ギャラクシア・ヒーローズ 〜ニュービュー、空に手を伸ばす〜 作:旅人アクア
まぁ、ほら、カタリナニキじゃないからね……
一コマ目の授業終わり、たった10分しかない貴重な
いやしかし、全ての授業が終わった後に話をしようと一言でも言っただろうかと自問自答し、答えを突きつけられた私は諦めて溜息を吐いた。
何の溜息か分かっていない友人は首を傾げ、次の授業場所に向かう準備をしていた先生はその様子を目撃して苦笑していた。
遠い目をしながらも先生に目で
もうねるのはあきらめようかまじゆるすまじ。
「どーしたん?」
不思議そうな顔をして覗き込んでくる友人に一発腹パンを打ち込んでやりたくなるが、心の中で私に非がある私に非があると溝が潰れたレコードのように何度も唱える。
「……なんでもないよ」
「そう? それなら良いんだけど。……あ、でさぁ! 知ってる? そのユニークモンスター討伐したのって三人らしいよ!」
「……えーと、名前は確か……【サンラク】【オイカッツォ】【シーサー・ペルシアン】だったっけ?」
「最後だけ微妙に外れてる! 何で最後だけ!? うーん。それにしても三人で討伐っていうのは凄いよねー。ギミックさえ分かれば案外簡単なモンスターだったり?」
「んー、それは違うと思うけどなぁー」
「えー、じゃないと3人で倒すのとか無理じゃない? 私、ユニークモンスター系列で遭った事があるの【夜襲のリュカオーン】くらいだけど、レベル99の5PTでも全然倒せる気がしなかったよ?」
それから、なんのかんの三度出遭ったことがあるらしい友人は、それはもう饒舌に時間ギリギリまで【夜襲のリュカオーン】について語っていた。
ヘイトを取ろうにも何故かヘイトが無視されて後衛が吹っ飛んで行ったり、なんとか隙間を見つけて魔法をぶち込んでも全然効いた気がしなかったり、最後は美味しくムシャムシャされたりと。
個人的には話の内容を濃密に語りながらも時間ギリギリに終わらせられる能力を、また別の何か使ったほうが良いのではと思ってしまった。
先生に注意される前に小走りで戻っていく友人の後ろ姿を見て思う。
(あ、というか
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「んー、シャンフロにログインするのは久しぶりー」
サードレマの
眼下から見える街並みは絶賛夏休み中ということもあってか、大勢のプレイヤーが行き交い賑わいを見せていた。
待ち合わせ場所によく使われる噴水の近くでは、エリア攻略に向けて攻略談義していたり、待ち人がやってくるのが遅れているのかしきりに空中に視線が行ったり、何をするでもなくただ屯っていたりと様々な模様が見える。
一つ一つに様々な
その様子に微かに笑みを浮かべて、ごちゃついているアイテム欄を整理し始めてはたと気がつく。
もう大型アップデートのせいで
(というか、今日のログインした目的とは全然違うし)
気を取り直すためペシペシと頬を叩いた後、出掛ける準備をする。
まず始めに大量にストックされてる目薬をさして眠気を取る。
それから路地裏に出て適当な
(んーしょっぱい)
思わず顔を顰めながらも裏ルートに入る。
以前はここを多くのPKKerが散策と言う名の警備をしていたのだが、今は人っ子一人見当たらない。
不思議に思いながらも罠に警戒して、不審な点はないか慎重に歩きながらサードレマから出る。
「罠ではなく本当に誰もいない……? ならもうここでいいかな、【
ポンっと小気味いいSE音を立てて出てきたのは雪より真っ白な毛並みをした大きな豹だった。
シャングリラ・フロンティアのユニークシナリオ「盤上の舞台裏」で特殊ポップするモンスター、血より真っ赤な色をしたポーンパンサーの
色違いモンスター自体は稀によく見られる光景でシャトルラン*1を一週間くらいやれば大体1、2匹位は出てくるレベルである。
