遅筆で申し訳ありません。<(_ _)>
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「先生。急ぎ確認したいことがあります」
職員室に到着した俺たちはすぐさま茶柱先生のもとへ駆け寄った。三馬鹿トリオは須藤が未だにグロッキー状態なので廊下で待機している。あいつらがいると話の進みが遅れるから結果オーライだな。
「どうした?随分と物々しいな」
「先週茶柱先生が仰っていた中間テストの範囲ですが、それに間違いはありませんか? 先程、Cクラスの生徒からテスト範囲が違うと指摘を受けましたので」
堀北ちゃんの質問に茶柱先生は全く動じる様子はない。まるでその質問がくると分かっていたようだ。嫌な予感しかしないな。
「……そうか、中間テストの範囲は先週の金曜日に変わったんだったな。悪いな。お前たちに伝えるのを失念していたようだ」
「なっ!?」
「マジかよ……」
茶柱先生は悪びれる様子もなく淡々と言った後、ノートの切れ端にテストの範囲と思わしき部分を書いて堀北ちゃんに手渡した。軽く見ただけでも今まで勉強をしてきた範囲ではない部分が大半を占めていた。こりゃ完全にやられたな。
「堀北のお陰でミスに気付くことが出来た。皆も感謝するように。以上だ」
「ちょっと待ってください!いきなり変わったと言われても、もう時間が……」
「まだ一週間もある。これから勉強をすれば楽勝だろ?」
「でもっ!」
「……行きましょう」
櫛田が茶柱先生に食い下がるも、取り付く島もないことを理解したのか、堀北ちゃんは踵を返し職員室を出ようとする。
「いいのか?」
「こうしていても時間の無駄よ。テスト範囲が変更になったことは事実。それなら新しいテスト範囲の勉強を少しでも早く始めるべきよ」
「それもそうだな。行くぞ櫛田」
「……うん」
堀北ちゃんと清隆に連れられ未だに納得できていない櫛田も職員室から退出していった。まぁ、そう簡単に納得できる問題ではないよな。
「……鳴海、お前はまだなにか用件があるのか?」
「いや、別にないっすよ。ただ、茶柱先生にしては大きなミスを犯したなと思って」
「人間誰しも間違いはあるだろう」
「そうっすねー。でもそれに対して先生方は誰一人反応を示さないんですね。もしかして先生嫌われてます?いつもしかめっ面だからですよ。もっと笑わないと」
「余計なお世話だ」
先生はこちらを一睨みして仕事に戻った。もしかして本当に他の先生から嫌われているんだろうか。可哀想に。
「ちなみに堀北ちゃんも、しかめっ面がデフォルトですけど、そこがまた可愛いんですよね!でも、意外と表情が豊かで、驚いたときとか目を見開くんですけど、それが可愛くて!この間なんて超レアな照れ顔を見てしまいまして、それがまた可愛いのなんの!思わずキュン死してしまいそうになりましたけど何とか持ちこたえました。あの場で堀北ちゃんを抱きしめなかった自分を褒めてやりたい!それとですね───」
「鳴海、ちょっと待て。急にお前は何を言ってるんだ」
これからがいいところというのに茶柱先生に強制的に止められた。茶柱先生は珍しく困惑したような表情をしており、先程まで無関心だった先生方も啞然としていた。俺なんか変なこと言ったかな?堀北ちゃんの魅力をほんの少し語っただけなんだが。
「つまりですね、何が言いたいかと申しますと」
俺は目の前に座ってる茶柱先生の耳元に顔を近づけた。
「堀北ちゃんの顔を曇らせる奴は俺がぶっ潰します。それが誰であろうとね」
「……それは
「いやだな先生。ただの決意表明ですよ。それじゃあ愛しの堀北ちゃんが待っているので戻りますね」
そう言って俺は職員室から出て行った。最後に見た茶柱先生が嬉しそうな笑みを浮かべていたのが少し気になった。あの人も変態か?この学校は変態が多いな。堀北ちゃんに寄ってこないように注意しなきゃな。
