ONE PIECE ~Sibling~   作:ゆんあ

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9 兄弟

 あれから数日経って、ケガもよくなって久々に秘密基地に来た。

 エースもイイ意味で心境の変化があったみたいで、ルフィに対しての態度も少しは柔らかくなってたけど……あたしに対しては相変わらず。

 

「ゴムゴムの──"銃"!! ふんがっ! いでェっ!」

「ぶはっ! あはははははっ! ルフィまだそれやってんの?!」

 

 ルフィは自分の伸びる腕を使って、その勢いでパンチをするつもりで前から練習してる。

 だけど腕が真っ直ぐ伸びなくて、その腕が自分に戻って来て結局は自爆する。

 これを見るたび、本当にあたしはゴム人間じゃなくて良かったと思う。

 

 その間抜けなルフィの姿を見てあたしとサボは爆笑、エースは怒り出してすぐにルフィを殴る。

 

「だから、おめェは……何してェんだよ!」

「どへっ……!」

 

 エースに殴られて引っくり返ったルフィを無視して、サボは木の板に数字を書いてる。

 

「1本だ、エースの勝ち!」

「あ、今、エースが殴ったの勝負中だったんだ」

「まぁ、あれだから、数える意味もなさそうだけどなァ。ぷぷぷっ」

 

 サボの視線をたどると、やっぱり自爆をしてるルフィを見て笑ってる。

 

「もっかいだっ!!」

「ダメだ。1人1日100戦まで、また明日な」

「ルフィは今日もおれとエースに50敗ずつ。おれとエースは24対26……くっそぉっ!」

「お前らおれが、10歳になったらブッ倒してやるからな!」

「そん時はおれらは13だ」

「あはははっ! エースって計算出来たんだねぇ」

 

 3人の会話に茶々を入れると、エースにおもいっきり無言で睨まれる。

 

「ねぇ? この勝負って、何で勝ちが決まるの? 一撃かませばいいの?」

「あ? 何だよ」

「力試し? よし、じゃあ、エースあたしと勝負ね」

「はぁ?」

「100戦とかダルいから、1戦でいいからさ」

 

 エースがニヤっと笑った気がした。

 

「負けても泣くなよ!」

 

 訂正。

 笑った気がしたんじゃなくて……確実に笑ってました。

 

 そんな余裕をかましてて、いいんですかねぇ。エースくん。

 あたしだって、怪我して黙って療養してたわけじゃありませんからね?

 

「じゃあ、サボ! 審判よろしくね」

「おう」

 

 ニッと笑ってサボが返事をする。

 サボの返事を聞いてから、素早くあたしとエースは少し距離を開けて立つ。

 

「……よし、始めっ!」

 

 サボの掛け声と同時に、あたしとエースは距離を詰めた。

 

「もらっ……た?! はっ?! げっ、なんだこれ?!」

 

 一瞬で勝負を決めようとしたのか、エースが拳を振り上げた。

 それと同時にエースの動きを止めるように、あたしは両手の手のひらをエースの目の前に広げて見せて叫ぶ。

 

「──リーフ"カヴァー"!!」

「「おぉっ!!」」

 

 サボとルフィから、歓声を上げている。

 

 あたしの手から葉っぱが、舞うように大量に出て来る。

 そして視界を葉っぱが奪うため目隠しするように、エースの目に葉っぱがまとわり付く。

 

「くっそ! お前! 能力使うなんて卑怯だぞ!」

「ルフィが使ってのは、何も言わなかったじゃん! 今、文句言う方が卑怯だし」

 

 前が見えなくなったエースは、まとわり付く葉っぱを取ろうと必死になってるが、舞ってる葉っぱが再びくっつくためどうしようも出来ない状況になっている。

 

「じゃ、ちょいと失礼!」

 

 ジタバタしてるエースの後ろに回り、日頃ボカボカ殴られてる仕返しも込めて思いっきり背中に蹴りを入れた。

 

「っ!! ……ッてェ!!」

「1本! アンの勝ち!!」

「はぁ?! ふざけんな! サボもなんか言えって!」

 

 勝ちと言われて、エースにまとわり付いてた葉っぱを力を抜いて消す。

 

「1本は1本だからなァ」

「ちっ……サボ、ルフィ! アンは放っといて、夕飯の調達に行くぞ!」

 

 キッとあたしの事を睨んで、エースは無理やりサボとルフィを連れて、夕飯の調達に行ってしまった。

 

