この前、エースとサボがコソコソやってた木の所に来たら、案の定やっぱりコソコソしてる。
「今日は、いい獲物いなかったなぁー」
「明日、頑張ればいいだろ」
獲物? 食べ物になりそうな動物たちなら、コルボ山にたくさんいると思うけど……なんの話をしてるんだろ。
なんとなく声を掛けるタイミングを逃して、2人の行動を観察する。
木を箱のふたをパカッと開けるような不思議な行動をエースがすると、本当にふたを開けたのかそこに何か入れてる。
なにあれ、宝箱みたい! 何入ってるんだろ?
「あっ。本当に宝が入ってるー!」
「誰だっ?!」
あたしの声に驚いて2人は今回はきちんと、木の上の上に居るあたしを見る。
「おめェ、そこで何してんだよ!」
「見たのか?!」
「なぁに? そのベリーとか宝石」
見ちゃいけなかったのか。
でも、先に「見るな」って言われてたとしても、この位置からだと丸見えだったからどっちにしろ、見てたけど。
「先にこっちの質問に答えろ!」
……ありゃりゃ。
エースはすごぉーくご立腹みたいで、本当に鬼みたいな顔をしてる。
「ここに居る理由って、言われても……用事があるから?」
「用事があるって、そんなでかいワニ持って来といて言うことかよ……」
「サボ! ワニよりこれを見られた事だろっ」
「ねぇ、このワニの皮の剥ぎ方、教えてよっ」
「だから、お前っ! 人の話を聞けっ!」
エースは、ガミガミうるさいなぁ……。
「くれるって言うなら、貰いますけどぉ……そんなの取ったりしないし」
「そんなのって、なんだよっ! お前が取らなくても、誰かに教えるかもしんねェだろっ!」
「ねぇ、サボぉ、エースうるさいんだけど。ワニの皮の剥ぎ方を教えてくれたら、誰にもそのこと言わないから教えてよ。売れたらベリー分けるからさっ」
「このくそ女! 無視すんじゃねェ!」
「ほっんと、うっさい! あたしの事を無視してるやつに、無視するなとか言われたくない! サボ行こっ!」
「へっ?!」
サボを勝手にシャボンで包んで宙に浮かす。
それにサボは驚いてるけど、それを黙って見てるエースでもない。
「おめぇ! 飛ぶなんて卑怯だぞ!!」
ルフィと同じこと言ってる。
「卑怯も何も飛べるんだから、いいじゃんねー?」
と、サボに声を掛けてみれば、空に浮いてることに興奮してるみたいであたしの声は聞いてない様子。
「おお! やっぱ、これすげぇ! アン、このシャボン玉ってどーなってんだ?!」
「……アン?」
「ん? アンだろ、お前」
そういえば、エースもあたしのことをアンって言ってた。
エースとサボはあたしのことをアンって名前だと思ってる? 勘違いされてると思ってたけど、2人がそう言ってるってなんか変?
なんで、そういうことになってるんだ?
でも、違和感があるわけでもないんだよなぁ……。
「で、なんで、おれはお前に連れてかれてんの?」
「あ、これ! ワニ! 皮の剥ぎ方を……」
「は? 本当にそれだけで?」
「エースがうるさかったじゃん」
腑に落ちない顔をしてるけど、どうたらサボはワニの皮を剥いでくれるらしい。
「それで、いくらくれんの?」
「売れた値段の……三分の一とワニのお肉くらいなら」
OKと言いながら手慣れた感じにサボは、ワニの皮を剥いでく。
「なんで、そんなに慣れてんの?」
「自分がやれって言ったんだろ?」
「でも、サボってどっかのお金持ちのとか貴族の家の子じゃないの?」
「は?! なっ……おれは、親なんかいねぇし……」
「ふーん?」
まぁ、そうだろうと、そうじゃなかろうと、あんまり関係ないし別にいいんだけど。
「そう言えば、お前の弟って前に海王類に襲われたヤツだろ? お前とそいつも、エースと同じとこに住んでるのか?」
「あたしは、住む予定じゃなかったんだけどねぇ」
「ふーん。ほら、出来たぞ」
お互いにあまり突っ込んだことを聞いちゃいけないと思ったのか、当たり障りのない会話をしてるとワニの皮を手早くサボが剥いでくれた。
「ありがとう! 売りに行って来る!」
「おれ、さっきのとこに戻ってっから。ちゃんと、分け前届けに来いよ!」
「分かったけど、あたし……あそこ行って平気なの?」
「知らね! じゃあ、エースがキレてそうだし戻るわ」
そう言って、ワニのお肉を切り取ってサボは走って行った。
キレてる……そうね。エースお兄様は、かなりの短気だからねぇ。
あのお宝を見たとき、エースはかなりの権幕だったからあの場所にあたしが行っても無駄だろうな。
ってことは、分け前を渡さなくてもよくなるかな?
「ま、いっか。これ売りに行こっと」
◆◇◆◇
「やっぱり、いないじゃん!」
律儀にワニを売ったベリーを持って来たのに。
うん。
居ないんだから、さっきの話はチャラだよねぇー!