職員室からでたあと普通に堀北ちゃんに置いて行かれたことに軽いショックを受けながらも教室に戻ってきた。堀北ちゃんは真剣に何かを考えているようなので清隆に状況を説明してもらった。
堀北ちゃん達が職員室から出た後、須藤が目を覚ましており、三馬鹿トリオに事情を説明したそうだ。まず、櫛田に堀北ちゃんがクラスメイトにテスト範囲が変わったことを周知するようお願いし、それを受諾した。次に大きな心配だった三馬鹿トリオのモチベーションだが、意外にも落ちるどころかむしろ上がっていたらしい。中でも須藤は大好きな部活動を休むと申し出て堀北ちゃんに頭を下げたそうだ。須藤の血気盛んさがいい方向に向かってくれた。それに触発され池と山内もやる気になったらしい。ちなみに、その際須藤が堀北ちゃんの肩に触れたらしいので、また締め落とそうと心に決めた。
次の日の昼休み。清隆はチャイムが鳴るとそそくさと教室を出て行った。その様子が気になっていると、同じく気になっていたのか、櫛田が清隆の後を追おうとしていた。
「腹黒くてストーキングが趣味とか終わってんな」
「ひゃっ!?」
「何がひゃっだよ。ぶりっ子か?ぶりぶりちゃんなのか?」
「お前が急に後ろから声をかけるからだろ!それに変なあだ名を増やすな!しかも意味が変わってるし」
キャンキャンと吠える櫛田が犬みたいだったので頭を撫でておいた。すると怒っていた顔が破顔し、締まりのないものになっていた。俺のナデナデスキルは最強なのだ。いずれは堀北ちゃんにやりたい。櫛田は我に返って「勝手に撫でるな!」と俺の手をはたいたので、デコピンをお見舞いしてやった。
「ううっ、なんで私がこんな目に……」
「躾は大事だからな」
「お前のペットになった覚えはないよ!」
涙目で恨めしそうに俺を睨むが全く怖くない。とりあえず鼻で笑っといたらショックを受けていた。
「腹黒ちゃんは清隆をストーキングしに行くのか?」
「違うよ!……あれ?でも、間違ってはいないかな?」
「うわ、引く」
「引くな!鳴海君に引かれると本気で死にたくなる」
「なんでだよ」
「え?一番の変態に引かれるとかきつくない?」
真顔で訳の分からんことを言うやつだな。確かにこの学校には変態が多いことは実感したばかりだが、俺が変態なわけがないだろ。ただ一途な好青年だろうが。
「綾小路君が昨日、職員室を出るときに気になることがあるって言ってたの。それが何かと思って後を追っていただけだよ。別にストーキングしてたわけじゃない」
「それならそうと早く言えよな。紛らわしい」
「もうツッコまないからな」
「突っ込むとかやらしいな。さすがクラスメイトに乳を触らせることだけある」
「うがー!」
櫛田は発狂した。やっぱりストレスか。今度ストレス軽減チョコを買ってあげよう。
「でも、確かにそれは気になるな。よし、櫛田。君に偵察を命じよう」
「何様だよ。というか今、普通に名前呼ばなかった?ねえ?」
「……腹黒ちゃん、君に偵察を───」
「言い直すな!はぁ、元から聞きに行くつもりだったからいいけど、鳴海君もついてきたらいいんじゃないかな?」
「いや、俺には堀北ちゃんと昼飯を食べるという重大なミッションがあるからな」
「あっそ。もう好きにして」
そう言ってゲッソリとした櫛田は清隆のもとへ向かっていった。それを見送った後、堀北ちゃんと楽しいランチタイムにしゃれ込むため教室に戻ったが、すでに堀北ちゃんの姿はなく、一緒に食べることができなかった。腹黒ちゃんで遊びすぎたようだ。
「それじゃあ鳴海君は須藤君に教えなさい」
放課後の勉強会で堀北ちゃんにそう言われ、渋々須藤の正面に座る。マンツーマンで勉強するということで教室内で各々離れたところに座っていた。腹黒ちゃんは山内を、堀北ちゃんは池と清隆を担当している。清隆なんて絶対俺より勉強できるんだから変われよ。なんで俺が野郎に勉強なんぞ教えなければならんのだ。しかし堀北ちゃんにお願いされた以上断るわけにはいかない。惚れた弱みってやつだな。