 だけど、まぁ。キーキー言ってるけど、負けず嫌いなエースだ。

 置いてかれたと言うより、あたしが飛んで付いてくるのが分かってるから、置いてかれたんだけど……でも、今日は別行動。

 

 サボとルフィに八つ当たりをしてると思うと、少し申し訳ない気もするがしょうがない。

 

「あたしは今日はワニ売りに行こっと」

 

 3人で狩りしてるところに、あたしが1人でワニを狩ると、特にエースはあんまりいい顔しない。

 今日なんていつもより、機嫌が悪くなるのが目に見えてる。

 

 でも、腕力と脚力じゃエースには、敵う気はしないけどね。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「──なぁ、お譲ちゃん? いつもなんで綺麗なワニを持ってこれるんだい?」

 

 いつもワニのお肉を売ってる、端町の肉屋のおじさんに聞かれる。

 サボに皮を剥くやり方を、教えて貰った。

 やっぱりどうも気持ち悪くて、出来ずに試しにそのまま肉屋に持ってたら、皮は肉屋にはいらないからと言って肉屋のおじさんがやってくれるようになった。

 

 だけど綺麗なままの方が皮が高く売れる事を知ってからは、なるべくキズがつかないようにしてた……んだけど、なんて言い訳すればいいんだろう。

 

「うーん。あたし泳げないから、ワニ捕まえるの得意になった?」

「泳げないのにワニ捕まえられるのかいっ?!」

 

 ありゃ?

 なんか逆効果だったみたいで、肉屋のおじさんを余計に驚かせてしまったらしい。

 

「食い逃げだーー! 誰か捕まえてくれーーっ!」

 

 何か上手いことを肉屋のおじさんに言えないか考えてると、大きな声が商店街に響いた。

 

「……食い逃げ」

 

 なんか嫌な予感がして頭上を見上げる。

 

「ぶはっー! ウマかったーー!」

「言ったろ、だから!」

 

 ……や、やっぱり!

 嫌な予感的中。エース、サボ、ルフィが屋根の上を上手く渡って逃げてるのが見える。

 あたしが着いて来ないのに気づいて、あいつら……今日は食い逃げに走ったんだ。

 

「また、あの3人組か! 常習犯だな、なんで店に入れたんだ?」

 

 どうやら肉屋のおじさんもエース達の事を知ってるらしく、呆れた顔で見上げてる。

 ここであの3人組と知り合いだと思われるのは、少し面倒なことになりそうな気がする。

 

「お、おじさん! 皮剥いでくれてありがとう! あたし皮売りに行って来るねっ」

 

 それだけ言ってその場を逃げるように離れた。

 

 3人を追いかけて「もー! ちょっと、あんたち……!」と、声を掛けようとした時、あたしの他に……と言うかサボに声を掛けてる人がいて、思わず言葉を飲み込んで物陰に隠れた。

 

「サボ! サボじゃないか、待ちなさい!! お前生きてたのか、家へ帰るんだ!!」

 

 サボに声を掛けてる人……お金持ちっぽい? 最初、サボに会った時もサボはお金持ちの子供かと思ってたけど関係ある?

 

 だけど呼ばれてるからって、一瞬サボは振り向いた気がしたけど、立ち止まるわけでもなく3人は走って逃げてる。

 

 サボって呼んだけど、サボは知らない人だったのかな? 肉屋のおじさんも、名前まではどうかわからないけど知ってたくらいだし。

 

 でも、サボの名前だけ??

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「ねぇ、さっきのお金持ちっぽい人……サボのこと呼んでなかった?」

「うわっ! アン?! ど、どっから出て来たっ」

 

 食い逃げした3人を追い掛けて、秘密基地に着いてサボに声を掛けると、あたしがシャボンを使って移動をして急に現れることに慣れてるはずのサボが「大袈裟じゃないの?」と言うくらい、ギョッとした顔で驚いている。

 

「な、なんだよっ! 何も隠してねェよ!」

「いや、何にも言ってないけど……その反応は何か隠してるの?」

「あ、いや……」

 

 あたしが突っ込むと、サボは口ごもる。

 エースはさっきの勝負の事を思い出したのか、あたしのことを一瞬睨む。

 だけど、サボが口ごもったのを見て、何かを感じたのか不思議そうな顔でエースとルフィがあたしとサボを交互に見る。

 

「……おい、サボ! おれ達の間に秘密があっていいのか? 話せっっ」

「話せよ、てめェ! ぶっ飛ばすぞ!」

「……ぐはっ! は、話すから離してくれっ!」

 