「おい。サボに渡すっつってたやつよこせ」
「……は?」
「だから、おれによこせって!」
いきなり声を掛けられて、驚くより前に不信感が先に声に出る。
「なんでエースに渡さないといけないのよ!」
「見てわかんねーのかよ。代理だ、代理!」
「やだね! あたしはサボと約束したんだから」
「おれだって、好きで来たんじゃねェよ!」
そんな言い争いをエースと数分。
どちらかが折れれば早い話だったんだろうけど、あたしもエースも折れない。
「サボがここに来たら、あいつ優しいからお前を連れてくるかもしれねェだろ!」
「別にいいじゃん! ダメって言われても、勝手について行くつもりだったし!」
「ふざけんな! ついてくんな!」
「じゃあ、ベリーも渡さない!」
ふんっ! そっぽを向いて、やっぱりあたしとエースは話にならない。
……別にケンカをしたい訳では、ないんだけどなぁ。
と、少しだけ自己嫌悪。
「おまえら、何やってんだよ……」
「「サボ……!」」
あたしとエースが言い合ってると、待ちくたびれたのかサボが腕を組んで呆れた顔でこっちを見てる。
「だって、こいつが……!」
「だって、エースが……!」
サボがあたしとエースの顔を見比べて、いきなり笑い出した。
「……ぶっ、あははははは! お、お前ら同時にっ! しかも同じ顔して……あはははははっ!」
「同じ顔ってなんだよっ! ふざけんなっ!」
「顔もそっくりだって! あははは!!」
むきになってエースはサボに何か言ってる。
傍から見れば、同じような顔にも見えるのか。
まぁ……双子だし、同じように見えるもんなのかな。
「おい! おめェ! 聞いてんのかよっ!」
「うっさい! 何っ!?」
「うっさい、じゃねェ! サボ来ただろ!」
「あ、そうだ。サボこれ、はいっ」
「おう!」
サボ本人が来たんだから、もうベリーを渡さない理由はない。
ベリーを素直にサボに渡す。
「おお、すげぇ、金額になったんだな」
「なんか、お店の人も驚いてたから、親が捕まえたって嘘ついといた」
「ん? 嘘って……あれ、おまえが捕まえたのか?!」
「あたし以外に誰が捕まえんの?」
「……まじ?」
ま、まぁ……あたし1人で捕まえるのは、あんまり現実的じゃないよね。
「ほら、この力があるからね」
手にシャボンを出して改めて見せる。
「その力って、なんだ? 手品じゃねェよな?」
「うん。手品じゃない。悪魔の実っていうのを食べると、こういうのが使えるようになったりするの。その代わりに、泳げなくなるって嫌なオプション付き」
「だから、あのとき泳げなかったのかー!」
「そうだったみたい……あはは。ちなみにルフィも、あたしとは違う能力持ってるよ」
つまらなさそうな顔で、あたしとサボの会話を聞いてるエース。
「エースも会話に入ればいいのに」
「そうだよ、エースもこっち来いよ!」
「はぁ?」
「だって、恨めしそうにこっち見てるじゃん」
あたしの言葉にウンウンと頷くサボ。
それに、エースも鬼の子……悪魔の実を食べてるなら、どんな実を食べてるのか聞いてみたい。
でも、エースはあたしが誘ったからか、気に食わない様子で文句を言いながらあたしをバコッと殴る。
「ばっかじゃねェの?!」
「痛ったっ! なんでいちいち殴るのよっ! しかも、仮にもあんたの妹だよ!」
「だから、おれには家族いねェっつってんだろ!」
「あたしは覚えてるんだから、居るんだっつってんの!」
「おれは知らねェっつってんだろ!」
あたしが何言っても聞かないから、やっぱりじぃじに聞き出すしかないか。
「ガープのじぃじに聞けば、きっとわかるよ。もう、いいっ! あたし、ルフィの様子見て来る!」
それだけ言って、シャボンに入って山賊の小屋に戻った。
そして小屋に戻ると、ふて腐れてるルフィと……会いたかったけど、会うには少し心の準備をする時間が欲しかった人が居た。
「じ、じぃじっ?!」
「おう、アイか!」
こんなにも早くじぃじが来るとは思って無かったけど……もう来たか。
「アイは、わしと村に帰るぞ!」
「ヤダっ! 帰らないっ! 離してっ!」
「アイは女の子じゃろうが!」
「せっかく兄ちゃん、見付けたのに帰らないよ!」
「何?! もう、エースと会ったのか?!」
ん? あたし今、エースが兄ちゃんとは言ってない。
「……じぃじ?」
「なんじゃ?」
「あたし、エースが兄ちゃんだなんて言ってないよ!」
「なっ、なにぃ?! わ、わし……なにを?!」
……こんな、単純なじぃじにあたしは今まで、エースのことを聞き出せなかったんだろうか。
いつもは、村長のじじちゃんが上手にじぃじのフォローしてたってこと?
墓穴掘ってしまったー!
