「この子は気持ちよさそうに、寝てるチャブルね」
「外傷はないみたいなので、もしかしたら能力の使い過ぎで体力が持たなかったのかもしれませんね」
「いきなりシャボン玉が割れて……が、この子を連れて来た時は驚いたわ」
ふわっとした頭に頭元で誰かが会話してるのが耳に入って、目が覚める。
「んん……っ?」
「あ! イワさん、女の子は気が付いたみたいです!」
「やぁぁっと、起きたっチャブルね」
「……やっと?」
薄っすらと目を開いて、ぼぉーっとした頭で疑問を返す。
「あれから、3日寝てたのよ。ボーイ……じゃなくてガールの方がいいチャブル?」
「3日っ?!」
ビックリして飛び起きると見たことない場所に、いることに気付いてもう一度ビックリする。
「ってか、ここどこ?!」
「革命軍の船っチャブル」
「えっーと……サボを探しに出て、見付けて……見付けて?? あぁっ?! サボはどこっ?!」
「あぁ、あの子やっぱりサボくんって言うんですか」
「へっ?!」
イワさんと一緒に居た人からサボの名前が出てくる。
あたしが混乱していると、その人があたしの状況を説明してくれる。
あたしはサボを見付けて連れて行こうとサボをシャボン玉で包もうとシャボンを出そうとした瞬間に気を失ったぽい。
どうやら、能力の使い過ぎで気絶をしたみたい。
……能力の使い過ぎで気絶なんかするんだね、今まで火事の時みたいに使ったことが無かったから知らなかった。
それで、悪魔の実の力を使ってる本人が意識を飛ばすと悪魔の実の能力は無効化するらしく、あたしが気絶してシャボンが割れてサボと話していた人が落下してるあたしを助けてくれてここに連れて来たと言う状況らしい。
「ヴァナタが話し掛けてたボーイは、その時はそのまま家に帰ったわ」
「そっか……家に帰ったんだ……」
連れ出すために行ったのに、連れ出せなかったことにショックを受ける。
「ヴァナータ、今更だけど名前はなんて言うチャブル?」
「あたしの名前……? ア、いうえおかきくけこ?」
「……はぁ?」
ちょっと待てよ。
あたしの名前って、海賊王の娘だって気付かれないようにってアイって今まで呼ばれてたんだよね?
この革命軍って人達がなんだかわからないけど、アンって名乗るべきなのかアイと名乗るべきなのか考えて意味不明なことを思わず口走ってしまった。
意味不明なことを口走ったからか、イワさんはおもいっきり変な顔であたしを見てる。
ここは、アイって名乗った方がいいのかな。
「モンキー・D・アイ……」
「?! ヴァ…ヴァナータ?! も、もう一度……名前を……」
「え、だから、アイですけど?」
「そこじゃない、前!!」
「前……? モンキー……」
「ぎょええええええええっっ?!?!?! ドラゴーーーーーン!!!!」
モンキー・Dと言う前にイワさんは、叫んでこの場から走って出て行ってしまった。
「えっ、な、なに?!」
「あ、いや。あはは……」
イワさんと一緒に居た人も何故か歯切れが悪くなった。
モンキーの名もなんかヤバイの?!
あたしの知ってる人で後、モンキーの名がある有名人は海軍の英雄らしいじぃじ位しか知らない。
火事のところからゴミ山の人達を助けるような人だから、海軍の人たちと敵対するような人じゃないはずだし。それでビビったとかではないと思うんだけど……。
◆◇
「おれは、君を知らん。誰だ?」
「えっ、あたしもあなたを知りませんよ?」
目の前に顔に刺青が入って目つきのあまりよろしくない人が、イワさんが引きずるように連れて来た。
イワさんはこの人とあたしが、知り合いだと思ったらしい。
「ヴァナータ!! もう一度、名前をいいなさい!」
「えぇ?! モンキー・D・アイですけど……」
「ほら、ドラゴン聞いたでしょ名前!!」
「ふむ……」
腕を組んであたしをジッと見るドラゴンと言う人。
あれ? そういえば、ドラゴンって名前って何処かで聞いたことがあるような?
どこだっけか? うーん、うーん、うー……っ!?
「ああっ! ルフィのお父さんだ!!」
「!!」
思わず叫んだあたしを目を丸くして、ドラゴンさんはあたしを見る。
そうだ、そうだ。夢で革命家のドラゴンの息子がルフィでルフィも鬼の子がどうのこうのって。
あー、スッキリしたぁー。
けども、目が合ったままあたしとドラゴンさんはお互いに固まってる。
夢のこと思い出してスッキリしたから、叫んじゃったけど……こ怖い人? 思わず叫んだけどどどどどどうしよう?!