 エースとルフィに首を絞められたサボは観念したのか、歯を食いしばりながら悲しそうな顔でボソッと何かを言った。

 

「……き……くの息子」

「「聞こえねェ!」」

 

 言い難そうに何かを言ったサボにエースとルフィが突っ込む。

 

「きっ……貴族の息子だよっ!」

「えええええ?」

「誰が?」

「……おれだよ!」

 

 やっぱり貴族だったのか。

 エースとルフィは驚いてるのか、それともサボが何を言ってるのかわかってないのか。

 

「「で?」」

「お前らが質問したんだろっ!!」

 

 ……やっぱり後者だったか。

 特にルフィは貴族とか、そういうのはよくわかってないだろうけど。

 

「……本当は親も2人いるし、孤児でもなければゴミ山で生まれたわけでもねェ。今日おれを呼び止めたのは、おれの親父だ。お前らにはウソついてた……ごめんな」

「謝ったからいいよな! 許すっ!」

「おれはコトによっちゃ、ショックだ。貴族の家に生まれてわざわざゴミ山に……!」

「…………っ」

 

 やっぱり、エースには何か言い難そう……あたしが前にそんな事を聞いた時も誤魔化されたし。

 

 貴族かぁ……村の子とは少しは違うんだろうけど、何か窮屈だったりしたのかな。

 釣りしてた時だって、釣れないのがわかってて釣してて、何か考えてたようにも見えた。

 普段のサボ見てても「おれ金持ちだぜ、うぇーい」なんてのも見たことないし。

 

 ──将来王族と結婚出来る男になれ。そうなれば我が家も安泰!

 

「王族の娘と結婚すれば安泰……?」

「ちょ?! な、なんでアンがその話……!」

「え、何っ? 今、サボが自分で言ったでしょ?」

「おれ、何も言ってねェよ!」

 

 なんだ? なんか聞こえた気がしたけど、サボは何も言ってない? 

 

「あれっ?」

「あれっ? じゃねェよ……」

 

 あたしが悩んでるとサボは「はぁっ」とため息をついてから、重い口を開いた。

 

「あいつらが好きなのは「地位」と「財産」を守っていく"誰か"でおれじゃない! さっきアンが言ったけど、王族の女と結婚出来なきゃ……おれはクズ。そのために毎日、勉強と習い事しても出来の悪さに両親は毎日ケンカ。あの家にはおれはジャマなんだ」

 

 邪魔……なんか、規模は違えとあたしとエースが"鬼の子"って言われてるのと似てる?

 

「お前らには悪いけど……おれは親がいても"1人"だった」

「「…………」」

 

 エースもルフィもサボの話を黙って聞いてる。

 

 ──ゴミ山に住んでるのは、人間じゃない。人の形をしたゴミだ……!

 

「ゴミ山の人間は人の形したゴミだって……ふざけた事を言う人もいるんだねぇ」

「は? アン、何言ってんだよ」

「え? だからサボが……」

「おれはさっきもだけど、何も言ってねェ!」

 

 あで?

 さっきから、なんか聞こえてる気がするんだけど……いや、サボから聞こえてるのは確かだけど、サボが言った言葉じゃない。

 

「貴族の奴らだ、そんな事を言うのは。奴らはそう言ってゴミ山を蔑むけど……あの息の詰まりそうな"高町"で、何十年先まで決められた人生を送るよりいい」

「……そうだったのか」

 

 エースは神妙な顔でサボの話を聞いてる。

 何十年先の人生が決められてるって、どうなんだろ? あたしは? これからどうなるのか、わからないから決められてるって事はない。

 だけど、これからあたしは……どうしたい? エースは見つけた、ルフィも一緒にいる。

 

 ──もう……エースを処刑する気なんだ!!

