学4年生ぐらいかな」
「ほ、ホントに!?」
「う、うん。それがどうかしたのかな?」
「な、なんでもない!」
声が裏返っている、何かあるな。だがー
「そっか」
追求しないことにする
誰だって聞かれたくないことぐらいあるだろうしな
「も、もしよければなんだけど……さっきの曲、最後まで聞かせてくれないかな?」
上目遣いで顔を覗き込んでくる
…………ズルイなぁ、全く
こんな風にお願いされたら、男なら断れないだろう
もともと断るつもりもなかったので
「お安い御用さ」
承諾しておく
「ありがとう………!」
俺に笑いかける彼女の笑顔が
何よりも綺麗で
「………………あっ///」
彼女の声が漏れるまで、時間を忘れて見とれてしまっていた
「ご、ゴメン!///」
思わず反射的に謝る
「べ、別に!!///」
二人して視線を逸らす、何だかいい雰囲気だ
「き、木下さん!///」
「な、何?///」
夕日に暮れる教室
何だかいい感じの二人
こ、この流れは……
「えっと、その………///」
顔から火が出るとは正にこのことだろう
だがその時
ガラッ
再び教室のドアが開かれる
「なんだ東雲、まだいたのか」
西村教諭が現れる
体がビクッとなってしまった
「に、西村教諭!?」
「こ、これは違うんです!」
リアクションが被ってしまって更に恥ずかしい……
チラッと隣を見ると視線がぶつかる
「「…………っ!」」
お互いが明後日の方向を向く
「まぁ、何でも構わんがそろそろ最終下校時刻だぞ。気を付けて帰れよ」
「「は、はい」」
すっかり空気が流れてしまった
「木下さん、帰ろっか?」
「うん、そうだね」
☆
「お、木下さん!お待たせ」
「ううん、全っ然!今来たとこなの」
今日の下校は木下さんと一緒!幸せだ
その後は世間話をしながら歩いて帰った
そして、二人の道が別れる処で優子さんが突然
「…………ねぇ、東雲君?」
「どうしたの、木下さん」
突然立ち止まり質問してきた
どうしたんだろう?
「さっき、西村先生が来なかったら……なんて言うつもりだったの?」
「えぇ!な、なんだったかな〜、あはは」
愛想笑いして誤魔化す
「そ、それじゃあ、また明日!」
無理やり別れを切り出す
少し進んだところで、彼女が
「……………意気地なし」
と呟いたのは、しっかりと耳に届いていた