あけましておめでとうございます。
作者の勘違いで前回の話の最後に重ちーが生まれつきのスタンド使い、といった旨の文がありましたが実際は形兆の矢で覚醒しているため、文をカットして設定を原作寄りに書き直してます。今後の展開上使う機会のない設定のはずなので見直さなくて良いですが、一応この前書きに明記させていただきます。
6月の下旬。もうすぐ夏がやってくる季節。杜王町にはまだ半袖のカッターシャツに着替えなくてもいいような涼しさがある。
そして、そろそろ「犯人」と出会う時期でもある。
俺には「本編」の正確な日付はわからない。ただし、4部は4月からおおよそ3ヶ月間の話だったと聞いた覚えがある。それに『重ちー』が死ぬことも。
俺だって人並みに心はある。知らないふりして人を1人見殺しにするのは流石に嫌だ。昼食時間に校内を散策したり、重ちー君を見たら必ず声をかけるようにした。やがて俺が気づく前に重ちー君の方から声をかけてくれるようになった。
挨拶できる人間というのは、心に余裕があるそうだ。挨拶運動による犯罪抑制効果は馬鹿にならないものなのだ。お前のことだぞ吉良吉影。
4部ラスボスにヘイトを溜めているが、俺は吉良の顔を知らない。億泰君や康一君、仗助君の時は髪型と状況なんかから初対面でも誰なのか分かったが、いつも原作キャラと会った瞬間に誰かわかるわけじゃない。ジョースター一行と遭遇した時はそもそも『ジョジョの世界』と知らなかったこともあって、あれだけ特徴的な彼らを目の前にしても直ぐには気づかなかった。
登場人物は紙面上で見たことがあるだけで、実際に会わなければ確証は得られないのだ。会ったことのない人間が誰かなんてわかるはずがない。
だから、恐らく街で吉良とすれ違っても、俺がそいつを「吉良だ」と察知できる保証はない。多分無理。それでも金髪でスーツ姿だったり、変わった柄のネクタイを着けている男がいないか警戒している。
俺が関わったことにより原作より少し早くジョースターさん達が動いていたが、人数を絞っても相当な数が当てはまるため、捜査が難航しているらしい。推定成人男性で、杜王町に15年以上住んでいる者。範囲は膨大だし、無理もない。下手に手を出しても被害者が増えるだけだから、財団も表立っては動けない。
今のところ、「犯人」がスタンド使いの男という情報しかない。何もないよりはましだが、手詰まりの状態だ。
…とはいえ、俺を含めて関係者の多くは学生だ。町に潜む恐ろしい殺人鬼を探す目的とは別に学校に行かなきゃならないし、学期末テストだってある。普段の学校生活を疎かにする理由にはならない。だから今日も俺たちは学校へ向かうのだ。
「…あれ、先輩だ」
「よう、仗助君に億泰君」
「おっ藤堂先輩だ、はよーっす」
「朝っぱらから会うなんて珍しいこともあるんすね」
「今までは先に踏切通って霊園側から登校してたしな」
少しだけ変えた事もある。通学路を少し変えた。俺の家は商店街より西にあるから、先に線路を越えてしまえば人が密集する駅前を通らなくて済むのだ。しかし最近になって駅前を通るルートに切り替えた。所要時間は大して変わらないが、俺が視認する杜王町民の数は増える。
「何でも『覚えられる』俺が、怪しい奴を見つけられれば御の字って感じだな。まあ、今までこの町に潜んできた犯人がそんな簡単に見つかるとは思っていないけど」
「この町に住んでるなら、駅前の通りは使わないわけにはいかねえもんなあ」
「おれたちにも出来ることってあるんすかねー…」