「イワ。少し席を外してくれ」
「え、あ。わかったチャブル」
え、え、え。
イワさん行っちゃうの? え、やだ。
変な人だけど、怖い人ではなさそうなイワさんがいなくなるだけで不安でいっぱいになるよ?!
しかも、さっきまで居た人もいなくなってるし。
イワさ〜ん!! と半ベソ気味に視線を送ってみたものの素直にイワさんはこの部屋から出て行った。
「そんな顔せんでも、取って食ったりはせん」
「は、は、はいぃぃっ」
「君は……ルフィとなんだ?」
「ああああ姉です!! たぶん!!」
「姉……? あぁ、じじいがなんかしたのか?」
じじいとは、海軍のじぃじの事を言ってるんだと思ってコクコクと頭を縦に振る。
「ここでは、本当の名前を言っても大丈夫だ」
ポンっとあたしの頭に手を置くドラゴンさん。
笑顔はないものの、それに温かみを感じてさっきより怖いと言う気持が薄れる。
「ポートガス・D・アンです……たぶん……」
「ポートガス……そっちも多分なのか」
「アンって名前は本当です!! 家名がえっとその……」
何かおかしかったのか、フッとドラゴンさんが笑った気がする。
そりゃ、ルフィの姉に多分。名前に多分。とか言ってれば笑われて当然か。
「ゴール・Dか」
「?! ななななんで?!」
「ポートガスでもモンキーでも好きな方を名乗ればいい。だが、アンは本当の名なのだろう?」
「……はい」
なんでゴール・Dってスグにばれたんだろう。
ポートガス・D・ルージュがロジャーの子供を産んだって、裏の世界では有名なのか。
母さんももしかして有名人なの?!
「モンキーを名乗ると、ここでは質問攻めに合うと思うがどうする? わしの娘だと言ってもかまわないが、ここでポートガスを名乗っても驚く奴はいるかもしれんが、気付いたりする奴らは少ないはずだ。ゴールは、勧めることはしない」
エースはゴール・Dは絶対にこれからも名乗らない気がする。
あたしだって最近それを知ったばかりで、その名はしっくり来ない。
それにエースの処刑の件もある。ここで、あたしがロジャーの娘だと言いふらす感じになって、エースの処刑が確実なものになるのも嫌だ。
そんでもって、モンキーをここで名乗るのは気まず過ぎる!!
「ポートガス・D・アンにしときます……」
「うむ」
ドラゴンさんが少しガッカリした顔をした気がした。ロジャーの名前を使わなかったことに、ガッカリしたのかな?
まさか、モンキーの名前じゃなかったからなんてことはないよねぇ?
「ドラゴンさーーん!! お話し中すみません。男の子が起きました!!」
「男の子?」
部屋の扉の外で誰かがドラゴンさんに声を掛けた。
「あぁ、アン。おれが火事の時に会話をしてた少年と知り合いだったか」
「火事の時……?」
あれ、そういえばあの時サボが会話してたのって、はっきりと記憶にはないけどドラゴンさん?
「アンが意識を飛ばした時に、ここに連れてきたのはおれだ」
あたしの疑問に気付いたのか、ドラゴンさんが説明してくれる。
「もう、動けるか? その時の少年が怪我をして少年もこの船にいる」
「え、サボが怪我?!」
「火事の時に怪我をしたわけではないが、大怪我をしていて今まで意識がなかった」
「サボの所にあたしも行く!!」
大怪我って何?
何があったの──??
◆◇
「サボっ!!」
「サボ? ……おれのこと言ってるのか? 知らねェ……」
「さ、サボどうしたの?」
ドラゴンさんに連れてかれてサボの所に駆け寄って声を掛けたが、反応がおかしい。
「……記憶が戻らないのか」
「え、記憶喪失?!」
「みたいだな。アンこの少年とは友人か?」
ドラゴンさんにアンと呼ばれて「さっき言ってた名前と違うじゃないのーー!!」と、叫んでるイワさんを無視してドラゴンさんの質問に答える。
「えっと、友達と言うか兄弟と言うか……」
「そういえば、ヴァナタ、ゴミ山で兄弟の貴族がどうのって言ってたわね」
「う、うん……」
「ゴア王国の貴族である事は間違いない」
ドラゴンも知り合いだったの? と言う顔でイワさんがドラゴンさんを見る。
「だったら、送り届けましょう」
「いやだ!!」
「だめっ!!」
送り届けましょうの声にサボとあたしは同時に反応する。
あんな所にサボが帰ったら、絶対にサボがおかしくなっちゃう……!!
