「おい、アン?! どこだ、アンっ?!」
「あれー? サボくん、そんなに慌ててどうしたの?」
「コアラか! アンと一緒じゃねェの?!」
「アンちゃんなら、今日は料理当番だからキッチンに居るはずだけど?」
と、あたしを探すサボの声が筒抜けのキッチンにあたしは居ます。
いや、普通に見聞色使えばこの狭い隠れ家ならいる場所わかるだろうに。
「なぁに、うるさいなぁ。どうしたの?」
とりあえず、サボが叫びまくってあたしのことを探すなんてことは滅多にないから自ら出向くことにした。
「アンの手配書が出てる!!」
「へっ?! あたしの?! なんで?!」
「え、アンちゃんの手配書?!」
革命軍にいたら手配書なんぞ出てもしょうがないけど、だ。手配書に載る位の大きい任務に、あたしは参加はしてないはず。
戦争後の復興の手伝い位しかした記憶しかあたしにはない。
「とりあえず見ろよ!! アンだろ、これ!!」
「……え、あ。ん? えぇぇぇぇぇぇぇ、なんでぇぇぇ?! あたし?!」
「いや、2人共。ちょっと落ち着いて、よぉぉぉく名前を見ようか」
コアラの冷静な声に従って、もう一度手配書に目をやる。
──ポートガス・D・エース
「アンちゃんと、すっごい似てるけど男の人でしょ? 半裸だし」
「あ、そういやそうだな」
「あたしじゃなかったか、そっかそっか……って、エース?! えぇええぇぇぇぇっ?! だいぶ目付き悪くなってますけど?!?!」
もう海に出てたの?! あたしら、今いくつだ?!
落ち着け、あたし。落ち着こうか、あたし。
くまさんが七部海がどうのとか、イワさんとイナズマさんはどっかに旅にいっちゃったりで色々とあってすっかり年月の流れてるの忘れてたけど……あたしら、もう17歳だ。
「しかも、アンちゃん知り合いなの?!」
「前に言ってただろ、アンに双子の兄貴がいるって!」
サボの記憶は相変わらず戻ってないから、覚えてないだろうけど、貴族は18になったら本当の貴族になるから17歳になったら航海に出るとか前にサボは言ってたじゃないかぁぁぁぁ!!
ここに来て誕生日会だの、なんだのとかなかったから自分の年齢すら忘れてたよ。
あたしもなんで、大事な所ばっかり遅れて思い出すんだ!!
「あたし、行かなきゃ!!」
「行くって何処に?!」
「エースのとこ!!」
料理当番だったのも忘れて、寝床に行って旅支度を始める。
それを追いかけて来た、サボとコアラから質問攻めに合う。
「こっから東の海まで行くのに、どんだけ時間がかかると思ってんだ?!」
「それに、行き違いになる可能性だって!!」
「だったら、リヴァース・マウンテンの出口で待ち伏せしてる!! そこらなら、ギリギリすれ違いにならないかもだし」
「そこから来るかどうかわかんねェだろ?」
「あぁ、そっか……エースなら、ムキになって海王類倒しながら来たりもしそうな……」
「アンの兄貴ならやりそうな気もするが……って、そうじゃねェよ」
「もう! じゃあ、何よ!!」
「……ん。そういや、何だ?」
あたしが言い返すとサボがピタっと反論を止めた。
「もう、痴話喧嘩は終わったの?」
「よくわかんないけど、終わった!」
「喧嘩じゃねェだろ……」
「サボくんも、心配なら心配ってハッキリ言えばいいじゃない」
「し、ししし心配?! なんだよ、それ!!」
はいはい。と、コアラにあしらわれるサボ。
「流石に能力使ってもサボには勝てなくなったけど、そこいらの雑魚とか海王類くらいならあたしだって倒せるし心配されるほど弱くないって〜」
「だから、心配なんかじゃ……!!」
「それに、ここは前半の海だしあたしより空中戦が得意な海賊もいないでしょ」
「ログポースはどうすんだよ?!」
「あ、こないだここの倉庫整理してた時に確か、エターナルポースがごろごろあったからきっとリヴァース・マウンテンらへんのもきっとくまさんが作ってたのがあるはず!!」