とはいえ狙った色を出すのはかなりの困難で、
(う、狙われ続けた過去の記憶が背後から襲ってくる)
以前色違いと契約して入手していたことがバレて、それはそれはもう酷い目に遭った。
ただ単に、どういう訳か知らないけれど通常個体から虐められてる色違いを見て可哀想に思って助太刀してあげたら、何故か懐かれて契約できるようになっただけなのに条件を教えてと延々と付き纏われる恐怖。
いつログインしても五分と掛からず迫ってくるのは本当に怖かった。
「バニラはいつ見ても可愛いねー」
恐怖の記憶を振り払うべく、バニラの首回りにぎゅっと抱きついて喉をかいてあげる。
最初は今まで放置してた癖に、と拗ねた感じで邪険にして振りほどこうとしていたが、30分くらい可愛いがり続ければ軟体動物へと変化していた。
「……ふしゃ〜」
「うん、充電完了っと」
三大欲求を邪魔されるストレスと承認欲求を消化できなかったストレスを同時に解消する素晴らしい儀式は、シャンフロにログインする度に行なっている行為である。
「バニラ! 起きて! 散歩の時間だよ」
頬をぐにぐにと引っ張って正気に戻させる。
ハッと自分の酷い状態に気がついたのか居住まいを正す。
(出てきてすぐはいじけていたのに、今ではこんなにも、って痛い!尻尾で肩を叩かないで!)
さっさと乗れという合図に哀しみを覚えながらバニラに跨る。
最初の頃は鞍とか鐙を特注で作ってもらおうかと考えるほど酷い有り様だったが、一応今ではバニラの上に立って攻撃できるほどPSが上がっていた。
ほぼほぼあのユニークモンスターの所為ではあるのだが……。
過去のこと朧げながらに思い出してきた私は、久しぶり毛並みに感慨を覚えながら、千紫万紅の樹海窟の隠しエリア「秘匿の花園」へと向かう。
もし、もしも後十分ほど早く行っていれば、もしくは遅らせていたらならば、顔を合わせることになっていただろう。
全ての元凶と。
役目を終えたかのように光が失われ、壁として機能を失った崩れた苔の先。
シャボン玉のように浮かんでは消える感傷に浸りながら暗いトンネルを抜けると、花の国であった。
喜色満面の笑みといった感じで咲き誇る彼岸花、その絨毯を傷付けないように歩きながら枯れた桜の木の元へと辿り着く。
そこには「セツナトワ」の花束が捧げられており、ここに誰かが花束を届けにきたことを意味していた。
それを誰か察せられない程、私はバカではない。
「ふしゃぁ?」
無言で立ち尽くしている私に、大丈夫?とでも言うようにバニラが心配そうに鳴いた直後。
ドン! 桜の木が殴られた事によって僅かに枝先は揺れ、バニラは主人の情緒の変化にビクりと体を震わせる。
一瞬の静寂、のちに頬を風が撫でる。
それは、もう大丈夫とでも言うように。
ポツリと雫は垂れ、セツナトワの花束に水滴が滴り、そして落ちる。
膨れ上がった感情は、理性という鎖を引きちぎり、ただひたすらに、大声で、嗚咽を吐きながら、泣いた。
それは私が救えなかったからだろうか。
それは今際の際に逢えなかったからだろうか。
それは仲間外れにされていたからだろうか。
それは自分が情けなかったからだろうか。
それは――
――誰の為に泣いたのだろうか?
エリアボスは一度次の街でリスポーンポイントを更新してから以前の街に戻ると普通にリポップします。エリアボスを倒してリポップさせて……を繰り返す行動を「シャトルラン」と呼びます
誰しもが
誰しもが
所詮凡人は
次回オルスロット君が登場します。
【裏設定】
阿修羅会に入った理由はSF-Zooが原因です。
シャンフロ辞めていた理由、それは大型アップデートではなく、勝てなくて匙を投げて現実に逃避してたからです。
あと人より活動記憶容量が狭いので名前とか誤字って覚えてたり、記憶が溢れかえって情緒不安定になったりします。
後々語る予定にしていましたが多分イラッとくるかもしれないのでゲロって起きます。