漫画のネームを描いていたと思ったらオリジナルスタンドの設定を作り上げていた。溢れるパッションが抑えきれなかったので初投稿です。
「霊媒相談所? んだそりゃ、胡散くせェーなあ」
「なんでも、死んだ人を呼び出すイタコの真似事をするらしいよ」
「オカルトチックな話だぜ。ますます胡散くせえ話だ」
「生きてる人の心の整理には普通できない死者との会話が必要な時もある…ってチラシに、ホラ!」
「チラシィ〜〜???」
とある朝の学生や社会人が慌しく行き交う時間。2人の男子学生が話している。内容はひどく現実味の薄いオカルトだが、登校時間の話のタネにはなる。
話を振った小さい方の学生───広瀬康一が、鞄から取り出した紙をもう1人の学生に見せる。
『死んだあの人にもう一度 藤堂霊媒相談所』
相談は無料、降霊料は要相談。それ以外には事務所がある場所への簡単な経路と電話番号が記載されている。文字と地図以外にはほとんど装飾がない、素人か学生が即興で作ったかのような白紙は、彼らにさらなる疑念を湧かせた。
「ホントにこーんなチンケな紙で相談なんか受けてんのか? 学校の委員会で作った広報紙の方がよほど手間がかかってるってもんだぜ」
「だよね。でも噂じゃあ結構な人が相談してるらしいよ」
「ゲッ 噂になるほど身内に仏さんがいる奴が多いのかよ!?」
「人だけじゃなくて犬や猫でもいいんだってさ。でももう一回死んだ人に会えるんだから本人にとってはいいことなのかもよ」
「うーん…俺だったら…別にいいかな。会えるってだけで生き返るわけじゃあないんだろ?」
「仗助君…」
背の高い、リーゼントの学生───東方仗助は、つい先日、祖父を亡くしている。凶悪なスタンド使いによって殺され、己のスタンド能力でも蘇らせることはできなかった後悔がある。しかしもう一度会わずとも、既に仗助本人の中では整理できていた。
「まあ機会があったら冷やかしに行こうぜ。機会があったらな」
「冷やかしは良くないけど…気になるもんね」
1999年4月、M県S市杜王町。アンジェロ岩が人目につくようになって数日経った頃の会話である。
***
『藤堂霊媒相談所』。
このいかにも都市伝説の流行にかこつけて作ったような場所で、活動している人間は俺しかいない。
「昨日も死んだ犬しか呼び出してねえなあ…」
俺は藤堂一茶。この霊媒相談所の職員である。社長、構成員、占い師…好きなように呼んでもらって構わない。俺1人しかいないからな。しかし小遣い稼ぎにも情報を集めるにも、俺の性格的にも合っているベストなライフワークなのだ。それをすてるだなんてもったいない!
唐突な、しかしすでに勘付いている紳士淑女もいるだろうが、俺のことを簡潔に教えておく。
いつ死んだかはイマイチわからないが、とにかく俺は一度死んで今の俺、藤堂一茶という人間の男として生まれ変わった。
早い話が転生者。気付いた時には5歳でひどく記憶が混乱したが、そんなことは些細な事だった。
6歳になるかならないかくらいの時、エジプトに家族旅行に行った。そこでとある事件…というかスタンドバトルに巻き込まれた。ポルナレフ(の髪型)がやたら印象的であったと記憶している。
ここで、俺の生まれた世界が『ジョジョ』の世界だと気づいたのだ。さらに驚くべきことに、俺は彼らのスタンドの像を見ることができた。
本当に驚いて思わず二度見したが許してほしい。御一行に見えることに気づかれてDIO側の刺客かとも疑われたので本当に許してほしい。怖い。
当時の俺はこの世界が何なのかと、自分がスタンド使いだということを同時に知ってしまったのだ。
恐怖と狂喜と驚愕とまた恐怖と、気持ちが混乱大渋滞していたので、受け答えがあやふやになった事、その一件から後、一度もSPW財団にもジョースター家にも連絡を取っていない事は仕方ないのだ。
そう、仕方ない。(目逸らし)
だって考えてもみろよ。スタンドをろくに使えないのにスタンド使いだって公言してみろ!
実験だの調査だの監視だの面倒なことになるのはわかりきってる。最悪DIO側から敵認定を受ける可能性だってある。ジョースター一行にバレた時、195センチの人間に詰問されるのすげー怖かったんだぞ!?(本音)子供との身長差だし余計にな!!
