ほんの少し思い出してもらうだけの話   作:氷陰

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荒木先生ってやっぱ神か吸血鬼だわ。崇めとこ。

作者「シィィザァァーーーッッッ!!!」と13回叫んで(苦しみに)悶えたあと、投稿に成功!


ジョセフ・ジョースターの場合

 

 よく考えると結構恐ろしい、歴代ジョジョがほぼ揃う戦闘の日から数日。俺の心がやや軽くなったことを除けば、普段通りの生活を送っていた。

 今も健やかに学校へ向かっている。

 

 

 ンッン〜〜実に! スガスガしい気分だッ! 歌でもひとつ歌いたいイイ気分だ〜〜フフフフハハハハ!

 

「ふーふーふーフーフーフフッフーン! てーてーてーテーテーテテッテーン!」

 

「なんの曲ですか?」

 

「波紋戦士の歌だよ康一君」

 

「はあ。よくわかりませんが、最初にあった時はもっと落ち着いたように見えたんですけど…。

 何かいいことでもありましたか?」

 

「すこぉしばかり心配事が少なくなったからね、自重もやめてしまうさ」

 

 

 康一君から見た俺は別人のように印象が違うらしい。たしかにここ最近の俺は他人から見ても自分でも不審なほど笑顔なのだ。性格自体は変わっていないけれど、直近の懸念は解消されたから舞い上がっていてそれで人が変わったように見えるだけだ。

 

 

 

 レッド・ホット・チリ・ペッパー戦から時間が過ぎて。仗助はその時来日した実の父親の面倒を見るので忙しいらしい。最近は透明になる赤ちゃんを拾ったと仗助から聞いている。未だにどう接すればいいのか迷っているようだが、向こうも少しは距離が近づいている様子だった。その調子でお小遣いでも貰っとけ。

 

 唐突な事後報告に驚いただろう。そう、レッチリ戦が終わっている。本体は音石という男で、今は牢屋で大人しくしているらしい。

 

 本当は俺も討伐に参加する腹積もりだったのだが、知らないところで終わっていた。気づいた時には腰が曲がってるくせにやたらでかい爺さんを町で見かけるもんだから、そりゃあもう驚いた。

 

「なんで俺に言わなかったんですか? 住んでる町の危機くらい俺でも動きますよ!?」

 

「いやだって先輩…」

 

 

 承太郎さんに詰め寄ったら、何故か言葉を濁された。一緒にいた仗助が「矢のことまで教えてまた心配事を余計に増やすのも…」とこぼさなければ、原因に気づけなかった。

 

 あっやべえ。スタンドのこともDIOについてもゲロったのに弓と矢のことに何も触れてなかった。

 原作においてスタンドが主軸になるのが3部で、矢の件が明るみに出たのが4部だったから、わざわざ言わなくても説明できてしまっていたのだ。盲点だった。

 

 矢のことについて知っていると伝えれば早く言えと怒られたが、音石が矢を所有していた期間で新たなスタンド使いを増やしたかどうか取り調べている最中で、特に心配する必要はないと諭された。

 

 

 まあ俺の能力は、呼び出す人間がスタンド使いじゃない限りは実に限定的な戦い方になるし、他人と組もうとするとどうしても事前に打ち合わせておかなければ味方まで驚いてしまうし、扱いにくかったんだろう。

 俺に心配かけまいとする仗助君の心意気を買って食い下がるのを止めた。

 

 俺だって死んだやつを呼び出せることに気づかなかったらただの記憶力いい人間で終わっていたんだから、自分が弱いことくらいわかってんだよ。

 承太郎さんと仗助君にも戦闘面では負けたようなもんだったし。…でも善戦はした…よな?

 

 

 

「それにしても、まさか藤堂先輩がスタンド使いだったなんて…」

 

「康一君は後天的なスタンド使いだったな。俺は生まれつきだから、むやみに言わなかっただけだよ」

 

 また、これから先の戦いでどうしても一部のスタンド使いには細かい事情を伏せてでも、俺のことを明かす必要があった。『少しの間死んだ人間をスタンドとして呼ぶ能力』という触れ込みだ。

『能力がバレると俺の命が危ないから』というと納得し、誰にも言わないことも約束してくれた。本当に優しい住民ばかりである。

 

「あの『降霊』はスタンド能力だったのか…」

 

「うん。俺のスタンドとして呼び出すから攻撃されれば俺も傷つくがな。康一君も誰か呼んでみようか?」

 

