ようこそ堀北至上主義の教室へ   作:かわらまち

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まさかの連日投稿。



第9話

 

 

 有栖と別れた俺は図書館に向かう途中で清隆と櫛田に出会い、ともに館内へと足を運んだ。館内では各学年の大勢の生徒が勉学に励んでいた。愛の力でその中から堀北ちゃんを一目散に見つけると、そこには三馬鹿トリオがノートを開いて準備万端の様子で座っていた。

 

「おまたせー堀北ちゃん!」

 

「遅いわよ」

 

「ごめんね。こいつらがちんたら歩くからさ。俺は急ぐように言ったんだけどね」

 

「こいつ秒で人を売りやがったな」

 

「当たり前だ。こんなことで堀北ちゃんの好感度が下がったら大変だろうが」

 

「それ、全部本人に聞こえてるけどね」

 

 櫛田に指摘され堀北ちゃんに目を向けるが、そもそもこちらを見ていなかった。無関心よりは最低だと罵られた方が良かった。というか罵られたい。

 

「まさかお前たち、一緒に飯食ってたんじゃないだろうな?」

 

 同時にやってきたことを怪しんだ池が疑いの眼差しで俺たちを見る。

 

「お前の言う通り、こいつらは一緒に飯食ってたぞ」

 

「おい、余計なことを言うな」

 

 俺があっさり肯定したことにより池たちは親の仇を見るかのように清隆を睨みつけた。

 

「そして何を隠そう、この俺は堀北ちゃんと二人でランチタイムを楽しんだわけだ。大事なことは二回言うぞ。二人で、だ。どうだ羨ましいだろ。羨望の眼差しで俺を見るといい」

 

「いや、それは別にどっちでも」

 

「表出ろやコラ。なんで羨ましがらねぇんだよ。ぶっとばすぞ」

 

 池に掴みかかろうとする俺を清隆が羽交い絞めして止め、櫛田がどうどうと俺を落ち着かせようとしている。何故こいつらは羨ましがらないのか。堀北ちゃんとランチだぞ。俺だったら血涙を流して悔しがり、羨ましがってからそいつを消すぞ。

 

「早くして」

 

「はい。すいませんでした」

 

 わちゃわちゃしている俺たちに堀北ちゃんは一瞥もくれず一言であしらう。俺はすぐに謝罪をし、静かに着席をした。あと、さっき俺を止めるときに馬を落ち着かせるように対応した腹黒ちゃんは後でいじめる。

 

 そんなこんなで勉強会がスタートした。のだが、開始早々に邪魔が入った。櫛田が先程の授業で習った、帰納法を考えた人物の名前を問題として出した。それに池がフランシス・ベーコンと答え正解したことによりテンションが上がって大きな声を出してしまった。隣で勉強していたグループの一人がそれにイラついてこちらに注意をしてきたので、池がへらへらと笑いながら謝罪をした。普通ならそれで終わりなのだが、その生徒があることに気付いた。

 

「お前らひょっとしてDクラスの生徒か?」

 

 その一言でグループの男子生徒たちが一斉に顔を上げ、こちらを見回す。その様子に須藤がキレ気味で返答する。

 

「なんだお前ら。俺たちがDクラスだから何だってんだよ。文句あんのか?」

 

「いやいや、別に文句はねえよ。俺はCクラスの山脇だ。よろしくな」

 山脇と名乗った男子生徒はニヤニヤと笑いながら、俺たちを見回す。何こいつ俺の堀北ちゃんを舐め回すように見てんだ?気持ち悪いな。変態か?

 

「この学校が実力でクラス分けしててくれてよかったぜ。お前らみたいな底辺と一緒に勉強させられたらたまんねーからなぁ」

 

「んだと!」

 

 しょうもない挑発に真っ先に怒りで立ち上がったのは、言うまでもなく須藤。こいつは本当に馬鹿だな。こんなやつ放っておけばいいのに。変態は相手にすると付け上がんだよ。一応言っておくが、俺は変態じゃないからな。

 

「本当のことを言っただけで怒んなよ。もし校内で暴力行為なんて起こしたら、どれだけポイント査定に響くか。おっと、お前らは失くすポイントもないんだっけか。てことは、退学になるかもなぁ?」

 

「上等だ、かかって来いよ!」

 