ついでに俺が転生者で、俯瞰的にジョースター家を知っているとバレた場合、いい方向に話が進む気がしない。だいたいどう説明すればいいというのか。
総合的に、俺にメリットが1つもない。そりゃあ沈黙は金だよ。
「俺も学校行かなきゃな…っと」
そんなこんなでこっそりと自分のスタンドを把握しながら生きること早数年。今年で17歳になる。1999年4月、という事は、そろそろ第4部が開始される時期だ。俺が杜王町に住む学生で、スタンド使いである以上嫌でも関わることになるだろう。でも大々的に手を貸せないから、間接的に。
ところで俺のスタンドであるが、普段
これだけならいい。むしろ都合の悪いことを忘却させるのでSPW財団にとっては都合のいい能力だろう。ギャングにも重宝されるかもしれない。いやそれは困る。…まあここまでなら良かった。百歩譲って良かった。
「やっべ!もう予鈴なるじゃん!早く行かなきゃ!!」
ゆっくりしていたが、時間がギリギリなので俺のスタンドについてはまたの機会とする。誰に言ってるのかわからないが。
ちなみに朝のHRには間に合った。クラスメイトの席は数箇所空いていたが、不良もそこそこいるしよくあることだ。この日の授業はつつがなく行われた。
5月。3学年の虹村形兆が死んだらしい。噂では恨みのある他校生に刺されただとか、幽霊に祟り殺されただとか言いたい放題だ。学校側も詳しい話は聞かされてないらしい。
(たしか…レッド・ホット・チリ・ペッパーに殺されたんだったか)
感電死…だったかな。俺のスタンドで思い出せるのは覚えていることだけ。もとから曖昧にしか覚えていない事は思い出せない。もっとジョジョ熟読するんだったな…割とスタンド名とフルネーム、どっちかが曖昧に忘れてたりするもんだから焦る。
本来
生活の中、勉学の中、趣味の中、あらゆる記憶が曖昧なのだ。もちろんはっきりした思い出や記憶はあるが、大事なことを覚えていないのだから我がことながら始末に負えない。
しかし、どうでもいいことというのはよく覚えているのだ。CMの挿入歌だったり、著名な歌の替え歌だったり、某掲示板発祥のアスキーアートだったり、アニメの名台詞だったり。
よって語感のいいレッチリの名前は覚えている。口に出して言いたい語感だよな。ぶっちゃけ能力と本体の名前は忘れた。多分盗品のギターをかき鳴らしてるうるさいやつだったはずだが。
とにかく、虹村兄は死んだ。死んだという事は、誰かが俺に霊媒の相談をする可能性が高いという事。何時もなら心の中で繁盛期だー!と不謹慎な喜びを表すのだが、いかんせん今回からはワケが違う。
スタンド絡みの事件。霊媒と銘打っている俺のところに話が来ないワケがない。仲の良かった学生(いるかは判らないが)や親族が来るならいい。だが今回の場合、最悪空条承太郎が来る可能性がある。
前述した通り、俺自身がスタンド使いだと気づいたのはジョースター一行と遭遇したことがきっかけだ。向こうも当時の小さなスタンド使いの生死を確認できてはいないだろう。故にそれ以降音沙汰のない当時少年の俺が俺だと知られるのは、事態をややこしくしかしない。
「だいたい今さら何て弁明すりゃいいんだよ。ほぼ赤の他人だし。悪いことしてないのに気まずいわ」
今日は店じまいとするかな。どのみち死んだばかりの人間なんて降霊したことないしな。そんなすぐに呼べるのかね。
そんなことを考えながら帰路につく。俺の実家は杜王町にあるが、実家から北に少し行った先のアパートの一室が俺の現在の寝床兼相談事務所である。踏切を越えると霊園がある。霊媒相談を請け負う俺にはうってつけだな。アパート自体は父親名義のもので、少々無理を言って一人暮らしをしている。
おっと、転生者あるあるの親と馴染めないなんて話が来ると思ったか?んなワケないだろう。忘れっぽいということは1つのことに執着しにくい。楽観主義の俺にとっては小学校生活なんて天国以外の何でもないね!多少時代錯誤だと感じることもあるが、生きるだけならそう気にならないものだし。遊んで勉強するだけでいいんだぜ。楽しすぎる。
今時の歌を鼻歌交じりにアパートの前につくと、人がいた。学ランを着ている。うちの高校かな。俺より早く帰れるとはHRが速い隣のクラスか…1年か。参ったな、今日は店じまいしようと思っていたのだが。
足を止めて考えを巡らせる俺に気づいたのか、その学生はこちらを向いた。曲がり角のところにいたから気づかなかったが、複数だ。柄の悪そうな強面が1人、小さいのが1人、……リーゼント頭が1人。計3人、友人同士示し合わせてここまで来たらしい。
