ようこそ堀北至上主義の教室へ   作:かわらまち

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有栖が若干のキャラ崩壊。


第6話

 

 

 前回のあらすじ。急激な心変わりをした堀北ちゃんが腹黒ちゃんに協力を仰ぎ勉強会をもう一度開催することになった。堀北ちゃんが本気でAクラスを目指すつもりであるとの決意表明もあり、その手伝いをすることになったのだった。

 

「さて、話も終わったことだし教室に帰ろうぜ」

 

「幸くん?」

 

「あ、それとも今からグラウンドでサッカーでもするか?」

 

「幸くーん。有栖ですよー」

 

「俺の黄金の右足が火を噴くぜ!」

 

「……えい」

 

「痛っ、いってぇー!」

 

 席を立ちあがりその場を離れようとした俺の脛に激痛が走る。あまりの痛みに涙目になる。

 

「もう、人を無視してはいけないと小学校で習いませんでしたか?」

 

「人の脛を杖で叩いてはいけないとお前は小学校では習わなかったのかよ!」

 

「残念ながら、幸くんと違って小学校は私学でしたのでそのようなことは習っておりません」

 

「公立を馬鹿にすんな!」

 

 脛は攻撃されると弁慶さんでさえ泣いちゃうから殺人鬼と変質者以外には叩いたらダメって教わっただろ。常識だ。

 

「そんな特殊な教えを乞うた覚えはありません。それに幸くんに無視された私の心の痛みに比べたら脛の一本や二本使い物にならなくなっても安いものです」

 

「お前を無視したことの代償が両足って重すぎるだろ」

 

「それほど傷ついたということです。反省してください」

 

 何で俺は怒られているのだろう。有栖を無視したから?そりゃ無視もしたくなるだろ。こいつは見た目天使の中身悪魔だぞ。絶対面倒くさいことになる。

 

「天使だなんて照れてしまいます」

 

「悪魔だって言ってんだろーが!というかさっきからナチュラルに人の心を読んでんじゃねぇよ」

 

「愛ゆえに。ですね」

 

 可愛らしくウインクをしてくる。いや、普通に怖いよ。エスパーなの?

 

「漫才なら他所でやってくれない?私は教室に帰らせてもらうわ」

 

「あー、ごめんごめん。気にせず先に戻ってて堀北ちゃん」

 

 痺れを切らした堀北ちゃんがこの場を離れようとする。堀北ちゃんとは一分一秒でも一緒にいたいが、今はこの場を早急に離脱してもらいたい。

 

「そういわずに少しお話しませんか?」

 

「誰か知らないけれどあなたと話すことはないわ」

 

「ふふ、幸くんが随分入れ込んでるようなのでどのような方かと思っていたのですが……」

 

 有栖は堀北ちゃんを値踏みするかのように見て、不敵に笑った。あの人を小ばかにしたような笑い方はロクなこと言わないぞ。ソースは俺の経験。

 

「何か?」

 

「いえいえ、案外普通の方だなと思っただけですよ」

 

「普通?それは誉め言葉として受け取っていいのかしら?」

 

「お好きに解釈してください。ただ、普通と言われて褒められていると思う奇特な方がいらっしゃるとは思えませんが」

 

 瞬間、空気が凍り付いた。明らかに挑発している有栖に対し、明らかに怒っている堀北ちゃん。何コレ修羅場?

 

「まぁ、あれだよ。普通っていいことだよな。何事も普通が一番だと俺は思うね。そもそも普通ってのは難しいことだからね?人って普通に生きようと思っても簡単にできるもんじゃないからね?それができてる堀北ちゃんは凄いっていうか、もう普通じゃないよね。普通だけど普通じゃないっていう矛盾をはらみながらも気高く生きている堀北ちゃんを俺は尊敬するなー。てか、単純に好き」

 

「よく今の流れで告白できるな」

 

「うるさいぞ清隆。完璧なフォローの最中だ、黙っていたまえ」

 

「黙るのはあなたよ」

 

「はい、すいませんでした」

 

 堀北ちゃんに殺気を含んだ目で威圧され大人しく席に座る。俺が何をしたというのだ。ちょっと愛が溢れてしまっただけではないか。

 

「あまり私の幸くんを虐めないでくださいますか?」

 

「いや、お前のじゃないし」

 

「言葉の綾です。私のものになる予定の幸くんでした」

 

「全然綾じゃないから。俺はお前のものにならないから」

 

「ふふっ、照れなくてもいいんですよ」

 

「俺のどこが照れているように見えるんだよ。眼科行け」

 

 あれ?なんかこのやりとり既視感があるな。いや、気のせいだろ。こんな事実をねじ曲げるやつはこいつ以外知らない。

 

「鏡でも見てきたらいいんじゃないかな?」

 

「うるさいぞ腹黒ちゃん」

 

「私の扱い酷くない!?」

 

 悪いな腹黒ちゃん、今はお前に構っている暇はない。

 

「あなた、こんなのが好きなの?」

 

「こんなのとは失礼ですね。幸くんが可哀想です。謝ってください」

 

「堀北ちゃんにこんなの扱い……たまりませんな」

 

「これのどこが可哀想なのかしら?」

 

「悶えてる姿も格好良いですね」

 

「はぁー、この学校にはまとも人はいないの?」

 

 額に手を当ててため息をつく堀北ちゃん。もはやデフォルトになりつつあるな。有栖のせいだな。

 

「で、なにしにきたんだよ」

 

「幸くんに会いに来ました」

 

