「あれ? エースは?」
「ん? あ、ルフィとエースが遊んでたから、先に来ちゃった」
「遊んでたって……」
いつもだったら、ルフィを巻いて危ない目に合わせるエースを監視しながらエースを追い掛けてここに来る。
だけどここ数ヶ月で、ルフィも逞しくなったのかエースの妨害にも負けないで近くまで来れるようになった。
エースはルフィを上手く巻いてるつもりでいるみたいだけど、もうルフィは大丈夫だと思って今日は直にあたしは秘密基地に向かった。
飛ばないで普通にエース追い掛けても、あたしの足じゃ追い付けないし。
と言ってあたしが飛んでると、エースの方が遅いし。
それに、最初は渋った顔をしてたエースも気を許してくれたのか、逃げられないと諦めたのか……あたしがサボとエースの秘密基地に居ても、無理やり追い出すことはしなくなった。
早くルフィもここまで、来れるようにならないかなぁ……と思って秘密基地の木の上で寝ころびながら木の下を観察しているとエースが来た。
「サボ! サボ! いるか?」
「おお、エース!」
「悪ぃ遅くなった!」
確かにいつもより、来るのが遅かった気のする。
あたしが居る事にはエースは気付いてないのか、無視をしてるのかサボに話しかけるエース。
やっぱり、今日はルフィ巻くのに手こずったのかな?
「おれはもう町で、一仕事して来たぞ」
「そうか、実はおれもだ!」
仕事? この2人……あたしみたいに狩りしてるの、イノシシを2人で狩るのを少し苦労してるくらいしか見たことないけど、何してんだ?
「うわ! すげぇ! おれよりすげぇ! 大金だぞ、どうしたこれ?!」
「大門のそばでよ、チンピラ達から奪ってやった! どっかの商船の運び屋かもな」
「くっそー! 今日も負けたなぁーっ」
「どっちが勝ってもいいだろ。いつか2人で使う海賊貯金なんだから!」
「あんたたち、海賊になるの?」
海賊と言う言葉に反応して、あたしが声を出すとエースはあたしの存在に気づいてなかったみたいで、驚いた声を上げる。
「うわっ! なんだよ、アンも居たのかよ! サボ早くしまえよ。こいつみたいに、また誰かに見られたらどうすんだよ!」
うんまぁ、あたしは誰にも言う気もサラサラないけど、チンピラとかからお金を奪って来ることを仕事って言ってるのか。
バカみたい。
と思いながらボーッとまだ木の下を見てると、あたしが待ってた人がこっちをジィっと見てる。
「海賊船ーー?! おめェら海賊になんのか?!」
「………………っ!?」
「おれも同じだよ! エースとアイ、毎日こんなとこまで来てたんだなァ」
「だまれ!」
あんりゃあ、ルフィの登場に思ってた通りのエース反応。
そんでもって、あんまり機嫌が悪くなったりしないサボの表情も雲行きが怪しい。
「こいつか。エースとアンが言ってた例の弟のルフィって奴は」
トンっと木の上から飛び降りる、サボとエース。
「てか、おれの弟ではないっつってんだろ!」
「あたしの弟なんだから、エースの弟にもなるんだから少しは優しくしてって、何回も言ってるじゃん!」
「おめェもうるさい。黙っとけ!」
「うるさいって何よ……!」
あたしの文句は聞く気はないみたいで、あたしを無視してエースとサボはルフィを木に縄で拘束する。
「秘密を知られた……放っといたら、人に喋るぞコイツ……! よし、殺すしかないな」
「よし、そうしよう」
「「えーーーーーーーーーーーーっ??!!」」
ただのお遊びでルフィを縄で縛ってると思ってた、あたしとルフィは同時に声を上げる。
「あんたら、殺すってどういうことよ!」
「殺されるとは、思わなかったーーーー!! 助けてくれーー!! 死にたくねェよぉーーー!」
「バカ、2人とも静かにしろっ!」
泣きわめくルフィを黙らせようと、サボがルフィの口をふさいで、叫んで暴れるあたしをエースが取り押さえる。
「サボ! アンは押さえてるから、さっさと殺れ!」
「は? おれは、人なんか殺した事ねェよ!」
「おれだってねェよ! やり方わかんねェ……あ、アン! おめェ、イノシシだワニだの殺ってんじゃねェか、責任取っておめェが殺れ!」
「なんの、責任よっ! あたしには関係ないでしょ!」
何故かあたしに責任転換したきたエースと、あたしの言い合いになる。
まさか、あたしに弟のルフィを殺せとか何を血迷ったか!