こちらを振り向いた小さい学生が俺に呼びかける。
「あのーッ!もしかしてこの『藤堂霊媒相談所』の人ですか!?」
「学セーじゃねえかよ康一」
「……はい、そうですよ。藤堂って言います。君たちは相談にきたのかい?」
「えっ!?藤堂…って、じゃあアンタの事務所なのか!?学生なのに?」
「まあね、いろいろあるんだよ…よければ上がってくれ。相談なら無料でやってるし、悪霊・ポルターガイストから都市伝説の考察までなんでもどうぞ。ただし、葬式なんかの祭事は寺か神社にどうぞ」
どうやら平穏な俺の杜王町ライフは終わりらしい。
部屋の中は片付けている。自室とはいえ事務所として機能している場所でもあるからだ。玄関入ってすぐに簡易キッチンとバストイレが左右に設置されている一般的な間取り。まっすぐ歩けばダイニング、他に扉は2つあるが閉ざされている。個人的な部屋…というか俺の部屋だからだ。
「さて、改めて。俺は
言うだけならタダだぜ。何を…いや、まず誰が困ってるのかな」
とりあえずこちらから名乗っておく。所在不明な勧誘ってマトモじゃないからね、契約の電話が掛かってきたらまず誰か聞くべきなんだぞ。
「おれだぜ!…えェーッと、おれは虹村億泰、よろしくな!」
「虹村君だね。よろしく」
「あー…すんません、名前で呼んでもらっていいですか、ややこしくなりそうなんで」
「わかった。…言いにくいが、身内のことか?億泰君」
「…ウス」
そこから少しずつ億泰は己の兄について話し始めた。そのまま話そうとしていたが後の2人…広瀬康一と東方仗助(最初の時点で紹介してもらった。知っていたが)らが一般人に言えないことにフォローやフェイクを入れつつ、死んだ経緯まで語った。
俺は聞きながらメモを取る。スタンドで記憶できるが、これは俺の知っていることと、
「虹村形兆、君の兄で、非情なところがあるが、少なくとも最期に弟の君を庇った人物。…間違いない?」
「…そんな感じっス」
話している間は子供の頃の話も多く、嬉しそうに話していたのだが、最近のことになると死んだ時を思い出すのか、話の終わりには随分しんみりした雰囲気になっていた。
「君のお兄さんがどんな人だったのかはなんとなくだがわかったよ。それで、だ。ここにいるのだから俺がすべきことも理解した。その上で、君はお兄さんになにを聞きたい?なにを言いたい?」
「…何を?」
そう。死人に口なし。本来なら死者と話すことなどできない。それでも何かを伝える役目があるなら、なんらかの形で口を開く。杉本鈴美が良い霊…失敬、良い例だ。
なんの目的もなしに無理に話させるのはどうかと思うのだ、俺は。だから呼び出す前に、依頼主にある程度あって何がしたいか頭で整理してもらうのだ。
「おれは…」
少し億泰に整理する時間を与える。そして俺もその間に虹村形兆を呼ぶ準備をする。
「…あの、藤堂さん? 何してるんです、まるで一休さんみたいなポーズで唸って…」
「んー…彼の兄は死んでから1週間も経ってないだろう? そんなに間を空けずに死んだ人を現世に呼んだことないからさ、彼にはああいったけれど、ちょっと不安でね。イメージトレーニングしてるんだ」
「ええっ!?」
「あぁッ!?そんなんでコーレーなんて出来るのか!?」
話が終わってから傍観していた2人が俺に質問して帰ってきた答えに心配を…これは疑いかなぁ。そんな素っ頓狂な声と顔を上げる。
俺はその反応を横目に虹村兄の情報を反芻していた。
フェイクの多い話だったが、ほとんどイメージ通りの男だ。非情で厳しいけれど、几帳面で、実のところ父や弟のことをよく考えている。また、何よりスタンド使いだからスタンドの情報もあればなお良しだったのだが…俺が知っているからいいか。確かバッド・カンパニーという群体型のスタンドだったはず。
「…大丈夫だ。できそう」
「藤堂さん、…決まったぜ」
「よし、じゃあ呼び出すぞ」
俺のスタンドは『追憶』なんて言い方をしたが、結局、出来るとこは『思い出す』ことに集約される。
記憶から始まり、一昔前にお茶の間を騒がした芸能人、
昨日の天気、教師がテストに出ると言った授業内容、母親の忠告、
今は連絡の取れない幼馴染との思い出、
亡くなった祖母の昔話、
死んだ人間の顔や声、
─────────死んだ人間そのもの。
生きている人間の思い出の姿から、相手に死人を思い出させる。思い出させる為なら、
「プリーズ・リメンバー」