 

「うわっ?!」

「な、なんだよ、アンいきなり叫びやがって!」

「痛っ! あ、いや、なんでもない……」

 

 あたしの声に驚いたエースがあたしを軽くどつく。

 一瞬、なんかまた聞こえた気がした。

 

 エースを処刑? 昔見た夢でもそんなことあったけど。

 いや、まさかね! 自分らの父親が処刑されたからってエースまで……チラっとエース達を見る。

 

「エース! ルフィ! おれ達は必ず海に出ようっ! この国を飛び出して自由になろう!」

「ちょっと、あたしは仲間外れっ?!」

「は? お前も海賊になるのか?」

「うーん。海賊になるかはわかんないけど、気になる事はあるから海には出たい……」

 

 今じゃなんなく使ってるあたしの悪魔の実の事も気になるから、赤髪海賊団の人が言ってた「シャボンティ諸島」にあるシャボンに似てるって言われたからそこにも行ってみたい。

 

「広い世界を見て、おれはそれを伝える本が書きたい!! 航海の勉強なら、なんの苦でもないんだ。もっと強くなって、海賊になろう!!」

 

 目をキラキラさせて宣言するサボに、エースとルフィはニヤッと笑う。

 

「ひひっ! ま、おれはサボに言われなくても、海賊になるさ! おれは海賊になって、勝って勝って勝ちまくって、最高の"名声"を手に入れる! それだけがおれの生きた証にになる! 世界中の奴らが、おれの存在を認めなくてもどれ程、嫌われても……"大海賊"になって見返してやんのさ!」

 

 名声……大海賊、それに嫌われても? 嫌われもって、さっき聞こえたエースが処刑がどうのって! 嫌われたら処刑まっしぐらじゃん! あたしらのお父さんが何をしたは知らないけど……嫌われたりしたらまったく同じじゃんか!

 

「おれは誰からも逃げねェ! 誰にも負けねェ! 恐怖でも何でもいい! おれの名前を知らしめてやるんだ!」

「っ?!」

 

 恐怖って! ダメじゃんか! エースが処刑って、本当になりそうじゃない?! うわっ、えっと……あわわわわわ!!

 

「じゃあ、アイはおれの船のコックと航海士と船医やってくれ!」

「は?! な、何?! コック? 航海士? 船医?! あたしは、そんなことよりエースを監視だよっ!!」

 

 ルフィにいきなり声を掛けられて、思ってた事を全部ポロッと喋ると男3人組はポカーンとした顔であたしを見てたけど、エースは我に返ってあたしに向かって文句を言い出した。

 

「はっ?! おれの監視って何言ってんだよ」

「監視は監視だよっ! エースが悪い事しないように!」

「海賊になるんだから、それなりに悪い事はするだろっ!」

「だから、監視すんの!」

「だから、監視の意味がわかんねェ!」

 

 あたしとエースのケンカが恒例になってるのか、ルフィとサボは気にも留めてない。

 

「で、お前らケンカもいいけど、3人共船長になりてェってまずくねェか?」

「思わぬ落とし穴だ。サボはてっきりウチの航海士かと」

「えー、お前らおれの船に乗れよー」

 

 あたしの首根っこを掴みながらサボに顔だけ向けて話し出すエースに、それを無視して話し出すルフィ。

 

「ま、将来の事は将来決めよう」

「3人……あ、4人か、みんなバラバラの船出になるかもな!!」

「あたしはエースと行くからねっ!」

「お前、いい加減にしろっ!」

「うぎゃっ」

 

 なんでエースは、いちいち殴るかな。

 

「あ、エース! それ、ダダンの酒盗んで来たな?!」

「お酒?! あたし達は……痛っ!」

 

 まだ子供! って言おうとしたら、無言でエースに殴られる。

 

「お前ら知ってるか? 盃を交わすと"兄弟"になれるんだ」

「兄弟? ホントかよーっ!」

「海賊になる時、同じ船の仲間にはなれェかも知れねェけど……おれ達の絆は"兄弟"としてつなぐ!」

 

 男同士の約束ってやつか。

 なんか、あたしは入れそうにないなぁ……。

 

「ん? アンもこっちに来いよっ」

「え、でも……」

「何、遠慮してんだ? おれとお前は"兄弟"じゃねェだろ?」

 

 サボに腕をクイっと引かれて3人の間に連れてかれると、エースが「ま、いっか」とため息つきながら、4つの器にお酒を注ぐ。

 

「……どこで何をやろうと、この絆は切れねェ! これで、おれ達は"兄弟"だっ!」

「「おうっ!」」

「!!」

 

 エースの掛け声で器に入ったお酒をみんなで一気に飲み干す。

 

「ま、まずぃ……」

「お前は調子に乗って、おれについて来るなよっ!」

「うっへぇ! ついてくったら、ついてくんらからっ!」

 

 あれ? なんか、呂律が回らない。

 

「な、なんか、アンの様子変じゃないか?」

「ふぇんじゃない……ふぇんじゃ…………」

 

 ──あぁ……なんか、眠くなってきたぁ。

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