「1つ思いついたけど全くオススメできない」
「…言ってみてください」
「スタンドを出しっぱなしにしておく」
「いいアイデアだけど、そりゃアブねーってもんだぜ先輩」
「それにスタンドを出し続けるってすっげー疲れるんだぜ」
「へえ、そうなのか。俺はあんまり疲れを感じたことないな」
スタンドはスタンド使いにしか見えない事を利用して敵を炙り出す方法はない事もないが、スタンド使い相手に手札を見せっぱなしにするとか自殺行為だよなあ。スタンド使いとの戦いって化かし合いみたいなところあるし。
俺のスタンドは呼び出す相手にもよるが、持続力だけはかなりある。近距離パワー型の2人とは勝手が違うんだろう。スタンド像を小さくするのも力を使うそうだが、そもそも俺は像を自由に出すことが出来ないからそれ以前の問題だ。
話しながら歩いていると、しばらくして俺の影になっていた『彼』に気づいた仗助君が指差しながら俺に問いかけてきた。
「そういやその犬なんすか? 先輩ペット飼ってたんですか?」
「ん? いや、こいつはもう死んでる犬さ。俺この間から町を1人で歩くのが怖くてな、人でも犬でもいいから誰かと連れ立って移動してるんだ」
「そりゃいいや。でも、先輩にも怖いことってあるんだなァ」
「いけ、ダニー。あの強面に『したでなめる』」
「バウッ」
「うおっ! やめっ…こいつなんか人懐っこい!?」
俺が呼び出していた大きな犬を億泰君にけしかける。犬は尻尾を振りながらぶつかっていき、億泰君の顔を舐め回す。
番犬と言ってすぐに思いついたのがジョナサンの愛犬、ダニーだった。俺の家族ではないけれど危険を察知する力が強いらしく、リードをつけていないにも関わらず常に隣にいてくれて、すごい安心感があるのだ。こんないい子の口を縛って焼却炉に詰め込んだディオはめちゃ許せんよなぁ〜?
「俺が呼び出した人達はスタンド使いじゃなくても見えるタイプだから、学校の外でお別れだけどな。かわいいだろ」
「いっいいから早くこの犬を退けてくれー!」
億泰君にけしかけたダニーに声をかけてじゃれつくのをやめてもらう。顔がよだれでベトベトだ。俺以上に仗助君が声を上げて笑っていた。
俺にだって友達くらいいるが、こんな何でもない会話の中で穏やかな気持ちになれたことは、今までなかったかもしれない。それこそ前世を含めて。何故か、とても安心している自分を実感していた。
その日の昼、俺は担任の先生から無理矢理雑用を請け負って中等部の棟に来ていた。本当にちょっとした連絡事項を中等部の先生に伝えるだけの雑務で、なんなら先生同士でメールでも送れば済むような小さな用件を。
俺にとってはただの中等部へ行く口実だ。別に勝手に中等部へ高等部の学生が出入りする事は珍しくない。その逆も然り。しかし一応校則として禁止されているので先生に見つかると余計な手間を取られるのだ。無用な時間を取られないように理由を手に入れただけ。
無論本命は重ちー君の生存確認である。かれこれこの行動は5日程続けている。仗助君達が重ちー君と出会った日からそんなに日を開けずに『あいつ』と遭ってしまうはずだが、全くそんな兆候がない。いや前兆なんか感知できたら重ちー君死なないんだけどさ。
…ヤバい、もう昼休み半分切った。午後の授業もあるし、高等部の教室に戻るのにも時間がかかる。そろそろ戻るか?
俺はパンをかじりながら体育館周りからグラウンド側にかけてをブラブラ歩いている。今日は重ちー君に会わなかった。不安だが、1番注視している体育準備室に音沙汰はない。今日は大丈夫そうか…?
