「さて、皆。ここまで付いてきてくれてありがとう」
雄二が教壇に立ち、こんな事を言ってきた
………明日は槍でも降るのだろうか?
「正直、至らないところばかりだったと思う。それでも力を貸してくれた皆がいたからここまで来れた」
皆が静かに聞いている
「後は………後は任せてくれ!必ず俺がシステムデスクへ導いて見せる!」
クラス中が声援で溢れる
「俺、燈、姫路、島田、ムッツリーニ、秀吉、そして明久。この7人で宣戦布告をしてくる!もう一度……もう一度皆の力を貸してくれ!」
『おおっー!!!』
☆
そんな訳で今、Aクラスの前にいる
「おし、行くぞ」
雄二がドアをあけ、皆で中に入ると
「「「おおー!」」」
凄い光景が広がっていた
フリードリンクやシステムデスク、更にはノートパソコンまで
………これが格差社会か
しかし、先程からどうも………
Aクラスの女の子達が俺を見てヒソヒソ話をしている様だ
いや、我ながら女々しいな。こんな事を考えるのはよそう
それでも、身嗜みを直してしまうのは仕方が無いことだと思いたい
その時、他の娘に押されて優子さんが出てくる
詳しくは聞こえないが
『頑張って』
『チャンスだよ』
とか聞こえてくる、何を頑張るんだ一体……
「あ、あら、どうしたの?Fクラスの皆さん?」
心なしか顔が紅い
「俺たちFクラスはAクラスに宣戦布告する。内容は一騎討ちだ」
「一騎討ちですって?何を考えてるの」
「そんな事はどうでもいい、受けるのか?受けないのか?」
「う、うーん」
悩んでいるようだ
そりゃいきなり一騎討ちを申し込まれたら困るよな
「………受けてもいい」
凛とした声だった
大人びていて透き通るような……そんな声だった
「だ、代表⁉︎」
どうやら彼女がAクラスの代表らしい
ということは、彼女が霧島さんなのか
「……………(はっ)」
しまった、見とれていた
「その一騎討ち、受けてもいい。但し条件がある」
「………なんだ?」
「負けた方は勝った方の言うことを何でも1つ聞く」
何が狙いなんだ?
「いいだろう。交渉成立だ」
雄二が承認するが
「ちょっと待って、1対1じゃなくて5対5よ」
優子さんが異を唱える
恐らく姫路さんを警戒してるのだろう
「……代表が負けるとは思わないけど、念には念をってね」
何だか少し口調が強い
驚いて彼女を見ると
「…………フン!」
視線が合ったとたん、怒ったように踵を返す優子さん
「5対5か………いいだろう。その代わり科目の選択権を5つの内3つ貰う」
「…………構わない」
優子さんがそそくさと自分の席に帰ってしまったので
霧島さんが受け答えをする
「やれやれ、姉上も子供じゃのう」
「どういうこと?秀吉」
「東雲君?もしかして、わからないんですか⁉︎」
「もしかしても何もわからないよ?」
「ダメだなぁ燈は……女心がわかってない」
「明久には言われたくない」
「………鈍すぎ」
「ムッツリーニまで⁉︎」
「東雲!あんた男でしょ!腹括りなさいよ!」
「だから、何の話だよ!」
「……………優子が可哀想」
「き、霧島さん⁉︎」
「燈、こっちはいいから早く行け」
皆に催促されて、優子さんの席に近づく
「あ、あの……木下さん?」
「なに?」
何だか取り付く島も無い
「さっきはゴメン」
「何が?」
「えっ?」
「何が悪いの?別に東雲君は何もしてないじゃない」
な、何が悪い…………か
心当たりが無きにしも非ずなんだよな
「その、霧島さんのことずっと見てたこと」
「えっ⁉︎」
「あぁ、いや……その、えっと。昨日のこと」
「どっちよ!」
「ど、どっちも?」
「何で疑問形なのよ!」
何だか少し柔らかくなったな
その証拠に、ほんのり顔が赤くなっている
その時
「いやー、何だかいい空気ですなぁ」
優子さんに後ろから女の子が抱きつく
「えっと………ゴメン覚えてないや」
「いいよいいよ、ボク転校生だから」
そう言っているのはボーイッシュな感じの女の子
「名前は工藤愛子だよ〜。よろしく、東雲君!」
「よろしく、工藤さん。そして、どうして俺の名前を知ってるのかな?」
「いつも優子から聞いてるくぁっ⁉︎」
「だ、ダメよ⁉︎愛子!」
優子さんが工藤さんの口を塞ぐが肝心の箇所は聞き取れてしまった
………優子さんはクラスで俺の話をするのか
何だか恥ずかしいな
「いや〜、優子は羨ましいな!こんなカッコいい彼氏がいて!」
「彼氏じゃないってば!!」
「そうだっね。まだ彼氏じゃないんだったね」
「まだって何よ⁉︎まだって!」
「で?優子はこう言ってるけど、実際のところどうなのかな?」
ここで俺に振るのか………乗ってみよう
「ばれちゃぁしょうがないな」
「おっ!東雲君はこう言ってるよ?」
「あ…………うぅ………///」
俯いてしまい顔がよく見えないが
恥ずかしがっているのかな?