「いや! いいです! うちはみんな元気なんで! 今お金ないし!」

 

「ちぇっ。じゃあいいや。あーあ、どっかに先に逝った奥さんを呼び出したい不動産王とかいねーかなあ」

 

「ゲンキンだなあ…」

 

 調子に乗って金を使ってしまい、(もうすぐ6月になるけれど、)今月自由に使える金が残り少ないのだ。貯めてる旅行代とかから崩してもいいが、臨時収入があるなら儲けものだ。

 

「じゃーあな! 康一君! そういう訳で俺は稼がなければならん」

 

「はーい、頑張ってくださいね。たくさん依頼がくるといいですねー」

 

 投げやりな挨拶が聞こえたが、康一君がそんな態度を取る訳ないもんな。気のせい気のせい。康一君がそんな淡白な返事を返すのはどっかの漫画家相手くらいだろ。

 

 

 

 康一君の家はカフェ・ドゥ・マゴを基点に東の住宅地方面、俺は西の霊園の方面。学校帰りでたまたま一緒になったが、駅を越えたら別れ道だ。

 軽い挨拶もそこそこに、出来るだけ信号機がない道を通る。小道を通るルートは曲がり角が多いが、多少移動時間を短縮できるからよく使う。

 

「すまんな、そこの学生君。道を教えて欲しいんじゃが」

 

「んー、何ですか? 俺今日はちょっと………」

 

 歩いていると後ろから呼び止められた。今日に限って呼び止められるとはなんたる不幸、しかも英語だ。言葉はわかるからいいとして、この辺りは道が入り組んでいて観光客が入り込む場所ではない。川や道の行き止まりが多いから大通りへ戻るのは地元民でさえ一苦労なのだ。誰かが導いてあげないとこの外国人はしばらくこの路地から出ることはできないだろう。

 

 つい日本語で返事をしたが、俺は聞いたことのある英会話なら記憶しているから、英語くらい話せる。…仕方ない、せめてわかりやすい道までは連れてってやろう。そう思って声をかけられた方へ振り向いた俺は、これ以上ない幸運に内心お祭り騒ぎとなった。

 

 声をかけてきたのは丸眼鏡を装着し、帽子を被った外国のご老人。ジョセフ・ジョースターであった。

 

 

 

 

 

 

 ジョセフ・ジョースター。

 第2部、戦闘潮流の主人公。生まれつき波紋の呼吸が使えて、努力が嫌い。しかし祖母やスピードワゴンに育てられた彼は身内のことになると、強い感情を示す。

 石仮面を作った種族、柱の男たちと機転と実力でもって戦い、カーズを宇宙へ打ち上げた。

 第3部でも登場し、DIOを倒す旅の功労者である。

 

 また、ジョースターの中でも異端児で、長命で浮気もしたし隠し子も発覚した。

 

 最後さえなければ本当にすごい人だと手放しで褒められるのだが。まあ浮気してくれなきゃ仗助君が生まれなかったのでイーブンだな。英雄色を好むというし。やれやれだぜ。

 

 柱の男達との戦いが終わった後にはスージーQと結婚し、不動産王の名をほしいままにした。今の俺にとってはかなり身近な有名人だ。ジョースター不動産と言えば名前なら誰でも聞いたことがあるレベルだし、年収ギネスに名を連ねてたような気がする。

 努力が嫌いだと言っておきながら波紋戦士として、スタンド使いとして頼もしい戦力になるし、世界的にも立派な立場を確立できるのだから、彼の実力は凄まじい。

 

 

 そして、俺の変わり身も早い。

 

「…オーケー、わかったよ老齢のかた。どこに行こうとしてるんだ?」

 

「おお、案内してくれるのか、若いかた。近頃は息子や孫や果ては妻にもよく怒られるからのォ〜、他人の優しさで涙が出そうだわい」

 

「愚痴るほど怒られるなんて一体何をしたんだよ」

 

「ほっほっ…ちょっと浮気してできた息子を今になって知ってな…」

 

「おっとそれはそれは、どっかの仗助君みたいな話ですねえ」

 

「おや、仗助くんの友達じゃったか」

 

 仗助の友達は優しい子ばかりだと笑うジョセフ。どうやら仗助君に用があるらしい。

 こうしてみると本当にただの爺さんだなあ。依頼させていっぱい金を貰おう作戦を企てる俺に少しばかり罪悪感が募ってくるが、心を鬼にして、会話から自然な流れで降霊を勧めよう。