そう思ったのも束の間、倉庫方面から怒鳴り声と、複数の焦ったような声、続いて窓を乱暴に開けたような音と急いで走り出す足音が聞こえた。
少し遠い場所にいたのでその場面は見えなかったが、取り敢えず状況確認の為に音のした方へ向かおうと振り向いた。それと同時に誰かとぶつかって、勢いのあった相手の方がよろけた。俺はほら、鍛えて体幹いいからブレないの。
「うおっと! あれ、藤堂先輩か? どうしたんだよこんな所に1人で突っ立って」
「おっと、朝ぶりだな億泰君。先生から伝言を頼まれてね。そっちは仗助君も一緒か、何をそんなに急いでるんだ?」
「お? おう、体育教師の隠し持ってる飲み物があるからって重ちーと体育準備室で飯食ってたんだよ」
「だけど重ちーが騒いだおかげでセンコーが来てここまでずらかってきたってワケ!」
「何だよお前ら、俺も誘えよな」
「まあ俺らちょっと重ちーに昼飯代集ってそういう話になったんで…」
普通その場にいない奴をわざわざ誘わないよな。わかるけどちょっとそういうところで飯食べるのワクワクするんだよ。憧れてるとも言う。
というか問題の場所は覚えてたけど、細かい経緯は覚えていなかった。さっきまで3人でこっそり飯食ってたのか、結構仲良いな君ら…いや違うそうじゃない。
「その重ちー君は一緒じゃないのか?」
「おおかた置いてきたサンジェルマンのサンドイッチが惜しくて、準備室に戻ってるんじゃあないですかね。俺らも飯残ってたけどしょうがないか」
「今日はもう諦めるしかねえよなあ。いい時間だしそろそろ戻るか仗助」
「そうだな。ちょっと早いけど、教室戻るか」
マズイ。最悪もう既に会ってるかもしれない。今日だ、今日があの日だ! 早く助けに行かなければ。2人もどうにかして連れて行きたいが、上手い説明が思いつかない。いきなり俺が勘か何かで重ちーの危機を察知したなんて言っても「何言ってんだこいつ」って顔されて終わりだ。
俺は、予めある程度自分のマニュアルを作ってから行動した方が失敗しない。言い換えるならばアドリブに弱い。だからこうやって巡回という形で備えていたのに。
どうしよう、どうやって奴の所まで行ってもらおう。そもそも何故入口から入って来た筈の部外者にも重ちー君達の出入りにも気づかなかったんだ、俺は!?
少なくとも人数で不利になれば奴は逃走を図る。そうなればこちらから追撃できるはずだ。無理やり引っ張っていくか? 一応『保険』をつけているが効果があるかもわからな……
──────そこまで思考を巡らせた瞬間、俺の身体が爆ぜた。
***
ボグオオォ!!!!
「ガアアァッ!!?」
「!?」
「藤堂先輩ッ!?」
仗助と億泰、2人の目の前で突如藤堂が『爆発』した。有り得ない現象に驚きを隠せず、ひどく動揺する。爆発した割に周囲に影響はなく、肉片も散らばっていない。しかし、藤堂もボロボロになっており無事とは言えないが、
藤堂の体中に裂傷というにはとても深く歪んだ傷が刻まれていた。脈絡もなく死にかけた藤堂の状況に、ただ事ではない空気を感じ取るや否や、まず仗助がすべき事に手を伸ばす。
「まだ生きてるよな、『クレイジー・ダイヤモンド』ッ!」
「敵が近くにいるのか!? 何処だ!」
「うああ…ッ」
仗助が藤堂を『治し』、億泰がスタンドを出して周囲を警戒する。しかし当然ながら彼らの近くに怪しいものはない。疑い始めるとグラウンドを使っている生徒まで怪しく見えるが、とにかく、目立って奇妙な物も人も見当たらない。
治療を受けた藤堂は呻いていた。直前まで体の内側から破裂した皮膚を適当に縫い合わせたような各パーツのズレすらあったが、『クレイジー・ダイヤモンド』が綺麗に元どおりに治したため、瀕死からは回復出来た。まだ、生きている。