「さ、教室戻ろう」

 

「嘘ではないですよ。正確には偶然通りかかったので皆さんに挨拶をしておこうと思いまして」

 

 有栖はそう言って視線を一度、清隆に向けた。清隆は気づいていないふりをしているが、間違いなく気づいているだろう。そもそも有栖が来た時点で前に俺が気をつけろと言っていた人物であることは分かっているはずだ。

 

「では皆さんに紹介してください」

 

「なんで俺が?」

 

「あら、パートナーを紹介するのは当然ですよね?」

 

「勝手にパートナーにしないで」

 

 1回1回突っ込んでいたらきりがない。堀北ちゃんの不機嫌オーラがどんどん膨れ上がっている。そこで俺の頭に雷が落ちたかのように唐突に閃きが。

 

「もしかして、堀北ちゃんが不機嫌なのって嫉妬?俺のパートナーを名乗る有栖の登場で危機感を抱いている!?」

 

「頭に蛆でも湧いてるのかしら」

 

「ポジティブと言うか、妄想がすごいな」

 

「もう少し現実を見た方がいいんじゃないかな」

 

「そんな幸くんも可愛いです」

 

 総バッシングだった。でも、堀北ちゃんは照れている可能性が高いので良しとしよう。有栖はいつも通りなのでスルー。

 

「えー、改めまして、こいつはAクラスの坂柳有栖。俺の幼なじみと言うか妹みたいなもん。天使の皮をかぶった悪魔だ」

 

「よろしくお願いしますね。幸くんとは同棲していた仲です」

 

「ど、同棲!?」

 

 何故か腹黒ちゃんが顔を真っ赤にして大きな反応を示した。堀北ちゃんは汚物を見る目でこちらを見てきたのでウインクをしておいたら舌打ちされた。

 

「俺が10歳の時に施設から引き取ってくれたのが有栖の親父さんで、それから一緒に暮らしてたってだけだからな」

 

「施設?」

 

「あー、どこにでもある児童施設だよ」

 

 施設という単語に清隆が僅かに反応する。ちょっと口が滑ったかな。ま、今更か。

 

「そんなこんなで俺とこいつは家族みたいなもんだから安心してね」

 

「最初から心配もしてないわよ」

 

「え、そんなに俺の事信じてくれてたの?」

 

「私には関係ないことだからに決まっているでしょ。それにあなたに信用なんてものは欠片もないわ」

 

「私は幸くんのこと信じていますよ。幸せになれるから壺を買えと言われれば倍の値段で買います」

 

「それは疑ったほうがいいと思うぞ」

 

 信用されないのは辛いが、信用されすぎるのも良くない。ただ、ポイントに困ったら有栖にたかろう。

 

「話は変わりますが、皆さんはAクラスを目指すそうですね」

 

「盗み聞きかしら?いい趣味を持っているみたいね」

 

「偶然、聞こえてしまっただけですよ。聞かれたくない話ならこのような往来の場でしないことをオススメします」

 

 折角解凍した空気が、またもや凍りつく。この空気やめてくれないかな?お腹が痛くなる。

 

「こればっかりは坂柳の言う通りだな。生徒が多い場所で話していたオレ達が悪い」

 

「綾小路くんは物分りが良いのですね」

 

「客観的に判断しただけだ。それより、オレ達がAクラスを目指すことがどうしたんだ?」

 

「別にどうもしませんよ。ただ楽しみなだけです」

 

「楽しみ?」

 

「ふふっ」

 

 有栖は天使のような微笑みを浮かべる。しかし、幾度となく見てきたそれは俺には悪魔の微笑みにしか見えない。

 

「特に幸くんと綾小路くんには期待しています。頑張って下さいね」

 

「生憎だが、オレにはどうこうできるチカラは無い」

 

「俺は堀北ちゃんの為に動くだけだし」

 

「そうですか。それでは私はこれで失礼しますね」

 

 綺麗なお辞儀をして有栖は背を向けて歩き出す。数歩歩いたところでもう一度こちらに振り返った。

 

「ところで幸くん。恥ずかしかったり照れると道化を演じて誤魔化す癖は治した方がいいですよ。まぁ、そういう所も可愛いのですが」

 

「なっ」

 

「あなたの有栖からのアドバイスです。それでは失礼します」

 

 可愛らしくウインクをして帰って行った。余計なことをいいやがって。良いネタを見つけたとニヤニヤしながら腹黒ちゃんがこっちを見てるじゃねーか。ほんと性格悪いな。

 

「私も戻るわ」

 

「あ、私も行くね。また後でね、照れ屋な幸くん」

 

 女子2人も先に教室へと戻って行った。あの腹黒まじ許すまじ。

 

「アレがお前が言っていた奴か」

 

「……そうだよ。見た通り足が悪くて運動能力はないけど、その分頭はアホみたいにきれるからな」

 

「そうか」

 

 そう呟いた清隆はいつにも増して無表情で何を考えているか分からない。実際に何も考えていないのかもしれない。清隆にしたら俺たちなど取るに足らない相手なのだろう。

 

「窮鼠猫を噛むってな」

 

「何か言ったか?」

 

「いや、なんでもねーよ。俺らも教室戻ろうぜ」

 

「ああ、そうだな。幸くん」

 

「幸くんやめろい!」

 

 なんにせよ、俺は堀北ちゃんのために動くだけだ。堀北ちゃんの前に立ち塞がるなら、清隆でも有栖でもぶっ飛ばしてやる、……できればそうならないようにしたいものだけどな。

 

 

 

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