「そんな都合のいい話が……」
◆◇
「──あったぁぁ!! くまさん、几帳面だからきちんとどこのか書いてあったから、見た気はしてたんだけどやっぱりあった!!」
「はぁ? あるのかよっ!!」
「これで一直線に飛んで行けるから、一週間もかからないで行ける!」
ブツブツ文句を言いながら、エターナルポースがあった棚をサボも漁り始める。
「やっぱりバルティゴのはないか……」
「なんで、バルティゴ?」
「おめェがこっちに戻ってくる時、どうすんだよ!」
「あ、それなら大丈夫!! サボのビブルカード持ってるし」
「いつの間に勝手に作ってんだよ!」
文句を言ってるサボに、こないだなんとなく勝手に作ったサボのビブルカードの端を大き目に切ってから渡す。
「あ、ついでにあたしのも渡しとくね。はい、サボとコアラ!」
「あ、おう……」
「わぁ! ありがとうっ」
最近のサボは口煩い。
どこか、フーシャ村の村長のじじちゃんと重さなる。
「いやぁ、リヴァース・マウンテンの出口のエターナルポースがあったのはラッキーだったなぁ」
「出口なんて、何回も行くとこじゃねェだろ。逆走までして」
「え、だってルフィが海賊になった時にもルフィに会いに行かなきゃだから丁度いいでしょ?」
「おめェ、何年帰って来ないつもりだよ!!」
「……?」
あれ、そういえば……あたし、必然的に革命軍が自分の帰ってくる場所だと思ってたけど。
「ねぇ、あたしってば革命軍?」
「何言ってるんだ、今更」
「エースとルフィに説教出来ない!!」
「「はぁ?」」
2人に驚かれた。
そして、あたしも自分で言って驚く。
意味不明過ぎると。
革命軍は世界政府に喧嘩を売ってる、世間一般からしたらテロリストというやつで悪者。
だけど、ただ世界政府バーカバーカ! で、喧嘩をしてるわけではない。
差別のない自由な国を求めて戦ってる人が、革命軍の人の大半のはずだし差別のない世界になって欲しい。
魚人だからどうのとか、海賊王の子供だからどうのとか。
それに、今だにあたし自身は海賊王の悪評を聞いても、子供がいたらって話はわざわざ聞いたことはない。
それにその人たちの心の声を聞くと、大体の人は海賊王に直接何かされて文句を言ってる人なんて誰もいなかった。
エースから聞いたのもあるし今更、どうこう聞く気もないけど。
あぁ、なんだ、なんだ!!
ただ意味不明に理由もなく暴れてたり、食い逃げとか食逃げとか! 食逃げとかしてたら文句を言いまくればいいのか。
「あ、やっぱり説教出来る。解決、解決!」
「「?」」
「さて、ドラパパに革命軍から少し離れること、手紙書くから会ったら渡しといてもらってもいい?」
◆◇
「じゃ、ちょっくらエースに会いに行ってくるね」
「ぼけぇっとして、そこいらの鳥なんかに突っつかれて海に落ちるんじゃねェぞ?!」
「もうそんな事されないよ! それされたの、かなり前の話だし」
「されたことあったんだ……やっぱり、アンちゃんなんか抜けてるよね」
いや、実はきっと今でも突かれるのはやられると思う。天気のいい日にシャボンの中でお昼寝とか、気持良すぎるし。
だけど、鳥に突かれた位じゃあ割れないようにする事が出来るようになっただけ。
「合間で戻ってこれたら帰って来るね!」
「アンのことだから、忘れて帰って来ねェな……」
「同感」
「2人ともひどい!!」
冗談を言いながら出発の挨拶をする。
「いってくるねー!」
「気を付けて行って来い!」
「帰り待ってるよー!」
──自分の年齢も忘れてた某日。
17歳、ポートガス・D・アン。エースを追いかける為に1人で海に出た。
◆◇◆◇
「──暑いっ!! 寝れない!!」
風が安定してお天気も良くて、風に任せて流れて行こうと思った矢先。
夏島の近くだったみたいで、すっごく暑い!