死にかけた直後の藤堂には少し大変かもしれないが、一刻も早く敵の情報を得なければならない。これ程のパワーを持つ相手と何の策も立てないのは自殺行為であることを、仗助と億泰は直感していた。逸る気持ちを抑え、藤堂が自力で話せるタイミングを見計らって状況をまとめていく。
「ガハッ…はあ、はっ…仗助君、億泰君…」
「先輩、今のはスタンド攻撃だったんだな!? 誰にやられた!」
「俺じゃあ、ない…朝の犬、いたろ。…そいつ、が、攻撃を受けた。一撃で消された…らしい」
「スタンドに攻撃が直撃してツギハギみたいな事になったのかよ…」
「…スタンド扱いになった犬が、存在するエネルギーを…保てないほどのダメージを受けた、から、その半分のダメージを今、俺が受けたんだ…。ところで仗助君、俺の怪我、どんな感じだった」
「…何ていうか、こう、爆発した感じだったッス。内側からドゴン! と」
藤堂は朝呼び出していたダニーに学校周りの警戒をさせていた。俺1人で敷地内全てをカバー出来ないからだ。
藤堂も一気に体力を消耗して話すことしかできないが、ここでようやく藤堂が伝えなければならないことを言うことができた。彼に目的以外の事を考える余裕は少ない。
「恐らく、『犯人』だ」
「何だと?」
「前に被害者を呼び出した時と同じ傷…。そして、ダニーは…あの犬は、昇降口へ行く校舎裏の道で…消えた筈。重ちー君も、そっちにいるかも…」
「ッ!!」
「早く探しに行ってくれ…俺は悪いが、しばらく動けない」
「…わかったぜ。先輩は置いてくけど、大丈夫なんだな?」
「おう、仗助君のお陰で…致命傷は消えたからな」
置いていく決断が早かったのは億泰だった。また、早くいけ、とジェスチャーした藤堂に後ろ髪を引かれるような顔をする仗助の肩を叩いて急かした。
「…間に合ってくれ…」
その場に体を庇うように身を丸めた藤堂の、小さな呟きは誰にも聞こえない。
グラウンドから昇降口へ続く人通りの少ない、いわゆる校舎裏。異色な人影があった。明らかに学校関係者ではないスーツ姿の男が、ボロボロになって蹲っている学生の目の前に立ちはだかっている。
学生…重ちーの顔は、思いっきり顔面を殴られたように血が止まらないといった有様だ。スーツの男は、今しがた行った攻撃で殺すつもりだったのだが、校舎の陰から
男にとって忌々しい犬は、新たに弾いたコインで速やかに『爆発』させた。…爆発した際にダニーは存在を保てなくて掻き消えたのだが、スーツの男からはただの犬を能力で消してやったように見えている。ダニーがスタンドと化していることなど分かりはしない。
男の名は吉良吉影。
『穏やかに暮らしたい』気持ちと『人を殺さずにはいられない』性を併せ持つスタンド使いで、何より杉本鈴美を殺した「犯人」である。
スタンド名は『キラークイーン』。『触れたもの』は『どんな物』でも『爆弾』に変える能力を持つ。
「『一発』では…殺せなかったか」
群体型のスタンドな上に直撃を避けた訳だから、大ダメージではあるが、動けないほどではないといった状態。重ちーは吉良にとって始末し損ねた外敵となった。
吉良は
「重ちー! どうしたんだよその傷は!?」
「敵は逃げたのかっ!?」
「ううう…お、億泰さん、仗助さん…これを……」
重ちーが自分の傷も後回しに、何かを仗助へ手渡す。それは模様の入ったボタンだった。駆け寄ってすぐにスタンドで重ちーの傷を治した仗助は、不思議そうにそれを眺めた。
「ボタン…? 重ちー、これは…」
「あいつはまだ近くにいるど…オラが『パパ』と『ママ』を守るんだどッッ!!」
「ッ、待て、重ちー!」
重ちーはボタンを仗助に渡すと、『ハーヴェスト』で自身を運ばせて前へ進み出す。もうすこし情報が欲しい2人は引き留めようとするが、「強い意思」を宿す重ちーには届かない。「奴から両親を守るため」に犯人を倒そうと言う意思。
本来重ちーはこの時点で「吉良吉影」という名を知ることになっていたが、どういうわけか、