 さらなる挑発に須藤が吠える。ほら見たことか。相手にするからどんどん調子に乗ってるじゃん。しかも須藤がキャンキャン吠えるから嫌でも周囲から注目を浴びてしまっている。面倒くさいが、そろそろ止めるか。

 

「そう吠えなさんなって、須藤。ここで騒ぎを起こすことが無意味だってことぐらいわかるだろ」

 

 騒ぎがこれ以上大きくなり、問題になればどうなるか分かったもんじゃない。こいつが退学になるのなんて知ったこっちゃないが、ここまでの堀北ちゃんの努力が無駄になるのは見逃せるものじゃない。

 

「鳴海君の言う通りよ。最悪退学させられることだって、あると思った方がいいわ」

 

「けどよ!」

 

「はい、堀北ちゃんに反抗禁止。おすわり」

 

「うおっ」

 

 堀北ちゃんに食って掛かろうとした須藤の肩を掴み、足を払って強引に椅子へ座らせる。須藤は何が起こったのか分からず、頭の上に疑問符を浮かべていた。大人しくなってくれたようで何よりだ。堀北ちゃんは少し感心したような顔でこちらを見ると、すぐに山脇の方へ視線を向けた。

 

「私たちのことを悪く言うのは構わないけれど、あなたもCクラスでしょう? 正直自慢できるようなクラスではないわね」

 

「A~Cなんて誤差みたいなもんだ。Dクラスだけは別次元なんだよ」

 

「随分と不便な物差しを使っているのね。私から見ればAクラス以外は団子状態よ」

 

「不良品の分際で生意気言うじゃねえか。顔が可愛いからって何でも許されると思うなよ」

 

「脈絡もない話をありがとう。容姿のことを、どこかの誰かさんに褒められるよりかよっぽど不愉快に感じたわ」

 

「他にも堀北ちゃんが不愉快に感じてる奴がいるのな。そいつ可哀想だな」

 

「そ、そうだな」

 

 清隆に話しかけると、物凄く微妙な顔をされた。その横で腹黒ちゃんも笑顔を引きつらせている。その様子を疑問に思っていると、山脇が机を叩き立ち上がった。それをCクラスの生徒が慌てて袖をつかんで押さえている。さっきと立場が逆転してるな。

 

「今度のテストで赤点を取れば退学って話は聞いてるだろ? お前らから何人退学者が出るか楽しみだな」

 

「残念だけど、Dクラスからは退学者は出ないわ。それに、私たちの心配をする前に自分たちのクラスを心配したらどうかしら。驕っていると足元をすくわれるわよ」

 

「足元をすくわれる? 冗談きついぜ。俺たちはお前らと違って、より良い点数を取るために勉強してんだよ。赤点回避のために勉強してるお前らと一緒にすんな」

 

 暴力はまずいと気づき、またもや挑発を繰り返すが堀北ちゃんには全く効いていない。むしろ聞いていない。須藤だけはヒートアップしそうだったので、口を押さえておいた。モガモガ言っているが、何を言っているのか分からないので力を強くした。堀北ちゃんの胸ぐらをつかんだ恨みは忘れてないからな?

 

 そんなこんなで、そろそろ話を終わらせるべきだろうと考えていた矢先に、山脇が聞き逃せない発言をした。

 

「大体、お前ら、フランシス・ベーコンだとか言って喜んでるが、正気か? テスト範囲外のところを勉強して何になるんだ?」

 

「え?」

 

「もしかしてテスト範囲もろくに分かってないのか? これだから不良品はよぉ」

 

 不良品と聞いて須藤がさらに怒りをあらわにしようとするが、力づくで押さえ付けた。それより今、山脇はテスト範囲外と言ったか?本当にそれが正しいのだとしたら……。俺と同じことを考えていたのか、堀北ちゃんと目が合う。

 

「おい!無視してんじゃ───」

 

「はい、ストップストップ」

 

 完全にスルーされていた山脇が食って掛かろうとしてきたが、思わぬ人物により制止される。

 

「この図書館を利用させてもらっている生徒の一人として、騒ぎを見過ごすわけにはいかないので、口出しさせてもらうね」

 

 そう言って俺たちの間に立ったのは一人の女子生徒だった。顔立ちが整っており美少女と言える。だが、堀北ちゃんには敵わないのであしからず。

 