今更ながら試したことはなかったが、シャボンの中の酸素濃度の変更が出来るなら温度もと思ってやってみる。
「リーフ!!」
とりあえず、シャボンの上に葉っぱで影を作って、ふわふわしたシャボンの中で正座をして考える……までもなかった。
酸素濃度上げるだけで、涼しくなるんだもの!
今まで火事だのなんだのって、慌ただしくてクソ暑い場所でしか酸素濃度上げた事がなかったから気付いて無かっただけらしい。
これで快適にお昼寝出来る──っと、思った瞬間。
「火拳!! 降りて来い!!」
「?」
火拳って、なんだろ?
下を見ると……海軍?
あれ、なんかおかしいぞ?! なんで、こっちに銃向けてんの?
とりあえず、打たれても普通の銃なら大丈夫なんだけど、なんで狙われてる?!
海軍が居たのは普通に気付いてた。けど、狙われるなんて思ってもみない一般人(革命軍だけど)だから、思いっきりスルーしてたんですけど?!
「す、すみませ〜ん。ちょ〜っと、状況が掴めないのですが火拳って、なんですかぁ? よくわからないのですが、あたしのことを言ってます?」
「あたし……っ?! それに声が……? お、お前ら、銃を降ろせ!!」
「そうして頂けると、助かりま──ぎゃあああっっ」
あたしが言葉を言いかけた瞬間──パンっと乾いた音、銃声が鳴り響く。
よくわからないけど……これわざと落ちた方が解決早そう?
「いったーーい!! ちょ、ちょっと、あたし海に落ちたら一大事だったんですけど?!」
「申し訳ない! 怪我はないか、大丈夫か?」
バタバタと女の人があたしの所に駆け寄る。
落下した先はもちろん海軍の船の上。
さっきの銃は普通の銃だったし、もちろん防ぐことは出来た。
てか、すみませぬ。
当たってなかったす! よくわからないことになる位なら、と思って自らシャボン割って落ちました!
「誰だ、撃った奴は!」
「あ、大丈夫です、大丈夫」
それに打った人、冷静になって探し当てるとガタガタ震えてたみたいで、弾みで撃ってしまったのは丸わかりだ。
むしろ撃たれたふりして、ごめん。新米ぽい海兵さん。
「怪我は落下したから、ここに打ち身ある位ですけど……それに、火拳ってなんです?」
「最近、名を上げてきた海賊だ」
「あたし、それと勘違いして撃たれた?」
そして、いやぁな予感が頭を過る。
「本当に申し訳ない! 我々もまだ直接、対峙したことが無く……こ、この手配書を見てくれ。こいつと、勘違いをしてしまった!」
「うげぇっ!?」
──ポートガス・D・エース。
やっぱり、お前かぁぁぁぁぁぁぁっ!!
と、叫びたいのを我慢したら、変な声が出た。男の人と間違えた事を怒ったと思ったのか女海兵さんは、ただただ謝ってくれる。
「こんな野蛮な海賊の男と勘違いして、本当に申し訳ない!!」
双子だからね! しょうが無いよ、間違っても! あはは! なんて、流石に言えない……逆に女海兵さんの方が気の毒になってきた。
それに火拳の由来が気になるけど、聞いても大丈夫かな?
「この人、エースって名前みたいなんですけど、なんで火拳って呼ばれてるんです?」
「それは、メラメラの実という炎を扱う能力者のようだ。東の海からグランドラインに向ってるという情報を聞きつけて、我々はこちら側から捕まえるために向ってる最中だったのだ」
カッコイイ名前の実を食べちゃってますけど?!
あたしなんか、ヤルキマ……いや、あたしはなんの実を食べたかなんて知らないんだから!