 

「仗助君の同級生が、俺のところに依頼を持ってきましてね。そこで知り合いました」

 

「依頼というのは…?」

 

「申し遅れました、俺は藤堂一茶。『藤堂霊媒相談所』というのをやってます」

 

 ついでに名刺を渡しておこう。仕事である以上一応作っていた。

 そのまま死んだ人を呼んで生きている人の心の整理を手伝っている、といった感じの説明をした。イメージしにくい話だが、真面目に聞いてくれた。

 

「ふうむ、奇妙な話じゃのォ。まるでシャーマンじゃわい」

 

「トランス状態にもならなければ、何かに憑依するわけでもありませんけどね。誰か呼び出して見せましょうか? 亡くなられた方のことを少し教えてもらえれば俺が呼びます。お代はいただきますが」

 

「……」

 

 悩んでる悩んでる。ジョセフが呼びたいと願うならば、やはりシーザーだろうか。リサリサか会ったことのないジョージ2世かもしれない。リサリサはなんか生きてそうだけど、流石にこの時点だと110歳くらいになるし死んでるか。…死んでるよな…?

 

「ところで一茶君。ちょっとお尋ねするが…」

 

 …んん? なんか今話が唐突に飛んだな? これだからジジイは…。

 

「君は波紋の呼吸を誰に習ったんじゃ」

 

 

 心なしか先ほどよりも視線に強い意志を感じる。なるほど、俺が『忘れずに』今も波紋呼吸していたのに気づいて訝しんでいるらしい。さてはボケてないだろ、この狸め。

 

「イタリアに旅行した時に少々変な力を使う人等と会いまして、そこで教えてもらいました」

 

 ジョセフはとりあえずこの答えで納得してくれた。本当はずっとツェペリさんに教えてもらっているが、これも嘘ではない。

 

 エア・サプレーナ島はリサリサの所有地であったが、今もなお波紋使いの修行場として機能していることを俺はこの目で見た。もう吸血鬼やゾンビの危険が迫っているわけではないので、2部の時ほど厳しい修行をする人は皆無だったが。

 波紋は仙道とも言う。中国の山奥で修行を重ねる修験者たちと同じことだと自分の中では理解している。

 

 俺が島に訪れた際には、かつてここで鍛えた波紋戦士たちの師事を受けたという波紋使いが3人いて、俺も同類だとみなされた時にはすごく可愛いがられた(戦士的な意味で)。全員頭ワムウかよ。

 

 

「イタリアか…懐かしいのう。わしも昔はやりたくもない修行をしたものじゃ。師匠が鬼みたいな女でな…」

 

「あなたも波紋使いでしたか」

 

「波紋使いというよりはやってる事は波紋戦士だったな。まあ昔の話じゃよ。娘や孫はちっともわしの武勇伝を信じんかったが」

 

 そう言うジョセフはどこか遠い所を見つめている。ヘルクライム・ピラーのことでも思い出しているのだろうか。アレも使えそうな状態で残っていたが、少なくとも俺じゃ無理な高さだった。本当にジョセフはすごい。

 

 

 思い出が蘇ってきたのか、ジョセフの口からは次から次へと不満や恨み言が綴られていく。

 

「兄弟子もイヤミなやつでのーッ。女を見かければすぐ気障ったらしく口説くし、おれには真面目に修行しろだの、いい加減なことをするなだの小言がうるせーし、お前はおれの母親かってんだ!」

 

 英語だから一人称が変わったりはしないが、だんだんストリートにいるヤンキーみたいな語調になってきた。こちらは4部のジョセフです。

 

「それだけ貴方のことをよく考えていたんでしょう。どうでも良いのなら無視しますよ」

 

「…わかっておる、わかっておるんじゃ。シーザーはスケコマシだったが、クソ真面目だし、リサリサのことをうざいくらい心から尊敬していた。

 

 そして何よりも家族や身内の誇りを大事にする男だった。もしそうでなかったなら、いやそうではない。わしが軽率にあんな言い方しなければ」

 

 きっと今も生きていたのに。

 

 

 言葉を言い切らない口の中でそう言いたかったのだろう。一応大通りへ向かって歩いていたが、俺たちの歩調は完全に止まった。

 

「ちなみにその人の名前は?」

 

「シーザー・A・ツェペリ。己の血統に誇りを持つおれの…親友だ」

 

「そうですか。では今言ってたことは俺じゃなくて、本人に言ってくださいね」

 

