ハイスクールD×D 神器使いは静かに暮らしたい 作:ベロリンガRX
吉良SIDE
翌日、僕はスピードワゴン財団経由で承太郎さんに連絡を取り、指定されたファミレスで合流することになった。ちなみに、探し物ということでジョセフさんにも協力して欲しかったのだが、仗助の一件で夫婦の間に出来た溝を埋めるために旅行に行ってるんだとかでこれないらしい。まぁ、聞く話によるとよっぽど怒ってたらしいからな、ジョセフさんの奥さん。
で、待ち合わせのファミレスに露伴先生と向かっていた途中で、奇妙な光景に出くわした。
「えー、迷える子羊にお恵みを~」
「どうか、天の父に変わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉ!」
何だあれは。昨日の女たちが物乞いしている。こんな路頭で白いローブを着た女二人が祈りを捧げる光景は、なんとも奇妙な光景だ。隣では露伴先生が必死に笑いを堪えている。
「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」
「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ?ああ、パンひとつさえ買えない私たち!」
「ふん。もとはといえば、おまえが詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」
「何を言うの!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!展示会の関係者もそんなことを言っていたわ!」
「じゃあ、誰かわかるのか?私には誰一人脳裏に浮かばない」
「えっと……たぶん……ペトロさま?」
「ふざけるな。聖ペトロがこんなわけないだろう」
「いいえ、こんなのよ!私にはわかるもん!」
「ああ、どうしてこんなのが私のパートナーなんだ……。主よ、これも試練ですか?」
「ちょっと、頭を抱えないでよ。あなたって、沈む時はとことん沈むわよね」
「うるさい!これだからプロテスタントは異教徒だというんだ!我々カトリックと価値観が違う!聖人をもっと敬え!」
「何よ!古臭いしきたりに縛られているカトリックのほうがおかしいのよ!」
「なんだと、異教徒め」
「何よ、異教徒!」
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
多少離れている僕たちにも聞こえるほどの腹の虫。
何だ何だ何なんだこれは。新手の漫才か何かか?隣の露伴先生は口と腹を抑えてもう如何にも『限界です』と言わんばかりに笑いを堪えている。
「……まずはどうにかして腹を満たそう。そうしなければエクスカリバー奪還どころではない。下手をすれば、昨日の漫画家に本当に出し抜かれかねん」
「……そうね。それじゃ、異教徒をおどしてお金もらう?主も異教徒相手なら許してくれそうなの」
「寺を襲撃するのか?それとも賽銭箱とやらを奪うか?どちらも止めとけ。ここは剣を使って大道芸でもしよう。どの国でも通じるインターナショナルな娯楽だ」
「それは名案ね!エクスカリバーで果物でも切れば路銀は貯まるはず!」
「まぁ、その果物がないわけだが。仕方ない。その絵を切るか」
「ダメ!これはダメよ!」
「ク、ククッ、クククッ、フフフフフッ、ハーッハッハッハッハッハッハ!あー、ダメだ。こっ、これは、我慢できそうにないよ!」
ついに我慢の限界が来たらしい露伴先生は、大笑いしながら二人に近づいていく。二人もハッとなってこちらを向くと『しまった』と言いたげな顔をする。
「やぁ、昨日ぶりだねぇ君たち。確か……紫藤イリナと、ゼノヴィアとか言ってたっけ?さっきはとっても面白いコントを見せてもらったよ。君たち、大道芸人としてはなかなかの腕前なんじゃあないかい?クッ、クフフフフフフ……」
「なによ!私たちは見せ物じゃないのよ!ていうか、誰が大道芸人よ!」
「そうだ!私たちは断じて芸人などではない!」
「へぇ……でも、そういう割には、路銀が無いから何か芸をやって稼ごうって話していたじゃあないか。そら、やってみせろよ。僕が見ててやるからさ。その絵をエクスカリバーで切り抜いて型でも取るのかい?」
「だから!この絵はダメだって言ってるでしょ!この絵の聖なるお方を傷つけるなんて罰当たりな行為出来るわけないでしょ!」
「ふぅん、あっそう。君はとても信仰心の厚い人間なんだな。たとえその絵画が“どこの馬の骨が描いたかもわからない駄作”でも、そんなに大切にするんだねぇ」
「なっ、なんですって!?あんた、まさかこの絵が偽物だって言いたいの!?そんなことないわ!この絵にはほら!ちゃんとペトロさまがいらっしゃるもの!!」
「……へぇ、なるほど、君はこのおっさんが聖ペトロだって言い張る訳だ」
「言っておくが私はそんなことこれっぽっちも思ってはいないぞ、一緒にするなよ」
「うるさーい!アンタみたいな異教徒にこの絵の価値が分かるわけないでしょ!」
「フン、この岸辺露伴を舐めるなよ!それに僕は漫画家だぜ。漫画のネタに使うために聖書だって読みあさったこともあるし、絵も描いたことだってあるんだ、見てろよ!」
