「はぁー! サッパリした。3日ぶりのシャワーはやっぱりいいねぇ」
シャワーから戻って来た瞬間。
あたしをギロッと睨みつけてる、とっても痛い視線に少しだけたじろぐ。
もちろん、その視線はエースであるわけでありまして。
「おめェは、ある時に姿を消したんだ! 一体どこで何して生きてやがった!」
「あ、それ? やっぱり、じぃじは何も言ってなかったのか」
「じじぃ? おめェ、海軍に居たのか?!」
「「海軍?!」」
海軍の言葉で皆がざわめき出す。
いや、みんな気づいて? あたしが海兵だったら、海軍と賞金稼ぎに狙われたりしないと思うんですけど。
むしろ、そこいらと正反対の革命軍にいたんですけど?!
「ルフィのお父さんのことエースは、聞いたことある?」
「ルフィの親父? あいつからもじじぃからも、聞いたことねぇな」
むしろ、親父いたのかよって顔してる。
「ルフィも多分、自分のお父さんのこと知らないと思う。ドラパパ……ルフィのお父さんに、ゴミ山が火事の時に助けてもらってそこでお世話になってた。って、ドラパパはじぃじに伝えたって言ってたけど」
「あんの、くそじじぃ……!!」
あたしがそれを確認して知ったのは、
つい最近だけどね! なんて、言ったらまた怒り出しそうだからやめとこう。
とりあえず、エースが激おこぷんぷん丸でみんながどうしたらいいのか、わからなさそだからきちんと挨拶しておこうか。
「あたし、エースと双子で妹のアンって言います! 暫くこの船に乗ってるから、窃盗・略奪・サギ・人殺し以外はするし、エースより色々と出来ると思うから、みんなよろしくねっ!」
「おぉ!」
紅一点! エースと同じ顔だけど! なんて言いながらみんなゲラゲラ笑い出した。
そんな様子を他所にエースはプルプルと青筋たてて、震えてる気がする。
「アン、てめェ!! 勝手に決めるんじゃねェ!!」
あでま、爆発しなすった。
メラメラの実を食べただけあってか、エースの背後にメラメラと炎が見えてるは気のせいじゃないはず。
「あたしは海賊になるんじゃなくて、エースを監視するって約束したじゃん!」
「約束じゃねェよ、おめェが勝手に言ってただけだろ」
「んもぉ、生き別れ2回もした、可愛い妹からのお願いくらい聞きなさいよ」
「おれに一発食らわしたヤツのどこが、可愛い妹になるんだよ!」
「じゃあ、やり直す?」
「あぁん?! 次は油断しねェからな!!」
まったく、あたしに殴られたのだけの事で可愛くないとか言ってくれちゃってるのか。
ここは、しょうがない!
「エースお兄ちゃああん、会いたかったよぅっ! うるうる」
「…………っ?!」
わざわざ泣いてもない可愛さ倍増「うるうる」と効果音を声に出して、ぎゅううううっとエースに抱きついたら……顔を真赤にしてエースが固まった。
もちろん、エースが照れて顔を赤くしてるわけではないということは、逆撫でするだろうなぁとも思いつつ抱きついたのだからわかってます。はい。
「なんて言うか、シュールな光景だな……アレ」
「性別が違ってても同じ顔だしな……アレ」
あで? 皆様、引いていらっしゃる? 笑ってくれればいいのに。
「……じゃねェだろ……」
「ん? 何、エース?」
ニコっと笑ってエースに抱きついたまま、顔を向けると眉毛わピクピクさせてる。
あれ、これって怒ってらっしゃる?
「だから、そうじゃねェって言ってんだろぉぉぉぉ!!」
「うわっ!」
ぎゃああ! エースがキレた!
ピリっとした空気が漂って殴られそうになり、瞬時にエースと距離を取る。
みんなからは、ゴクリと生唾を飲む音だけが聞こえて緊張感が走る。
「勝手なことばっかり言いやがって! おれとルフィがどんだけアンのことを、探しまわったと思ってんだ! しかもだ、会えたと思ったら昔の調子でずっとヘラヘラしてやがる! ふざけるなっっ」
「──っ!!」
殴られる!! と、思った瞬間。
ポカンと軽い痛みだけが頭に感じる。
避けることは出来た、シャボンでもリーフでも使ってガードすることも出来た。
──生きてて良かった!!