「なんだって?」

 

「言ったでしょう、俺が呼ぶんです」

 

 思い出せ。過去と、言うべきことを(プリーズ・リメンバー)

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 お互いの姿を確認しても、彼らは無言だった。

 ジョセフは突然目の前に現れた、イタリア男に驚いて。イタリア男────シーザーは老齢の戦友を観察するがために。

 

 永遠にも感じる沈黙を破ったのはシーザーだった。

 

「マンマミーヤ、JOJO、お前! いい年の取り方をしたな。あの頃よりも男が上がっているんじゃあないか?」

 

「…本当に、シーザー?」

 

「ヘタクソな波紋を鍛えるためにリサリサ先生を紹介した親友を疑ってんのかスカタン。それは耄碌しすぎってもんだぜ。それとも昔のことすぎて俺の顔は忘れたか?」

 

「忘れるわけがねえだろ! …シーザーなんだな、本当に会えた…」

 

 シーザーが目の前にいる事実に、とうとう堪えきれなかった涙が頬を伝う。

 

 たくさん言いたいことがあった。嬉しかった事も辛かった事も。

 隠し子がいたことも、吸血鬼退治の旅のことも、孫や娘のこと、不動産の仕事のこと、母と妻のこと、それにカーズを宇宙へ吹っ飛ばしたことも。

 なにより、何よりも。

 

「…あの時、俺はお前に言った。『会った事もない先祖の因縁のために死ぬ奴はマヌケだ』と…」

 

「あれは死ぬほどムカついたぜJOJO。お前も同じ気持ちだと思ってたし余計にな」

 

 

「だが俺はお前の誇りを知った。柄にもなく後悔した。お前の誇りを侮辱したこと…本当にすまなかった。出来れば生きているうちに言いたかった…」

 

 

 シーザーの過去からくる激情を理解したのは、手遅れになってからだった。リサリサから過去を明かされ、館へ向かい、鮮血のシャボン玉から託された波紋を受け取った後。

 シーザーが波紋をJOJOへ託した事は、JOJOの心にゆるされたような安心感を齎した。これを以って柱の男を倒すのなら許してやると。そういう気持ちもあってワムウに挑めたと思い、感謝している。

 

 だが、今のように面と向かって会えたのなら、言葉を尽くさない手はない。

 

 

 

 死刑宣告を聞く罪人のような顔で涙を流すジョセフの額を、シーザーは指で弾いた。軽い波紋も流れていたらしく、放電したような光と音も起こる。

 

 バチンッ。

 

「痛っ!!? シーザー?」

 

「老人を殴るのは流石に殺してしまうから手加減はしてやるよスカタン。JOJO、俺はあの時にはもう気にしてなかったぞ。お前もわかってたんだろう?」

 

「…そりゃまあ、でも」

 

「俺の口から聞きてえんだよな、お前、結構繊細だもんな」

 

 シーザーは一息ついてから体を向き直す。

 

 

 

「俺はお前の言葉に怒りを覚えたが、そもそもお前に怒っていないし、お前を恨んではいない。許す許さない以前の話だぜ。

 それでも、俺の事などを抱えて生きてきたお前を安心させるために言ってやろう。

 

 俺はJOJOを許すぜ」

 

 

 JOJOは幼子のように座り込んで、泣いた。

 離れてみていた藤堂は、前髪の跳ねた青年を幻視した。

 

 

 

 

 

 

 だいぶ落ち着いてから再びシーザーがジョセフに話しかける。皺だらけの顔は心なしかスッキリして見えた。

 

「お前ばかり謝るのはフェアじゃあないからな。俺からもひとつ謝ることがある」

 

「ああ? お前に非があることなんて、街でおれに声かけてきた女をおめーが横からスケコマシたこと以外になんかあったか?」

 

「ありゃお前にはもったいないシニョリーナだった。そうじゃなくてな、俺はあの時館に昼の間に行くって言い張ってただろう」

 

「そういえばそうだったなぁ」

 

「あれ、夜になると新技が使えなかったからなんだ。つまり独断専行したのは俺の都合ってわけだ」

 

「……ハァッ!!??」

 

「だからそんなに気を病まれるとこっちもいたたまれなくなるんだが」

 

「おまっえっ……それならそうと早く言えよオ! 馬鹿野郎!!」

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

「まあた新技編み出してたとかほんっっっ………とうにかっこいいことしやがってシィィザァァーーーッッッ!!!」

 