いくらルフィが目障りだからって、自分達より年下の子を殺すとか2人は何言ってんの?!
「助けてくれーー!!」
「「うるせェーー!!」」
「ルフィ、姉ちゃんが今、助けるからっ! エース離しなさいよっ!」
「ダメだっ! おめェもいい加減、黙れよっっ」
ルフィを助けようと、暴れてみるけど力勝負ではエースにはやっぱり勝てなくて、エースの拘束から抜け出せない。
「森の中から声が聞こえたぞ! 子供の声だ……!」
「しまった! 誰か来るぞ!」
「とりあえず、こいつの縄を解け! ここから、離れねぇと宝が見つかっちまう!」
突然聞こえた大人の声に、2人は慌て出す。
そんなに、宝が見付かるのが嫌なのか。
木の上にあるんだから、普通に遊んでるふりをしてれば、簡単には見付からないと思うんだけど。
「あれ? あの人たち……海賊じゃなかったけ? なんで、海賊がワザワザ山に来るんだろ」
「静かにしろっ!」
エースに引きずられて、木の影であたしも身を隠す。
「……ここらじゃ、有名なガキだ"エースとサボ"おめェらから金を奪ったのは……"エース"で間違いねェんだな!!」
「はい……情けねェ話です。油断しました」
チンピラから金を奪ったねぇ……ただのチンピラじゃなくて海賊じゃん。
しかも、ここらで有名なガキとまで言われて、名前まで知られてるこの2人の行いが目に見える。
呆れて2人を見ると、見つかったらヤバいという緊張感はあるみたいで海賊の会話を聞いてる。
「これがブルージャム船長の耳に入ったら、おれもおめェらも命はねぇぞ……!」
あはは! さっきとは、逆にこの2人が命狙われてるんじゃん!
年下いじめた罰だねぇ? これは諦めてお金返すしかないんじゃないの?
(……本物の刀、持ってんぞ! ブルージャムんとこの手下のポルシェ―ミだ。あいつイカレてんだ、エース知ってるか? 戦って負けた奴は生きたまま"頭の皮"剥がされるんだ……!)
生きたまま頭の皮剥されるとか、気持ち悪過ぎるんですけど……!
やっぱり、逃げるのかなぁ? と、思いつつコソコソ話す2人の話も黙って聞く。
「あれ? そういえば、ルフィは……?」
こんな状況になれば、あたし以上に騒ぐルフィの声がしなくて周りを見渡してもルフィが見えない。
「逃げたんじゃねェ……のっ?! あっ?!」
「離せーー!! コンニャロォーーっ!!」
ルフィを探してると、突然ルフィの叫び声が聞こえた。
声のした方を見ると……え? はぁっ?! ブルージャムの手下にルフィが捕まってるっ?!
なんで、捕まってるんだっ?!
ど、ど、ど、どうする、あたし?! 助けないとヤバいよね?!
……で、でも、あたしが敵う相手じゃないのは、この前の海王類の時よりは冷静に判断は出来る。
「エース! 自首してっ!」
「は? おめェ、兄貴を売るのかよっ!」
「都合のいい時だけ兄ちゃんぶらないでよ! それに、ルフィがエース呼んでる! ほらっ!」
「呼ぶって、なんだよ?!」
「確かに、エースの事をあいつ呼んじゃってるな……」
あたしの言葉よりサボの言葉を聞いたのか、恐る恐るエースはルフィの方を見る。
「助けてくれーー、エースーーーー!」
「っ?!」
うん。
これで、エースは逃げられなくなったね……エースとルフィに呼ばれて、顔を真っ青にしつつもイライラ全開のエース。
まぁ、ここでキレてもしょうがないと思うよ、兄ちゃん。
何せ、お宝の事はバレたら殺すとは言ってたけど、2人のことを話すなとは言ってない。
だからそりゃぁ……普通にルフィの口からエースの名前が出るのは、当然っちゃ……当然かと。
「おめェ……エース知ってんのか……?」
「姉ちゃんの兄ちゃんだ! そんで、友達だ! あ……でも、さっきおれ、殺されかけた……」
いやいや、姉ちゃんの兄ちゃんとか、意味わかんないこと言わなくていいから!