エースが今にも泣きそうな声が聞こえちゃったから、何も出来なかった。
殴られる前にぎゅっと瞑った目をそっと開く。チラっとエースの顔を見ると、少しだけ気まずそうな顔をしてる。
もちろん、あたしに心の声が聞かれたなんて気付いてないはずだから、あの勢いで文句言って軽く殴ったことに気まずさ感じてるんだ。
「おめェになんか監視されてたまるか! むしろ、おれがアンを監視するんだ、覚悟してろ!」
「……エース」
それだけ言って、ふんっ! とそっぽを向いて船室に入って行ってしまった。
エースの顔が見えなくなった瞬間、あたしの涙がこれでもかって位に流れだした。
「うわああああん……! エースのぶわぁっかああああっ!! なに、兄ちゃん面してんだよおおお!! 嬉しくなんかないんだからあああああ」
しくしくと泣いてるのもなんとなく癪だったから、大声で聞かせるように泣いてやった。
「2人ともツンデレだな」
「見た目だけじゃなくて、性格までそっくりだ」
みんながそれぞれ何か言ってるのは、自分の泣き声でなんとなく恥ずかしかったから、聞こえないようにした。
それにしても、エースに殴られそうになった時のピリっとした空気の感じ……なんだったんだろ?
◆◇
「あ、そうそう。あたし、無駄な戦闘には参加しないからよろしく!」
「はいはい、勝手にしろ」
「なんで戦闘には参加しないんで?」
エースは本当に勝手にしろと言う態度だけど、他の人たちはあたしがエースを殴れたことに驚いてて「強いのになんで?!」と質問してくる。
「海賊になりたくない。とか、じゃないんだけど……あたしがあたしとして、認識されるのが嫌だからかなぁ」
「うむ?」
自分でも何をどう伝えればいいかわからないから、遠回しな言い方になったけどやっぱりみんなにもうまく伝わってないぽい。
「それに、あたしエースより強いもん! ──シャボン"銃"」
ピクッと眉毛が動いたエースに向って、硬化させたシャボンを銃の弾丸に見立てて2、3発エースに向って撃つ。
1発目だけは、上手く避けてたけどそれ以降はエースに全部命中する。
「いってェ! 何しやがる!!」
「ん、じゃあ、次行くよ? ──シャボン"銃"」
命中して赤く腫れたおでこを押さえてるエースに、今度は数が数えくれないくらい連射する。
「おい、アン! ふざけんな……って、あれ? 痛くねェ」
必死に避けていたエースが、当たっても痛くないことと、自分のからだを通過する事に気付くとピタリと動きを止める。
「じゃあ、次はエースがあたしをおもいっきり殴って」
「おぉ! いいんだな?! 今朝の仕返しも込めて殴ってやる!!」
いくらなんでも……なぁ? おもいっきりは、やべェだろ。なんて、声も聞こえてるけど、エースは聞き耳を持たず。
「ほら、行くぞっつ」
「──シャボン"硬化"」
「そんな、シャボンすぐ割れんだろ」
「割れないんだなぁ……」
「?! ……いってェェ!!」
あたしを殴ったにも関わらず、痛みでエースはうずくまる。
……割れないって言ったのに。
「みんな、心配してくれてたのに本当におもいっきり殴って来るからだよ」
「「心配してたのそっちじゃねェよ!!」」
じゃあ、なんだ? みんなの突っ込みに疑問を持ちつつ、武装硬化したシャボンに入ってたあたしを殴ったエースを見る。
「なんで、割れねェんだよ! 昔はすぐに割れただろっ」
……あ、やっぱりか。
エースは覇気をまだ知らない。
あたしが覇気を教えてあげてもいいんだけど、あたしが教えてあげるとか言ったら負けず嫌いが発動して、エースが拗ねてキレるのが目に見えてる。
「新世界では、これが普通みたいだよ。あたしの周りにはエースみたいな悪魔の実を食べた人を殴ることが出来る人が何人も居たし」
あたしにも武装色と見聞色の覇気を習得出来た位だ。双子のエースに出来ないわけがない。
それに、あたし武装色そんなに得意じゃないから、戦闘で焦って使おうとすれば失敗することもある。
教えてあげるって言っても、教えてあげれることは少ない。言葉で覇気ってもんがある、以上は上手く説明出来ないし。
「──シャボン"硬化玉" これ、エースに貸したげる。これ、壊せるようになった方がいいよ」
硬化玉をポンっとエースに投げると、掴んでジッと見ている。
「ルフィの親父の居たとこで、おめェはそれを習得したのか……? 何者なんだそいつら」
「あれ? さっき言わなかったけ、革命軍だよ。パパは革命軍!」
「「……か、革命軍?!」」
「なんだ、それ?」
みんなとエースの反応の温度差!