つまるところ、重ちーが犯人の名前という、大きな答えを得られなかった事実だけがここにあった。重ちーは吉良の顔を見ているが、この場で明確に伝えられるわけではないため、渡せるヒントが『ちぎったボタン』ひとつだけだったのだ。
それでも歩きながら吉良を探す重ちーは大まかな説明をした。人間の手を持っていただとか、スタンドの事だとか、容姿だとか。周りを警戒しながら、何とか仗助と億泰に伝えた。
『ハーヴェスト』で学校周辺まで手分けしているが、全てを索敵に回すわけにもいかないし、迂闊に相手に触れようものなら爆破される危険がある。慎重にならなければ、先程は突然乱入してきた犬によって爆発の余波だけで済んだ攻撃をもろに食らうだろう。
「で、2人が来た時に姿を隠したんだど」
「なるほど、しかし重ちーのスタンドでもまだ見つからないのか」
「もう学校の敷地から出たのか?」
「でもそこまで遠くには行けねえだろ」
「あいつは、きっと近くにいるど」
──────ここで、重ちーはある提案をした。「このままでは埒があかないから、手分けして校舎を外周しよう」と。
「うまくいけば反対側からと、校舎の中から回り込んで挟み撃ちにできるど」
重ちーは時折とんでもない機転をきかせる。この場にいる2人はそれを知っていたが、この作戦には驚いた。
勿論狙われている重ちーを1人にできる高校生達ではない。やめておけと止めるが、重ちーは言い返す。それが一番効率がいいと思う、と。彼の意思の強さにとうとう仗助と億泰はその作戦を承諾した。
億泰がそのまま校門の方へ向かい、重ちーが校舎の中を通って反対側へ、仗助が重ちーを追いかけてきたルートを戻る形で外周する手はずとなった。
──────そして億泰と仗助が再び会う時に、重ちーの姿はどこにもなかった。
この日、矢安宮重清は『行方不明』になった。
***
俺も歩ける程度に回復したから3人が居るはずの方へ向かっていたのだが、仗助君に作戦概要を聞いた時、思わず顔を強張らせた。怒るでもなく、避難するわけでもなく、みっともなく喚いたわけでもなく。すぐに全速力で走った。間に合ってくれ、と。
走っている途中で、ピタリと立ち止まった。何故なら
サイズは康一君の『エコーズACT1』くらい。ネッシーをデフォルメしたような形の、やや頭でっかち。足はなく、イルカの手のような部分と共に、一反木綿のようにひらひらと先端を揺らしている。顔や面積の小さな胴体に×印の金属を拵えて、まるで鯉のようにゆったりと宙を泳ぐ。
全身が青白く発光しているように見える
着いた場所は、なんて事はない廊下の途中にある、外へ繋がるドアの前。
俺のスタンドは、普段、本来の姿で出てくることはない。いつもは呼び出した人を形作るのにエネルギーを使っているからだ。
もしこの姿で出てくるとしたらそれは、『俺の近くで誰かが死んだ時』に限る。その人が死んだ地点へ向かい、しばらく硬直した後に勝手に消える。ハタから見たら何をしているのかわからない。しかしこれには見当がついている。多分、他のスタンド使いにもわからない、俺にだけわかる能力。
きっと俺のスタンドは、『死んだ人が
仗助君もこの一見何をしているかわからない光景を見ていた。何か言っているが、俺に応える気力はない。どうにも力が入らなかった。
『負けた』。どうしようもなく。
策略か、能力か、運命的なものにか。よくわからないが、俺は確かに吉良吉影に負けたのだ。俺が最初に攻撃を受けた事でかなりのダメージが入ったが、何かもっと出来ただろう、そう思わずにはいられない。俺は奴に直接会ってもいないのだ。
何も言わない俺を引きずって、『振り返ってはいけない小道』の前にスタンド使いたちが集まる。悪い方向に進展した情報を共有するためだ。鈴美さんは俺たちに現実を突きつける。
鈴美さんとはこれより少し前に興味本位で会いに来ているので、面識はある。
「間違いないわ…この子はもう死んでるわ…。あたしにはわかるの…」