「戻りたくない……!! このまま、どっかに連れてってくれよ!!」
「あたしもその方がいいと思う。ね、ねぇ。ドラゴンさんっっ!! サボの怪我治るまで……記憶が戻るまであたしが看病するから、せめてその間だけでもこのまま一緒にこの船にいさせて下さい!!」
思わずドラゴンさんの洋服を掴んで悲願する。
「うむ。兄弟とかいうのは……今は聞かないでおくか。いいだろう、気が済むまでいればいい。アンは後でおれの、部屋に来なさい」
「ありがとうございます!! わかりました!!」
それだけ言ってドラゴンさんは、この部屋から出て行った。
サボは記憶がないからなのか、この状況が掴めてないみたいで少しオロオロしてる。
「イワさん……なんで、サボがこんな大怪我をしてるのか知ってる?」
「知ってるチャブル。ヴァターシもドラゴンから聞いただけだけど」
「…うん」
そして、イワさんから聞いた話は衝撃だった。
──その日ゴア王国に天竜人が来る日だった。
そんなその日に、漁船に海賊旗を掲げた船が天竜人の船と並んでしまった。
海賊旗を見た天竜人はそれを不快に思ったのか銃撃をし、その船が炎上し沈没した船がサボの乗ってる船だった……と。
炎上した船からサボを助けたのがドラゴンさんで、今に至る。
「明らかに子供が乗ってると分かってての、銃撃だったみたいチャブルねぇ」
「何それ……ひどい……」
これは、サボには今は聞かせない方がいい?
目頭が熱くなる。
「サボ……生きてて良かった」
「うぐっっ……いてェよ?! てか、おまえ誰だよっ」
ベットから身体を起こしてたサボに抱きつくと、記憶がない人らしい人の反応が返ってくる。
そうだ、初対面な状況で知らない人に抱きつかれたら不気味か。
ん? 初対面でなくても、そういえばサボに抱きついたことないや。
「ごめん! あたしは、ポートガス・D・アン!! サボとあたしは兄弟なんだよっ」
「兄弟? ってことは、おれもポートガスなんたらなのか?」
「あっ、それはね……違うの。あのね……」
と、言いかけて周囲の視線に気付く。
まだ、みんなここに居たの忘れてた!!
ちらっと、みんなの方を見るとわざとらしく見てませんよ、聞いてませんよ! ってあからさまな行動をしだす。
あたしと兄弟なのはいいとして、エースとルフィの名前をみんなの前で出すのはまだ気が引ける。
なにせ、あたしがポートガスと名乗っただけでドラゴンさんは、あたしをロジャーの子供だって気付いた位だ。
それにルフィがドラゴンさんの息子だって、バレたら質問攻めにあいそうだ……あたしがアイって言った時のイワさんの反応も凄かったもんな。
「はいはい、みんな!! ここは子供だけにするっチャブル!! 行くわよ」
空気を呼んでくれたのか、イワさんがみんなの背中を押して部屋を出て行ってくれた。
「……ふぅ」
「あいつらもなんなんだ?」
「あの人たちは、革命軍の人たちだと思う? それでここは革命軍の船?」
「なんで、おめェも疑問系なんだよ」
「あたしは今までの記憶はあるけど、意識飛ばして助けられてさっき起きたから実はまだ状況掴めてません……」
じゃあなんで、ここに居させろって言えたんた? って顔であたしを見る。
そりゃ……家に返されるよりは、まだましだと思ったからだけど。
あたしもサボも助けてくれた、ルフィのお父さんのドラゴンさん。
夢の中ではすっごい悪人みたいな言われた方もしてたし見た目も少し怖いけど、ルフィのお父さんだし悪い人には感じなかったから。と言う根拠のない理由。
あたしとエースとサボとルフィ。
この4人が兄弟になった経緯は、これからゆっくり話して行こう。
サボの家のこととかも話さないといけなくなるし、記憶がないなら無理矢理話して嫌な気持ちに今はさせる必要はきっとない。
話の続きはまた後で話すね! とだけ言って、あたしはドラゴンさんの部屋に向かった──。