「さっきから聞かせてもらってたけど、挑発が過ぎるんじゃないかな?これ以上続けるなら学校側に報告しなきゃいけないんだけど、それでもいいのかな?」

 

「そ、そんなつもりじゃないんだよ。わ、悪かったよ、一之瀬。おい、行こうぜ。こんな所で勉強していたら馬鹿が移る」

 

 馬鹿みたいな捨て台詞を吐いてCクラスの生徒達は図書館から去って行った。謝るなら堀北ちゃんに謝れよ。

 

「君たちもここで勉強を続けるなら、大人しくやろうね。以上っ」

 

 一之瀬と呼ばれた女子生徒はこちらに軽く注意をして、颯爽と去って行った。良く分からない奴だが、うまくこの場を収めてくれたので心の中で感謝しておく。

 

「堀北と違って、しっかりこの場を治めていったな」

 

「私は乱したつもりはないわ。ただ本当のことを言っただけよ」

 

「そうだそうだ!堀北ちゃんを不快にさせたあいつが悪い。やっぱ俺みたいに愛のこもった褒め言葉を使わないとな」

 

「やっぱりあなたの方が不快かもね」

 

「何で!?」

 

 また照れ隠しか。本当に不快そうに表情を歪めるなんて、演技派だな。

 

「そんなことより───」

 

「おい、腹黒ちゃん。そんなことよりって何だ?俺と堀北ちゃんの事より大事なもんがあるってのか?」

 

「だ、だって、それ大丈夫なの?」

 

 それと言って俺の腰らへんを腹黒ちゃんが指をさした。

 

「あ、やべ……」

 

 目線を下げると、俺に口をふさがれてモガモガしていた須藤が力なく項垂れていた。俺に気道を完全にふさがれていたことにより息ができずに瀕死状態になってしまっていた。

 

「いつかやるとは思っていたが、とうとう殺ってしまったか」

 

「おい、人殺し扱いすんじゃねぇよ。てかやると思ってたの?俺ってそんな危険人物だった?」

 

「鳴海君、自首しよっ。こればっかりは仕方がないよ」

 

「嬉しそうに言ってんなよ腹黒。せめて悲しむ演技をしろ」

 

「これで静かになっていいわね。はじめて鳴海君に関して嬉しい感情を持ったわ」

 

「堀北ちゃんまで!?てか、それ冗談だよね?マジでへこむよ?」

 

 俺の質問に何も答えない堀北ちゃん。え、まじで嬉しいと思ったことないの?俺なんて一緒の空間にいられるだけで狂喜乱舞なのに。

 

「さて、冗談はさておき」

 

「お前が言うのな」

 

「全てが冗談だということにしておくんだよ。世の中には曖昧にしておいた方がいいことがあんの」

 

 強引に話題を変える。グロッキー状態の須藤を池たちに渡し、腹黒ちゃんにはデコピンをお見舞いしておく。「何で私だけなんだよ!」とデコを押さえながら涙目で訴えていたがスルー。だって堀北ちゃんには暴力はふれないし、清隆は後が怖いから仕方がないだろ。

 

「兎にも角にも、さっきのテスト範囲外だって発言についてだな。本当に間違っていたのか?」

 

「いや、テスト範囲についてはオレも堀北も櫛田もメモをしていたし、一致していたから間違いないだろう」

 

「クラスでテスト範囲が異なるのも考えにくいわね。学年で統一されてなければおかしいわ」

 

 清隆の言うように、茶柱先生から伝えられているテスト範囲に間違いはないし、堀北ちゃんが言うように、クラスで違う問題ってのはまずありえない。ポイント制度を導入している分、基準が曖昧になってしまうからだ。

 

「そうなると、別の可能性……テスト範囲が変わっている?」

 

「Cクラスの生徒が早くに範囲の変更を伝えられていた可能性もあるな」

 

「とにかく、先生に聞きに行くしかないわ」

 

 堀北ちゃんの言葉に全員が頷き、勉強を切り上げ荷物を片付ける。もしこれでテスト範囲がすべて変わっていたのだとしたら……。堀北ちゃんもその可能性に至ったのか、珍しく表情に焦りが見えた。そして俺たちは職員室へ向かった。

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