「じゃあ後は二人きりにしますか。お熱いね〜」
笑ながら何処かえ行ってしまい
優子さんとまた二人で会話することになる
あ………この子多分周りを忘れてる
「し、東雲君?///」
「木下さん………ここ、教室だよ?」
「…………!」
はっと我に返る優子さん
「ち、違うの!これは!」
優子さんが女の子のグループへ行ってしまったので
俺も皆の元へ帰ると
「シャー!!燈!この野郎ー!!!」
明久が襲い掛かってきた
「えっ!ちょ!」
反射で蹴りを受け止める
「あっぶね!」
「逃がすか!!」
直ぐに追撃を仕掛けてきたが、付き合う気もないので
「さいならー!」
逃げることにする、だが
「………確保」
「ムッツリーニ、貴様……!」
「………俺たちは、人の幸せを許さない」
「皆ー!!!」
明久が叫ぶと
ドドドドドド
何処からか死神のような格好をした奴らが現れる
「や、やめろー!」
反論虚しく連れ去られてしまう
何なんだ、こいつらは?
おまけ
今朝のAクラス〜優子side〜
「はぁ」
本日何度目かのため息をつく
ダメだなぁ。意識してやめてるつもりなのに……
机に突っ伏してもう一度考え始める
内容は昨日のこと
もし、あの時西村先生が来なかったら……
「告白、してくれると思ったのになぁ」
「誰が?」
何度考えても同じ結論に至る
この考えが正しくないことは、頭では分かってる
希望的観測が入り混じっているから……
「ねぇ、誰が?」
でも、心は簡単に納得しない
この矛盾が先程から喉につっかえている
「ちょっと、優子?聞いてる?」
そもそも自分は告白されたらどうするつもりだったのか
私は彼が好きなのだろうか?
いや、逆だ。彼は私が好きなのだろうか?
そこまで考えたところで現実に引き戻される
「ねえ!優子ってば!」
「えっ⁉︎愛子、いつからいたの?」
「告白してくれるとってとこ。それより誰なの?」
声に出ていたのだろうか?
「えぇっと、誰だったかな〜」
「優子ってウソ下手だよね」
「そ、そんなことないわよ!」
「で、誰なの?」
キラキラした目を向けてくる
何故女子という生き物は恋に敏感なのだろうか?
よし、適当なことを言って誤魔化そう
「隣の学校のー」
「ダウト」
「まだ言い切ってないのに……」
私は本当にウソが下手らしい
………参ったな
「ねぇ、ひょっとして……Fクラスの東雲君?」
「うっ…………」
「あはは、図星だった?」
声が漏れてしまったので、これ以上隠しても意味がない
「…………なんで?」
「だって優子ったら、東雲君が廊下を通るたび見つめてるもん」
そんなに分かりやすいのかな?
「………優子はもっと積極的になるべき」
「代表も知ってたの?」
もう驚かないが、気になる
「…………優子がする話は東雲の話題が多い」
「そうそう。優子が男の子の話をする時って、大体東雲君だよね〜」
「………今度のFクラスとの戦争に『負けた方は勝った方の言うことを聞く』って条件をつける」
「そうすれば東雲君とデートできるでしょ?」
「………代表!愛子!」
ヤッパリ持つべきものは友達ね
「…………後はFクラスを待つだけ」
「頑張ろうね、優子」
「………ありがとう」
「それじゃあ、優子。詳しく聞かせてよ」
「……………えっ?」
「………私も聞きたい。東雲の何処が好きなの?」
この流れはマズイ。気を逸らしちゃえ!
「き、木下さん?」
救世主来たる。これでどうにかー
「その話、私も聞かせてもらっていい?」
どうやらこの子は私を追い詰める側らしい
『私も!』って声が沢山聞こえる
気が付くと10人程のグループができていた
………どうしよう
皆、ワクワクしながら私が話すのを待っている
「えっと、初めは
少しだけ、クラスメイトの期待に答えてみることにした