「非常に申し上げにくいのだが、これから旅をするのなら見間違うほど火拳に似ている。わたしが言えたことじゃないが、賞金稼ぎなどにも気を付けた方がいい」
「デスヨネー」
「似ているあなたがいるということは、上に報告はさせて頂くが」
優雅にお昼寝と読書をしながら、ふわふわとお空の旅をしようかと思ってたんですけど。
お兄ちゃん、何してくれちゃってるの……あたしの一時の優雅な旅が。
会ったら1発殴ろう。絶対に殴ってやる!
◆◇
「火拳ちゃ〜ん、お兄さんのお小遣いになってちょ〜だぁい」
「あたし連れてっても、懸賞金なんぞ貰えないよ〜」
「なんだよ、女かよ!」
一人目。声を聞いただけで、素直に引き返してくれた。
「ひひひひは火拳のエースすわん! そ、そそそこから降りて来てぐださゃい」
「うっさい! あたしはエースじゃない! 昼寝の邪魔するなっ」
続いて二人目。
昼寝の邪魔をされて、あたしはキレ気味に反応をしたんだけど。
すっごくカミカミじゃない、大丈夫なのこの人。
面白半分で少し気になってチラっと、あたしに声を掛けて来た少年に目をやる。
明らかに震えてる。
武器とか色々と持って武装はしてるみたいだけど、戦いに慣れてるようには見えない。
逆にこの子、大丈夫……?
「火拳さささんは、じょ女性だったのですか? だ、男性だと思ってました……海賊だけど女性、女性だけど海賊。ぼぼぼぼ、ぼくはどうしましょう?!」
「いやね、だから……あたし、火拳のエースじゃないからね? 海賊ではないからね? あたしを倒して連れてっても、賞金貰えないからね?!」
「わわわ悪いやつらららは、みみんなそういうって言ってましただた」
誰がだよ! って、突っ込みを入れようかと思ったけど、ふと少年が乗ってる船の大きさに違和感を持った。
「ねぇ、賞金稼ぎさん。その船、一人乗りにしては少しだけ大きい気がするんだけどそれどうしたの?」
見聞色で確認すると、やっぱり船に乗ってるのは一人だけで少年の気配しかしない。
「あ、あなたにには関係ない話でですすす。早く降りて来て、ぼぼくに捕まってくだささい」
「だから、あたし捕まえても賞金なんて貰えないってば。火拳じゃないし」
「ててて手配書と同じ顔してましゅっ!」
もうカミカミで赤ちゃん言葉になってるけど、大丈夫なのこの子。いや、まじで。
船の周りを飛んで、おかしな所がないか見て回る。一人で少し大き目の船を動かす航海術があるのはすごいなぁ……ん?
あれ? あぁ、この子ってば、やっちまった系だ。
「賞金稼ぎさん、この船のここに刻まれてるマークきちんと見て盗んで来たの?」
「かかか海賊船は盗んでも問題ないいって聞きききまひた」
すっごくカミカミで逃げ腰なのに、盗んで来たとか変なところで勇気あるんだけど。
「それじゃあ、そこのマークとその手に持ってる手配書でなんていう海賊団か探してみようか」
あたしの言うままに黙って手配書とニュースペーパーから、盗んだ時に外したのかきちんと畳んであった海賊旗を広げる。
ハッとした顔をしたと思ったらサーッと音が鳴るんじゃないかと思うくらい賞金稼ぎの顔が青くなる。
分り易すぎる……。
「なんて海賊団だったの? ま、あたし、聞いても海賊のことなんて多分、知らないけど」
「け、けけけけ懸賞金ななない海賊団でででてす!」
「ないって? って、なに? その火拳ってやつらより無名ってこと?」
じゃあなんで、顔が青くなるんだ?
「お王下ししし七武かか海。ひ、火拳さささん、どどどどどうじよう?!」
「あたし火拳でも海賊でもない一般人だし、どうしようって言われても」
くまさんだったら、あたしが言えば許してくれそうだけどこのマークは明らかにくまさんのじゃないしなぁ。
「で、なんていう海賊団……あ、すんごい速さでなんかこっち来てるよ?」
──詰んだな、このカミカミの少年。