それはエースも同じことを思って横でブツブツ文句を言ってるって思ったけど、ルフィに名前を出されたからエースは怒ってるんだ。
それに、殺そうとしてた相手に自分の名前を出すなって言う方が無理な話だ。
エースのことを普通に友達って言えるルフィの方がある意味、大物だとあたしは思う。
「一応聞くが、今日エースの奴がおれ達の金を奪って逃げたってんだよ。どこにあるか、知らねェよな?」
「…………っ!!」
あ。この状況は、とてつもなくヤバい!
(やべェ……! 宝全部持ってかれちまう!)
(喋んじゃねェぞ、あのバカ!)
だから、殺そうとしてた癖に喋るなとか、まじどんだけ鬼なんですか?!
だけどルフィは……あたしは喋らないと思うんだけど、思うんだけど……思うんだけどね……?
「し……し……知らねェ! そ……そんなの、お、おれは知らねェ!」
ルフィは嘘つく時に視線が留まらなくなって口尖らせて……すんごくワザとらしくなるから、嘘が嘘ってすぐにバレちゃうくらい、すんごく下手なんだよっ!
思ってた通りの白々しさに、一種の呆れと笑いが込み上げる。
だけど、その様子を見たエースとサボは、顔面蒼白。
「くくくくっ! 思い出させてやるから、安心しろ……!」
「何だ、おい! 放せよっ! どこ連れてくんだ、畜生ォ!!」
……やっぱり、こうなったぁぁぁ!!
「ちょっと、エースっ!! ルフィ連れてかれちゃったじゃないの! どうすんのよっ!」
「知らねぇよ、あいつが勝手に……!」
「勝手にってなによ! 殺すとか散々脅してた癖に! ルフィは、言っちゃいけないことは絶対に言わない子だよ! あたしの悪魔の実の能力だってずっと黙ってくれてたんだから!」
「それは、命掛かってないから言わなかっただけだろ!」
「こんの……バカエース! あたし1人で助けに行って来る!」
あたしが走り出すとサボの呼び止める声が聞こえた気がしたけど、無視してルフィが連れてかれた方に走って向かった。
◆◇◆◇
──ドカーンっ!
「うわっ! 今のデカい音なにっ?! 奥の方から聞こえた……?」
地響きみたいな音がグレイ・ターミナルに響き渡る。
あいつらも、グレイ・ターミナルに向かったのは確かなんだけど……奥の方まで行ったことないし、ここの土地勘がなくて探すに探せない。
音がした方に行けば、何かわかる?
「なぁ、お嬢ちゃん? ちょっといいか?」
走り出そうとした時、後ろから声を掛けられて驚いて振り向く。
「な、なんですか?! あたし、急いで……て!」
「いやいや、時間は取らせないよ? ちーと、人探ししてんだけどよぉ、お嬢ちゃんと同じ年くらいの"エースとサボ"を知らねェか?」
この人!
さっきポルシェーミと、一緒に居たチンピラ……!
「エースとサボ……」
「おぉ、知ってるのか、お嬢ちゃん! どこにいるか、教えてくんねェか?」
ルフィを探す為にチンピラに、エースとサボを売っちゃおうかとも思ったけど。
売ったところで、ルフィの居場所を教えてくれるかはわからない。
「知ってるけど、教えないっ!!」
「教えないって、お嬢ちゃん? 素直に言っといた方がいいよ?」
「やだ! 教えないっ!」
「そうか、じゃあ来てもらうしかねェな……」
「な、何すんのよ! ヘンタイっ! 降ろせっ!」
「グレイ・ターミナルで暴れたって、誰も助けちゃくれねェよ。黙って来て、2人の居場所さえ教えてくれさえすれば、何もしねェよ!」
ギャーっと、暴れて大人の男の人の力には敵わないのは分かってるけど、抵抗しないで変に思われてルフィの所に行けなくなるのもヤダから本気で抵抗する。
ルフィの居る場所についたら、もう簡単にあいつらの事なんか喋ってやるんだからっ! なんて、簡単に考えてたあたしがバカだった――。