「死んだおれに頼ってんじゃあねえぞ億泰ゥ!!!!!!!」
「兄貴ッ!!!?ガボッッ!???????」
「お…億泰の兄貴!?本当に呼び出しやがった…!」
「億泰くんが見えた途端に殴った!?」
まあ呼び出した瞬間呼び出された方がどうするかなんてのは、俺にもわからんがね。
プリーズ・リメンバー。思い出して。
おれのスタンドの真骨頂、それがこれ、死んだ存在をスタンド像として呼び出すこと。
この場合可視型のスタンド扱いで、一般人にも見える。スタンド使いを呼び出した場合、一般人に見えるのは本体だけで本体自身のスタンドは通常通りスタンド使いにしか見えない。ダメージのフィードバックも半分くらいになる。
さて、この能力、原作を知っていれば間違いなく良い能力だ。仕様として、呼び出す相手を知っていなければならないのだが、俺は原作キャラなら例え、かのジョナサン・ジョースターすらも呼び出せる。ある程度のひととなりを漫画から知っているからだ。
しかしこの能力、他にもデメリットがある。
死人を呼び出すには生きた記憶が必要なのは実質的にデメリット足り得ない。数ある中で一つ挙げるならば、今の虹村形兆のようにスタンド扱いとはいえ、俺の思い通りに動かすことはできない。
すわスタンド使いか!?いや形兆はスタンド使いだけど!という小言も言いつつ戦闘態勢に入ったのもつかの間、億泰の目が段々と潤んでくる。どうやら感動か安心か、心にくるものがあったらしい。漫画を読んでいた時には情に脆い印象があったが、本当に心豊かな男らしい。
「兄貴…」
「何だ、おれは何もお前に答えは…」
「ありがとう」
「……」
「おれを守ってくれたんだよな」
「…お前はバカのくせに時々鋭いことを言う」
きっと、守ってくれた、というのは最期のことだけじゃなく母親が死んで、父親が異形のものになって、頼るべき人がいない中兄弟が共に生きた感謝だ。俺は彼らにとって部外者であるが、億泰の言葉にはそういうニュアンスが含まれているように思う。そして、兄の方も、解っている。
「そんなこと言うためにわざわざこのおれを呼んだのか、億泰」
「…だって言わなきゃダメだと思ってさあ…何聞いても知るかって言われそうだしよお〜…」
「…とりあえず、学校には行っとけよ。それから…」
「おやじのこと、後は頼んだぜ、億泰」
瞬き一つの間に、形兆の姿は消えていた。
億泰はと言うと、アホ面で呆けていたが、じきに気を取り戻すだろう。死者と話をした実感がないのか、最後の言葉が予想外だったのかは本人にしかわからないが。
…実は虹村形兆の方が言うことはもうないからここにいる必要も無いと、俺に意識内で訴えていたから、タイミングを示し合わせて能力を解除したのだが、そういう雰囲気ではないので口を噤んでおく。
他2人も空気を読んで静かにしているし、俺がぶち壊すもんじゃあない。
俺のスタンド能力の話に戻るが、死者を1日継続して呼び出しておくことはできない。ずっと呼び出していると生者のように思えるからだ。それは俺の認識が許さない。
また、スタンド使いを呼び出すのには特殊な能力を持たない人間を呼ぶよりも精神的なコストがかかる。ようは俺が疲れるから一度に複数呼べないし、持続しない。
しかし、これを無視すれば、俺個人が呼び出せる範囲は原作キャラ全般だ。そして人間に限らず、犬や馬といった人外も範囲内だ。
そう…ゾンビや柱の男、吸血鬼でも。
最大の問題であり、切り札。これがあるから、俺は、DIOの残党に…もっと言えばあの神父に知られてはいけないという縛りを人生に与えなくてはならなかった。本当は今のところは大丈夫だが、俺の心構えの問題だ。
億泰だが、やっと放心状態から解放されたらしい。康一と仗助と共に良かったな、とか おれ頑張るよ、とか気持ちを共有している。良かったな。俺も能力を使った甲斐があるというものだ。
そろそろいいかな。
「さて、億泰君」
「あッすんませんこっちだけで盛り上がっちまって…」
「トントン拍子で話を進めてしまったのでこちらにも非があるんだが…。
相談は無料といった。しかし降霊は要相談だ…チラシにも書いていただろう?」
その日、俺の部屋から3人の男たちの怒声のような悲鳴が上がった。
聞いてない?いいや、お金は取るぜ。一応仕事だからな!
一巡後記憶あり転生パラレルとかする前に死んでしまった相手に対する心情を生きてるうちにいったん昇華してもいいのでは?と思い立って書いた。
正直そんなに後ろ向きな考えのキャラクター達ではないだろうけども。いいだろ2次創作なんだから