と、あっち行ったり、こっち来たり、ルフィに八つ当たりをしながら、慌ててるじぃじを横目にため息を一つ。
「あたし、エース連れてくるから、じぃじは持ってて!」
◆◇◆◇
「降ろせよ! ふざけんなっ!」
「じぃじが来てるって、言ってんでしょ!」
「おれは、関係ないっつってんだろ!」
「関係あるっつってんでしょ! それに降りたかったら勝手に降りれば!」
「おまえ、この高さから降りられないって分かって言ってんだろ!?」
まぁ、シャボン割ったら降りるって言うより、落ちますよねぇ。
「なんじゃー! それはー! どっちの能力じゃー!」
下であたしとエースを待ってたじぃじが、こっちを見て驚いてる。
ん? でも、どっちの能力ってなんだ?
「この能力のこと隠してたんだった……」
「は? なんで、わざわざ隠してたんだよ」
珍しくあたしに、疑問を問いかけて来たエース。
「ルフィがゴム人間になってから、ルフィの扱いが前にも増して酷くなったから、あたしは隠しとこうかと思って」
「あぁ……」
エースも何か感じたのか、じぃじの方を見て納得している。
「早く降りて来るんじゃー! 話はそれからじゃっ!」
「はいはい。今、降りるよっ」
エースを引き連れてじぃじの前に降りるとじぃじは、あたしを担ぐ。
「ちょっ! じぃじっ?! 話してくれんじゃないのっ?!」
「話をするには、まだ早いんじゃ!」
「やだっ! 遅いも早いも関係ない! 嘘つきのじぃじなんて、あたし嫌いっ!」
「き、嫌い……じゃと?!」
ガーンと音が聞こえそうなくらい、落ち込んで静かにあたしを降ろすじぃじ。
そんなに落ち込んで見せたって、あたしは今日は引かないんだからっ!
「で、じぃじっ! エースはあたしのお兄ちゃんでしょ?!」
「……そうじゃよ」
「ほらっ! エース聞いたでしょ!」
思ったよりすんなり教えてくれたことに拍子抜けしつつも、エースに向かって勝ち誇った顔をする。
「じじぃ! どういうことだよっ!」
「アイの本当の名前はポートガス……じゃないのぉ。ゴール・D・アンじゃな。アイは女の子じゃからな、流石に山賊に預けるのはダメだと思ってなぁ……」
「……アン?」
「そうじゃ。お前らの出生には色々あるから、村で生活させるには名前を変えて生活させた方がいいと思ったんじゃ」
あれ? だから、エースもあたしのことをアンって呼んだの?
だけど、あたしだって初めてアンって名前を聞いたし何かおかしい?
それにゴール・Dってなんじゃそれ? ポートガスの名前はお母さんの方って知ってはいたけど……ん? あたし、モンキーじゃない?
「出生はエースは知ってるだろ?」
じぃじに言われて関係ないって顔をするエース。
「お前らの父親の名前は、ゴール・D・ロジャーだよ」
「……誰それ?」
「はっ?!」
普通に父親の名前を言われても、初めて聞く名前だし驚きようがないのにエースは呆れ顔、ルフィに関しては「なんで知らないんだ?!」って顔で詰め寄って来る。
そんなことより、自分の姓がモンキーじゃないってことの方が衝撃。
って、ことは……じぃじとルフィは、やっぱり家族じゃないってこと?
「ゴールド・ロジャーの方がわかりやすかったかのぅ?」
「だから、誰それ? 母さんの名前だって聞くまで知らなかったのに。父親の名前だって初めて聞くんだから、知ってるわけないでしょ?!」
「……お前、わかってて鬼の子って、言ってたんじゃなかったのかよ?!」
「アイ、自分で鬼の子なんて言ってたのか?!」
「だって、悪魔の実の能力者のことを、そう言うんじゃないの?」
ポカーンとした顔で、エースとじぃじがあたしのことを見る。
「そ、そうじゃ。アイ、その力はなんなんじゃ?!」
「あ。ルフィと一緒の日に、悪魔の実を食べた」
「なにっ?! 赤髪のやつか?!」
「うん? シャンクスたちが持ってたやつ」
「あいつ、ふざけおって……!!」
「あ、ちょっと、じぃじ?! 話はまだ……おわって……」
行っちゃった。
まだ、ルフィとあたしの関係を聞いてないんだけど。
「おめェ…自分のことを、鬼の子って言いふらすな」
「う、うん? でも、なんで?」
じぃじから、話を聞いて少しは気を許してくれたのかエースから話し掛けてくれた。
「ゴールド・ロジャーはワンピースを見付けた、ただ一人の海賊で海賊王だ! すんげぇーっ!」
「海賊王っ?!」
はしゃぎながら、ルフィが教えてくれる。
名前は知らなかったけど、海賊王が処刑になったって話くらいはあたしも知ってる。
あたしの海賊のイメージはシャンクスたちしかいないから、そんな海賊に悪いイメージは持ってない。
だけど、処刑になるくらいだ。イイ人なわけがない。
……と言う事はことは、処刑とルフィとの時間が合わないからルフィとは本当の家族じゃないってことか──。