そう言うと露伴先生は自分のスケッチブックを取り出すと、ペンでスラスラと絵を描き始めた。そして10分もしないうちに絵が出来上がってしまった。
「どうだッ!これが聖ペトロだぜ!そんなどこのおっさんを描いたか解らない奴とは違うだろう?」
「おぉ……た、確かにこれは、カラヴァッジォの『聖ペトロの逆さ磔』!!」
「あ、あんな短時間でこんな絵を描けるだなんて……」
「おっ、いいねェその表情。まさに『一杯食わされた』って感じの表情が実に良い!」
「ろ、露伴先生、それくらいにしないと、ほら、はやく約束のファミレスに行きましょうよ」
「何!?私たちが食事も取れずにこうして苦しんでいるというのに、お前たちは知らぬ顔でファミレスで食事だと!?お前たちには、慈悲の心がないのか!!?」
「そーだそーだ!せめて何かお恵みを!」
「生憎僕たちは無神論者なのさ。というか、この日本でそういった熱心なカトリックやプロテスタントを探すっていうのは結構難しいんじゃあないのかい?君たちがそうやっていくら乞食の真似事をしたって、貰えるのはごみ屑ぐらいだろうぜ。まぁ、どうしてもって言うなら、連れてってやらない事もないけどな」
「何っ!ほ、本当か!」
「ああ、僕は嘘はつかないよ。君たちが、昨日の僕の漫画を侮辱したことを誠心誠意謝罪するならばね……」
そうして、女二人が路頭で男性に土下座するというなんとも奇妙な状況になってしまったのだった。
ちなみに、別のところで見ていた一誠たちとも合流した。
一誠SIDE
「いやぁ、なんかすいませんね露伴先生。俺たちまで奢ってもらっちゃって」
「別に構わないよ。僕は今、とても気分がいいのさ」
「ところで……匙、だったか?お前はなんで一緒にいるんだ?」
「いや、出来れば今すぐにでもここから逃げ出したいんだけれども」
「……なるほど、お前も無理やり連れてこられたか」
「お前も……ってことは、吉良、お前も……」
「今はだいぶなくなったけれど、ちょっと前は酷かったんだよなぁ……お前も、苦労してるんだなぁ」
苦労人同士、匙と吉良が奇妙な友情を感じていた。そして暫くして、注文したメニューが運ばれてきた。
「おお!これが日本の食事か!実にうまそうだ!」
「うんうん!これよ!この食欲を刺激する匂い!これが故郷の料理よ!」
「フフフ……喜んでもらえてるようで嬉しいよ」
「よし、それじゃあいただきます!」
そう言ってゼノヴィアとイリナは料理を口に運ぶ。
しかし、口に入れようといったところでピタリと腕が止まった。
「おやぁ?どうしたんだいゼノヴィア君、イリナ君。せっかくこの岸辺露伴がご馳走してあげているっていうのに、まさか、本当は食べたくないのかい?いらないんなら、もったいないから代わりに食べてもらうけど構わないかい?」
「い、いや待て!食べる!食べたいんだ!食べたいんだが……『どうしても料理を口に運べない』のだ!」
「おやおや、食べたいって言ってるのに、体が無意識のうちに拒絶しているのかい?あ、もしかしたら、異教徒の料理は体が受け付けないのかもしれないねェ……」
一体どうしたんだ?ゼノヴィアとイリナは必死になって食べようとしているが、どうやっても寸止めで口に料理が入ることはない。
「フフン、早く食べないと、せっかくの料理が冷めちまうぜ。もっとも、『食べれるものなら食べてみろ』って話なんだけれどもね……」
露伴先生のこの反応!絶対何かしてる!吉良がすっごい苦笑いしてるのも多分そのせいだ!
「お、おい!岸辺露伴!貴様、私に何をした!!」
「そーよ!なんだかよくわかんないけど、さっさとこの症状を治さないと、エクスカリバーで真っ二つにしてやるわよ!」
「まったくうるさい奴らだなぁ。食事の場で騒ぎ立てるのはマナー違反だぜ?ここがもしあの『富豪村』だったら、今頃君たち何か大切なものを失ってた頃だろうぜ?」
「うるさいっ!今すぐ元に戻さないというのならば、痛い目にあってもらうぞ!!」
ゼノヴィアがエクスカリバーを引き抜き、思いっきり露伴先生に振り下ろす。だが、露伴先生はピクリとも動かない。危ない!そう思った次の瞬間……
エクスカリバーは、露伴先生に当たる寸前で止まっていた。
「ば、馬鹿な!?私は今確かに、全力で振るったぞ!止めるつもりは微塵もなかった!なのに、何故……」
「フフフ……君たち二人には言ってなかったけど、僕も吉影君と同じスタンド使いなんだよね……」
「えっ?でも、露伴先生のスタンドって……」
「たしか、相手を本にして、その記憶を読む能力だったはず」
「……へヴンズ・ドアーに………敵の動きを止める能力は、無いはず」
「説明ご苦労。だが、僕のへヴンズ・ドアーの能力はそれだけじゃあないのさ。『本にした相手に命令を書き加える事で、相手に命令を聞かせる』事も可能なのだ!」
「な、なんですって!?そ、それじゃあ……」
「あぁ、君たちが僕に土下座していた時に書き込ませてもらったよ。『食べ物を食べる事が出来ない』『岸辺露伴を攻撃出来ない』とね……」
な、なんて能力だ……本に命令を書き込むだけで命令を聞かせるだなんて……しかも、食べ物を食べることが出来ないって、そのままにされたら死んじまうぞ!