あたしも海賊のことなんかほとんど、知らないけど革命軍って名前くらいは知っとこうよエース!!
「簡単に言うと、海賊は世界政府に直接は喧嘩売ったりしねェけど、世界政府に直接喧嘩売ったりしてる組織ってやつだな……」
全身、骸骨の装飾だらけのスカルがエースに向かって引きつりながら説明する。
エースの仲間だけど、情報屋で海賊ではないと言うちょっと不思議な立場の人だ。
「えっーと、あったあった。これが革命軍のトップの手配書だな ──世界最悪の犯罪者、ドラゴンってやつがトップだ」
「ん。……アン、おめェ! ドラパパだかパパだか意味不明なこと言ってた癖に、ルフィの親父がトップじゃねェか!!」
「口数少ないし、怖い顔してるけど人の気持ちきちんと考えてくれる優しい人だよぉ」
みんなはポカーンと、口を開いたまま若干引きつりながら固まっている。
「すげェ、兄弟たちだなぁ……アンなんてダブルパンチじゃねェか?」
「ん? ディースなんか言ったー?」
「あぁ、わりィ。なんでもねェ」
ポカーンとしてる顔をしてる皆とは別にディースは、驚いた顔をしていた。
この人は何か知ってるのかな? エースのこと呼び捨てだし、エースと一番仲良いのかなぁ?
それにしてもダブルパンチ? どう言う意味だろ?
ダブル……? ダブル?!
「あたしってば、世界政府から見りゃ……えぇぇーー?!」
鬼の子で最悪の犯罪者集団の仲間で、海賊よりも立場的にそれを上回りまくる嫌われ者ってやつじゃないの?!
うわぁ……今、気付いたよ。
「後悔はしてないよ……? 自分で決めたんだから。うん。してないし、悪いこともしてるつもりもない。みんなが平和で自由に暮らせる世界が出来たら、きっと世界は幸せになる……だけどさ、だけどさ、だけどさ……」
あたしの方がエースより処刑台上がる確率、高くないか?!
だからか?! いや、きっとそうだ。
革命軍が戦争してたとしても、あたしは戦争に駆りだされたことはない。
事後処理と復興してる時に変なのがいたら、倒すくらいのことしかさせて貰ってなかった。
それが普通になってたから、あんまり疑問に思わなかったけど……サボとコアラとハックは、3セットで駆りだされてることがよくあった。
ドラパパにあたし守られてたんじゃん!
「ごめん。あたし、みんなにエースより迷惑かけるかも……」
革命軍としても、今現在はあたしの手配書とかまだ出てないけどさ。
混乱とショックで膝を抱えて落ち込む。
「アン、さっきから何ひとり芝居してんだよ!」
「ぐへっ!!」
顔を上げるとさっき、あたしがエースに渡したシャボンがあたしの顔面に飛んで来た。
「おめェはおめェだろぉが! 迷惑はもう掛かってる。安心しろ! なぁ、おめェら?」
「アンの姐さんが船長殴れる理由がわかって、ちょっくらビックリしたくれェですわ」
「おい、アン。鼻血出てるぞ、鼻血!!」
エースに慰められた?!
それに、それに……。
「エースの癖にいい仲間いっぱいじゃんかああああ」
「げっ! アン、おれの服で鼻血吹くなよっ」
横に座ってたディースのマントを掴んで、鼻血を吹いてたらみんなに大爆笑された。
だけど、思ってた以上に慎重に行動しないとエースもあたしも死刑台に直行しそうだ……まじで、エースが変な行動しないように監視しないと。
「──火拳、出て来い! おれの金になりやがれェ!!」
やっと一息つけると思ったけど、どうやら賞金稼ぎのお出ましのようです──。