「あーくそっ!わかんねえ!」
須藤は頭を強くかきながらペンを机に放った。勉強を教える以前に須藤の勉強に対する姿勢をどうにかする必要があるのは明白だ。このままではこの繰り返しだ。
「分からない問題があるたびに一喜一憂してどうすんだ。無駄なエネルギー使うなら頭を動かすのに使え」
「うるせぇ。わかんねぇもんは仕方がないだろうが」
「分からないから勉強してんだろ?お前は前提を履き違えてんだよ。分からないのが普通なんだよ。だからできるように考える。少し勉強したぐらいで賢くなった気でいるなよ。自分の立ち位置を見誤るな」
「てめぇ」
「須藤君、落ち着いて!鳴海君も言い過ぎだよ」
椅子を倒しながら勢い良く立ち上がった須藤が俺に掴みかかろうとするのを見て櫛田が慌てて止めにきた。別に大丈夫だから戻ってと伝えると渋々席へ戻って行った。
「いまお前がすることはイライラを人にあたり散らかすことか?Cクラスに馬鹿にされて悔しかったんだろ?あいつらを見返す方法は一つしかないと思うが」
「くっ」
激高して立ち上がった須藤だったが俺の言葉を聞いて大人しく席に座った。それだけCクラスに馬鹿にされたことが悔しかったのだろう。ここで思いとどまることができるのならまだ見込みはありそう。
「お前みたいに勉強ができる奴に俺たちの気持ちなんてわかんねぇよ」
「ああそうだな。お前らと違って俺は頭がいいからな」
「喧嘩売ってんのか?」
「事実だ。だが、だからといって何もしていないなんて勘違いするなよ。俺も堀北ちゃんも死に物狂いで努力してきてんだ。それはお前も同じだろ?」
「それは……」
須藤はこれまでバスケを必死に練習してきたことを思い出しているのだろう。堀北ちゃんも以前に言っていたが、こいつのバスケに対する熱意には目を見張るものがある。それを勉強に向けられればベストなんだが、そううまくはいかない。
「須藤は勉強に関しては努力をしてこなかった。でも俺や堀北ちゃんは努力をしてきた。違いはそれだけだろ」
「……じゃあどうすりゃいいんだよ」
「簡単な話だ。わかんないことがあったら聞け。だから俺や堀北ちゃんがいるんだ。お前は聞くことが恥ずかしいとかダサいとか考えているんじゃないか?」
「うっ」
「図星だな。さっきも言ったがお前らが勉強できないのは最初から分かってんだよ。分かった上でこの勉強会があるんだ。だからそんなちっぽけなプライドは今すぐ捨てろ。お前が理解するまで徹底的に教えてやる。それが俺の役割だからな」
「鳴海……」
ここ数日須藤を見ていて気付いたのが、こいつは真っ向からぶつかった方がいいということだ。須藤みたいな単純な男はそちらの方がやりやすい。
「お前が焦る気持ちは分かる。それはみんな同じだ。あの堀北ちゃんですら焦ってんだ」
「堀北が?」
「ああ。表情には出さないけどな。今までやってきた勉強が無駄になったんだ。時間がないことに焦りを感じている」
「別にあいつは勉強できるんだから焦る必要なんてないだろ」
「自分だけならな。堀北ちゃんは本気でお前らが退学にならないように頑張ってんだよ。目の下にクマができるぐらいにな。須藤がやっている問題だって堀北ちゃんが寝る間も惜しんで作ってくれたものだ」
ここ数日の堀北ちゃんはずっと三馬鹿トリオのテスト勉強のことを考えている。俺以外の男のことを考えていることは誠に遺憾だが、激しく嫉妬しているが、そんなこともいってられない。
「お前らのせいで、堀北ちゃんにあんまり構ってもらえないんだからな。それが一番つらいんだぞ」
「いや、それは関係ないんじゃねぇか」
関係ないわけないだろ。勉強会が始まる前はもうちょっと構ってもらえた……はずだ。うん、この件については一旦考えるのはやめにしよう。