正直、命令を聞かせる能力というのはとても羨ましい。あんなことやこんなことがやりたい放題じゃないか!
「い、一体なんでこんなことを!もうさっき謝ったじゃない!」
「別にもう僕はそのことは気にしちゃあいないよ。僕はとても心の広い人間だからねぇ。ただ、ちょっと君たちが気に入らないんで、嫌がらせをしてやりたいと思っただけさ」
うわぁ、ひっでぇ。根に持ちまくりじゃないですか露伴先生。
「露伴先生、そろそろ許してあげたらどうですか?いつまでも彼女らをからかってても、話が続かないじゃあないですか」
「まぁ、それもそうか。吉影君に感謝するんだな小娘ども。まぁ、もしもの時のために『岸辺露伴を攻撃出来ない』の命令は残させてもらうよ」
そう言うと、ゼノヴィアとイリナが一瞬本になったかと思うと、すぐに戻った。というか、本にするってあんな感じだったのか……結構グロかったな。
「さて、それじゃあ一段落着いたところで、ちょっと確認したいことがあるんだ」
と、露伴先生が俺たちに。
「一誠、君たちはゼノヴィアたちに『エクスカリバーの破壊を協力したい』んだね?」
ッ!?いきなり核心を突いてきた。こちらの事情は一切話していないのに……ハッ、まさか、へヴンズ・ドアーで!?
「あぁ、昨日こっそり読ませてもらったよ」
いったいいつの間に……
「で、ゼノヴィア、イリナ。君たちは彼らの、そして僕たちの協力を得る」
「なぜ言い切る?こちらが断るとは考えないのか?」
「……今、彼らは悪魔として、オカルト研究部として動いている。そして僕たちは人間として、スピードワゴン財団として動いているんだ」
「スピードワゴン財団だとッ!?どういう事だッ!?」
スピードワゴン財団?どっかで聞いたことがあるようなないような……
「僕たちはここで、スピードワゴン財団のとあるスタンド使いと合流する予定なのさ。そしてそのスタンド使いとならば、エクスカリバーの破壊はかなり楽になると断言できる」
「スタンド使いがひとり増えた程度でエクスカリバーを破壊するのが楽になると思っているのか?」
「心配はいらない。絶対、とは言わないが、楽になるのは確かだろうぜ。なんせそのスタンド使いは僕たちの知る中でも最強のスタンド使いだからね」
「最強のスタンド使いだと……まさか『空条承太郎』か!?」
空条承太郎?また知らない名前が出てきた。しかし、俺以外の悪魔は皆知っていたようで、全員が驚愕している。
「へぇ、やっぱり承太郎さんはそっちでも有名なのかい?」
「当たり前だろう!最凶最悪の吸血鬼『DIO』を打ち倒した、英雄の一族『ジョースター』の血を引く最強のスタンド使い『空条承太郎』その存在を知らぬものは殆どいないだろう」
俺知らなかったよ。て言うか、吉良も露伴先生も、そんなすごい人と知り合いなのかよ!
そんなことを話していると、吉良の携帯が鳴り出した。
「済まない、電話だ。もしもし、承太郎さん?ええ、今指定されたファミレスに露伴先生と例の悪魔たちも数人、教会から派遣されたという悪魔祓いも二人いますが……えっ、娘の用事で少し遅れる!?承太郎さんって娘いたんですか!?はっ!!?僕とそう変わらない歳なんですか!!?えっ、いやそれよりも、できるなら早めに終わらせてくださいよ!今のところは問題なさそうですけど、もしもってこともあるんですからね……はい、それじゃあ」
どうやら最強のスタンド使いはもうしばらく来れないらしい。
TO BE CONTENUED……
承太郎が出ると思ったかい?残念、徐倫にちょいとお時間とられたのでもうしばらくかかるそうです。
関係ないけど、一度でいいから馬鹿みたいにテンプレじみた転生者の二次小説書いてみたいなぁ。勘違い物とか書いてみたいなぁ。だが、現実は非常である。自分にテンプレオリ主を書く技量はなかったのだった。