ハイスクールD×D 神器使いは静かに暮らしたい 作:ベロリンガRX
吉良SIDE
あの外道悪魔ことリアス・グレモリーに『彼女』を人質に取られ、仕方なく、本当に仕方なく。僕の平穏と『彼女』の為にリアスとの契約を結ぶことになった翌日。僕は今、出来損ないの落ちこぼれ魔力なし悪魔こと兵藤一誠と共に契約者のところまで自転車をこいでいる。全速力で。
「おいッ!もっと早く自転車をこげ兵藤ッ!客商売で客を待たせるなんて論外だぞッ!!」
「うるせェーーーーッ!!こちとらこれでも全力全開の全速前進真っ最中なんだよォォォォオォォ!!」
「お前は悪魔だろうがッ!!人間の僕よりも遅くてどうするって言うんだ!!ええ!?」
「俺が知るかッ!つーかお前の方が異常なだけだろ!完全に人間やめてるだろその動き!!?」
「冗談でもそういうことは言わないでくれッ!僕は死ぬまで人間でいると決めているんだッ!!」
「人間ならいいってもんでもねぇだろそれはよォーーーーッ!!」
「一々騒ぐんじゃあないぞッ!!クソッ、何が『敵が現れたときに少し手伝ってもらうだけだから』だッ!思いっきり詐欺じゃあないかッ!!」
契約者から呼び出しを受けて30分と42秒。契約者の家に到着。兵藤は息も絶え絶えだったが何とか持ち直した。ちなみに僕は息一つ乱していない。日頃から体を動かしていたお陰だろう。兵藤が呼び鈴を鳴らして少しすると、インターフォンから
『あいてます。どうぞにょ』
野太く、威圧的な声が聞こえてきた。
「な、なあ吉良。なんだか少しイヤーな予感がするんだが・・・」
「奇遇だな。僕も今し方“奇妙な悪寒”を感じた所だ。なんなんだ“にょ”って。デ・ジ・キャラットのアレか?」
「吉良、お前もそっちの方いける口なのか?」
「・・・無駄話していないで、腹をくくるぞ兵藤」
「あっ!お前今露骨に話題逸らしただろ!っておいてくなよ!」
別に話をそらしたわけではない。何度も言うようだが、客商売で客を待たせるのは論外だからだ。本当だぞ。
部屋の前に到着。扉を開ければ契約者のでじこ(仮名)が待っている。
さて、ここで簡単な問題だ。平穏な人生を第一としているこの吉良吉影。このまま目の前にある扉を開けて混沌と直接対面するか?答えはもちろんNOだ。せっかく兵藤といういけに・・・いや、リリース要員がいるのだから使わない手はない。
「さあ兵藤、早く扉を開けるんだ。僕は少し後ろでいつでも逃げ出せるように逃走経路を確保しておくから」
「おまっ、何言ってんだよ!?お前が先に行ってたんだからお前が開けろよ!!」
「いいや、僕は下がっていた方がいい。考えてもみてくれ、これは“悪魔の召喚”なんだ。たとえチャリで来た。って言おうがなんだろうがな。そこに人間である僕がいるのは拙いとは思わないか?」
「うっ・・・た、確かに・・・」
「もしも、僕が一緒にいたせいで『他の人間と一緒にいる悪魔なんかとは契約出来ないにょ』なんて言われてみろ、ここに来るまでの時間と体力がすべて無駄になるぞ」
「それは・・・拙いな・・・」
「理解したか?理解したならそれでいい。僕は外で待機しているから何かあったら呼んでくれ」
勝った。兵藤を見事言いくるめることに成功した僕はSAN値チェックを免れたのだった。
兵藤は墓地送りになったが魔法カード『死者転生』で手札に戻ってきた。
一誠SIDE
ひどい目にあった。吉良の口車に乗せられて扉を開けたその先に現れたのは圧倒的な巨体。鍛え抜かれた筋骨隆々な漢が、ゴズロリ衣装を着込んでいたのだった。そんな彼、ミルたんの願いは『魔法少女になりたい』だった。どこぞのインキュベーターにでも頼んでくれ。それでなにをどう間違ったのか、ミルたんと魔法少女アニメの鑑賞会をする羽目になった。途中からでもいいから吉良も呼んでおけばよかった。そうすれば少しは俺の心のライフポイントも少しはダメージを受けずに済んだかもしれなかったのに・・・
「ハァ・・・まさか朝まで鑑賞会をする羽目になるとはなぁ・・・」
「土日の間で助かったものの・・・これが学校のある平日だったらと思うとゾッとしないな・・・」
とまぁ、流石に帰りには俺も吉良をだいぶクタクタだったので自転車を押して帰っていた途中で、後方から地面に何かが転がる音が聞こえてきた。振り返ると、そこにはシスターが転がっていた。
「・・・だ、だいじょうぶっスか?」
俺はシスターへ近寄り、起き上がれるように手を差し出した。
「ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ」
「だ、大丈夫だから・・・え、えっと、旅行?」
「いえ、違うんです。実はこの街の教会に赴任することになりまして・・・あなたたちもこの街の方なのですね。これからよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる彼女。
「この街に来てから困っていたんです。私って、日本語うまくしゃべれないので・・・道に迷ったんですけど、言葉が通じなくて・・・」
「おい、兵藤・・・ちょっとこっちに来い」