「だからさ、頑張ろうぜ。見返すためにも、報いるためにも」
「……」
もし、これだけ言ってもちっぽけなプライドを捨てきれないのなら別の方法を考えよう。人間、そう簡単に変われないのは分かっていることだ。堀北ちゃんのためならどんな方法も辞さない。
「須藤」
「……くそっ。ああ、わかったよ。もう泣き言はいわねぇ。だから手を貸せ」
「手を貸してくださいだろうが。まぁ、堀北ちゃんのためだから仕方がない」
「お前はそればっかりだな」
「当たり前だ。堀北ちゃんこそ俺の全てだからな」
須藤が本当に改心したかは定かではないが、勉強に対する姿勢は変わったに違いない。須藤のようなタイプは一度スイッチが入れば止まらずに突き進むはずだ。
「鳴海って意外と熱い奴だな。堀北が絡むと気持ちが悪いけど」
「え?喧嘩売ってる?」
「ちげぇよ。ただ、一人の女に一途な所は嫌いじゃねえ。男はそうじゃなきゃな」
「お、分かってるな、須藤」
俺と須藤は固く握手をする。こいつはクズみたいなところがあるが、案外良い奴なのかもしれない。
「鳴海君、須藤君。楽しそうなのは結構だけれど、勉強をする気はあるのかしら?」
「いや、鳴海が……」
「俺のせいにすんなよ。あ、もしかして俺と須藤が話しているから嫉妬して───」
「黙って。勉強をしなさい」
「「すいませんでした」」
いつのまにか横に立っていた堀北ちゃんの絶対零度の視線を浴びて須藤ですら平謝りで勉強を再開した。堀北ちゃんは俺をもう一度だけみてそのまま自分の席へ戻って行った。もう一度俺を見たときの表情が少し笑っていたように見えたのは俺の気のせいだったのだろうか。
「まったく、鳴海君に任せたのは失敗だったかしら」
堀北はそうぼやきながらオレと池の座る席に戻ってきた。先程の鳴海と須藤の話を聞いていたのか、池は今まで以上に真剣に問題と向き合っていた。
「その割には嬉しそうだな」
「馬鹿を言わないで。嬉しがる要素なんてどこにもないでしょう」
「鳴海のことを信頼しているからこそ、須藤のことを任せたんだろ?」
「そんな意図はないわ。ただ一番成績がいいのが彼だっただけよ」
確かに堀北が言う通り、一番成績がいい鳴海と一番成績が悪い須藤を組ませるのは当然なのだが、それだけではないとオレは考える。
「須藤と言い合いになっていたのを放任するあたり信頼してると思うんだが」
「私が口をはさむべきではないと判断しただけよ」
「それが信頼してるって言うんじゃないのか?」
「違うわ。彼が私を裏切るようなことはしないと確信していた。それだけよ」
堀北の発言にオレだけでなく、問題を解くのに集中していた池までも驚いて堀北を見る。当の堀北は自分の発言をよく分かっていないようだった。それに対して、池が爆弾を投下した。
「それって惚気みたいだな」
「は?どうしてそうなるのかしら?」
「いや、だって今の発言は、なぁ?」
「黙りなさい。どうでもいい話をしている暇があったら英単語の一つでも暗記して。それともあなたたちは、もう勉強の必要がなく、テストも余裕ということかしら」
「はい!今すぐ勉強します!」
池は堀北の威圧に屈し冷や汗を流しながら問題に向き直った。確かに今の堀北の威圧感は尋常じゃない。
「綾小路君もさっさと問題を解きなさい」
「お、おう」
なぜかオレも睨まれた。池の巻き添えをくらった形だ。かなり怒っていそうだと思い、問題を解いているフリをしながら堀北の表情を盗み見る。窓の外に視線を向けていた堀北の頬と耳は少し朱色に染まっていた。それが怒りゆえのものなのか、あるいは違う感情なのかオレには分からなかった。
次の更新は日が空きそうです。
今回の更新も、たまたま時間があったものですので……。
しかしながら、鳴海君を動かすのがとても楽しいので、近いうちに更新できたらと思います。
もう一つの方も更新しなきゃな(遠い目)