彼女曰く、奴に殺された、と。
仗助曰く、数分の間に消えた。重ちーの両親は捜索願いを出している、と。
「『消えた』? スタンド能力で、消したのか!」
「…対象を『爆発』させて、相手を身体ごと『消滅させる』所までがワンセットなんだろうな。…死体を残さないって先輩の推測、俺てっきり犯人が山なんかに埋めて処理してるって意味かと思ってたぜ」
「文字通り『どこにも居ない』…」
「…藤堂、お前は…」
承太郎さんが探るような目で俺を見る。別に俺が犯人を庇っているわけじゃあないですよ。本当です。俺は首を横に振る。彼はそれで何も言わなかった。俺自身に何かあると考えているのは承太郎さんだけのようで、他の人には俺が項垂れているようにしか見えないだろう。
『知っている』事はあるけれど、それが本当かは『知らない』のだ。さらに『原作』の話を詳細まで寸分違わず覚えているわけじゃない。だから先の話を伝えたとして、それ以外のイレギュラーが起こった時に責任が取れないのだ。
俺のせいで全滅…なんてことは流石にないだろうけど、俺にとっては既に
「本当にその…『重ちー』君は死んだの…?」
「俺も信じがたい事だが…そうらしい」
「この町で死んだ人の魂はこの『小道』を通るのよ。だから…本当よ」
「…一茶、『重ちー』は呼び出してみたか?」
「一応…呼びましたよ。自分の目で確認したかったので。間違いなく、『犯人』に殺されてます。…自壊している死者はあまり呼び出したくないんですが…」
暗にみんなにもわかるように呼ばなきゃいけないのか尋ねると、別に大丈夫だから無理はするなという答えが返ってきた。そんなにひどい顔をしているだろうか…。
しかし、俺自身、人が死んだことにはあまりショックを受けていなかったりする。いつでも会いたい時に会えるわけだから。全貌を知ることができない親族などに同情心は湧くが、それ以上はない。俺にはあくまで死んだ人間を尊重している自覚がある。それに伴って生きている人間に対して砕く心が少ないのだ。
心無き者というなかれ。俺にもわからないうちにこうなっていたのだ。逆に言えば死後にも影響を及ぼす吉良の能力はどうにかしたいと思っている。
承太郎さんが仗助君から手がかりのボタンを受け取ってこの日は解散となった。…とても疲れた。
明日以降に仕立て屋を回るのだろう。明日は学校も午前中だけだし、俺も町を散策しよう。俺も長いこと杜王町に住んでいるのに見たことがない、会ったことがない人間がいるとは思えない。が、
余談だが、爆破されたダニーのことだ。次に呼び出す時には悲惨なことになっているだろうと心を痛ませながら再度呼び出すと、なんと状態異常がひとつもなかった。嬉しい誤算である。
俺が呼び出した存在が吉良によって爆破されても、その存在自体に影響はないらしい。ダニーにまた炎とかそういう悪意で酷いことをしてしまって申し訳無かったのだ。これで魂の形さえバラバラにされていたら耐えられなかった。
これは恐らく、『俺のスタンド』扱いだったことが大きいと思う。俺に間接的に攻撃されたから俺にダメージがきたが、ダニーは消えるだけで済んだ。これで吉良に関しては俺のダメージフィードバック以外にデメリットは特になくなった。
死者に安寧を与えるべき俺が被害を出させたとあったら自害するレベルだった。
主人公の中で優先順位は死者>自分>生きている他人くらいの感覚です。
吉良が今のところ知っているスタンド使いは億泰と仗助かな? 藤堂とは奇跡のように会ってないし、他の人は視認していないはずなので多分、そう。
重ちーはここで死ぬ運命だった。それだけ。一度だけしか戦わなかったスタンド使いでも、アニメで見たらやたら強そうに見えるのでそのイメージで書いたらすごい生き残りそうだった。死ぬの難しかった。
次本当は後半にちょっと入れる予定だったシアーハートアタックから親父あたりまで
今眠くて何打ってるのかわからない