「そうだろうそうだろう。あの頃のJOJOといったら『オリジナル技がねえ〜っ!』って羨ましがってたもんなあ」

 

「わしだってスタンド使えるし! ほれ『ハーミット・パープル』ッ!」

 

「うおっ!? 何だそれ、茨? それがスタンドってやつか」

 

 

 シリアスもほどほどに、彼らは時間を共有していく。柱の男やDIOの話の時には我が事のようにシーザーはジョセフを褒めていた。波紋戦士状態は終わったらしく、口調は老ジョセフに戻っている。

 

 

 そうだよ俺はこういうのがみたくて霊媒やってんだよ。承太郎さんなんて表情ほぼ変わらなくて、普段よりも穏やかな雰囲気にはなっていたが、劇的に喜んでたわけじゃなかったもん。もっとオーバーなリアクションを期待していたんだがなあ。

 

 波紋戦士たちは凄い勢いで話し込んでいる。もう路地からは脱出してわかりやすい通りに出ているのだが、この話足りませんみたいな人達に「時間なので引っ込めますね」とかとてもじゃないが言えない、俺には無理!

 

 妥協案として近くの公園のベンチで会話してもらっている。俺は話に入らずただただ2人を見守っている。まあ依頼の時はいつもこうなんだが。

 

「お前浮気したのか…」

 

「し…仕方なかったんじゃよ…朋子が寂しそうだったから…」

 

「それはいい。孤独に震える女性を放って置かなかったのはむしろ褒めてやる。

 …だがなあ〜JOJOォ! 知らなかったとはいえひとりで子どもを育てさせたのはいただけねえなあ!」

 

「わしも悪いと思ってるんじゃ!」

 

「しかしJOJOの息子か…俺がここにいられる間に見てみたいな」

 

 おっと死んでるシーザーは仗助君が気になったらしい。スージーQの娘なら絶対に可愛い子だよなと言った彼の頭では、ジョセフの息子のイメージがつかないらしい。

 

 

 俺は生きてる人間からは金を取るが、死んだ人間はそんなもの持っていないし、そもそもこちらの都合で呼び出すのだから、むしろ出来る範囲で願いを叶えてやりたいとさえ考えている。

 

 よって俺の本日最後の目的は『シーザーを仗助に会わせる』に変更する。といっても公園から東方家は近いし、仗助の通学路の範囲な上、何処かへ寄り道していたらしい噂の本人は、もうすぐそこに来ている。

 

「あれ? 藤堂先輩じゃないっすか。家こっちじゃないでしょ、もしかしておれん家に用ですか?」

 

「まあある意味用はあるね。…シーザーさあん、彼が息子です!」

 

「何!? おら顔を見せろ!」

 

「は? えっ? 先輩、誰ですかこの人!?」

 

「ジョースターさんの親友(故人)」

 

「おおーJOJOにそっくりだ!ははは、JOJOに比べればめちゃくちゃ軽いな!」

 

 脇の下に手を入れて仗助を持ち上げるシーザー。止めろと言っているが多分聞こえてない。ぐるぐると回りながら顔のパーツがそっくりとか、イカサマが得意そうだとか好き勝手に感想を述べている。

 

 死んだ人間というのは生前と性格は変わらないが、死んだ自覚があるために少し理性の箍が外れるらしい。その結果がこの前の花京院であり、シーザーの自由人感である。

 

 ブランド物などの感性が合うらしく意気投合する中、自分より息子と仲良くなるのが早すぎると割り込んで行くまで馬鹿騒ぎは続いた。

 

 ちなみに後日、ジョセフに口座番号を教えたらいつの間にかやべえ桁が並んでいた。流石に怖かったので半分くらい返したのだが、今思い返すと値切られたような気がする。

 いや相場よりもいい値段の依頼だったのだから変な勘ぐりはよそう。「今後ともよろしくの」とか言われて何だか怖くなったわけではない、断じてない。




書きたいことが溢れすぎてどうすればいいかわからなくなったが、何とか書き上げました。

この話書くために、(死んだところを)見たくないから封印指定してた原作10巻を再び見る羽目になりました。辛いです。

その際リサリサ先生だけ内蔵カメラの顔認証が反応することに気づき一人で笑ったことを報告しておきます。
次は露伴回を予定してます。

追記
歌詞が著作権に引っかかるとの指摘を頂いたのでちょっと修正しました。教えてくださりありがとうございます。これで大丈夫ですかね?

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