シスターが話していると吉良がついてこいと言う。いわゆる内緒話というやつだろう。俺は彼女に少し待ってくれと言うと吉良についていった。
「兵藤、お前バカか?彼女はシスターでお前は悪魔だろうに」
「いきなりバカ呼ばわりは無いんじゃねぇの?確かに俺は悪魔だ。でも、悪魔がシスターを助けちゃいけないなんて決まってないだろ?」
「多分お前が知らないだけで決まってると思うけどね・・・もういいよ、好きにしてくれ」
「あ、あの、何か失礼なことをしてしまったのでしょうか?」
「いや、済まない。こちらの勘違いだったようだ。僕は吉良吉影だ。よろしく」
「あ、はい。吉影さんですね。私はアーシア・アルジェントと申します」
「俺は兵藤一誠だ、イッセーでいいよ。っていうか吉良、お前英語話せるんだな」
「僕はお前と違って勉強が苦手って訳じゃあないし、英語に関しては祖父がイタリア人だったから、祖父によく教えてもらっていたんだ」
「ふーん、お前クォーターってやつだったんだな。」
「まぁ、僕の事はいいだろう。それよりアーシア。教会の場所なら僕が知っている。よかったら案内してもいいんだが」
「ほ、本当ですか!ありがとうございますぅぅ!これも主のお導きのおかげですね!」
アーシアが涙を浮かべながら微笑む。ヤバイ、すっげぇかわいい。しかし同時にアーシアの胸元に光るロザリオが最大級の拒否反応を生む。まぁ、分かっていたことだ。でも、困った女の子を放っておけないからな。
そうして教会へ向かう途中、公園で転んで泣いている男の子に出会った。俺はお母さんがついているから大丈夫だろうと思った。しかし、俺たちの後ろをついてきていたアーシアは子供の傍へ駆け寄る。アーシアが子供が転んで擦りむいた膝に手を当てると、淡い緑色の光に照らされ、子供の怪我がみう見るうちに治っていく。神器だ。アーシアも俺たちと同じ神器使いなんだ。
「ありがとう!お姉ちゃん!」
子供は感謝の言葉を述べるとお母さんのもとに駆け寄っていった。
「ありがとう、お姉ちゃん。だって」
「その力・・・神器か」
「はい。治癒の力です。神様からいただいた素敵なものなんですよ」
アーシアの微笑みには、どこか陰りが見えた。
「へぇー、そ、そうなんだ。実は、俺たちも神器持っててさー!」
「・・・・・・」
「ん?おい、どうした吉良?さっきから考え事か?」
「あ、あぁ、済まない。少し、友人の事を思い出していてね・・・」
「吉影さんのお友達ですか?」
「ああ・・・君の神器とよく似ている神器を持っていたやつでね・・・君の神器を見たら、少し、懐かしくなってね・・・」
「そう・・・なんですか・・・」
「・・・アーシア。君は、その神器を持ったことで、何か良くないことがあったんじゃあないか?」
「えっ、わ、わかるんですか?」
「まぁね・・・君は、思っていることが顔に出やすいタイプだからね」
「・・・イッセーさん、吉影さん。少し、私の昔話を聞いてもらえますか?」
「あ、ああ。いいよ。吉良もいいよな?」
「問題ない。話してみてくれ」
そして俺たちはアーシアの話を聞いた。人々の傷を癒す『聖女』と呼ばれ、崇められていた事。悪魔を治癒してしまった時から『魔女』と呼ばれ、異端として追放された事。
「きっと、私の祈りが足りなかったんです。これも主の試練なんです。私がダメなシスターなので、こうやって修行を与えてくれているんです。今は我慢の時なんです」
「アーシア・・・」
「私、夢があるんです。いつか、お友達と一緒に、お花を買ったり、本を買ったりして・・・おしゃべりして・・・」
アーシアの瞳から涙があふれる。今まで散々我慢してきたのだろう。神様とやらは薄情ものだ。こんなに救いを求めているアーシアを救わない。声をかけるくらいなら俺だって、悪魔だってできることなのに・・・
信じるものは救われるなんて嘘っぱちだ。なら、今俺に出来るのは、アーシアの涙を止めてやる事。アーシアと友達になることだ。
「アーシア、俺が友達になってやるよ。いや、もう友達だ」
「・・・・・・どうしてですか?」
「どうしても何もない。たった今決めた。『友達になる』と心の中で思ったのなら、もう既に友達なんだ」
「心の中で思ったのなら・・・もう既に友達・・・」
「俺だけじゃない、吉良だって友達だ!なぁ、そうだろう?」
「・・・そうだな・・・別に構わないよ」
「私と・・・友達になってくれるんですか?」
「違う違う。もう友達だろ?」
「・・・はい、そうですね・・・」
「そうだな・・・アーシア、これから友人になる君に、とある人の受け売りだが、この言葉を送ろう」
「『人間は何かを破壊して生きているといってもいい生物だ。その中でお前の能力はこの世のどんなことよりもやさしい』僕の友人・・・君と同じ“治す力”を持ったやつが、とある人に言われた言葉だ」
その言葉を聞いたアーシアは再び泣き崩れてしまった。しかし、今度の涙は悲しみの涙じゃない。俺と吉良の二人の友達が出来たこと。そして自分の力を認めてもらえた事に対する喜びの涙だった。
原作とはイベント進行が異なりますのでご注意ください
とりあえず承太郎さんの名台詞を仕込めて僕、満足。